空木岳と宝剣岳 紅葉登山(檜尾避難小屋泊) 極楽と地獄!中央アルプスの主脈は岩稜と紅葉の大絶景

空木岳と宝剣岳 紅葉登山(檜尾避難小屋泊) 極楽と地獄!中央アルプスの主脈は岩稜と紅葉の大絶景

睡眠時無呼吸の人がいる。いびきの大重奏が不規則なリズムで繰り返される夜の避難小屋。

先程までの雨音は止み、本来の静かな夜をつんざくいびき。おっ。誰だ寝っ屁したのは。

時間は22時を少し回ったぐらい。山では深夜と言っていい時間。避難小屋は定員を倍近くオーバーしており、非常に窮屈な姿勢で寝ているためか、自分は眠りが浅く、起きたり眠ったりを繰り返してゆっくり休むことができなかった。

そんな夜に事件は起きた。

ガタガタガタ。突然、扉を開ける音。

え?こんな時間に?だれ?

「我是…☓☓☓」「死んじゃう、外にいたら死んじゃう」と中国語と日本語が混ざった会話が聞こえてきた。

え?マジ?こんな時間に?どんな計画立ててんの?非常識過ぎる!

これ以上の受け入れは不可能だ!

 

 

どーもこにゃにゃちわ。やっほっほ亭です。

9月下旬、中央アルプスの宝剣岳〜空木岳(うつぎだけ)を縦走してきました。

1日目は木曽駒ヶ岳ロープウェイを利用し、千畳敷カールから宝剣岳へ登り檜尾避難小屋(ひのきお)で一泊。

2日目はいよいよ空木岳へ登頂し、駒石を見て池山尾根で下山する1泊2日の山旅さ。

 

木曽駒ヶ岳から空木岳へと伸びる稜線を歩けたらすっげー気持ち良いだろうなと、雨の日も雪の日もお漏らしした日もずーっと思いを馳せていたあたくし。

きっと空木岳への稜線は、乗越浄土から木曽駒ヶ岳へと続く広大な稜線と同じで、雄大で歩きやすい道が続いてるに違いない!そう夢見てた中央アルプスの縦走。

そんな淡い期待は見事に裏切られ?!繰り返されるアップダウンと手強い岩稜の波状攻撃に泣かされた。

なかなか歩きごたえのあるルートだったと先に申しておこう。。

とは言え、本当の中央アルプスを知ることができたんだし、満喫できた!

 

そんな楽しい縦走だった・・・

 

うーむ。もう避難小屋はこりごりだな…。

 

 

空木岳は標高2,864m。日本百名山、花の百名山。

さあ、色づき始めたアルプスの絶景が待ってるぜ!

いざっ

 

ルートとコースタイム

■2020年9月26日~27日 ※カッコ内は標準コースタイム。

千畳敷駅⇒(35分)⇒極楽平⇒(35分)⇒宝剣岳⇒(30分)⇒極楽平⇒(125分)⇒檜尾岳⇒(10分)⇒檜尾避難小屋⇒(10分)⇒檜尾岳⇒(60分)⇒熊沢岳⇒(55分)⇒東川岳⇒(25分)⇒木曽殿山荘⇒(90分)⇒空木岳⇒(10分)⇒駒峰ヒュッテ⇒(20分)⇒駒石⇒(155分)⇒水場⇒(75分)⇒林道終点⇒(80分)⇒菅の台バスセンター

コースタイム:13時間35分

総距離 22km
累積標高上り 1,520m
累積標高下り 3,320m

宝剣岳~空木岳登山

ガス垂れ込める菅の台バスセンターから快晴の千畳敷へ

菅の台バスセンターの駐車場。

9月下旬。登山客が最も増える最高の季節。駒ヶ岳ロープウェイも書き入れ時で、駐車場が埋まるのも早い。

 

バスとロープウェイを乗り継いで千畳敷駅まで、片道2,200円なーりー。

往復チケットを買って、のんびり木曽駒ヶ岳でゆるキャンするのもいいね。そんな時間的に余裕のある登山をしてみたいものだ。

 

第1便は混むから、わざとゆっくり起きて2便に乗り込む。

この判断が成功して、大して並ばずにバスに乗ることができた。

つか、すっげー曇り空。

 

ロープウェイを使ってガスの上にワープ。

一気に晴れた。

 

2,200円で池山尾根を登らずに済むなんて、有り難すぎて涙で景色が霞んで見えた。

 

さあ、着いた。標高2,612mの千畳敷駅

天候は晴れ。紅葉も始まってるらしい。

ええーい!これ以上の説明は不要!

