【前編】裏岩手縦走路 水没したオヤジ編 八幡平から岩手山まで2つの百名山を繋ぐ登山1日目(三ツ石山荘泊)

【前編】裏岩手縦走路 水没したオヤジ編 八幡平から岩手山まで2つの百名山を繋ぐ登山1日目(三ツ石山荘泊)

何を見てこの「裏岩手縦走路」の存在を知ったんだっけ。

 

確か雑誌のロングトレイル特集だったと思うんだけど、もう何年も前のことだからはっきりとは憶えていないんだよね。

でもその時に受けたインパクトが強くて、いつか必ずここを歩きたい!と、それこそ大袈裟ではなく取り憑かれた様に待ち焦がれてきた。

 

八幡平から岩手山まで、2つの百名山を繋いで歩く長大な縦走路。

途中には紅葉の時期になると必ず名前を聞く三ツ石山もあったりして、否が応でも山ヤロウのロマンを掻き立ててくれる魅惑のロングトレイル。

 

岩手山へと続く岩場の稜線はドキドキするほどかっこいいし、振り返ってここまで歩いてきた果てしない縦走路を見ると凄まじい達成感がこみ上げてくる。

 

すぐ近くには秋田駒ヶ岳だって見える。この時期はチングルマの大群生を見に多くのハイカーで賑わっているんだろうな。

見渡す限り山しか見えない圧倒的な東北の自然。

ここに来れて本当によかった。

 

 

さて、この裏岩手縦走路、全部歩くと安比高原から岩手山まで50kmもある鬼畜コースなんだけど、それだと中年オヤジの身が持たない。

そんな訳で、八幡平スタートで岩手山までを歩いたわけだけど、それでも歩いた距離は36km。累積標高登りは2,000mオーバー。

 

じゅうぶん鬼畜じゃないの…。

 

前回が谷川馬蹄形で25km歩いてるからね、自分のもの好きに呆れるわ。。

 

とは言え、無理がないプランで歩きたいから、なんとか早い時間にスタートできる様に時刻表と地図を何日かにらめっこして見つけたのが、今回の一泊二日のベストプラン。

 

ぜひ参考にしてください。

 

都心からだと岩手県は遠いからね、せっかく行くなら骨の髄まで楽しみたい。

 

それを可能にしたのが、今回の乗り継ぎプランなんだけど、そのおかげでそんじょそこらの観光ツアーの何倍も濃い旅になったのは間違いない(自画自賛。えへん)。

 

今回も長くなるから、前・後編に分けて書くよ。

 

前編は八幡平から三ツ石山の避難小屋まで。

後編の2日目は、三ツ石山荘から岩手山へ。下山は表玄関の馬返し登山口ではなく、6月であればコマクサの群生が見られ、温泉にも入れちゃう焼走り登山口を選択。

 

何もかもがうまくいったプランです(何度も自画自賛)。

 

大谷翔平が育った岩手県で、2つの百名山を結ぶ二刀流登山。

前編は「哀戦士ガスダム~水没のオヤジ編~」です。

 

 

ルートとコースタイム

■2023年7月1日(1日目) ※カッコ内は標準コースタイム

八幡平頂上レストハウス⇒(30分)⇒山頂⇒(25分)⇒レストハウス⇒(15分)⇒縦走路登山口⇒(30分)⇒畚岳⇒(45分)⇒諸桧岳⇒(40分)⇒前諸桧⇒(40分)⇒嶮岨森⇒(35分)⇒大深山荘⇒(30分)⇒大深岳⇒(60分)⇒小畚山⇒(60分)⇒三ッ石山⇒(25分)⇒三ッ石山荘

コースタイム:7時間15分(休憩含まず)

総距離 18キロ
累積標高上り 886m

裏岩手縦走登山(前編)

きらきらアクセス編

如何にお金をかけずに早いスタートを切れるか。

自分はアイマスクと耳栓さえあればどこでも寝られるという自信があるから高速バスを使わない手はない。

キラキラ輝く中年に似つかわしく、今回は大宮駅からさくらバスさんのキラキラ号で盛岡駅へ。

 

