【後編】谷川連峰馬蹄形登山 よっ三代目! 食い込むサングラスときらきら輝く草花の世界 2日目

【後編】谷川連峰馬蹄形登山 よっ三代目! 食い込むサングラスときらきら輝く草花の世界 2日目

うどんが好きで好きで、好きすぎて震える(笑)。

なんだ震えるって。

 

ちなみにうどんは温かくなくてはならない。なぜならうどんのお出汁が好きだから。

正確に言うと、九州の醤油を使った甘〜いだしつゆと肉うどんの組み合わせに惚れ込んでいる。

温かいだしつゆに肉の脂がとけた汁をすすったら、ああこれこれと、もう何度も食べてるのにそれだけで幸せになれちゃうぐらい好きなのだ。

温かいから震えたりしないんだけどね。

なんだ震えるって。

 

そんな自分は今、馬蹄形で数撃ちゃ当たる作戦で撮りまくった大量の写真の整理に埋もれている。

と言っても時間が無いから、適当にガンガン削除していくだけなんだけど、写真を見ているとあの長く苦しんだ行程のことはすっかり忘れ、こんなすごい世界を歩いたんだなぁ〜と、再び充実した気分に浸らせてくれるのだ。

それは、甘いだしつゆをすすって、幸せに満たされるのと似ている。

うどんと一緒にすんな!という声が聞こえてきそうだけど、とにかく幸せになれるんだからなんだっていいじゃないの。

 

さて、そんな谷川連峰馬蹄形もいよいよ後半戦に突入。

昨日は西黒尾根から登り、茂倉岳避難小屋で一泊。そして朝の強風の中を武能岳まで歩いて前編終了。

 

後編は武能岳から白毛門の下山まで。

 

あの長い長い関越トンネルのはるか上。無限に続くアップダウンを乗り越えて、越後湯沢側の清水峠を通過し、再び水上へと戻る縦走路。

その途中に立ちはだかるのは超巨大な朝日岳。

 

清水峠までは元気だった。

朝日岳で完全に足を使い果たし、白毛門からの激下りでは抜き去っていく人生の先輩方から「もうすぐそこが登山口だから、頑張りな」と励まされ、天に召された一人の中年の物語どえす。

 

それでも、やっぱり思い返すとすごいところを歩いてきたなぁという充足感の方がはるかに勝っているのである。

 

谷川連峰主脈縦走の時もすごく感動したけど、この山域を縦走するということは、単なる山登りとは違って、もっと山の奥へ、深い自然の中へ足を踏み入れていくワクワクする感覚で、もう一段上の感動をもたらせてくれると思う。

 

 

三代目馬蹄形ブラザーズ。

感動を吹き飛ばすアホな中年が一匹。

では、後編です。

 

前編は ⇒ こちら からどうぞ

 

 

ルートとコースタイム

■2023年6月18日(2日目) ※カッコ内は標準コースタイム

茂倉岳避難小屋⇒(20分)⇒茂倉岳⇒(110分)⇒武能岳⇒(55分)⇒蓬ヒュッテ⇒(65分)⇒七ツ小屋山⇒(50分)⇒清水峠⇒(140分)⇒朝日岳⇒(35分)⇒大烏帽子⇒(30分)⇒笠ヶ岳⇒(50分)⇒白毛門⇒(165分)⇒白毛門登山口

コースタイム:12時間(休憩含まず)

総距離 18.2キロ
累積標高上り 1,450m

 

■2日間合計
コースタイム:17時間15分
総距離 25.2キロ
累積標高上り 3,027m

 

谷川岳馬蹄形登山(後編)

武能岳から蓬ヒュッテへ

 

武能岳の山頂から蓬ヒュッテに向かって歩き始めている。

 

すっかり日が昇り、風も弱まってきた。

今はまだ立ち止まれば寒いぐらいだけど、歩いてたらそりゃ暑いわけよ。

 

それにこれから強い日差しが襲ってくる。

お昼頃になった時の暑さに果たして耐えられるか、今から心配。

 