大絶景が待ってる!!

 

それがこれだ!!

 

どどーーーーん!

スッゲェーーー!!!

想像を遥かに超えてきた!

こんな絶景に出会えるなんて(T_T)

登山やってて良かっただよ。

 

ん?なんだこの渋い字で「千畳敷」って書かれてるのは。

 

なんつってねー。

さては騙されちゃったね?さっそく。

ウケるー!

ポスターだぽ〜ん。

 

何回か通えばいつかこんな景色に出会えるのかもね。う~ん、いや出会えるわけないか。このポスターめちゃ画像加工してるもんね。

 

こんなポスターが貼ってある千畳敷駅には売店や水汲み場もあるので、ここで準備を整える。

 

かわええ。

「早く準備しろ!」

 

千畳敷カールから極楽平へ 登山開始

さっ。ここから始まる本日の登山。

中央アルプスと言えば毎度千畳敷からしか登山を開始したことがない。

こんな便利なところがあったらそうなっても仕方ないのだ。

 

地図があったから今日歩くルートを赤く塗ってみるよ。

千畳敷カールから極楽平に上り、そこでザックをデポして宝剣岳へ。再び極楽平に戻ってきたら檜尾避難小屋へ移動。

 

ゴクラク♫ゴクラク♫

早くゴクラクに浸りたい!と、ゴクラクから温泉しか想像できていない自分だけど、ともかく極楽平へ出発。

 

木曽駒ヶ岳方面でカールを登ったポイントにあるのが乗越浄土。2つ合わせて「極楽浄土」ってことなのねん。

いい名前だ!

 

極楽平に向けて登るのは初めてだから新鮮。

しかも予想以上に紅葉が始まってたのはラッキーだったな。

これで日が差してくれたらもっと綺麗なのに、登り始めを待ってたかの様に日は隠れた。

 

カールの中に建てられた千畳敷ホテル。左上に見えるのがこれから登る宝剣岳。

 

極楽平までは簡単なウオーミングアップ。

避難小屋泊だからそれなりに荷物は多くても、テントが無い分かなり楽に感じる。

 

夢にまで見た極楽浄土はガスが支配する世界だった。。

仕方ない。極楽から見放された男はここでザックをデポって険しい山で知られる宝剣岳へと向かう。

デポする自分を見て「なんだ、その手があったか!」と感心する他のパーティの方々がいたので「どこに泊まるんですか?」と聞いてみると、宝剣山荘でテント泊だって。

乗越浄土でザックをデポって宝剣岳に登り、それから木曽駒ヶ岳に行けば良かったって言いたかったのかな。

なんにしてものんびりした登山計画が羨ましい。

 

色づく千畳敷カールを見下ろしながらの宝剣岳登山

宝剣岳は岩稜なので鎖場が連続して出てくるけど、この時期はまだ凍ってるわけでもないし、難易度は高くはなかったよ。

つか、空身だし。

 

手前右側が宝剣岳。その左隣が中岳、そして更に左奥に木曽駒ヶ岳がそびえる。

 

宝剣岳の山頂に向けてガシガシ進む。ロープウェイで楽できた体は元気だ。疲れなんて微塵も感じない。

 

岩のトンネルで軽く頭をぶつけて星が飛んだ。

 

前回登った新潟の荒沢岳であれば、鎖なんて設置されてないだろうなってポイントでもバッチリ鎖は設置されてる。

さすが登山客が多いアルプスだね。

 

山頂の岩によじ登って宝剣岳コンプリート。

この後、この岩から下りるのにちと苦労した。

 

山頂からは木曽駒ヶ岳が一望できる。

宝剣から眺める木曽駒ヶ岳って低いなぁ〜と思ったんだけど、帰ってから標高を調べてみると宝剣岳って2,931mもあるんだね。

木曽駒ヶ岳が2,956mだから25mしか変わらんのねん。

 

さて、下山して極楽へ戻るぜと下を見れば、周りが嘘みたいにダイナミックな景色。

こ、こ、これがゴクラクか!

