【北アルプス】常念岳と蝶ヶ岳 おはぎに胸キュン!怒り狂うライチョウと美女伝説 テント泊登山

【北アルプス】常念岳と蝶ヶ岳 おはぎに胸キュン!怒り狂うライチョウと美女伝説 テント泊登山

北アルプスに伝わる、美女伝説をご存じだろうか?

その姿を一目すれば、あまりの美しさに男どもの体はたちまち体毛に覆われ、雄叫びをあげてゴリラ化してしまうと言う。

望んで美しくなったわけではないその美女は、好きになった男が自分のせいで次々とゴリラ化してしまうため、一生その恋が成就することはない。

その悲しみのあまり、いつしか北アルプスの山奥に身を隠してしまったという伝説。

 

その美女の名は、お蝶さん。

 

すっかり気落ちし、隠れてしまったお蝶さん。何度も足繁く通わないと、その姿を見せようとはしないのだ。

そして、たまに姿を見せたかと思えば、男どもをゴリラ化させては、ほくそ笑んでいるという、気まぐれでいたずら好きな性格。

そんな、北アルプスに伝わる悲しい美女伝説。

 

うほっうほっ!うほほーい!!

 

喜びの咆哮が鳴り響く。

この日も、ラッキーなことにお蝶さんを一目見ることのできた男が、どうやらまたゴリラ化してしまったようだ。

しかも、そのゴリラはただのゴリラではない。

デブゴリラだ。

 

ここは常念岳蝶ヶ岳。遅ればせながら、今年一発目の北アルプスにやってきたよ。

世の中は戦争、物価高、コロナと嫌なことばかりだけど、せめて山にいる時ぐらい山にふけりたい。

心から絶景を満喫して、良い空気吸って、心底ヘトヘトになって、お蝶さんと特別な時間を楽しもうぜぃ!

 

梅雨の晴れ間を狙って、三股を起点に蝶ヶ岳でテント泊して常念岳に登り、三股に下山する定番の周回コース。

北アルプスの中では、まず最初に歩いたって人も多いコースだと思うけど、遅ればせながら、初めて歩いてきたよ。

ここはなんと言っても、上の写真の通り、穂高〜槍ヶ岳の大パノラマを眺めながら、ずーーっと歩けるのが売り。

初日は見事なまでの梅雨空だったけど、2日目になるとしつこかった雲がパァーと晴れ渡り、蝶ヶ岳から常念岳の稜線歩きは終始大絶景の連続。

やはり、何かしら感動をもたらしてくれるアルプス登山。

ゴリラの夏山登山が幕を開ける。

 

寒くて辛かった夜も、この朝日に報われた。。

常念岳は標高2,857m、日本百名山。蝶ヶ岳は2,677m、花の百名山。

 

ルートとコースタイム

■2022年6月18~19日 ※カッコ内は標準コースタイム

三股第1駐車場⇒(245分)⇒蝶ヶ岳山頂⇒(45分)⇒蝶槍⇒(165分)⇒常念岳⇒(60分)⇒前常念岳⇒(195分)⇒三股第1駐車場

コースタイム:11時間50分(休憩含まず)

総距離 16キロ
累積標高上り 2,080m

蝶ヶ岳と常念岳登山 本編

三股から登山開始

三股(みつまた)駐車場にやってきた。

なんと今は朝の10時。のんびりやってきた。

梅雨の晴れ間とあって、車も多め。第一駐車場は80台ほど止められるみたいだけど、ここが満車だと1.2キロ離れた第2駐車場に止めることになるから、なんとしても第一駐車場に止めたい。

大人気のお蝶さんは、朝駆けで猛アプローチする男どもが多いと聞く。それを「朝蝶」と言うらしい。

ちょっと遅めにやって来ると、恋破れた男どもが戻ってきて、逆に空いてたりする。

彼らは口々に「ちっ、お高くとまりやがって、顔も見せやしねぇ」「やっぱ俺には高嶺の花だったわー」と立ち去っていくのを尻目に、ラッキーといって見事に第一駐車場をゲット。

 

