厳冬期の谷川岳西黒尾根、撤退の記録です。
強風だけど晴れ予報。ふむ、晴れならOK。雪山で風はしゃあない。
前日も晴れ。よしゃ、トレース残ってるどー。
西黒尾根行ってみっか!
ヒューーーー。
おいおい、話が違うぜ。。
風ビュービュー、視界ガッスガス、前夜の降雪でモッフモフ。
全ての当てが外れた。
ダッフンダです。
前夜に雪が降った時点で急遽プランを変更し、天神平からの登山に切り替えましたが、風速は15m。
天神平へのロープウェイの運行開始は1時間遅れ。
まぢか。。
こ・・これはまさか神様が
「あんた西穂で逃げたろ?見とったぞ」
と試練を与えてるんじゃ( ̄▽ ̄)
はたまた天神平からだと滑落する運命だという暗示か?
自称慎重派な自分は(ビビりともいう)、最初から無理するつもりはなかったし、この時期の西黒尾根の雪庇がどんなものか見るぐらいのつもりでハイキングして帰ってこようということで西黒尾根に踏み出したわけです。
雪庇すげっ。
結局、ザンゲ岩の手前で撤退。
ホワイトアウト寸前の危うい天気でしたが、午後になってからはどんどん好転していく天気。
下山を開始してから武尊山方面の方から徐々に晴れていき、白毛門の綺麗な姿を楽しみながら歩けましたが、谷川だけはずっとガスが覆ってました。
やっぱりこの山の天気は難しい。
3回目の谷川岳、この山とは良縁じゃないなぁとつくづく思う。
でもまあ貴重な経験ができました。
では
■アクセス方法
・谷川岳ロープウェイへのアクセスは、ここ
■ルート
■全行程スケジュール
2017年2月18日
8:15 登山開始 ⇒ 12:45 撤退 ⇒ 15:40 下山完了
この時はまだロープウェイを使って天神平から登るつもりでした。
1階の駐車場から切符売り場のある6階へ移動します。
ワクワクするなぁ
い、いねぇ〜。人、いねぇ〜。
本当にロープウェイ動くんかな?
少し早めにやってきたからまだ閑散としてるだけだよね?ね?
年配のスキーヤーとちょっと談笑していると、ロープウェイの職員の方からなんと強風のため1時間遅れで運行開始との宣告を受けました。
がっくり。。
まだ7時半だぜー、10時まで何して待ってりゃええのー
とりあえず暇つぶしに西黒尾根を散策してみようか、という流れとなったわけです、はい。
もともと今回の企画は西黒尾根から登るつもりだったから、下調べは済んでます。
なのでこの時間からだと山頂は踏めないことは分かってたので、軽くどんな感じか探索して帰ってくるつもり。
この時はね。。
尾根への取付きは夏山と全然違いました。
立ちはだかる雪の壁。
最初どこから登ったらいいのか分からなかったけど、谷川岳山岳資料館の裏から無理矢理登っていくとなんとか尾根に取り付けました。しかも踏み跡残ってるし、ラッキーです。
でもかなりモフモフだからワカン装着。
ワカン買って良かった、これ大活躍ですほんと、今季の敢闘賞をあげたい。
軽いし、雪に刃がよく挿さるし。
ザックに付けてるとたまに紐がダラリとなってる事があってそれが嫌だけど、それぐらい全然許しちゃうぐらい使えるヤツ。
なんでもっと早く買っておかなかったんだろう。
で、くどいけど楽天ポイント使ってさかいやスポーツで手出し2千円で買えちゃいましたから!!
良い買い物したわ〜。
ワカンとスノーシューで悩んでる人に言いたい。
悩んでんじゃない!ワカンとスノーシューは全く別物だからまずはワカンを買っておくべし!と。
とは言えスノーシューの浮力は確かに魅力的。。
優柔不断で買い物が苦手な自分もこの問題を前にずいぶん悩みました。
でもワカンは買って後悔しないよ!ぜったいにしない!(たぶん!)
本当にスノーシューが必要な時はしばらくレンタルで良いでしょう。
高いし。2〜3万はざら。MSRのライトニングアッセントなんで4万ですよ!
そんなの買える?(簡単に買えるぐらいリッチになりたい)
出番も多くないし、なんせ重い。
だから今日はスノーシューをしに行くどー!って決めた日でしか出番がない!