ゴクラク♫ゴクラク♫

極楽と聞いて温泉しか想像できなかった自分が恥ずかしい。足湯でもあるのかと期待した自分が恥ずかしい。半額シールを貼って歩くスーパーの店員の背後を追いかける自分が恥ずかしい。これにもシール貼ってよとおかわりを懇願する自分が恥ずかしくなる、

そんな大絶景だった。

 

岩稜と紅葉。恐ろしくなるぐらい深い秋色。

ガスが垂れ込めて雰囲気を醸し出してるのも良い感じだ!

まさに正真正銘のアルプスっていう景色におっさんも乙女チックにうっとり。

 

なんというか、心の奥に焼き付いてしまいそうな濃い紅葉色とでも言おうか。語彙力がなくてスミマセン。とにかく色が濃いのよ。

千畳敷カールの真ん中を見下ろしながら何度もつまづいたわ。ながらは駄目ね。

 

岩に刻まれる影が濃い。

今日持ってきたカメラはX-E1という一昔も二昔も前のカメラで、その頃の画像処理技術が未熟だったカメラだからこそ陰影が強く表現され、逆に惹きつける画作りにもなってるんだよね。

このカメラは癖もあるけど玩具みたいな楽しみがあって面白い。

 

例えば、これなんてらしい1枚。

普通に撮ったら暗くて使い物にならない写真になっちゃうから、露出だけは気をつけて。

このコントラストの濃い写真は初期ミラーレスカメラだからこそ出せる写真だと思う。

ちなみに自分の写真は全部JPEG撮って出しです。

千畳敷駅のポスターより個人的にはこっちの暗さの方が魅力を感じるな。

 

すっげー!とギャルばりに金切り声を上げながら、このダイナミックな光景に何度も何度も足を止めて写真を撮ってたよ。

右に見える山が三ノ沢岳。賑わってる稜線から外れたところにそびえてて孤高感があったよ。

 

千畳敷カールもそろそろ見納め。夢心地だった宝剣岳から極楽平への稜線歩きもそろそろ終わり。今振り返ってみても前半戦の最大の見どころだったな。

岩稜と紅葉。涸沢カールもそうだけどこの組み合わせはそんじょそこらの紅葉とは全く違って、圧倒的に惹きつけられるよね。

 

極楽平に戻ってきちゃったよ。

とりあえず最近の行動食でお気に入りになってる兵六餅を2つ食べて軽く腹ごしらえ。

 

ピノキオではなくひのきお避難小屋へ

極楽平からも素晴らしい稜線じゃないかっ!

ガスっちゃいるけど雨の心配はないし、ここを歩けるなんて最高だよ。

 

先程も紹介した三ノ沢岳。

あそこに向かっていく人もが何人かいたけど、主脈から外れた位置にあるから、きっと中央アルプスの中ににいながらにして全体を俯瞰できるような景色が見えるんだろうな。

 

むむむっ。やはり出てきたなアップダウン!であえであえー!!

この不届き者めー!

とこの急登に切り込み隊長の如く突進していく。

 

おえっ!おえぇ〜!

もはや呼吸が乱れるを通り越して、えずきが出るぐらいコテンパンにやられた。

くそっ。大したアップダウンなんて無いという根拠の無い先入観を自分にたっぷり仕込んでたから登りに免疫ができてなかった。

「ミライさん、悲しいけどこれ戦争なのよね」

 

疲れたから立ち止まって下から吹き上げる弱い風に体を冷やす。

天気予報は本日がくもり、明日は晴れ。明日に期待して今日は早く休もう。

 

色づき始めた紅葉。

コロナで手遅れた今年の登山。夏の始めは、もう夏かよ!!と春をすっとばして夏にジャンプしてしまった違和感に苛まれたけど、やっと最近になって季節のめぐりの早さに感覚が追いついてきた。

 

こんな痩せ尾根の通過もあるのか。

檜尾避難小屋は木曽駒ヶ岳と空木岳のちょうど中間にあるから、避難小屋とは言えとても人気のある小屋だと認識しておこう。

早く着かないとあっという間に定員に達っしちゃうから多少焦りはあるけど、それでも朝は早かったし、たぶん余裕で間に合うはず。

そんな訳でコースタイムと同じぐらいのペースで、汗をかかないように登る。

汗をかかないようにってのが不快さの軽減で大事なポイントだよね。

 

目の前に見えてきたピークが檜尾山

「ひのきお」と読むんだけど、読み方を忘れちゃいそうな人はピノキオと覚えるべし。

自分はそれで覚えた。つか、もうピノキオとしてでしか覚えてないからもう今更変えられない。

 