そんな不安をよそに、相変わらずこの大きな景色はちっぽけな中年ハイカーなんぞ軽く一飲みにしてしまう。

おかけで何度も何度も足を止めさせて、前に進むのを遅らせるのだ。

 

そんなこんなで、本日最大の山場である朝日岳に差し掛かるときには10:30を回り、猛烈な日差しの洗礼を受けることになるんだけど、それはもう少し先の話。

 

今はアホみたいに嬉々として武能岳から蓬ヒュッテへアップダウンしながらのんびり下っていく。

 

この大きな世界にほいっと放り出された様な不思議な感覚。

そこにちょこんと建つ、ジオラマみたいなのが蓬ヒュッテ。

 

蓬ヒュッテは1,529m。

1,978mの茂倉岳から数えたら450mも下ることになるんだよね。

もったいない。

 

左を見れば、越後湯沢の岩原スキー場がこんなにも近づいてきた。

この角度から見えるなんて、すごく新鮮。

 

太陽が信じられない速度で昇っていくのに対して、さっきから実はあまり進んでいない。

これぞ我が登山における奥義の1つ、電池切れ歩行。

急ごうか怠けようが、ゴールする場所は結局同じなのだ。長く楽しんだモン勝ち。

 

ここ蓬ヒュッテから土合へ下るルートがあるなんて知らなかった。

マリオが土管に入るみたいにエスケープできればいいけど、かなりの距離を自力で歩かねばならない。

 

バイケイソウの花が咲く寸前。

バイケイソウの花って久しく見てないな。

 

蓬ヒュッテと右がテン場。

 

ミヤマキンバイの森。

 

近くで見るとテン場は水たまりが多い。もはや池塘みたいだ。

すれ違った方から昨夜はテン場に(正確にはテン場ではないんだけど)、10張も並んだらしい。大混雑だね。

蓬ヒュッテのテント泊が以前からどういう仕組みになってるのか知りたくていろいろ聞かせてもらったんだけど、テント代はトイレ利用料として500円支払うだけなんだと。

白馬大池は…。。もう言わんとこ(笑)

 

ツマトリソウ。

 

AM6:20

蓬ヒュッテに到着。ここのタンクから水分を補給させてもらったよ。

昨日の疲れは残ってるけど、ここまでが絶景過ぎて実に清々しい気分だ。

気が早いけど、成功ホルモンの香りがただよい始めている。

 

長大な稜線と七ツ小屋山

次なる目的地、清水峠までは4.2kmもあるのね。

蓬ヒュッテのすぐ隣にあるぐらいのイメージを持ってたからびっくりした。

 

たっぷり水分取ったから行動再開。

ここまでもすごい絶景を歩いてきたけど、ここからがもっとすごい。

 

もうほんとね、アップダウンなんぞ苦にならんもんね。

こんな山歩きができるからこそ馬蹄形は不動の人気を誇るんだろうな。

 

シシゴヤノ頭方面への縦走路との分岐。

そんなピークがあるんだなぁと、知らないことばかりだ。

 

あれが上州のマッターホルンと呼ばれる大源太山だね。

 

天気にも恵まれた。

まだ朝が早いから気温も低くて快適。

 

完全に不意をつかれた。七ツ小屋山というピークがあるなんて知らなかったから、突然始まる登りに満面の苦笑い。

 

小さな池塘も出てくる。

馬蹄形は全体を通してぬかるみドロドロ道がほとんどなくて歩きやすい。

一番最初の西黒尾根の登り始めだけかな。

 

のんびりペースを維持しながら歩いて、ようやく山頂が見えた。

馬蹄形、6座目のピーク。

 

七ツ小屋山の標柱は、もはや何が書かれているか解読不能。

まあ読めなくても困ることはない。

先へ行くのみ。

 

馬蹄形で最低標高の清水峠へ

お次は清水峠だ。

ここで目に異常な疲れを感じて、サングラスを装着したんだけど、こんなこと珍しい。

それだけ昨日から吸収してる紫外線の量が半端ないってこと。

 