盛岡駅着は5:15。今回のプラン、何時着の高速バスに乗るのかもとても大事になってくる。

 

AM5:40

そしてIGR銀河鉄道に乗り換える。

まさにキラキラからキラキラへの乗り換え。

盛岡駅5:00発の大更駅行きの電車に乗れたらベストなんだけど、その時間に間に合う高速バスってないんだよね。

そんな訳で駅前のコンビニでおにぎりを買って、5:45発の電車で好摩駅(こうまえき)へ。

この時間の電車に乗れなかったら今回のプランは成立しない。

 

電子マネーが使えないから、券売機の前でザックをひっくり返して慌てて財布を取り出したけど、切符も懐かしくていいもんだね。

 

 

AM6:20

好摩駅に着いたら事前に手配していた平舘タクシーさんで花輪線の大更駅(おおぶけえき)へ。

花輪線の本数が少ないから、2駅分の移動をタクシーで繋ぐ。

 

ここで要注意!

この日の前日夕方に盛岡中央タクシーとか大手のタクシー会社5社ぐらいに配車の電話をしたけど、「あ~、6時台はもう無理だね」とことごとく断られ、もう無理かも…と半ば諦めかけたんだよね。

平舘タクシーさんは小さなタクシー会社だけど、以前に料金の相談をしたときも丁寧な受け答えをしてくれて好印象だったから、ダメ元で電話してみたらなんとかしますと神対応。迎車料金も欲しいけどいただかずに頑張ってますって言ってくれたし。

ちなみに、下山後の帰りのタクシーも平舘タクシーさんにお世話になった。

平舘タクシー、覚えといてね。0120-14-2527だよ。高橋さん(運転手)ありかとう!!

 

好摩駅からタクシーで20分ほど揺られて大更駅に着いた。

大更駅に着いたら7:11発の松尾鉱山資料館行きのバスに乗るんだけど、30分近く時間に余裕がてきたから駅前のトイレで歯を磨いたり人生の先輩山ガール達と会話して待つ。

駅前にコンビニはないからご注意を。

 

バスの車内から見えた岩手山。大更駅に着いたときは雲に隠れて全く見えなかったのに、どんどんガスが晴れてきて予報通り晴れる感じになってきた。

 

松尾鉱山資料館に着いたら、今度は8:00発の八幡平山頂行きのバスに乗り換える。

待ち時間は15分ぐらいだったかな。

 

トイレもあるけど、松尾鉱山資料館がオープンする9時までは鍵がかかって使えない。

 

やることもないからぶらついたり、人生の先輩方とこれまで泊まった避難小屋でどこが良かったかという、一般ピープルからは決してイイネしてもらえない話題で盛り上がる。

 

さて、なんでこんな乗り継ぎばかり面倒なアクセスをしているかというと、盛岡駅から八幡平までバスだと最速が9:10発〜11:05着になってしまうから。

念のため岩手県北バスに電話して聞いてみたけど、間違いなかった。

さすがに11:05着だと遅すぎる。

やっぱり9時には歩き始めたいもんね。

 

路線バスに乗って八幡平までは1時間ぐらいだったかな。

最初は外も晴れてたんだけど、標高を上げるにつれて真っ白になり、たまにバスの窓を雨が叩きつけるという哀戦士パティーン。

 

八幡平から登山開始

バスから下りて、すかさず八幡平山頂レストハウスへと避難。

 

しかし、時間がもったいないから、レインウェアを着込んで出発。

願いが通じたのか、外に出てみれば雨はやんでくれたけど、やっぱりガスガス。

 

まずは八幡平へ。

岩手と秋田の県境には目に見えない壁があるらしい。

どうやら岩手県人は青森と秋田より都会で一緒にしてくれるなという思いが強いと聞いたことがある。やはり世界遺産の平泉の存在が強いのかもしれない。

文化歴史を誇るなら分かるんだけど、都会であることを誇るなんてナンセンスだよね。

 

わずかだけど秋田県側から八幡平の山頂への散策はスタートする。

秋田からスタートして山名に岩手の冠が付いた岩手山へ登るという壮大な県またぎに早くも嬉ション寸前だ。

 

