今回は燧ヶ岳(ひうちがたけ)に登って、尾瀬ヶ原を散策してきました。
標高は2,356m。日本百名山で東北地方最高峰のこの山は、群馬県側の至仏山と尾瀬ヶ原を挟んで対峙し、尾瀬のシンボル的な山となってます。
燧ヶ岳と至仏山のどちらに登ろうか、または欲張って両方登ってしまおうか悩みましたが、知り合いから「燧ヶ岳の方が大変だから、先に燧ヶ岳から登って、それから考えたほうが良いよ」とアドバイスをもらったので、とりあえず燧ヶ岳を優先に考えつつ、最終判断は現地についてから気分で決めようと思ってました。
呑気なソロハイク。結果的に今回は1座だけ登って、のんびり山で過ごす1日を楽しむことにしました。
9月初旬の尾瀬は、山はまだ青々とし、尾瀬ヶ原も草紅葉への準備段階ということもあって、観光客が少ない穴場の時期です。
とても心地よい気候の中、時おり尾瀬ヶ原を抜ける秋風に夏の終わりの寂しさを感じながら旅してきました。
どすこいっ。
圧倒的な存在感でたたずむ燧ヶ岳を眺めながら、広大な尾瀬ヶ原を漫遊闊歩〜
アクセス方法
・会津高原尾瀬口からバスで沼山峠へ
・尾瀬夜行23:55はこちら
■ルート
※9月3日 沼山峠から見晴~燧ヶ岳~尾瀬ヶ原散策のログです。9月4日の見晴~尾瀬沼~沼山峠のログは記載しておりません。
■全行程スケジュール 2016年9月3日~4日
■9月3日
6:30 沼山峠(朝食) ⇒ 6:50 沼山峠登山口 ⇒ 9:30 燧小屋 ⇒ 10:30 見晴新道登山口 ⇒ 12:40 山頂 ⇒ 13:40 下山開始 ⇒ 15:12 下山終了 ⇒ 15:50 尾瀬ヶ原散策開始 ⇒ 18:00 散策終了
■9月4日
7:00 燧小屋から沼山峠に向け移動開始 ⇒ 9:00 尾瀬沼で休憩(30分) ⇒ 10:20 沼山峠
東武が企画している「尾瀬夜行23:55」という夜行電車とバスを乗り継いで尾瀬に行けるプランに申し込みました。
その名の通り、浅草発23:55の電車に乗り、3:50に会津高原尾瀬口駅着。そこからバスに乗り換えて約2時間半で沼山峠に到着します。
気になる混雑状況ですが、こんな感じで車内はガラガラです。
予約の申し込み期限は出発当日の17時で、自分が予約したのはぎりぎりのタイミングでしたが、まだ260席空きがあります、と言っておりました。
3:50 会津高原尾瀬口駅に着きました。すごく寒いです。
リクライニングができない座席だったので、二人分の座席に横になって寝ました。
電車はバスと違い、アクセルやブレーキを多用しない分、寝心地良かったです。
バスで約2時間半の移動です。冷え込んでたのでダウンを着込みます。
移動中はなんだかんだで3〜4時間は眠れました。バッチリです。
コンサート終盤のバラードを聴く客の様に、大きく手を振りバスを誘導するおじさん。
会津バスのラストギグスです。
6:10 沼山峠に着きました。
ここの案内所の前のベンチで朝食とトイレを済ませて出発です。
沼山峠は標高1,700m。尾瀬ヶ原が1,400mなので、ここからなだらかに下っていきます。
逆に帰りは登りになるから、最終日は余裕をもって行動してくださいね。
登る。
あれ、下るんじゃなかったのか?
快心のピーカンです!
前日の予報で、至仏山は曇時々雨、燧ヶ岳は晴れ後曇りでした。
近い山なのに全然予報が違うのが不思議だ。
もともと、どこも天気が安定しない週末だったので、今回は雨になっても湿原が綺麗だろうと思って尾瀬に決めましたが、まさかこんなに晴れるなんて、感激です。
で、この先から、
どどーん、と湿原が広がります。
尾瀬ヶ原はまだずーっと先ですが、早くも湿原が始まる尾瀬の広大さに驚きます。
沼山峠からテン場がある尾瀬ヶ原の見晴までは約10キロ。
今回も荷物が重いし、休み休みいきますよー
夏の終わりに咲き始めるウメバチソウ。
小川のゆるやかな流れになびく水草をぼーっと眺めながら休憩。
最近は職場で周りの人が代わる代わる休むもんだから、その代行業務に追われクタクタでした。
今回はゆっくり時間が流れる贅沢な過ごし方をしたいわー
おおっ、振り返ると圧倒的な存在感の燧ヶ岳!