ピノキオに向けて一旦下る。

せっかく標高稼いだけど、もうすぐそこが本日最後のピークだと思うと威勢よく下ってやるぜ。

汗はかかないようにゆっくりたけど。

 

ヤマハハコももう終わりか。寂しいねぇ。

 

途中こんな完璧に整備されたところを通過する。

寝心地良さそうなところだけど、寝返りうったら極楽浄土に行ってるかもしれない。

 

見事なカール地形。遥か下には氷河の名残りを感じさせる様に沢が流れている。

 

山間にガスがたまって雲海を形成しつつ、上空を見れば高曇り。典型的な秋の天気だな。

素晴らしい秋晴れだった数年前の白峰三山縦走が思い出される。あんな快晴、なかなか巡ってこないよ。

 

明日がすっきり晴れてくれることを祈りながら、

ピノキオに向けてまだまだ前に下る。そろそろいい加減にしてけろ。

 

そして登る。

見た目ほど急な上りじゃなくて助かった。

 

12:00

ピノキオ岳の山頂に到着。残念ながら眺望はガス。

極楽平からここまでバツバツ時間。1日目は余裕なプラン。明日は長丁場になるから覚悟おしっ!

 

さて、いつまでもガスはかり眺めてらんないぜ、っつー訳で、まずは避難小屋の場所を確保しに行きまひょ。

山頂から避難小屋までたったの0.6キロ。

 

シラタマノキ

 

本日泊まる帝国ホテルが見えてきた。

すっげー立地条件良いな。

 

事件は檜尾避難小屋で起きている

12:10

ピノキオ避難小屋の中は静か。もしかして1番手だったかいな。

着いたら端っこゲットしよっと。

ルンルン♫

 

マジかいや!!!

 

着いたときには既に10人。つか、定員10名の避難小屋に10人のパーティが占拠するという異常な事態。

まあ快く自分の場所は譲ってもらったけど、10人で行動するなら計画的に有人小屋かテント泊してくれないと困るわ。それが何名からなら許されるか?っていう線引きは難しいけど、10人ってのはさすがに非常識だろぉ〜。

いや、びっくりした。

 

とりあえず、癒される味で落ち着かせよう。

 

その後もぞろぞろと避難小屋にやって来る登山客の数は絶えず、場所がないと言ってうなだれて下山していく人がいたり、予め混むことを予想してテントを持ってきてる人もいたり。

そんな帰っていく人と水場の近くで会ったから少し話したけど、「まあ良い運動になりましたよ!」と開き直った様子が男らしくて格好良かったな。

この日、結局小屋の周りに10張ぐらいテントが立ってたんじゃないかな。

 

夕日を見にピノキオの山頂まで散歩に行ってみる。空木岳にかかっていたガスも晴れてきた。

 

駒ヶ根市街地が見える。青空もでてくれた。

 

檜尾岳山頂。

立派な標柱が夕日に染まる。

 

風は冷たかったけど、暗くなるまでこの景色が名残惜しくてしばらく見とれてた。

フリースの手袋がなかったら山頂で長居することはできなかっただろうな。もうすっかり秋だね。

この日は超過密な小屋に戻って、ご飯を食べて19時前にはとっとと就寝しちゃいました〜。

 

おしまい

 

いやいや、ここからなのよ。

 

小屋の中が定員10名に対し16人という超3密な状態の中、さすがにもう誰も来ないよなと全員がそう思って寝静まった山の夜。そして夜22時を少し回った頃。

ガタガタガタ。突然、扉を開けようとする音。

え?こんな時間に?だれ?

「我是…☓☓☓」「死んじゃう、外にいたら死んじゃう」と中国語と日本語が混ざった会話が聞こえてきた。

こんな時間に?どんな計画立ててんの?非常識過ぎる。

定員を完全にオーバーした避難小屋。これ以上の受け入れは不可能だ。

扉を開け、あまりの過密ぶりにびっくりする非常識な方々。どうしようかと作戦会議をしに一旦外に出たのは良いけどその時の声が大きすぎる。あれではテン場の人達、全員目を覚ましてしまう。

結局、土間のスペースを片付けて座って寝る事にした模様。人のブーツを踏みつけながら。

まあそれはいい。それでもスペースを確保できただけラッキーだよ。しかし、あまりに軽率な登山計画の立て方に腹が立つ。文句の1つでも言ってやりたいが、それ以上に関わりを持ちたくなかったというのが、正直な気持ち。