ちなみにザックはレストハウスにデポらせてもらったのでとても身軽。

それに舗装路だし。

ここが百名山どころか、もはや山なのかも分からなくなる。

 

キヌガサソウ。

しかしそこはやはり山らしく、なかなか目にすることのできない高山植物たちの宝庫。

 

鏡沼に到着。

 

こちらが有名なドラゴンアイなんだろうけど、時期的にだいぶ遅かったし、真っ白だし。

まあ自分はだいたいいつもこんなもんだよ。中には一発で旬とサニーデイを手に入れちゃう太陽みたいな幸運の持ち主もいるけど、だいたい何度も足繁く通わないとお目当てにはありつけない。

そしていつも「これも旅の醍醐味だよ」と言って己を慰める。

 

この天気でアカガエルが元気に飛び回ってたよ。

 

あれが山頂かな。

 

これまで見てきた中でもトップクラスで立派な標柱。

まあなんにせよ、ここから今回の縦走は始まるわけだから儀式としてタッチしておく。

 

シラネアオイがもりもり咲いてるんだけど、そりゃ元気ないわな。

 

せっかく東北にしか咲かないヒナザクラもこんな大群生で咲いてるというのに、頑固にみんな下を向いている。

ヒナザクラの北限は八甲田、南限は西吾妻山らしいよ。

 

ハクサンチドリ。

こいつはいつも尖ってる。

 

霧の摩周湖か。

自分は沼を見に来たわけではないのだ。

 

八幡平山頂レストハウスに戻ってきたら、お腹が空いてしまった。

これから長い縦走が始まるのだからしっかり食べておこうとレストハウスでカレーを食べながら、そう言えば昨日もカレー食べたし、持ってきた食料もカレー飯だったなぁということを思い出しながら、カレーなら毎日でもいけると思った。

 

ガスがなんだ。吹雪いてるわけではないんだ。

さあ、俺は行くぞ。

道路を藤七温泉方面へ歩いて登山口に移動。

 

道路沿いにもミヤマキンバイがわんさか。

 

裏岩手縦走路登山口

さあ、ここが憧れ続けた裏岩手縦走路登山口だ。

もっと喜べ。

 

テンション上げて行こうぜ。ガーハッハ!

まず目指すピークは畚岳(もっこだけ)

 

最初のピークだからね、縦走路から少し外れるけど律儀に登っておこう。

 

さあ、本日2座目だ。

 

景色は何も見えないから山頂をタッチしたらそそくさ下山。

先は長いのだ。

縦走ではひたすら歩いてる過程を楽しむことに尽きる。この先にきっといいことが待っている。

 

アカモノの先端に雨のしずくが溜まっている。

ふっ。

 

お次のピークは諸檜岳(もろびだけ)、1.9kmの道のり。

次から次へとピークは出てくるけど、ピークというより丘って感じだし、なんといっても歩きはじめの八幡平が既に1,600mオーバーだったから、上り基調で歩かなくて済むのがいい。

 

ホシガラスが自分の進む方向へ逃げていき、また追いついては逃げていくというのを繰り返す。

まるでハンミョウみたいな道案内をしてくれるホシガラスとのやり取りも山ならでは。

 

トレイルもミヤマキンバイがたくさん。

 

裏岩手縦走路3座目の諸檜岳を寄り切りで通過。

今のところ元気。

 

水没する中年

わおー!池だー!

って言ったけど、そこは地獄だった。

よく見てほしい。この先のトレイルはほぼ水浸しだ。

 

ここまでで既に水たまりにハマりまくって、靴の中までぐちょぐちょだから今更ではあるんだけど、完全なドボンだけはなんとしても避けたい。

 

しかし、次から次へとガチでイカれた水攻めに気が休まらない。

これを涙目でかわしていく。

決定的なドボンは避けたい、ただそれだけの登山になっている。

 

オオバキスミレ。

 

はっきり言って、この時点でもう晴れは諦めている。

なにがてんくらA予報だ。

 

ここまでよく耐えてきた。

よりによって水たまりで激しく転び、おケツから完全にドボンするという悲劇。

 