火山だけあって独立した姿がカッコいい!隆起してできた至仏山とは大違いです。
この姿を見たら、がぜん登山意欲が湧いてきました。待ってやがれ!
ま、この重い荷物を置いてからね。
のんびりのんびり。
近づいてくる尾瀬沼。とても爽快なトレッキングです。
尾瀬沼や尾瀬ヶ原は、燧ケ岳の山体崩壊で川がせき止められたことによって誕生しました。
すぐ近くの磐梯山も明治時代の大規模な山体崩壊で五色沼が誕生したということをブラタモリを見て知りました。
長英新道の登山口です。
この長英新道は、燧ヶ岳を開山した長蔵小屋の主人とその二代目が切り開いた登山道で、4つある登山道の中では標高差が少なく、御池ルートと並んで登りやすいと評判です。
燧ヶ岳の名の由来は、火山なだけに「火打」からついたそうです。
その威風堂々たる存在感は至仏山をはるかに凌駕してます。
尾瀬の起源を考えても、やっぱ今日登るなら燧ヶ岳だな。
尾瀬沼を眺めながら、ここでもしばし休憩。きもちいいー。
センモウゴケを発見。食虫植物です。
湿原でたくさん見つかります。探してみて下さいね(^_^)v
水が豊富なので日陰で育つコケが美しい。
今でもトリカブトを見ると独眼流が真っ先に思い浮かぶ。そんな世代です。
気分最高だぜー
年甲斐もないですが、今日はたくさん自撮りして遊ぼっと。
立ち枯れた木を見ながら、樹林帯を歩いていくと
さあ、やっと着いた。ここを左に曲がれば燧小屋キャンプ場です。
重かった荷物ともおさらば~。
まずは燧小屋でテントの受付を済ませます。
幕営料は500円。
燧小屋の売店は20時まで。17:30~19:00までなら500円でお風呂にも入れる、とても快適なテン場です。
100張可能なテン場はまだがらがら。朝の9:30ですからね(‘ω’)ノ
西日に傾いた時に日陰になって、それでいて平な場所、いくらでも空いてます(笑)
こんな特等席に張らせていただきました。
サブザックに持ち替えて、早速燧ヶ岳へ向けて移動開始です。
トイレはなんと水洗です。洋式のとてもきれいなトイレでした。
無料休憩所も完備。ここは天国や~。。
九重の坊ガツルと並ぶ快適さです。
さて、見晴新道の登山口に着きました。
土石流で長年通行止めでしたが、つい1ヶ月前に開通したばかり。
そのためまだ踏み固められてないので、下山では使用しないで下さいと注意書がでてました。
ゆるやかなトレイルに見えますが、これは最初だけ。山頂まで標高差1,000mの急坂をひたすら登ります。
4つある登山道の中で、見晴新道が最も標高差があり、しかもトレイルは荒れてます。玄人向きです。
悪いことは言わないので、家族や恋人と楽しく登りたいなら御池ルートか長英新道をご利用ください。
ここ最近ずっと晴れてたのに水浸し。雨だったら一体どうなってしまうんだろう。
こういう何メートル登ったか目安になる表示はほんとありがたいです。
ただ、しばらく200mおきに出ていたものが前触れなしに現れなくなるパターンはマジ勘弁。
所々ひどいぬかるみ。。トレランシューズだと一発退場です。
せっかく開拓してくれた見晴新道ですから、踏み固めに協力してあげたいけど、ムリムリ。
ドロドロの急坂。こりゃ下山は相当大変です。
長い長い樹林帯からやっと山頂をとらえました。
テント泊装備で10キロ歩いた疲労もあり、バテてきました。
黒戸尾根、早月尾根を登った自信から、標高差1,000mぐらい軽いと甘く見てました。
反省(T_T)
やっと森林限界が近付いてきた感じ。
この登りごたえは甲武信ヶ岳を思い出します。
長かった樹林帯を抜けると、途端に下の方から吹き上げる風を感じ、やっと一息つけます。
人の少ないトレイルなので、雄大な尾瀬ヶ原の眺めを一人占め。
てんきとくらすで曇りの予報だった至仏山。こっちが晴れてるのに、ほんとに向こうだけ曇ってるのには驚きました。
あとちょっとで山頂だと思ってからが長い。ハイマツが生い茂るガレ場を息を切らして頑張ります。
ちなみにここから見えてるのは偽ピークでした(T_T)
ゲゲッ。振り返るとプカプカと雲が山頂めがけて流れてくるよっ!