とにかく自分が最優先させることは休むこと。明日の行動に支障がでてはいけない。必死に休むことに努めた。

大阪から来たという4人組が早出するため深夜3時前に出ていった。自分はそれまで何度も寝たり起きたりを繰り返してたからあまり休んだ感じはしない。

その4人が出ていって、空いたスペースに土間で休んでいた例の5人がやってきた。当然さっきより過密さを増す。

非常識な方々。足が寝ていた自分の頭に当たる。これではとてもじゃないが寝ていられない。

すかさず10名という大人数で避難小屋を陣取ったパーティのリーダーが、避難小屋は先着順だから、自分達ももうすぐ出立するから少し待てないか、という話をした。なかなか行動力のあるリーダーで立派だ。

でもどっちもどっちだ。避難小屋に泊まれず、諦めて下山してった人達の顔が浮かぶ。

雪倉岳の避難小屋がそうだけど、避難小屋に計画的に宿泊してはならないと公然に注意を促す小屋もある。

書いてる自分ももちろんおかしい。この矛盾を抱え悶々とする。ふーむ、とにかくこれ以上眠ることは不可能だ。

荷物をまとめてまだ真っ暗な中、出発することに決めた。

不機嫌なままだとつまらない。悩んでいても解決しない。

せっかくの山だ。不満は後回しにして腹をくくろう。この時そう思えた事が自分を救った。

非常識な方々だとは思うが、疲れ切った彼らの顔を見るとなんとも可愛そうだ。リーダーは日本人か?リーダーだけの責任ではないが、命を背負ってる自覚が足りないことに腹は立つが、なんにしても全員無事だったのは幸いだったね。。

 

夜明け前、ヘッデン歩行開始

3:50

遥か眼下には駒ヶ根の街の夜景が。

腹をくくったのは良いけど、日の出までまだ2時間近くある。ヘッデン歩行は道を間違えやすい。慎重に進もう。

しかしもう避難小屋はこりごりだ。

もうテントか有人小屋にしか泊まらないと固く誓った。

さあ、2日目のスタート!

 

やっと白んできた。

歩き始めはルートが鮮明でヘッデン歩行でも困らなかったんだけど、この写真のところでつまづいた。ルートを見つけられず右往左往してる様子がこれだ。

そんなルートファインディングに集中する中、あちきは一人、違う戦いをしていたのだった。

「つ、つめてぇー!!」

修復したはずのハイドレーションに再び穴が空き、ザックはびっちょり、おケツはパンツまで水浸しになっていたのだ。

気温は10℃を少し下回るぐらいだろうか。

あかん!風邪引いてまう!と慌ててザックからハイドレーションを剥ぎ取り、中の水を捨てる。

あと1ヶ月後だったらおけつの凍傷という不名誉をさらすところだったぜ、あぶねぇあぶねぇと言いつつ、絞れるぐらいにびちゃびちゃになったズボンでこの先進まなくてはいけない。

勢い余ってハイドレーションの中の水を全て捨ててしまったが、飲み物はナルゲンに入れたスポーツドリンクとコーラであと1リットルしかない。木曽殿小屋で水だけ買えばきっと繋がるけど、軽率な行動が悔やまれる。くそっ。

あとは、いかに早く乾いてくれるかだ。

体温を燃やして自力で乾かす!

おケツに念力集中ピキピキどかーん!だ。

 

話は戻して、みんながルートファインディングしてる間、そんな決意を固めていたのだった。

まったくもって情けない。

 

右往左往した理由は暗かったからこのホールドを見つけられなかった訳よ。

少し明るくなってきたら見つかったんだけどね。

ヘッデン歩行は難しいね。

 

そんな難所をクリアし、おけつを濡らしたまま熊沢岳の山頂へ。

ピノキオをスタートしてから、空木岳へは2つピークを越えていかなくてはいけないんだけど、やっと1つ目。コースタイムの倍かかったよ。

 

日の出と青空の空木岳への縦走路

5:55

熊沢岳に到着。

暗い中を歩いてきて疲れたけど、YAMAPで歩いてきた軌跡を確認したらピノキオからそれほど進んでいないことにちょっとガッカリ。

 

昨夜は雨が降って寒暖差が生じたから、見事な雲海が広がった。

朝が冷える秋は雲海や滝雲が見られるチャンスがぐっと増える。

 

これだけ明るくなれば、もはやヘッデンは不要だぜ!