まだ、登山は始まっていないというのに緑が眩しいじゃないの。

ここは、第一駐車場から10分ほど林道を歩いたところにある登山口。

ここで登山届を出すことができる。ちなみにトイレは駐車場にもあったし、ここにもある。

いっそ、ここでキャンプしても楽しめちゃいそうだが、今日は好き好んで、階段が延々続く登りを重量級の荷物を担いでアヘアヘ言いにきたのだ。

なまっちろいことを口にしてはいけない。

 

この地点で標高は1,350m。

蝶ヶ岳は2,677mだから単純標高差は1,327m。

噂では、急登が続くと聞いた。それも階段の。

嬉しくない情報ばかり先に聞いてしまったために、既に下腹部がズーンと重い。。

 

今シーズン初めてのアルプスだ。しかも念願だったお蝶さんを一目見てみたい。

ヘロヘロになって天に召されるのも上等じゃい!

 

今回歩く周回ルートがこちら。中央に蛾がとまってる地図を見ておくれ。

初日は三股から蝶ヶ岳ヒュッテまで。コースタイム5:30。

2日目は蝶ヶ岳ヒュッテから常念岳、そして三股へ下山するコースタイム9:00のフルコースとなっている。

フランス料理の優雅さはそこにはない。

二郎系の激アツ大盛りコースなのだ。

 

蝶ヶ岳まで6.2キロ。

さあ、行きますか。

 

朝駆けする人が多いだけによく整備されたコースだな、という印象でスターティン。

しかし、これは第一印象をよく見せようとするお蝶さんの罠。

ふむ。これはなんも考えず、素で接しないとイチコロだぞと気を引き締める。

あくまで友達と接するようにしなきゃ。

 

ラショウモンカズラ。

 

可愛らしい風景が、そこら中に散りばめられている。

 

お蝶さんとあちきをつなぐ大事な橋は、予想以上に揺れる。

会う前から拒まれているのかもしれない。

 

沢沿いを緩やかに登っていく。

ちなみに2日目の常念岳の下りがハード過ぎて、なぜ多くの人が常念ではなく蝶ヶ岳を朝駆けするのか、その理由がよく分かったよ。。

 

歩き始めてすぐにでてくる力水。

ここに水場があったのを知ってたなら、わざわざ自宅から重たい水を抱えて持ってこなかったのに。

せっかくだから一口だけ飲んでおく。

 

ゴジラみたいな木って意外と遠いんだなぁ〜と思っていると、いつの間にか急な上りが始まってた。

これがお蝶さんの、「気付かぬうちにボイルにされるカニ作戦」だ。

 

ゴジラの木と高山植物の森

そしてやっと着いた。ゴジラみたいな木。

歯がいい仕事してるよなぁーと、ひとしきりはしゃいでしまった。

こういう名物にはめっぽう弱い。

 

樹林を縫って進んでいく。

森林限界は稜線に出るまでお預けという、お蝶さんのいけずぶりを乗り越えて初めて会うことが許されるのだよ。

我慢だ!とにかく我慢するんだ!

ゴリラになるのはまだ早い!

 

 

うーん、たぶんミツバオウレンかな。

 

ヒトリシズカかと思いきや、マイヅルソウ。

 

これからあの高さまで登らないといけないと思うと、心臓発作を起こしそうになる。

しかし、お蝶さんは弱い男は好みではないらしいのだ。

こんなことではいけない。

もっと強い男にならなくては。

 

ゴゼンタチバナ。

 

コイワカガミ。

雪解け直後に高山植物が一気に花開き、羽虫の協力で受粉に成功する。

おかげでどこもかしこも羽虫だらけ。

超しんどい。

 

まめうち平に到着。

こんな所で休もうものなら羽虫が一気にたかってきて大変だ。

ハットにくくりつけて顔を覆うネットを持ってこなかったから、顔や耳の穴をめがけて羽虫の攻撃を受ける。自家製ハッカ油を大量に吹きかけたらすぐにいなくなったけど、ハーフパンツだったらたちまちブヨにやられること間違いなし。

 

マイヅルソウとイワカガミの群生地を抜けると、お次はオサバグサの大群生が待っていた。

 

こんなにブワッとね。

オサバグサは福島の帝釈山でたくさん咲いてる花なんだけど、それを上回る規模で咲いている。

 