足のドボンを避けたいあまり、無理な体制を取ってバランスを失い、おケツの貞操を失ってしまった。

しかも激しいコケ方でトレッキングポールもぐにゃり。

致命傷ではないけど…、出費を考えると頭が痛い。

 

一度コケてから集中力が切れ、ここでも木に乗って滑って転んだ。

小指を激しく打ち付けて、指がたんこぶみたいに腫れあがって痛い。

何が楽しくてこんな登山をしているのか、悲しくなってきた。

 

再び広い池が出た。

ガチンコで嫌な予感がする。

 

ほら、やっぱり。

完全にトレイルは水没している。

 

ここをジャンプで飛び越えてもいいが、着地した瞬間、恐ろしく滑る木道で全身でドボンしてしまう可能性もある。

しかし、またげる距離ではない。

どう考えたってここはジャンプ以外に方法はないのだ。

 

意を決し、おっさんは全集中でジャンプを試みた。

 

そして着地は決まった。

 

決まった瞬間、木道はあろうことかシーソー。

不可抗力だった。

 

自分の全体重+ジャンプした勢いで木道もろとも両足から水没。

諦めるが良い。これでもう完全に水浸しだ。

 

池のほとりに咲くミツガシワ。

こんなものでは癒やされない。

 

戦いはまだ終わらない。

 

これを見てほしい。

完全に詰みだ。。

登山してて目の前に大きな岩壁が立ちはだかるでもなく、滝が行く手を阻むでもなく、こういう詰み方もあるということを学んだ。

 

しかし、前へ行くしか道はない。

自分を奮い立たせた。

いつまでも井の中の蛙であってはならない。

男なら大海へ出るんだ!

そうこれは水たまりではない。大海なんだ。

ビビってんじゃねぇぞ!!

 

まるでOKマークを作って祝福してくれているようだ。

もはや取り返しがつかない程びっちょり濡れた今の自分を、昨夜キラキラ号に乗り込んだときの自分は想像できただろうか。

 

今からでも手遅れではない。心持ちだけでも高く、キラキラ旅にしてやろうではないか。

前へ前へだ。

 

裏岩手縦走路を歩いてる方のレコで頻繁に見かけた「長ぐつ最強」という売り文句。

ウソ偽りではなかったな。

登山ブーツでも100%靴下までびちょびちょになってたのは間違いない。

長ぐつで来るか、逆に濡れるの前提で渇きが早いメッシュのトレランシューズで来るかのどっちかにすべきだね。

 

裏岩手縦走路4座目の前諸檜に到着。

今ブログ書いてて気付いたんだけど、Maeemorobiってeが一つ多い。あえてなのかな。

 

ようやく稜線らしいところにでた。

ほんの少しガスが晴れてきた気もするけど、恐らくこれが今日の限界だろう。

もう晴れに期待することに疲れた。

 

そして、その名の通り嶮岨の森へ突入していく。

昼間だというのになんだか薄暗い。

 

滴るウラジロヨウラク。

 

そして再び稜線に出る。

晴れていれば絶景なんだろうな。今日は無事に三ツ石山まで行ければ上出来だ。

 

裏岩手縦走路5座目、嶮岨森(けんそもり)に到着。

 

そして見慣れたガスの中へと下っていく。

水たまりどぼん、木道シーソーでどぼん、すっころんでトレッキングポールぼきん。

長年恋焦がれ、夜な夜なネットで情報をかき集めてきた裏岩手縦走路。

このままだとブログでこの樹走路の良いところはなにも書け無いかもなぁと思えてきた。

 

大深山荘で水分補給

大深山荘に到着。

 

あまりの美しさに、

もう今日はここで泊まっちゃおうかな?

もうぐちょぐちょの靴下を脱いだらサイコーだぜ?