明るくなってきたからこそ、俺のおけつがびちょびちょなのは周りからも一目瞭然。

あ、今の人お尻だけ湿ってた…と囁かれてないか気が気でない。

天気は良くなりそうだし、目立つな。

 

風車の様なキノコ見っけ。

 

少しずつ近づいてきた空木岳。

おとなしくハイドレーションを買い直すべきか?これからハイドレーションが凍る季節に突入するし、来年の春までに決めればいっか。

どうやって資金を捻出するか。いつも自分を納得させる殺し文句は、下戸で酒代がかからないんだからそれぐらい許されるだろ、だ!

 

ハイマツが登山道にせり出してるから朝露でズボンがびちゃびちゃ。

 

熊沢岳の手前の岩稜がちょっと難しかったけど、そこさえ過ぎてしまえば歩きやすい稜線が続く。

 

うーん。いい山だ!

 

振り返った熊沢岳と檜尾岳方面。肉眼ではピノキオ避難小屋もよく見えた。

あの中国人御一行はまだ眠ってるんだろうな。

 

今回の旅で一番気持ちの良い稜線歩き。

日の出の時間もばっちり。この時間にここを歩くために縦走を選択した様なもんだなと思えた。

 

青空が広がってきた。分かりにくいけどこっちは名古屋方面。

夜のうちは名古屋の街が光り輝いてて一目瞭然だったけど、明るくなるとさっぱり分からないね。

午後からはあいにく雨になるみたいだし、この時間の青空は超貴重だ。

 

そして御嶽山。

あの悲しい噴火から今年で6年も経ったのが信じられない。。時が経つのは早い。

 

7:15 絶景を見渡しながら歩いてたらあっという間に東川岳に到着。

日が出てしまえば疲れも半減。体力的には余裕さ。

 

ピノキオを振り返ると遥か遠くに宝剣岳が見える。

宝剣岳って千畳敷カールから見上げた時、あんなのがそんなに有名なわけ?って魅力を感じる様な山ではなかったんだけど、少し離れてみると剣先が異様に目立ち、これだけ注目される理由が少しだけ分かった気がした。

 

東川岳から空木岳へ、一旦ガツンと下る。

ショックのあまり失禁するとこだったぜ。

メッシュのパンツに速乾性のズボンだったのが幸いし、気付けばもうかなり乾いてた。なのにまた濡らすなんてごめんだ。

 

恐ろしい登り返しが目の前に立ちはだかる。

目を背けたいけど、邪魔する物がなく現実逃避できない。なんのために山登りしてんだかね。

 

7:40

激しく標高を下げたところにあるのが木曽殿山荘(きそどのさんそう)。

う〜寒い!ここで何か温かい食事でも摂りたかったけど、この時間は売店だけとの事で水のペットボトルを購入。

ご主人がちょっと素っ気無く感じたけどシャイなのだろうか。

 

購入した水でお湯を沸かしてベーコントマトリゾッタをいただく。

しかし、なかなか沸騰しない。気温が低過ぎるからか?

ん?違う!違うぞ!

ガス缶が切れとーやん!

うぐっ

冷たい。。リゾッタが冷たい。。

ふーふー、ほふっ、ほふっと熱々のリゾッタを夢見て腹空かせてたっつーのに!まさかの展開だ。。

しかも、写真の通り木曽殿山荘が空木岳によって巨大な影にすっぽり覆われるという冷凍庫状態。

あかーん、完全に体が冷え切った。体の震えが止まらない。

涙なのか何なのか。木曽殿山荘で流れる鼻水が止まらない。

 

冷え切った体を暖めるには登るのが一番手っ取り早い。

9月下旬のアルプスは東京の冬ともはや変わらない。

鼻が完全に決壊した。鼻水が止まらなくなり、面倒くさくなって途中から拭くのをやめた。

 

岩稜が剥き出しになってきた空木岳。ここまでの縦走路で散々味わってきたけど、この険しい岩稜帯こそ正真正銘の中央アルプスの姿なんだと思った。木曽駒ヶ岳しか歩いてなかったら知らなかった世界だな。

それにしても寒い。まだまだ日陰だわさ。

 

標高を上げるとお目見え。やっとだよ。

 

ああ、太陽よ。あなたは偉大だ。

おけつもだいぶ乾いたよ。

 

8時を過ぎて力を増す太陽の光。

冷え切った空気が徐々に温められていく。自分の濃い影ができるのもなんと幸せなことか。

 

澄み渡る青空。予報では午後に雨が降るみたいだけどほんとか?最高の1日になりそうだけど。

まあ先に言っちゃうけど、最後の最後で猛烈な豪雨となる…。。

 

山頂に近づくと石灰岩が増えてきた。

 

おお、山頂は目の前だ!