うーん、見事な梅雨空。

樹林の隙間から覗くお蝶さんは見事な高曇りで、実に不機嫌だ。

上手な男ならここでご機嫌をとって、簡単に和ませてしまうんだろうが、いかんせん、こちとら蒸し暑さに白目剥いて泡吹く寸前の老体。

辛さのあまり無意識のうちに脱糞してしまわないか、その心配で頭が一杯で、お蝶さんのご機嫌を取る余裕なんて一切無い。

だからお蝶さんよ、今のうちに思いっきり不機嫌になってておくれ。

怒り疲れた頃に稜線でいっぱい遊ぼうじゃないの。

しかも、登ってる時は曇ってくれてる方が有り難かったりするからね。

 

サンカヨウもたくさん咲いてた。

雨が降ったり朝露で花びらが透ける神秘の花。

今日みたいな天気だと透けないんだなぁと、花びらの裏に触れてみると、それでも指が少し透けて見えた。

 

残り600m、なおも続く急登

やっとこさ、標高2,000m。

あと600m以上登るという事実を目の当たりにし、「まだそんなあんのかよぉ〜」と力無く呟き、血の気が引いた。

今年一発目のテント泊で、すでに体は悲鳴をあげまくってうるさいったらない。

ちなみに、たまに見かけるテント泊装備でトレッキングポールを使わない人って超人なのかね?

あちきなんて、登り始めどころか、駐車場からもはや四足歩行だって言うのに。ほんとSASUKEとしか言いようがない。

 

そして尚も階段が続く。。

大きな岩を越えていくよりかはよほど楽だと思うんだけど、太ももの筋肉が限界。

太ももが、昨日の自分より絶対に強くなってやると、どこかで聞いたことのありそうな事を言ってプルプル頑張っている。

 

まだあんな登らにゃならんのね。

お蝶さんを一目見るため、ここで挫けるわけにはいかないのだ。

 

少しずつ森林限界へと近づいてきているらしく、少し木々の密集度が薄まってきた。

森林限界が近付いてきて、まず最初に期待するのが、下から吹き上げる風なんだけど、この日はこんな天気悪そうに見えてまさかの無風。

ここは梅雨のじめじめ地獄、最前線。

 

オサバグサ、サンカヨウの群生地を抜けると、お次はオオカメノキの群生。

咲いてたのはここだけだったけど、密集度がハンパない。

 

ええーい!!

ノボレノボレー!

きっともうすぐ。きっともうすぐ。

きっと!!

 

 

バテた。

もうすぐか?と、期待が裏切られた時の絶望感に打ちひしがれた姿が、コレだ。

くどいが、お蝶さんは弱い男は嫌いなのだ。今日自分に微笑んでくれることはないだろう。

 

ちなみに今回の登山から投入したこの白シャツ。はじめて襟付きのシャツで山に登ったけど、襟付きシャツいいね。実に登山向きだと思った。

その理由が、暑ければボタンを外して涼むことができる。

始めは1番上のボタンだけ外してスタート。途中で暑くなってきて更に一つ、二つとボタンを開けていき、途中でフルオープン。

もはや裸。いや、ゴリラ。

前後から登山客の声が聞こえたら、慌ててボタンを付け直したけど、その声が男だと分かったら再びフルオープン(笑)

日が差せば襟を立てて日焼け防止にもなっちゃうし、なかなか良い買い物をした。

シャツに止まったブヨを手で払ったら、勢い余って潰してしまい、緑の体液が付着して早速汚してしまったけど。

ブヨの怨念だろう。許しておくれ。。

 

さっきより大量の雲が襲いかかってきた。

もういい。今日お蝶さんの機嫌が直ることは無いだろう。

明日微笑んでくれたらそれでいいのだ。

 

尚も続く階段。

ここを整備してくれる方々の労力には頭が下がる。そんななのに、階段は辛いとか言って申し訳ないんだけど。。

太ももが昨日の自分は何してた?と聞いてきたから、夜にスパゲティ300g食べたよと答えたら、「それで重いんだよ!」とカンカンだ。

会話風だけど、独り言です。

 

2,350mにある第二ベンチで盛大に休憩を取る。

蝶ヶ岳ヒュッテまで残り1.7kmだ。

ここが仮に伊豆山稜線歩道であれば、残りたったの1.7/32キロなのだ。

ほら、なんとか登れる気がしてきた。

 

キスミレ。

 

ショウジョウバカマ。

 

しかし、まだまだ急登が続く。

蝶ヶ岳って簡単な山だと思ってたのにぃー!