(うぅ~だけど本音言えばスノーシューも欲しい。。)
でもそういう山は避ければ良いし、第一、スノーシューの踏み跡をワカンで追えばさほど沈まない。
そう、まずはワカン。もうね、自分は俄然ワカン推しちゃう!お金ないし!!
ずいぶん長くなりましたが、それぐらい良い物買ったな、と。お薦めです!
で、話を戻します。
ここら辺で、ロープウェイの運行再開のアナウンスが聞こえてきましたが、
このまま西黒尾根でいいんじゃん?って感じになってました。
そうと決まれば西黒尾根を行けるところまで行っちゃいます。
直登です。物凄い急坂で幕を開ける。
見た目以上に急です。何度もずり落ちながら登る。
買おうか悩んでるミラーレスカメラを今日はレンタルしてきたから使い勝手がイマイチ分かりません。
シャッター押してるうちに他のダイヤルを回してしまったことに全然気づきませんでした。
完全ピンボケです。
ちなみに機種は富士のX-T10です。
カメラ好きの知り合いから、
「いいか、カメラはファインダーを覗いて撮るものだ」
と男前な教育を受けてきたのですが、
ゴーグル越しじゃさっぱり見えないのねん。。
液晶画面を見ながらの撮影に切り替えてやっとピンボケに気づけました。
樹林帯が続くこの時間帯は風の影響をあまり受けなくて済むけど、山を揺らすかの様に吹き荒れる風の音が怖い。この先がとても心配です。
急な登りが続く。
雪が柔らかすぎて足がかからないから、ところどころ登れずに難儀する。
標高を上げてきて現れるのが雪庇。
この時点でかなり大きいのですが、まだまだ序の口。
西黒尾根がなぜ三大急登に選ばれたのかこれまで疑問でしたが、ここからの巨大雪庇や落とし穴、急坂はかなり危険で難易度も高く、理由が少し分かった気がします。
ここからはずっと雪庇に気をつけながら、樹林帯の中を歩きます。
これが落とし穴。かなり深いです。
やっと鎖場まで来たんだなと思いました。
夏山ルートと全く重ならないので貴重な目印です。
ちなみにこの先、鎖は一切見かけることはありませんでした。
雲竜渓谷では雪不足を感じたけどみなかみ方面は何年かぶりの大雪となったそうです。
他の山では雪解けが進む残雪期に入っても谷川岳だけはしぶとく雪が残る。そんな国内有数の豪雪地。
厳冬期に登ろうとする方がおかしいのかもしれません。
とにかく風が強い。吹き飛ばされそうです。
その上トレースは分かりにくいし、踏み抜きもひどい。
で、ご覧の通りかなりの急坂が続くから慎重さは欠かせない。
ペースはまったく上がりません。
ひえー
クラックだよ!
恐怖の西黒尾根。これがホワイトアウトの状態だったらマジでやばいよー。
観光客のノリで珍しがって写真を撮りまくる。
ほっほ~、クラックが続く。
右側の樹林帯の中を歩こうとするけど、右も崖だからあんまり寄り過ぎたらかえって危ない。
クラックの位置で雪庇が自分の想像をはるかに超える大きさだと分かりビビります。
ん?
フラッグが見える。
よーい、ドンッ!
突如始まる一人雪上ビーチフラッグ大会。
ハァハァ!
ゼーゼー!
やべえ、ビーチ以上に沈む。
まず膝で圧雪してからつま先を蹴り込むっ!!
フゥフゥー!