完全に息が上がってしまい、急ぎたいけど急げない。先ほどのニセピークに精神的にやられちまった。
もう雲に巻かれてもいいや、とすぐ諦めてしまう性格。
12:40 山頂に着きました。ほんの少しガスってる程度。
燧ヶ岳は5つのピークがあり、その中でもここ柴安嵓(しばやすぐら)が最高峰。それと三角点が置かれている爼嵓(まないたぐら)が主ピークとなってます。
なんだこの墓石は! 😇 南無~。
ハイセンス過ぎて言葉を失いました。。
そういえば伊豆ヶ岳の山頂もこんな標識だったなぁ。流行ってるんでしょうかね。
墓石に手を合わせた写真を撮りたかったのですが、ギャラリーが多くて恥ずかしさに屈しました。
至仏山は朝からずっと雲の中。
あっちに登らなくて良かった。
尾瀬沼もよく見えます。
ちなみに、日光の男体山は登りはじめから山頂まで、ずっと中禅寺湖の姿を確認しながら登れますが、この山はピークに立つまで一切尾瀬沼の姿を見ることができません。そこがこの山のいじらしいところですね。
あっちが三角点のある爼嵓(まないたぐら)。標高は柴安嵓より10m低い2,346mです。面倒なので今回は寄りません。
長英新道だとまず爼嵓のピークに案内されます。
至仏山方面に向かって仏のポーズ。
股関節が硬すぎてまともにあぐらがかけねえっす。
何をするわけでもなく、1時間ほど馬鹿みたいにぼーっとしてました。
さて、下山します。
登りで見晴新道がどんな状態か確認できたし、ここは踏み固めに一肌脱ぎますか!ピストンです!
この斜面を見てると、8000年前に思いを馳せて、どんな山体崩壊が起きたのか想像を広げてしまいます。
明治時代に山体崩壊を起こしたという磐梯山にも早く登ってみたいです。
底の薄い靴だと刈り取ったばかりの笹の茎が突き刺さりそうな怖さがあって、ここら辺は超慎重に歩きました。
尻餅つくとおケツに突き刺さること間違いなしです。
気を付けましょうね。
木漏れ日が射す静かな森の中、大仏ポーズで自撮り。
念入りに人がいないことを確認してから犯行におよびました(‘ω’)ノ
最後はトレイルが滝の様でしたが、なんとか無事に下山することができました。
テン場に戻ると、自分のテントの周りを5張のパーティーが取り囲むという状況に嫌な予感。
早くも宴会の話題で盛り上がってるし、静かな夜を楽しみにしてたのに台無しかな。。
見るからにマナー悪そうだし、タバコ吸ってるし、テンションだだ下がりです💩
しばらく休んでから、頭を切り替えて尾瀬ヶ原の散歩に出掛けましょうかね。
目の前に見える至仏山の登山口まで歩いてみようかな。
誰もいない。
振り返るとたった今下山してきた燧ヶ岳。
見事なたたずまいです。
前も後ろも誰もいない。
ミズギク。
たんぽぽじゃないよ😃
群馬県と福島県の県境。
ここまで外人2人とすれちがっただけ。
えっとらおっちら。
渋滞することで知られる尾瀬ヶ原において、今、見渡すかぎり自分一人しかいないという事実に、
おっさんの闘志に火がつきました
どりゃっーー!
木道が殺人的に滑りますが、どんなもんじゃい。
こうやって人の往来を止めることだってできます。
これやって軽くあばらを痛めました。アホなことしたと後悔(^○^)
至仏山もやっと晴れました。気分爽快。
おっ、イワナかな?