日帰りで常念岳〜蝶ヶ岳を周回してしまう人はアスリート、もしくはド変態のどちらかだ。

それが今、自信から確信に変わりました。

松坂がイチローを3三振に抑えた時の名言風に言ってみた。

自分は変態ではないのだ。

ド変態の皆様。あなた方がヤマレコをアップすると、あちきみたいに楽勝じゃね?と勘違いしてしまう輩がでてきてしまうということを知ってもらいたい(泣)

 

ああ、夢にまで見た森林限界だ(泣)。

雪渓がでてきたけど、ステップもできててノーアイゼンで楽勝。言ってみればここも長い階段の延長みたいなものさ。

 

蝶ヶ岳ヒュッテとおはぎ

やっと、やっとお蝶さんの肩に着いた。

蝶ヶ岳ヒュッテも見えた。正確にはヒュッテの納戸だったんだけど。

 

お蝶さんに会いに行く前に、まずやることがある。

到着するなり、良い場所を確保し、気持ちマッハで設営完了。

実際には疲れ切ってたから、20分以上かけて、やっと設営完了したのだが。。

しかもこれ、ニーモホーネットという最軽量テント。それも軽さ重視の一人用。これでバテバテとか言ってるんだから、ヘタレの極み。先が思いやられる。

 

そして、まだお蝶さんはお預け。どうせこの曇り空じゃ、姿は見せてくれないだろうし。

テントの設営が完了したら、蝶ヶ岳ヒュッテにテント泊の受付けと、美味しいものを探しに行こう。

今は15時。ランチの終了は14時って聞いてたけど、土下座してみたらワンチャンあるかもしれない。

看板メニューにもなっているカルボナーラは無理だろうけど、カレーなら残ってたら出してくれるかもしれないしね。

 

受付のお姉さんに、ランチはもうおしまいでしか?と涙目で聞いてみると、ちゃんと奥に確認しに行ってくれた。普段、上司からのパワハラに苦しんでるおっさんにとって、その優しい応対だけでもう涙が止まらない。

結局、断られちゃったけどね。

しかし、これを見てほしい。

おはぎの販売をしてるとあってソッコー購入。

個数限定だよ。

 

おはぎに胸キュン!!

きなこ味が超絶美味い!!

1個200円。下界でも150円ぐらいするのに、こんな山の上でお得感ハンパない。まさに神スペックの味がした。

ちなみに水は天水だと思うけど、1リットル200円。ペットボトルのコーラは500円、ビールは500mlで800円だったかな。

 

体をボディペーパーでしっかり拭いて、着替えを済ませたら、いよいよお蝶さんとご対面だ。

テン場から蝶ヶ岳の山頂までは5分の距離。

ずいぶん賑わっているな。

 

憧れのお蝶さん

標高2,677m。

テン場でのんびりしすぎて今更だけど、ここまでよく登ってきたよ。

ガチでヘトヘトになった。

 

さあ、お蝶さんよ、その姿を見せておくれ。

果たして、微笑んでくれるや否や。

 

おお!!見せてくれたじゃない!!

いや、かろうじて見えないか。

日傘で微妙に顔を隠してるって感じ。

肝心の奥穂と槍ヶ岳は隠れちゃってるけど、梅雨ど真ん中のタイミングで、これだけ見られればラッキーでしょう。

つか、雲が多いのも雰囲気出てていい感じだし。

しかも、ダウンを着なくても大丈夫なぐらい、寒くもなく暑くもない、ちょうど良いコンディション。

最高やん。来てよかった。

うほほーい!

うほ!

 

 

うほっうほっ!

うっほほーい!!

 

あれ、様子がおかしい。

ま、まさか。

 

デブゴリラが現れた。

お蝶さんが日傘で顔を隠してるというのに、こやつはいとも簡単にゴリラ化してしまったらしい。

胸を叩きながら、うほっ、うほっ、うほほーい!とバブルスくんばりに浮かれている。

ちょっと冷静になってみよう。この男は元来、絶景を見るとこれまでも度々ゴリラ化してきた。つまりこれは習性なのだ。

お蝶さんの仕業ではない。

 

うほほーい!

