ぐあぁ〜!!
なんじゃこの腕の痛みはぁ!
まともに車のハンドルを持つこともできない。
何が起こったのか。記憶を遡ってみる。
張り切って突入したゴールデンウイーク。ウキウキだった。
「よっしゃー!今年のゴールデンウイークこそ屋久島を縦走するんだ!」
そう一年前から鼻息荒めに企画していたけど、金欠によりあえなく断念。
ならば仕方あるまい。九州脊梁の山々を歩くぞ!
などといろいろ考えて浮かれてたけど、まさかの晴れ予報は最初の2日のみ。残りの7日間は雨、もしくは猛烈な風というツキの無さ。
だれだよ、雨乞いしたの。くそっ。
その貴重な晴れの初日を芝刈りに充てた。
春の陽気で元気よく伸びた雑草を、刈って刈って刈りまくった。
必殺の刈払機を操って庭の草を一網打尽にしてやった。
でも刈払機って、見た目以上に腕、腰、首に負担かかるんだよ。
作業が終わって気絶するように眠り、起きてみれば腕が終わってた。
いや、我がゴールデンウイークが終わってた。
この腕の筋肉痛は、ゴールデンウイーク最終日まで引きずることとなったのだ。
そんな満身創痍な体で向かう場所、
そう、ゴールデンウイーク2日目、男は古墳へと向かうのであった。
傷を負った哀れなゴリラは、まずは王塚古墳へ。そして五郎山古墳へ。
というわけで、今回は装飾古墳巡りの第二弾、五郎山古墳どえす。
つか、前回の王塚古墳ですでに書き疲れたから、今回は簡単に終わらせるつもり。
五郎山古墳 本編
五郎山古墳館へ
さて、まずは五郎山古墳の場所を確認してみよう。
さあ、どうだ。まさかの前回の王塚古墳の使い回し。
この分かりにくい地図でなんとか参考にしてほしい。
五郎山古墳は福岡県筑紫野市原田にあって、JR原田駅から歩いて7分のところに五郎山古墳館があるよ。
ここが「五郎山古墳館」。
五郎山古墳は6世紀後半に造られた装飾古墳。
前回紹介した王塚古墳から九州自動車道を使えば1時間もせずに移動できる距離にあるよ。
この古墳館の設備がきれい過ぎて戸惑う。
しかも、館内に入るなり女性係員に席へ案内され、すかさずシアター上映が始まるという素晴らしい段取り。
こんな博物館、これまで出会ったことがない。
五郎山古墳の歴史を理解したら、石室のレプリカを見学させてもらえるんだけど、気が焦った自分がカメラを構えると、係員の女性にすかさず止められた。
突然のおあずけを喰らい焦る自分をよそに、女性は余裕の笑みを浮かべ、
「待たれい!シャッターチャンスはこの後にありますから」
ほえ?
そして続けざまに、高らかにこう言い放ったのだった。
「オーープン!!!」
さらに続ける
「いでよ!!五郎山古墳っ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・
これは…夢か、幻か。
古墳のレプリカが、モーゼが海を割るかのように石室への通路が広がっていく。
まさかの五郎山イリュージョン。
これはもはや、エレクトリカルパレード古墳。
奥からミッキーが出てきそうだ。
なんという演出。
改めて言うけど、こんな博物館、初めてだYo。
しかも、これで無料なのだから、それこそがイリュージョン。
唖然にしている自分の姿を見て女性は満足したのか、
おもむろにガッツポーズを作り、
「では、ご自由にお撮りくださいっ!」
そう宣言したのだった。
ほえー。
まあ多少盛ってるけど、やり取りはこんな風に感じられた。
そしてすかさず女性は、
「車椅子の方でも奥の石室まで入れるようにしております」
まるで料理長が「隠し味にほんの少しチョコを加えております」と、こっそり秘密を告げる粋な言い方にも拍手を送りたい。
そして、開いた通路を通って石室へと踏み込む。
そこに広がる古代のアート。
驚きすぎてションベンちびる寸前だったぜ…。
規模は小さいけど、間違いなく五つ星の博物館だ。
古代ワールド
さあ、これが古代ワールドだ。
舞い上がってしまえ。
王塚古墳の様な派手さはないが、生活様式や価値観が分かる絵画だ。
馬にまたがり、弓をかまえる古代人。
馬からムカデの尾みたいなのが出ているが、これは旗。
犬もいるから狩りの絵だろうけど、
磐井の乱の後にできた古墳だから、大和朝廷との戦でも描いた様にも見えるな。
棺を乗せる舟が星の中を進んでいく。
舟は死者を黄泉の世界へゆっくり運ぶという、なにか安らぎさえ感じさせるこの時代の宗教観が見えてくる。
左下には鹿?イノシシ?らしき動物を狩りする者、その横に祈りを捧げる者がいたり、右には靫(ゆぎ)と王冠みたいなものをかぶった者がいたり。
この時代の祭事や生活が、書物で残されていない代わりに、その何倍も分かり易く絵で描かれている。
この古墳を発見した人の驚きが想像できるな。
ちなみに、このアートを完成させた当時の絵描きさん達は間違いなくプロだったんだろう。今でいうチームラボだったに違いない。
他の古墳でもたくさん予約が入って、出張ばかりしていたに違いない。
答え合わせみたいで味気ないけど、やっぱり靫(ゆぎ)の横にいる人の頭に目が行く。
まさかこの時代にティアラか?