美味そうだぞ。
美味そうだな。。
たぶんヒバリ。前に近所で見たことがあります。
ミツガシワ。
こちらはなんと6~7月に見頃を迎える花です。9月初旬の尾瀬は静かですし意外さを楽しめます。
天気は安定しませんが。。
これは全国的に有名。イワショウブ。
たぶん、鷹。
西に傾く日差しに照らされて、黄金に輝くシダの群生は壮観です。
もうかれこれ25キロ以上歩いてるんで、さすがに少し疲れてきました。
たくさん歩いたら無性にお米が食べたくなりました。インスタントラーメンじゃ物足りないなぁ、帰って山小屋の食堂でお米食べよっと。
ひのえまた小屋の食堂でカレー大盛りを頼みました。
底が深い皿なので本当に大盛りで大満足です!美味かったです。
店員のお姉さんが忙しそうでしたが、笑顔の対応がとてもグッドでした。
19:00ですっかり夜です。日が短くなるスピードに感覚が追いつきません。。
おはようございます。
朝の4:30です。
まだ薄暗い中、誰もいない尾瀬ヶ原を歩き、燧ヶ岳の後ろから登る朝日を待ちます。
燧ケ岳のシルエットがとてもきれいです。
きっと美しい朝日が顔を出してくれるはず。期待がふくらみます。
空が白みがかり、徐々に明るくなって、そのままぼんやり明るくなりました。なんじゃそりゃ。
真っ赤な朝日を期待してましたが、まんまと裏切られました。
テントを撤収して沼山峠へ帰ります。約10キロの道のりを標高差300m登っていくので、時間に余裕をみて出発してください。
10:45のバスに乗るため、7:00に出発。
岩陰に隠れてたヒキガエル。
帰って調べてみると、ヒキガエルは10年ほど生きる長寿のカエルらしいです。
燧ヶ岳も見納めです。ありがとうと言いたい。
ありがとーー!!
またきっと来るよ!でも次は御池ルートで!
さらば!
ザック背負ってないとこんなに体が軽いのかと嬉しくなってしまう。
人がいないんで、やりたい放題ですよ
( `・∀・´)ノ ヨロシクー
オニヤンマの産卵シーン、どアップ。
いくつになってもオニヤンマは男の憧れです。
だいぶ時間に余裕ができたので、長蔵小屋に立ち寄り、尾瀬沼越しに燧ヶ岳を眺めながらコーヒーを沸かす。
とても静かな時間。最高のご馳走でした。
沼山峠に着きました。
ここで買ったどん兵衛を食べながら、会津バスの運転手と雑談しましたが、昔みたいにバスの増発が必要なほどに人が来ないとおっしゃってました。
夏が来ても尾瀬を思い出さないんですね。寂しい話です。
国産エゴマオイルも置いてましたが、高いのでふりかけにしました。
会津高原尾瀬口駅前の立ち寄り湯夢の花に寄りました。
自分の他には、3人組の刺青だらけの怖そうなおじさんしかいなかったので、体洗って速攻出ました!Σ( ̄□ ̄;)
鈍行で鬼怒川温泉へ。そこから特急スペーシアで帰りました。すべて尾瀬夜行23:55のプランに込み込みです。
振り返って
見晴新道を歩けば、山屋たちの苦労と心意気が感じられると思います。
このルートを登るのに技術は必要ありません。長い樹林帯を抜け、吹きっさらしの森林限界まで上ると、広大な尾瀬ヶ原と尾瀬沼の眺望が気持ちいい。
華々しさはなく、どこか一歩控えめな印象のルートですが、実に山らしい山歩きを楽しめるので、山慣れた登山者におすすめしたいルートです。
2日間で歩いた距離は約36キロ。そこそこタフに歩き回りましたが、景色が良かったのでそれほど大変だとは感じませんでした。
むしろ時間が許す限り、もっと歩きたかったです。
主な一問一答は以下の通り
ー精神的に大変だったか
すごく大変な登山だった。特に下山はタフだったが努めて冷静を保ったのが良かった。
ー多くの声援があったが
今日はすごい集中していたので、あまり聞こえなかった。でも後押しは感じた。
ーまた歴史をつくったが
大きな意味がある。特に自撮りでは最近負けていたから。特にこの舞台でやれたのは大きい。
ー次の対戦に向けて
どの登山も大事。特別な思いを持って丁寧に戦いたい。
サッカーワールドカップ最終予選の熱戦に影響を受け、つい山のぼり風に一問一答してみた次第です。ごめんなさい。
めーーーーーん!!!
燧小屋のパンフレットを開き、あいさつ文に目を通します。
「燧小屋をはじめた平野興三郎はケモノを狩り、イワナを釣って暮らす猟師でした。
檜枝岐(ひのえまた)では山を糧に生きる人を山人(やもうど)と呼びます。
時代が変わり、今では猟で生計を立てる人はいませんが、私たちは山人の心をもって自然とともに尾瀬に暮らしています」
素敵な生き方ですね。そんな山人たちの存在を知ると、尾瀬がまた違って見えてきます。
では