これは、浮かれて飛び跳ねているのではない。

股割りに挑戦しているのだ。

なんという体の硬さ。さすがデブゴリラ。

 

必死に足を上げてみるも、これが限界。

しかも、足をあげた拍子に太ももをつってしまい、悶絶うってテン場に引き上げたのだった。

 

おはぎを食べたはかりだと言うのに、夕餉の時間に突入。

サッポロ一番を誰よりも美味く作れると豪語するダウンタウンまっちゃんには悪いが、山頂で食べるものに勝るものは無いのだよ。

ちなみにサッポロ一番といえば、「醤油」って答える人、あれ本気?

塩ならまだ分かる。でも醤油ってスーパーでも一番品揃え少ないし、あんま見かけないもんね。

試しにこないだ醤油味を買ってみたけど、改めて絶対に!確実に!味噌だと確信できた。

サッポロ一番は天地天命に誓って味噌!

ここに宣言する!

ちなみに2袋持ってきたから、翌朝もサッポロ一番味噌ラーメンを堪能した。

山で食べるジャンクほど美味いものはない。

これが、テブゴリラの発想。

 

うさぎ見っけ!

よちよち歩く姿がちょーー可愛かった!

味噌ラーメンを食べながら、テン場に迷い込んだこの珍客にホクホクになったよ。

心から癒やされた。

この時はね…。

 

でも下山後、この日に居合わせた方のYAMAPで「テン場でオコジョに会えたヨ!」というレコを見て、

へぇ、オコジョもいたのか。いいなぁー、会いたかったなー

と、そのレコを読み進めると、

「かわいいオコジョがうさぎを捕まえて食べてましたー!」

だって。

おまえ、食われちゃったのね…。

まだ子供だったのに。

バッチリ食われてるところの写真もアップされてたじゃないか。

よちよちした姿、なんか弱ってるなとも思ったんだよ。

お母さんとはぐれちゃったんだね。

悲しみに暮れたよ。

 

この時はそんなことなどつゆ知らず、うさぎのお陰でホクホクになりながら、銘菓「たけのこの里」を頬張りながら、再び絶景を眺めに稜線へと移動したのだった。

 

そろそろ夕暮れ。

お待ちかねの、サンセット翔タイム!!スターティン♫

と同時に恐ろしいことに、雲が沸き起こってきたじゃないの。

いつも肝心なときにボツになるパティーンか?と疑ったけど、この雲は一瞬で消え去った。

 

ライチョウさんの大喧嘩

鮮やか。垂れ込める雲と夕日のコラボ。色彩が匂い立つ風景。

刻一刻と色を変えるアルプスの動きを見逃すまいと、腰を掛けて目を凝らす。

 

常念岳にしつこくかかっていた雲が取れていく。

気まぐれな雲だ。

 

おお〜。完全に雲が取れた。

みんな静かにこの景色に浸って見入っている中、たけのこの里をボリボリ食べる音だけが地味に響く。

申し訳ない。

 

さらに日は沈み、空は茜色へと変わる。

沈んでいく夕日は見れそうにないけど、これはこれで味がある。

お蝶さん、最高の1日になったよ、ありがとうございもぉ~す。

 

いや、まだ終わりではない。

暗くなって、出てきたのがライチョウさん。

じーっと動かずにいてくれて、良い被写体だった。

 

しかし、事件は突然起きた。

 

その時、

遠くの空から別のライチョウが飛来してきたのだ。

その羽音を聞いたこのライチョウさん、すくっと立ち上がり、尾っぽを立てて威嚇のポーズをとった。

どうやら、縄張り争いに怒りの火が点いた様だ。

 

猛然と飛びかかっていくライチョウさん。

完全に怒り狂っている。狂気の沙汰ってやつだ。

あれだけ温厚そうに丸くなって休んでいたというのに。信じられない。

 

アキサミヨー!