この時代の権力者はティアラか帽子みたいなものをかぶってた様だ。位が高いのか、シャーマン的な存在だったのか、儀式で使う正装だったのか。この想像の広がりが面白い。
このヘルメットのデザインが超絶ブラボー。
マジで自分の登山ヘルメットにもこの装飾入れたい!
ステッカー買うから作って!!古墳館の皆さん、お願い!
五郎山古墳で使われたのは赤、黒、緑の三色。
靫(ゆぎ)や弓の武具は魂を守護するもので「燃える闘魂」アントニオ猪木を描いたもの。
ではなく、「死者への鎮魂」を願ったものらしい。
装飾古墳の分布図がこれ。
圧倒的に北部九州に集中しているのが、やはりチームラボ的な絵描き集団がいたんだと思われる。
ちなみに、先日見た「地元検証バラエティ福岡くん」でSLAM DUNKの登場人物と福岡県の関係性について特集してたけど、三井寿は福岡の酒「三井の寿(みいのことぶき)」から取ったらしい。
そして、三井の寿から5分で流川。有名な桜スポット流川桜並木があったり。まあほかにも福岡市南区には高宮、大楠、野間があったり。
そして、朝倉には国史跡「仙道古墳」。
ふむ。間違いないね。
聖地巡礼で鎌倉ばかりがもてはやされてるけどさ、
朝倉市にもお金を落としてっておくれ!!
スラムダンクより、スポンジボブのファンなので、話を古墳に戻す。
福岡近辺にある他の装飾古墳の紹介もしてるんだけど、この福岡県うきは市にある珍敷塚古墳(めずらしづかこふん)が実に面白い。
まず太陽がめちゃくちゃ特徴的。つか、ピカソ超えてるから、マジで。
さらに2匹のヒキガエルが描かれるという奇抜さ。なんとも呪術的なデザインで凡人には決して思いつかない。
珍敷塚古墳の壁画は、死者が太陽の世界から月の世界へ船で旅立つ様子を表現してるそうだ。
この時代は情報が乏しかったはずなのに、あたかも古代エジプトを彷彿させる洗練された宗教観があったんだね。
五郎山古墳は、この時代なんで横穴式石室。
築造後も出入りすることができ、最初の被葬者のあと、2~3代にわたって追葬が行われたと予想されてるらしいよ。
ちなみに、この時代は火葬はされず、宗教的な理由からなのか、死後2週間ほど経ってから埋葬されていたらしいから、遺体の腐敗が進んでうじ虫に覆われていたらしい。
なんでそんなことしたんだろう。
病気も流行しそうなのに。
五郎山古墳へ
古墳館で学んだ後は実際に古墳を見に行ってみる。
古墳館に車を置いたまま、歩いて5分もかからない距離に五郎山古墳はあるよ。
6世紀後半に造られたと聞いてたけど、中頃って書いてある。
この古墳の被葬者はここ筑紫野市を治めた豪族のお墓だそうです。
今となっては名も無き王。
横穴式石室の内部構造の模型もあったりするけど、アリの巣っぽい。
この横穴式の通路を羨道と言って、11mもある。
被葬者を安置した玄室、そして前室、羨道の3部構造で、複式横穴式石室とよばれる。
さて、五郎山古墳の形は以下のどれでしょう?
①牛糞、②円墳、③スティーブン
つまんないことしか言えなくてごめんなさい。
2017年に一般公開したらしいけど、ここ最近はしていないらしい。
関係者の皆様、お願いです、こんなふざけたおっさんですが、こんどインビ送ってください。
綺麗な円墳で、外縁には周溝という浅い溝が巡っている。
こんなただの円墳の中に、最高峰のアートが詰まっているなんて誰が予想できたか。
悔やまれる
そもそも、今日は五郎山古墳に立ち寄る予定ではなかった。
王塚古墳を見終わって、自宅に帰ろうとしたら間違えて福岡都市高速ではなく九州自動車道に乗ってしまい、それなら前から狙ってた五郎山古墳まで行ってしまえ!と、ノリで筑紫野まで来てしまった。
しかも、五郎山古墳の装飾にはあまり期待していなかったから、この古墳館の造りのすばらしさに脱帽。
ほんと、古墳館だけでも見に来る価値はあるよ、間違いなく。
最後に、古墳カード配布中ってホームページに書いてあったけど、もらいそびれたのが悔やまれる。
さて、次回は岩戸山古墳へ。腕が痛いから登山ではなくまだまだ古墳巡りが続く。