そんな強烈な甘い誘惑に負けそうになる。

 

2Fに暮らしたい。

 

靴を脱いだら今日だけでなく明日も終わると思い直し、避難小屋の見学はそこそこにして水場へ向かうことにした。

三ツ石山荘の水場は枯れることが多いらしいから保険のつもりで2リットルだけ汲んでおく。

YAMAPで最新の情報をチェックすると、三ツ石山荘の水場は細いけどちょろちょろ出てるっていうから、大丈夫だと思うけどね。

 

水場へと下っていく途中、ガスの隙間から見えたあれは・・

自分は愕然とした。岩手山の山頂ではないか!

 

こっちがひたすらガスまみれになっている間、あっちはずっと晴れていたということか。

岩手山から八幡平へ逆ルートで歩けば良かった(泣)。

 

オオバミゾホオズキ。

 

湿原はお花畑になってた。もうすでに水場のどばどば出てる音が聞こえる。

 

これほどまで豊富とは、有り難い。

 

ここから本領発揮

さあ、考えが変わる前に大深山荘を旅立たねば。

前へ前へだ。

 

裏岩手縦走路って、ずっと稜線歩きが楽しめると思ってたんだけど、実際にはここまでほぼ樹林帯だった。

しかし、それもここまで。

大深山荘を出てからが本領発揮なんだよね。

ガスさえ晴れてくれたらなんだけど。

 

バイカオウレン。

 

オノエラン。

 

さあ、開放的な稜線歩きの幕開けだ!

しかもあのしつこかったガスもだいぶ薄らいだみたいだし、長いブランクから抜け出したみたいだ。

ここから取り返せるかも。

倍返し登山だ!

 

でもそんな心持ちとは逆に、体力的にはもうしんどい。

6座目の大深岳ゲット。

全体的に大した標高差は登っていないんだけど、それなりの距離を歩いてるからね。

それになんと言っても前日の夜行バスの移動疲れがおっさんを蝕む。

 

ガスがぐるぐる回りだした。

不思議な光景をポカーンと眺めていた。

 

あ、岩手山が見える。

あたかも他人事のように、ぼーっと見てた。

もうガスが身に沁みてたから、この光景が現実に思えなかったのかもしれない。

 

おおー!!しばらくして現実に戻った。

ガスが…ガスが晴れていくでゴザルー!!

一気にボルテージマックスへ。

 

振り返った縦走路にも青空が。

 

これは、、晴れる!!

 

どんどん晴れるどーー!!

 

体がびちょびちょなのをいいことに、嬉ションしちゃってたかもしれない。誰もいない山の中で、それぐらい興奮していた。

 

三ツ石山への感動の縦走路

三ツ石山荘まで4.7km。

この4.7kmで、これまでの不幸を全部取り返す!!

 

遅れてやって来たてんくらA予報。

遅すぎるよ、ほんと(泣くほど嬉しい)。

 

考えてみれば今日は誰ともすれ違っていない。

こんな日もあるんだなぁと、諦めずに歩いてきたからこその絶景を独り占め。

喜びで笑いが止まらない。

 

アハハハー。

ガスが晴れたお陰でこれからめっちゃ下るのが見えるー、アハハハー(泣)

 

そして、小畚岳(こもこだけ)に向けた凄まじい登り返しもよく見える。

ガスってたら知らずに済んだかもしれないけどね、それでも晴れてる方がはるかに良いに決まっている。

 

もう少しで下り切る。

靴下までびっちょり濡れたハイキングシューズで下山するってこんなにしんどいのかということを知る。

 

鬼畜な登り返しが始まった。

考えてみればゼーゼーハーハー言って登るのはこれが初めてかも。

 

この時間をずっと待っていた。

秋田駒ヶ岳登山への移動の時に車を運転してて見えたこのどデカい岩手山に惚れ込んだんだよね。

裏岩手縦走路の存在はその時には知ってたから、ここを歩くことを大袈裟ではなく夢見てた。

明日が晴れてくれて、歓喜の登山になることを心から祈る。

 

息が上がると、足を止めて何度も振り返る。

大深山荘辺りまでは、今回のブログは前半部分は端折って一話にまとめちゃおうと考えてたんだけど、この展開に前半は前半だけできちんと書こうと方針転換。

やっぱ山旅ってこうじゃないとね。

 

見事にもっこりした小畚岳(こもこだけ)。

もっこりをもっ○りって書く人いるけど、むしろそっちの方が卑猥だから(笑)