まさかの猛烈ダッシュからの残像拳を繰り出すライチョウさん。

モンスター井上尚弥バリの左フックが炸裂。一回り大きかった相手もこりゃたまらんと逃げ出した。

 

そして、自分がいる所にわざわざ戻って来てからの、勝利のキメポーズ。

まさかの一歩も移動せずに撮り放題♫

この凛々しい顔。もっと撮ってくれと言わんばかりだ。

このライチョウどうしのバトルが激しくて、その羽音に何事かと大勢の方々がスマホ片手に押し寄せてやって来た。10人以上だ。

しかし、せっかくの被写体の隣には、このデブゴリラがいる。当然、撮影の邪魔になる訳で、

「ねぇ、あのデブゴリラ、どっか行ってくんねぇかな」

「つか、デカ過ぎね?頭とか異次元にデカいし」

そんなディスりの声が聞こえ、あちきはそそくさと退散したよ。

元より、独り占めするつもりなんてなかったんだ。

分かっておくれ。。

 

そして夜の帳が下りた。

お蝶さんからたくさんもらったギフトに興奮した一日だった。蝶ヶ岳サイコーだ。

 

しかし、その日の夜は試練の夜だった。

結露がひどくて、シュラフの上からエスケープビビィを被せてたけど、それでも肩のところをうっかり濡らしてしまい、寒さに震えたのだよ。

寒くて何度も目が覚めて、星を観察する気にもなれなかった。

それでも、余裕で7時間は寝たんだけど(笑)

 

そして、待ち望んだ朝がやってきた。

 

サンライズ

寒さに震えた夜の終わりを告げる、偉大な太陽が上る。

今日はスッキリ晴れそうだ。

 

この至福の時間のために、テント泊をしていると言っても過言ではない。

ズルズル。

 

ズルズル。ふーふー、ズルっ。

絶景を眺めながら食べるサッポロ一番味噌ラーメンがこれまた格別。

まっちゃんにも、ここに来て食べてもらいたい。

この場でサッポロ一番を二食連続で食べたのは、おそらく自分が初めてだろう。世界初の快挙だ。

 

蝶ヶ岳ヒュッテを出発、蝶槍へ

濡れたテントをゲンナリしながら片付け、すっかり明るくなった空の下、2日目の登山が始まった。

朝の5時半、でっぱつ。

今日は常念岳に登って三股へと下山する、ざっと8時間ほどのコースタイム。

休憩をはさみつつでも、12時前には余裕で下山できるんじゃないかなーという見通し。

その考えが甘かったんだけどね。それは後で書くよ。

 

昨日から相変わらず、穂高〜槍ヶ岳方面の景色は雲は多め。

しかし、このハイマツが綺麗で雄大な稜線を歩けることに、否応なしにテンションが上がる。

 

テント泊の重みなんて、何事もなく忘れてしまいそうな開放感。

2日目だから軽くなってるというのもあるしね。

 

ザックの上に取り付けた黒のスタッフサックにびっちょり濡れたテントを雑に丸めて突っ込んでいる。

がさつな自分にはもってこいのスタッフサックだ。

山と道、いい仕事するな。

 

あれが蝶槍。

蝶ヶ岳の三角点は山頂ではなく、山頂と蝶槍の間にあったみたいだけど、気付かずに通り過ぎてしまっていた様だ。

三角点など、がさつな自分に探せるはずがないのだよ。

 

とりあえず蝶槍に到着。

この黄色のサロモンのTシャツは、生地が薄すぎて、乳首がもろに透けるゴリラ仕様だ。

この時は早朝ということもあって、中に黒の長袖のベースレイヤーを着込んでたから大丈夫だったけど。

 

うーん、簡単だと思っていた常念岳、まさかこんな遠いとは。

今更だけど、簡単じゃなさそうだな。

 

ガスが湧いてきて、薄っすらだけどブロッケンも出現。

 

常念岳への縦走

これから歩く稜線を滝雲が流れていく。

山らしさに満ちている。

 

蝶槍から一旦下ると、樹林帯に突入。

蝶ヶ岳の山頂が2,600mほどしかないから、ちょっと下っただけで樹林帯に飲まれてしまう。

だけど、早朝の樹林はこれまた気持ち良いもんだ。

 

雪渓が意外と多くでてくる。

かかとてザクザク差し込む様に歩けば滑らない。

アイゼンは不要。

 

ゼンマイがわんさか。

 

セイヨウキンバイソウ。

 

タカネザクラ。それも咲き始め。

6月に入ってなお桜が見られるってのが、嬉しいもんだよ。

 

