2017年9月24日、苗場山に登ってきました。
標高2,145m。日本百名山、花の百名山です。
谷川岳や平標山を登っていると、山頂が真っ平でひときわ目を引く山です。
その姿を一度でも見たことがある人なら、あの山頂がどうなっているのか、興味を抱かずにはいられないと思います。
自分も早く登りたいと前々からタイミングを計ってましたが、なかなか機会に恵まれませんでした。今回は、自分が季節の変わり目にしっかりと風邪をこじらせてしまい、当初予定していた北アルプスのテント泊をキャンセルして、急きょ、苗場山の日帰り登山に変更しました。病み上がりのリハビリ登山です。
さて、苗場山。とても良かったです!山頂に向けて最後の急坂を登りきると、そこには4キロ四方に広がる見渡す限りの高層湿原の世界。さすが、新潟を代表する名峰、山頂に登った時の驚きったらなかった!
今回登ったルートは、いくつかある登山ルートの中でも最も人気のある、祓川(はらいがわ)コースをチョイスしました。赤湯温泉ルートも魅力ですが、祓川ルートは鈴木牧之(ぼくし)も登った歴史ある王道のルート。初めて苗場に登るならやはり押さえておくべきルートでしょう。
ちなみに鈴木牧之は江戸時代の随筆家(言ってみればエッセイスト)で、登りきった時の感想で「山頂は平坦な湿地でまさに苗場だった」、と言ったそうです(俺にも言えそう(笑)!)。
更にちなみに、まさしく苗場山の名は、高層湿原の池塘が田んぼみたいということに由来してます。
紅葉前線が南下してくれば、もぞもぞと布団から這い出してくる登山客も多いのではないでしょうか。
ゆっくりと紅葉が始まったこの時期の苗場山。高層湿原には草紅葉が広がり、点在する池塘は秋の青空と白い雲を映しだし、とてもそこが標高2,000mオーバーの山頂とは思えない、幻想的な世界を見せます。
紅葉に交じって、足元にはエゾリンドウが咲いてます。高山に咲く花の最終走者のエゾリンドウは10月中旬頃まで楽しめ、それが枯れると山には長い長い冬が訪れます。
短い秋を急いで楽しまねば!
秋晴れに恵まれ、一年で一番気持ちの良い季節の幕開けです。
■アクセス方法
・道の駅みつまたから10キロ、車で約30分。
・カーナビは和田小屋でセットして、その手前の第2リフト町営駐車場に駐車。
・和田小屋の住所/TEL:新潟県南魚沼郡湯沢町三俣/025-788-9221
■ルートとスケジュール
2017年9月24日
6:05 登山開始 ⇒ 6:30 和田小屋 ⇒ 8:30 神楽ヶ峰 ⇒ 9:30 苗場山山頂 ~散策~ 11:20 下山開始 ⇒ 13:50 和田小屋 ⇒ 14:10 町営駐車場
活動時間:8時間5分
活動距離:16.1km
累積標高上り/下り:1,454m/1,472m
消費カロリー:3,871kcal(目安 身長180cm/73kg 男性)
登山開始
登山と言えば、道の駅での車中泊が定着しつつあります。今回は道の駅みつまたで車中泊して、和田小屋に向かう途中にあるかぐらみつまた第2リフト町営駐車場へ移動します。
朝の6時に着きましたが、既に満車状態。なんとか停められたけど、この時期はどこの山も混むから油断できませんね。
ルートを再確認。
至って単純明快、ピストンで登って下りてくるだけのルートです。人も多く、ルートを見失う心配はないから初心者向けに紹介されることの多いルートです。
だけど、そんなに簡単かなぁ~というのが率直な感想。長い距離を歩ける体力が必要だから、自分なら絶対に初心者には勧めません。
登山道入り口で、ハイテンションの女性がヤッホー!っと雄叫びをあげてました。戸惑いながらのスタートです。
和田小屋に通じる舗装路とすぐ合流するから、別にこっちから歩かなくても問題なしです。
ひえー、ドロドロやん。
と言いながら、慎重に進んでましたが、同行者はここで滑って手をついておられました。和田小屋の水場で手を洗わせてもらいましょう。
すぐに和田小屋に通じる林道と合流します。舗装路は疲れるから嫌だけど、ドロドロのトレイルを歩くよりはるかに歩きやすい。最初からこっちを使えば良かった。
高原の朝です、気持ちいい。
最近、風景写真家の萩原史郎さんの話を聞く機会があって、なんとなく意識して撮った一枚。カメラはまだまだ駆け出しなので、数打ちゃ当たる作戦で撮りまくりたいと思います。
25分ほど歩くと五合目の和田小屋に到着しました。
同行者が手を洗ってる間に風景写真を撮りまくりましたが、気に入ったのは一枚もありませんでした。やっぱ難しいし、プロってすごいわ。
ガスッてる時や雨の時、様々なケースでどうすればうまく撮れるか色々聞きましたが、全部忘れちまっただ~(*´∀`)♪
さてさて、和田小屋から本格的に登山開始です。
かぐらみつまたスキー場を横切って樹林帯に突入します。
新潟のゲレンデの中では雪質が良いスキー場で、昔は何度も滑りに来ました。懐かしいなぁ。
樹林帯は相変わらずドロドロで歩きにくいったらないです。
下山の時はかなり滑るだろうなぁと、今からそれが心配。
ほどなくして6合目に到着。まだまだウオーミングアップ。
苗場山は6合目、6合目半、7合目と半分ずつ目安が出てくるから、自分が今どこら辺にいるのか分かりやすい。気持ち的にラクです。
天気にも恵まれました。
自分が風邪をひいてしまったから北アルプスから苗場に変更してもらって、同行者には本当に申し訳なかったんだけど。。まっ、こんなに晴れたわけだし、今週無理して風邪をぶり返すより、やっぱりこっちの日帰りにして正解だったかな。
下ノ芝。
やっぱ病み上がりなもんで、いつもとちょっと調子は違う。でもまだ休憩は不要です。
ここら辺から少しずつ樹林帯の木々が低くなってきて、眺望が開けてきます。
突然ですが、東京マラソン落選しました。
これで4年連続。。
倍率は12倍。人並みの運を持ってるとすれば、12年に1度は当選するはず!