耐え難きおけつの大洪水にも耐え、忍び難き夜中の訪問客にも忍び、ゴールはいよいよ目の前だ!

 

ええっ!第1ピークだと!

うーん、つまり偽ピークってことね。

こういう山はシンプルにドーンと山頂が出迎えてくれるべきだよね。ガッカリだよ…。

 

正真正銘、本ピークはあそこじゃ!

あれこそが朕が望むところぞ!皆のもの進むのじゃ!

これで第2ピークとかいうオチだったら人間不信になるかもしれない。

 

南駒ヶ岳はさすがの貫禄だね。

深Qが空木岳とどちらを百名山にするか最後まで悩んだだけある。

 

第1ピークから本ピークまで一旦下って登り返す。ここまで何度それを繰り返してきたか。これが最後の登りであって欲しい。

 

賑わう空木岳と駒峰ヒュッテでの癒しの時間

9:20 とうとう朕は空木岳山頂に立つじょ!

持ち前のケツ熱により今やオケツはさらさらだ。人目を気にする必要がない幸せ。ひとしおぞ!

 

南駒ヶ岳へと続く稜線がとにかく素晴らしかった。

南駒ヶ岳も登りたい山の1つだし、ヤマレコを見るとついでに登っちゃう超人がいるけど、自分は欲張ったりはしない。もう限界だからまた今度ね。

そしてこの後、南駒ヶ岳はゆっくりとガスにのまれていくのだった。

 

コロナ影響で今年は閉鎖された駒峰ヒュッテがすぐ下に見える。そして今まさに沸き立つ雲がヒュッテに覆いかぶさろうとしてる。

急に気温が上がったからか、ガスの上るスビードが早すぎる。

 

池山尾根を登ってきたトレランの方々で大賑わいの山頂。超人の方々。

これから池山尾根を下るけど、先に感想を言っちゃうと、この尾根をピストンするのはなかなかしびれるよ。黒戸尾根と似てる。

 

山頂でドローンを飛ばすご満悦な登山客を尻目に下山開始。

というかね、山頂が賑わいすぎてて、静かになりたかったから駒峰ヒュッテに一時避難するんだよ。

ドローンの音ってうるさいしね。

 

駒峰ヒュッテからは空木岳の山頂が目の前。

この小屋に泊まれたらどれだけ良かったことか。

 

今年は締め切った状態の駒峰ヒュッテ。

 

そんな駒峰ヒュッテのテラスは貸し切り状態。

これまで歩いてきた足を労ってあげて、30分ほど休んだ。

休憩中は池山尾根を登ってくる数人から、どのルートを歩いてきたのか?避難小屋の混み具合はどうだった?とかいろいろ聞かれたけど、みんなピノキオの混み具合が気になるんだね。

昨晩の悲惨な状態を説明すると顔をしかめてたな。

ピノキオは立地的に人気があるのはよく分かったけど、千畳敷から1日で空木岳まで縦走して駒峰ヒュッテか空木避難小屋まで頑張って歩くことを薦めるよ。

もう自分はもう避難小屋はこりごりだけどね。。

 

駒石と紅葉と長い長い池山尾根でゲッザーン

長ーく空木岳を満喫できた。

ガスが空木岳山頂を隠したり見せたりしてる微妙な感じになってきたところで下山開始。

駒峰ヒュッテからは駒石経由のルートと、空木避難小屋経由の2ルートに分かれるんだけど、ここの名物の駒石を見物しない訳にはいかない。

 

ゴルフ場の芝生みたいなハイマツ帯。左へ強いスライスだなと、ここでグリーンを読んだのは世界中で自分が初めてだろうね。

ゴルフみたいな高尚な遊びしたことないけど。

 

なんて気持ちの良い尾根道。

池山尾根で登った人は、長い長い樹林帯を超えた果てにこの光景が広がった時の達成感は凄まじいだろうな。

そう思うとやはり一度は池山尾根のピストンは歩いてみた方が良いかもしれない。

 

見納めかな。

さらば、空木岳。

 

そしてこちらが名物の駒石。どどーん。

 