東側斜面は風が吹いていなかったから極端に暑い。

しかも羽虫も多く、だいぶ不快。

そんな暑さに耐えられず、ここを登ったところで下に着てた長袖のベースレイヤーを脱ぎ、黄色のスケスケTシャツ一枚になった。

これからすれ違うハイカー全員、あちきのスケスケ乳首を見て吹き出しちゃうかもだが、そんなこと気にしてらんない。

笑いたければ笑っておくれ、ワイルドだろぉ〜。

いや、いい歳こいてそれはいけない。これはもはや公害だろう。

今度ランニング用のニップレスでも買っとこうかな。

 

常念岳のナイッスーな山容。

だいぶ近づいてきたようだが、まだ遠い。

地図で見たらちゃちゃっと歩けそうな気分になってしまうけど、実際に歩いてみて甘い見通しが打ち砕かれるのはいつものことさ。

 

ここで2日間を通して初めて、奥穂の雲が取れた。

おっぱいスケスケTシャツを着た効果だろう。周りのハイカーはもっとあちきに感謝してもらいたい。

昨日から前穂や北穂はたまに見えてたんだけどね、やはり奥穂が姿を見せると、その満足感はぜんぜん違う。

今日は昼過ぎから一気に曇り、所によっては雷雨という気まぐれな天気予報だけど、どうやらベストなタイミングに合わせることがてきたみたいだ。

久々の会心の一日になることを確信。

 

そして、完璧に晴れた。

あれだけしつこかった雲を一斉に消し去ってしまう高気圧さんによるマジックは、いつもあっぱれだ。

槍ヶ岳までばっちり見える。

 

この快晴の空の下、あとは常念さんを落としにかかるだけ。

この道のりを苦しく感じないように、大事に登ろう。

 

いや、そうも言ってられないかもしれない。

下山ではこの長大な尾根を下っていくことになるんだけど、せっかちな雲が午後を待てずにもくもく立ち上ってきた。

 

しかし、左手側の景色はバッチコーイな大パノラマ。

パソコンと向き合って残業漬けの日常がとても陳腐なものに思える。

ちなみにいま手掛けてる仕事は来週が山を迎える。ため息しか出ない。

 

こちらの山はもうすぐゴール。

最後の上り。

 

常念岳の山頂

山頂は目の前だマエダ。

青空にも間に合った。

賑わってる声が聞こえてきて、少しだけおっぱいスケスケで気が引けてきた。

 

標高2,857m、常念岳の山頂ゲット。

ああ、これこれ。本格的に山登りを始めた頃、知り合いから「登ってきたぜぇ〜」と見せてもらった写真を思い出した。あれから早10年か。

長かったなー。

 

山頂からの大パノラマがこれ。すべてがキラキラ輝いて見える景色に、常念とお蝶さんに胸キュンだ。

 

去年登った大天井岳は残雪少なめ。

あそこも最高のテン場だったけど、もうすぐテン場に着くってところで、血だらけのお爺さんが倒れてて、そのインパクトが強かった山。

左奥の山は黒部川源頭の鷲羽岳、水晶岳。北アルプスの最深部。

 

右の槍ヶ岳から大喰岳、中岳、左端の南岳へと続く、全部3,000mオーバーの山が連なる稜線をアーーップ。

 

ここまで歩いてきたお蝶さんからの稜線。

簡単に考えてたのに、長い(笑)

 

長野名物の牛乳パンをいただく。

2日間、ザックの奥底でしまってたから、すっかりぺちゃんこになってしまったが、味はグッドだった。

 

真ん中の大きく凹んだところが大キレット。

潰れ具合がこの牛乳パンを彷彿とさせる。

残雪が牛乳ホイップみたいだ。

 

奥の山をアップで。真ん中の雲が少しかかっているのが水晶岳(だと思う)。

その左が鷲羽岳。

遠すぎていまいち分かんない。

 

想定外の岩場が続くゲッザーン

常念岳から三股までも、それなりに長い。

体が冷えきって低体温症寸前まで山頂を満喫したら、そろそろケッザーン開始。

小屋には寄らず、前常念岳方面へ。

 

さらば常念岳。

 

しばらくすると雲が常念岳を覆っていく。

間一髪だった。ラッキーだった。

 

前常念岳への尾根道は大きな岩がゴロゴロしてて油断できなかったし、すっごく疲れた。

とてもじゃないけどペースを上げることなんてできなかったから、トレランする人が蝶ヶ岳を選ぶ理由がよく分かったよ。

 