晴れてきたらね、もうどんなことも笑い飛ばせる。ほっ○り登山だ。

 

緑が生き生きしてるから、フイルムシミュレーションをVelviaやASTIAへ変更して彩度高めに変更。

昔だったら異なるフイルムを入れたカメラを2台持って、場面によって使い分けてたんだろうけど、それを考えるとフイルムシミュレーションというのは夢のようなシステムだ。

このフイルムシミュレーションは、YouTubeのXチャンネルで開発秘話が紹介されてるけど、そのこだわり、執念というか熱意にはほんと心揺さぶられるし、フイルムメーカーの使命みたいなものが伝わってきて、改めてこのフイルムシミュレーションを使える喜びを感じざるを得ない。

それに写真撮ることが楽しいしね。自分みたいなど素人でも、レタッチソフト使わなくてもきれいな写真に仕上がるのが有り難い。

 

ちなみに、歩きながらこんな事も考えていた。

エスコンフィールド、ペイペイドーム、ベルーナドーム、ZOZOマリン、京セラドーム、MAZDAズムズムスタジアム…

などなど、企業系の名前が付いた球場ばかりだけど、現在、圧倒的にかっこいい球場名ってどこだと思う?

 

自分の中でその結論が出た。

間違いなく、No.1だ。

 

みなさんもぜひ考えてみてほしい。

 

 

自分の答えを言うと、それは

 

坊っちゃんスタジアム。

 

どうだ。ずば抜けてるでしょ?

漱石スタジアムでも、吾輩は猫ちゃんスタジアムでもなく、坊っちゃんスタジアムと名付けた関係者のセンスに頭が下がる思いだ。

 

対して、ダントツでダサいと思うのは、バンテリンドーム。圧倒的にダサいでしょ。

 

登山って頭の中を真っ白にできたり、たまにどうでもいいことが次から次へと思い浮かんでくるのが心地よい時間でもあるんだよね。

 

裏岩手7座目、小もっ○り山、踏み踏み。

 

少し強めの風が吹き抜ける稜線だけど、ここからが本日最大の見せ場「三ツ石山」の始まる。

 

疲れちゃいるけど、思い描いていた、夢のような縦走がやっと始まってわくわくする。

 

角度を変えれば岩手山へ向かって真っ直ぐ進んでるみたいだ。

久しぶりのお日様という感覚にもかなり酔いしれている。

 

7月になって咲き始めたばかりのシャクナゲがたくさんあるという不思議な季節感。

 

だいたいどの山ももっこりしてる。

風景が一流なのに、コメントが三流以下でどうもすみません。

絵が良いんだから、余計なことは書かずに黙っておこう。

 

三ツ石山荘まで残り2キロ。山頂まではあと1キロってとこかな。

カウントダウン開始。

 

この風景がたまらなくいい!いいったらいい!!

左前方に見える池は三ツ沼だね。

紅葉の時期はここが黄色と朱色で埋め尽くされるって言うんだから多くのハイカーが押し寄せるのもうなずける。

初夏の緑も負けてないと思うけどね。

 

ニッコウキスゲ。

 

毎度、空の撮影はフイルムシミュレーションをクラシッククロームで。

この色がね、大好き。

クラシックネガも試したいけど、X-T1には入ってないんだよね。プラグインで追加購入できたらいいんだけど。

 

山頂はもう目の前だマエダ。

オヤジの戯言も強風がかき消してくれる。

 

最後のカラ元気がこれだ。くっそダサいポーズで8座目の三ツ石山ゲット。

 

今日はもう登らないで済むということ以上に、これでやっとびちゃびちゃに濡れた靴と靴下から解放される。

その喜びが爆発して、「これで足が自由だー!!」と意味不明なことを吠えていた。

 

なんでもいいから吠えたかった。日常となった残業まみれの日々に心が病んじゃいそうなのだ。

山の上でぐらい魂を開放してあげなきゃ。

 

吠えたらスッキリした。

明日はあの岩手山に登って焼走り登山口へと下る。

ほんとにあんなとこまで歩けるんだろうか。

 

 

三ツ石山荘はここから0.9km下った先にある。

もう靴を脱げると思ってしまったから、ここから小屋までの区間が一番長く感じられてしまった。

何度も言うけど、登山は心持ちなのよ。

 

0.9kmというには異様に遠くないか?