今シーズンは1レースもフルマラソン参加してないから弛みきった脇腹。背中の肉。体が重い。
それを支える筋力もない。
ふー、落ちぶれたもんだぜ。。
んぐっんぐっ。
来シーズンは必ず2レースは走ろうっ。
と心に誓うオイラでした。
しんどい。もう、
もう、
もう限界。。
ザンゲ岩でザンゲしてる写真撮りたかったなぁ。
あともう少しなんだけど。。
時刻は12:45。
下山は登り以上に時間がかかるかもしれないからここが限界かな。
ロープウェイの遅延を聞いてから登り始めたし、よく頑張った方でしょう。
晴れ予報だったのにね。
視界悪すぎでしょ。
ほぼホワイトアウトやん。
んー、
んーんーー、
てったい!!(決断)
同行者に大きな声で伝えました。
職場にいるもうシニアスタッフの元山岳部出身の人が自分に言ってくれた事を思い返してみる。
「撤退に間違えはない」と。
そうだよ、撤退に間違えはないんだ、と。
悔しいけど、落ち込んじゃいないさ。
つか、そもそも普通の登山でだってこんな天気に登ったりしないし。
それだけ貴重な経験もできたと思って、さあ帰ろう。
振り返って下山開始だす。
うん?なんじゃ。こっちは少し視界が良いぞ。
それにしたってすごい雪庇とクラック。
よくこんなとこ登ってきたな。
あ、天神平のロープウェイ駅が見える!
視界がどんどん開けてくる。
うあっ!青空やん!!
まじで?晴れるよー!
ガスが徐々に晴れていき巨大雪庇が姿を表す。
巨大な雪庇の威圧感は圧倒的です。もちろんこんなのは生まれて初めて見ました。
やっぱここの尾根は特別です。
今日は完全に天気に振り回されました。
どこの山に登ろうか、天気が良さそうなところをぎりぎりまで悩んで、決めたのがここ谷川。
なのに、なのになんでだーー?
下山を決めてから急に晴れだすんだから不思議だ。
そうと決まれば恒例の、
でやっ!
雪遊びタイムじゃー
うああー。
ウっ!!
アポーペン
安全な樹林帯まで下ってきたら尻セードタイム。
一気に下山完了させちまいます。
もう終盤に差し掛かってるけど、こんな景色を眺めることができて良かったよ。
それに何より無事に帰ってこれたんだから、こんな嬉しいことはありません。
ぬおーー!!
ズボッ
完全に落とし穴にハマりました。
油断しました。
後ろから見るとこんな情けない姿。
右足は雪の中で完全に宙に浮いてるから踏ん張れないし脱出が困難です。
うにょうにょ
左膝を立てて上体を起こして。
この時立てた膝が雪を踏み抜かないか怖い。
ほら抜けたっ。
恐ろしかったなぁ
ふぅー
早く尻セードで帰ろう。
尻セードでね~っと。
全然ルートと違う方向に尻セードで下ってしまいました。
正規ルートに戻るのに100mほどラッセルで横移動を強いられましたわ。
本当に同行者に申し訳ない。。
目の前は白毛門です。
あそこもアクセス良いし、近い内に登りたいと思ってる山の1つ。
やっと終点が見えました。
谷川岳山岳資料館の横にある駐車場の裏からよじ登ってきました。
ほんと無事に帰ってこれて良かった。次は準備万端で挑みたい。
やっぱみなかみと言えば蕎麦でしょう。
石臼でひいた蕎麦は格別でした。
蕎麦ならダイエット向きだしね。遠慮なくいただきまーっす。
振り返って
まあ何にしたってそれなりに楽しめたんだからOKでしょう。
旅だってアクシデントがあった方が記憶に残るし、
どんなスポーツだって厳しい条件を課すほど、楽しくなるのだから。
退屈じゃない勝負を望む時だってたまにはありますぜ(かっこいいやろ?(*´з`))。
左は雪庇、右は崖。
一見、幅が広そうに見える雪上のトレイルも実際に歩けるところは狭い一本道。
しかも風が吹き出すと体が煽られてとても真っすぐには歩けない。そんな中、急坂を慎重に慎重に登っていく。
この荒々しさはなんだろう。
まさにむき出しの冬って感じでした。
晴れ渡る北関東と上越の山々の雪景色に心が癒されます。
ですが、この時期の谷川の山頂の白さはこんなもんじゃない。
雪が完全に山を埋め尽くし、遠目でも谷川だけは一目で分かるほど異常に白く輝いてます。
この日は谷川だけ終始ガスに覆われてたので、その白さを確認することが叶いませんでした。
厳冬期の谷川岳西黒尾根はそう簡単には登らせてくれない。
美しくも荒々しく、恐ろしく冷たい。
その人を寄せ付けない厳しさは、今も昔も変わらないのでしょう。
だからこそ歴史あるこの尾根には厳冬期に登ってみたい、と今になって改めて思う。
次こそは準備万端にしてチャレンジします。
ではでは