白髪も増えて、街中でもトレッキングポールを使う年齢になる前には当選するでしょう。
しかし、一緒に申し込んだ知り合いのランナー10名、全員落選。
倍率12倍ってほんまかいな。。
ソンタクはありますよね、間違いなく。。
ちなみに熊本城マラソンも落ちました。まっ、北九州マラソンにも申し込んだし、佐賀さくらマラソンにもエントリーを予定してます!去年は1レースも走れなかったから、今年は2レースは走りたいと思ってます!
そんなわけで夏の間はちょいちょいランニングをしてたわけですが、その疲労が持久力という結果にではなく、風邪となってかえってきたわけです。風邪が完全に治るのに2週間以上かかり、治ってみれば体力は以前より落ちてるわけです。。なんのこっちゃです。
登山が楽しめなくなるなら、あまり無理してはいけませんね。
剣道、柔道、登山道。
ヒーヒー言いながら、ほぼコースタイム通りのペースで登ってます。ランニングをしてるからペースが早いというわけではありません。楽しみながら登ってます。
突然見晴らしが良くなったら中の芝です。
その名の通り、芝が広がってて紅葉もきれい。
ベンチに腰かけて休憩してると、隣で休んでたおじさんから、胸元に虫がとまってるよと教えてもらいました。慌てて払い落としたらカミキリムシでした。
この時期だと夜はかなり寒くなるはずだけど、まだ生きてるんですね。
残り少ないけど精一杯生きるんよと、森に放ちました。
北海道ご当地のメロ~ンなブラックサンダーで栄養補給。
「熟れた雷神」っていうキャッチコピーがイカす。
振り返って、上州の山々と紅葉。狙い通りの紅葉登山にニンマリ。
苗場にしようって言ったの俺!
風邪ひいたの俺!
カエデかな?
カエデってカナダ国旗ってイメージだから、赤く紅葉するのかと思ってたけど違うのかな?カエデも色々種類があるのかもしれませんね。目が覚める黄色がとてもきれいです。
エゾリンドウです。山ではこの花が終わった頃が冬の訪れの合図。
中ノ芝から上ノ芝までは景色が良かったからあっという間でした。
苗場山の中では山頂の湿地帯とここら辺の景色が見どころですね、間違いないです。
ここから苗場山に向けて神楽ヶ峰を横切りながらの横移動です。
青空のお陰で最高の登山になりました。
神楽ヶ峰が8合目です。
がぐらみつまたスキー場のかぐらってこれだったのか!と初めて知りました。
すこぶる爽快なトレイルを歩く。体力は落ちたけど、平坦なトレイルならウエルカムです。
ほんと苗場山、最高に気持ちいい。
そしてこの先を少し行くと、、
どーんと待ってましたっ!千両役者的な苗場山の登場にテンション上がること間違いなし!
ヤマレコでたくさんの人が、ここであまりの遠さに絶望するって書いてたけど、前回が赤石岳登山だったから、拍子抜けするほど近くに感じました。
とは言え、せっかく稼いだ標高を惜しげもなく下る。どんどん下る。
山頂から戻ってくる時のえげつない登り返しの事は考えないようにしましょう。
雷清水という水場です。ここでお昼に使う水を補給しておきます。
ちょろちょろしか出ないから1リットルためるのに10分近くかかりました。
とりあえず同行者には先に行ってもらいました。
やっと下りきりました。ここから山頂に向けてガツンと急坂を登る。同行者ははるか先です。
帰りの登り返しを考えて体力温存したいところですが、待たせると悪いので少しだけ急ぎます。
ファイナルカウントダウン、開始。
見た目以上に急です。ちょっととばしたらあっという間にバテました。しんどい。
やっぱり少し標高が高いから息が上がるのも早い。休み休み登りました。
空が近づいてきました。山頂だ!がんばれ!