 

初夏の東北はチングルマがわんさか咲いてる。

秋田駒ヶ岳ほどではないにしてもテンションを上げてくれる。

 

標高を下げるにつれ、岩手山が大松倉山の影に隠れていく。

岩手山の遠さは不安でもあるけど、それ以上に明日への期待にわくわくする。

 

三ツ石山荘の夕暮れ

ほいっ、着きました。本日のお宿。

こんな立派な小屋が避難小屋だなんて信じられる?

いつか歩こうと思っている越百山の小屋とかと比較しちゃうと、東北の避難小屋のレベルの高さにビビる。

 

中はこんなだよ。ほんと、ログハウス。

やったぜ貸し切りだぜぇぇええ!!と喜んだ1時間後、来日して4ヶ月、全く日本語が話せないチェコからやって来た女子大学生が一人、トレランの格好でフンフン言いながら入ってきた。

自分は1階、女学生は2階を使用。

英語で何を言ってるかはなんとなく分かるんだけど、言い返せないもどかしさ。ネットが通じるならGoogleに翻訳を頼めるのに、ソフトバンクはぜんぜん駄目だったよ。

子供の英検に付き合って勉強し直そうかな。

 

まず水場へ。

網張温泉方面に歩いて小屋から2分ぐらいのところにあるよ。

 

細いけど出てて安心した。柄杓を使ってバケツに溜まった水をプラティパスに入れていく。

ついでに柄杓で手ぬぐいを濡らして体を拭いたり。

間違っても手ぬぐいをバケツに浸けたりしないよーにね。

 

小屋の前は池塘になってて、夕日を綺麗に映す。

 

なんか、山と渓谷に使われそうな1枚だなぁ。

静かに、静かに、日が暮れていく。

今日の夕暮れは紫色。

雨で大気が洗われ、いつも以上に極彩色豊かだ。

 

始まりがガスガスだったのに、最後がこんな平和に終わっていく。

 

明日も距離が長い山行になるから修行になるかもしれない。

そしたら少しは引き締まった良い男になるかもしれない。

いや、ただ単にパワハラを受け続けてやつれたおっさんにしか映らないか。

 

でもいいんだ。

誰に誇るわけでもなく、最後までやりきるだけだ。

やりきった者にだけ見える絶景が楽しみだ。

 

 

哀戦士ガスダム~水没のオヤジ編、終了です。

 

前編、おわり

やっぱり、東北の山は大きい。

朝日岳や飯豊山も巨大だったけど、この裏岩手縦走路は東北の山の大きさと面白さ、そして厳しさを存分に楽しむことのできるコースだと思う。

それと、東北の避難小屋の立派さね。

これはもう特筆すべきものがあって、アルプスの有人小屋よりもよっぽど綺麗だったりする。

来たときよりも美しく、そうやって大事に使用してる人が多いというのもあるだろうけど、地元山岳会の方の協力もあってのことだと思う。

テン場がないから、自ずと避難小屋を活用することになるけど、利用させてもらったら協力金は任意だけどしっかり支払おうね。

 

天気が変わりやすい梅雨の空。

山の上の天気はなおさら読みにくい。

何度もドロ道で滑り、水たまりにドボンし、散々な目に遭った自分を最後に神様が憐れんだのか、最後の最後に三ツ石山へと続く縦走路で晴れてくれたのは粋な計らいと思わずにはいられない。

 

なんにせよ、諦めて盛岡観光に切り替えなくてよかった。

 

後編では朝から見事に晴れ渡った青空の下、岩手山へと続くこの縦走路のクライマックスを歩くことになるんだけど、最後の岩場の縦走路から見上げた岩手山の姿がめちゃくちゃ気に入ってるから、ぜひ見てほしいところです。

 

ではでは

 

http://hibihansei.jp/uraiwa-2023/


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