振り返ると常念小屋が遠くに見えた。テン場は少し傾斜があるという話だけど、広くて良さそう。

山頂から小屋を経由して下山すると、30分ほどのタイムロスになるから今回はパスしたけど、次はあそこでテント泊してみるのもアリかも。

 

前常念からの長い樹林帯で喉の渇き限界

ここが前常念岳。

なんとも質素な山頂。ここはあくまでただの通過点。

 

こんな大きな岩がゴロゴロしてるところをソロリソロリ歩いてきたよ。

転んだら大怪我すること間違いないし、とにかく時間をかけて慎重に歩いた。

ほんと、こういうの苦手。

 

前常念岳には避難小屋もあったよ。

あまり泊まりたいとは思えない感じだったな…。

 

やっと岩場が終わり、少しずつ歩きやすくなってきた。蝶ヶ岳より常念岳の方が厳しいルートだった。

そろそろ暑いし樹林帯が恋しい。

 

そして、徐々に森林限界も終わっていく。

 

長い長い樹林帯へ突入。

熊らしき獣の糞がたくさん落ちててビビっていると、目の前の茂みが激しくガサガサうごめいた。

やべぇ!マジでやべぇ!

大声で、

「オウッ!!オウッ!!」とゴリラばりの威嚇を発動。すると、出てきたのは猿の集団。慌てて逃げていった。

なんだ、猿だったのか…。と安堵したけど、もし猿が襲ってきたら人間より腕力あるし、大怪我は間違いないから、そりゃ怖い。

ゴリラの咆哮が役立ったけど、それによって後ろを歩いていたお兄さんまで、自分とたいぶ距離を空けて歩くようになったのは予想外だった。

 

ガチでゴリラと間違われたのかもしれない。

 

新緑というより深緑。

日差しの強さは真夏と変わらないから、本格的な夏山シーズンの到来を感じた。

とにかく暑すぎる。そして、このルートには途中に水場がないということを知っておかねばならない。水分は多めに持っておくべし!

蝶ヶ岳を1.5リットル持って出発したけど、下山の途中で残り500mlを切ってしまい焦った。

結果的には最後までもったから良かったけど、脱水症状になったらと思うと恐ろしい。

 

残りの水分が200mlを切った頃、最後の橋が見え、ほんと安堵した。

暑さで瀕死寸前。

 

後で知ったけど、この日、長野は猛暑日を記録。

この暑さの中、ちびちびと大事に大事に水を飲みながら歩いてきたから、この大量の沢の水を見たときの安心感と言ったら無かったよ。

登山届を出すところにある水場では、胃がちゃぷちゃぷになるまで飲んだ。

 

林道のゲートが見え、今夏一発目の夏アルブスは終了。

常念岳の下山では緊張したし、水の減りの早さに焦ったけど、とにかく安全に下山することだけを最優先に考えながら下りてきたよ。

なんか最近、遭難のニュースが多い気がするからね。

 

振り返って

やっと、念願かなって常念岳と蝶ヶ岳に登ることができたよ。

2日目は真夏日を記録するほどの猛暑と、梅雨のジメッとした空気感もあって、体力的にだいぶしんどかったけど、無事に下山できてよかった。

甘く考えすぎてたってのもあるから、自業自得だけど。

熊が多いエリアだから、熊鈴は必携。撃退用のスプレーを持って歩いてる人も見かけたよ。

結局、猿の集団だったけど、鈴を鳴らしまくって「おう!おう!!」と突然吠え始めたおっさんに、後ろのお兄さんの自分への警戒心ったらなかったな(笑)

 

蝶ヶ岳の稜線歩きは一級品。

ライチョウは夜と朝に3羽も見れたし、テン場に迷い込んだうさぎがいたり、何かと楽しい山だった。

安曇野や松本からだと、常念山脈が屏風のように立ちはだかってるから、穂高〜槍ヶ岳は山登りしていないと見ることのできない景色なんだなーと、今更ながら気付いたよ。

 

梅雨時のテント泊はダブルウォールでも結露がひどくて、シュラフの肩のところが濡れちゃって夜は寒くて震えた。

エスケープビビィがなかったらシュラフはもっと濡れて、きっと一睡もできなかった。

ビビィを持ってきてほんと良かった。それと、ささっと拭ける速乾の吸水タオルがあると便利だなーと思ったよ。

ではでは


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