駒石には上ることも可能だからわんぱくな方はぜひチャレンジしてみておくれ。

最初、裏に回って登ろうとしたら難しくて撃沈したけど、表側からだったら楽々登れたよ。たぶん女性でも大丈夫だと思う。

 

いよいよ池山尾根の樹林帯へ。

色付き始めた紅葉の下山道。

 

秋らしさは期待してなかったたけにサプライズがいっぱい。

 

見納めだと思っていた空木岳。

駒石とのツーショット撮影に成功。

改めて池山尾根で登ったら景色がドラマチックだろうなと思った。人気の理由が分かったよ。

 

ゴゼンタチバナの実。

 

延々と続く下山路。特に危ないところは出てこないんだけど、何箇所か鎖場を通過。

 

迷い尾根。

しんどくて休憩を取る頻度も増えてきた。太ももの筋力が辛くて踏ん張りがきかなくなってきた。

 

それでも植生がハイマツからカエデなどの落葉樹エリアからシラビソ、そしてブナへと変化していく様子は楽しい。

長い長い樹林帯の数少ない楽しみ。

 

ああ、なんかゴールが近くなってきた感じ。

池山には登らないけどここは池山方面へ。

 

先程のの分岐から100mぐらいのところにある水場。

水を切らしかけて大事に飲んできたからここで貪った。

これで水はOK!となった途端、弱い雨が降り出すという奇跡。ちっ、やっぱツイてないぜと、疲れた体に鞭を打ってペースアップ。

 

水場からはしばらく横移動。

ペース速い4人が(トレランかな?)、「えーっと確か近道は、あったあったここだ」と、次の分岐でうっすら踏み跡が残る藪の中に突入していくのを見て「着いてっていいですか?」と声をかけてあとを追跡。

 

それがこの道。踏み跡がうっすらだったのは最初だけで、途中から普通のトレイルに変わる。くねくね林道を歩くのではなく、直滑降で下れてトイレの裏にでるラッキーなショートカットルートだった。

やっぱツイてるのか?

でももう疲れた。

 

14:15 池山駐車場。

ここから菅の台まで、あと1時間ぐらい。意外とまだあったのね。。

 

さすがに疲れてもう歩けないよ、と言っている。

 

14:30

足を使い果たしてブレーキが壊れた状態で駆け下りる様に戻ってきたから時間的には短縮できた。

菅の台バス停に着いた頃には今にも雨が降りそうで、こりゃやばいなと思ってたら豪雨が襲ってきた。間一髪。

やっぱ俺ツイてんな。

あの近道を知らなかったら、完全にアウトだったし。あの4人組にはほんと感謝だよ。このブログ見てくれてるだろうか。見るわけ無いか。

 

前に止まってる軽自動車の上を見てみな!

虹がかかった。

やっぱ俺ツイてんな。

温泉は菅の台バスセンターのすぐ近くの駒の湯へ。

駒ヶ根名物のソースカツ丼にも惹かれたけど、いつも通り、コンビニで焼き鳥を買ってのんびり小諸まで中山道で帰った。

あの中国人たち、いい加減起きただろうか?

 

振り返って

これまで木曽駒ヶ岳と恵那山にしか登ったことがなかった中央アルプスだけど、やっと主峰が立ち並ぶエリアを縦走できてサイコーの2日間になったよ!

避難小屋で痛い目にあったけどね。

意外とアップダウンが多く、気が抜けない岩場の通過もあったりと、地図を眺めて勝手に妄想していた雄大で歩きやすい稜線歩きとは遥かに違った。

これが中央アルプスってやつか!

と、一筋縄ではいかないあたり、やっぱりアルプスだったわけで、

考えが甘かった。。

 

最初、空木岳は池山尾根のピストンで登ろうかと思ってたんだけど、甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根と似てかなりの満腹コース。標高差は1,700m。

今回は下りだけにしたけど、池山尾根のピストンにしなくて良かったと心底思った。そんなヘタレです、あたしゃ。

そんな池山尾根だけど、実は人気のルートらしく、登山客が多くてしこたま驚いたし、中には子供もいたりして敗北感に打ちひしがれたよ。この尾根を登る人は偉いよ、ほんと。

 

帰りは東の空にかかる虹を眺め、いつもと変わらず美味いコンビニの焼き鳥で腹を満たし、またいつか南駒ヶ岳に登りに来れる日を楽しみに駒ヶ根を後にしました。

ではでは


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