登りきるとこれまで見たこともない広い広い高層湿原が広がってました!
2,100mを越える山でこの驚きの景色は、ここ最近の登山の中でもかなり上位に入ると思う。病み上がりを押して、頑張った甲斐あったよ!
これだから登山はやめられません。
なんとなく人の顔っぽい池塘。
その向こうにそびえる山々を見て初めてここが山頂だと確認できます。景色がくっきり見えるのは、秋になって空気が澄んできた証拠。
周辺の山の中では、ここ苗場山は高い方なんだけど、それでも見下ろすって感じじゃないのが少し意外です。
こんなだだっ広いところにもちゃんと山頂の標柱が立ってるそうなので、とりあえず行ってみましょう。
9:30 到着です!
山頂は林に囲まれて眺望ゼロです!
見てる方々がいましたが、気恥ずかしさゼロです!
ゼロです!
標柱のすぐ近くにある苗場山頂ヒュッテ。
雨じゃないし、今日は寄る必要はありませんね。
まだ9:40。時間は早いですが、ゆっくりお昼を食べて時間を使いましょう。
コーラと鴨だしそばとコーヒー。
山というトイレが少ない環境で、決してやってはいけない汁物のオンパレード。
北陸と東北の山は、絶対に秋を狙いたい。去年の秋に登った八海山も良かったです。
せっかくなので高層湿原を散策。周回コースがないから、赤湯方面にちょっと歩いてまた戻ってきます。
水面鏡の様に青空と白い雲を映し出す池塘。癒されまくりです。
少し風が吹いて同じ方向になびく草紅葉が綺麗すぎます。
こんなに真っ赤なツツジ、見たことあったかな。まさに完全燃焼って感じ。
ナナカマドの紅葉は3~5割ぐらいで、あともうちょっとって感じです。
見飽きることはないのですが、そろそろ、戻りましょうかね。
ハイマツのまつぼっくり。
変わった形をしてますよね。
本当にこれが見納めです。
こんなに名残惜しいと感じる登山は久しぶりだなぁ。
下山したくないない理由は、もう1つあって、
この登り返しがあるからだよ!
きゃー
登り返しに疲れたら、紅葉に目をそむけましょう。
紅葉のピークは1週間後ぐらいになりそうです。
必死に神楽ヶ峰を登りきれば、あとは和田小屋までひたすら下るだけ。
樹林帯に突入してからは、激すべりのぬかるんだトレイルに苦労しましたが、なんとか尻もちせずに下山できました。
和田小屋が見えてきたよ。ここの水場には有り難いことにブラシが置いてあってブーツや道具を洗うことができます。
雑に洗ってたら靴下まで濡らしちまったよ。
駐車場まで舗装路をとぼとぼと。一輪一輪はとても謙虚に咲いてますが、真っ白なウメバチソウが道路脇にずーっと群生して咲いてる姿は圧巻でした。
結局最後まで楽しめた苗場山。100点満点です。
下山後は宿場の湯に立ち寄りました。露天風呂は栓が抜かれて入れなかったのが残念でした。。次回は貝掛温泉にしよっと。
振り返って
祓川ルートの景色が次々と展開していく感じは、他の山にはない面白さがありました。
樹林帯を抜けて、まず最初に飛び込んでくるのが中ノ芝の紅葉、次に神楽ヶ峰辺りから眼下に見えてくる湯沢町と湖の景色、気持ちの良い横移動の先に現れる大きな苗場山、そして山頂の高層湿原。
飽きない!
山頂は、くどい様ですが鈴木牧之の「そこはまさに苗場だった」の世界です。
この言い回しいいですね。いろんな場面で使えそうです。
登山の良し悪しを左右するのは、断然天気です。当たり前ですが・・。
苗場山にいる登山客全員から、秋晴れに恵まれたことを喜んでいる高揚感が感じられます。
ところが、午後になるにつれて天気はどんどん良くなるという予報に反し、山頂付近は午後になるにつれ雲が増えてきました。
山頂のベンチで休んでいると徐々に陰ってきたので、日が差している池塘方面へ散策しに行くと、途端に人が減って本当に気持ちが良い。
山頂までの登りは長く感じられたけど、山頂で池塘や紅葉を眺めている時間は本当に短く感じる。
新潟方面、特に分水嶺周辺の山々ですっきりした晴れの日を狙うのはなかなか難しいです。予報が外れやすいので、行ってみないと分からない。
日が陰れば、もう山頂ではダウンが必要なぐらいに冷える季節になりました。
初心者におすすめの山として紹介されることが多い山なだけに、そこは同行する経験者が持ち物に配慮してあげた方が良いですね。
なんとしても晴れにこだわりたいから、自分は予めいくつかのエリアで登りたい山をピックアップしておき、直前に天気が良い山に変更することもあります。
それでもこのエリアだけは、やっぱり難しい。
最終的には、雨じゃないだけマシか、と割り切るしかありません。
そこはまさに山勘だった。
なんつって。
ではでは