なんにせよ、頭デカ頭族にとって、メガネの締めつけは大敵なのだ。

サングラスは似合う似合わないの前に、こめかみに食い込むか食い込まないかで選ぶ。

メガネと違い、サングラスってデザイン優先だから、長時間かけられる様なゆるいサイズって少ないんだよね。

 

そう、頭デカ族は欲張っちゃいけないんだ。

 

神様はその人が耐えられるだけの試練を与えてくださるという。

 

そういう頭デカ星の下に生まれてきたと思うしかない。

 

頭デカ族を集めて一斉暴動でも起こせば、それこそ頭のデカい奴らが集まって何かしてるって笑いものにされるだけだ。

 

相変わらず、スローで行くぜ。

そんな風に言えば少しだけかっこよく聞こえるかもしれない。

目が疲れてるのと一緒で、体にも疲労が蓄積されてるわけで、後半戦最大の山場朝日岳の登りで余裕を残しておくぐらいじゃないと、その先の笠ヶ岳や白毛門で後悔する姿が目に浮かぶ。

とにかくペースを落とすことを意識して歩くぜよ。

 

大源太山がこんな近くに見える。

まだ未踏の山だけど、こうやって高いところから見下ろしちゃったから、もう登ることはないかな。

 

ここまで来ると、湯沢の街がよーく見える。

関越トンネルを往復できちゃうぐらいの距離を、それも山の中を歩いていることがとんでもないアホに思えてきた(自分を誉めている)。

 

ちなみに、新米の季節になると、魚沼を中心に越後湯沢エリアまで「本気丼(マジ丼)」というイベントが開催され、多くの食事処で本気の丼ぶり飯が食べられちゃうから、その時期は雪山登山のついでにコシヒカリを食べ回るべし。

 

巻機山の近さにも驚くわ。

なんもかんも絶景。

 

足元に目を移せば、今歩いてる世界がどれだけキラキラ輝いているかが分かってもらえるでしょ。

そりゃね、目も疲れるよ。

 

巻機山が近づくのに相反して遠ざかっていく茂倉岳。一番左のピークが谷川岳。

馬蹄形は総距離26km。距離だけで言えばちょうど七ツ小屋山が13kmで中間地点。やっと後半戦に突入したばかり。

 

清水峠は標高1,444m。馬蹄形で最も標高が低いポイントに向けてゆっくり下っていくから、すごく体は楽。

下りのほうが踏ん張るから筋力的にしんどいと言う理屈も分かるけど、上りの辛さに比べたら天国。

 

清水峠の東電小屋が見えた。

そりゃそうだよなって感じだけど、高圧線を通してるところに建っているんだね。

尾瀬の東電小屋みたいに営業小屋として開放してくれたらこんな嬉しいことはないんだけどなぁ、、と思ったものの、こんなアクセスの悪いところ管理が大変で開放してくれるはずがないよね。

 

清水峠からも土合へのエスケープルートがあるけど、さっき通った蓬ヒュッテから土合へ戻るルートに合流するから、清水峠だとその分長く歩くことになる。

もし時計回りでエスケープするなら、蓬ヒュッテで判断すべしだね。

 

ずーっと下ってきた。

馬蹄形は…もったいない…の連続だよ。

 

ここでザックの奥底で潰れ残念な姿となった豆大福で栄養補給。

歩けば腹が減る。人間の体は単純な作りだな。

 

清水峠の裏からはじゃばじゃば水が出てるからここでも水分補給。

 

前々から気になってた白崩避難小屋を見学させてもらいましょ。

 

うーん、これは想像を超える狭さだぞ。

古いし汚いし、トイレやばいし。

ほんとおこがましいというか、どの立場からそんなこと言ってるのか自分で頭を抱えてしまうんだけど、茂倉岳避難小屋に一泊するプランにしてほんと良かったよ…。

 

ここから朝日岳まで、トレイルはアカモノが鈴なりで咲いている。

何年も山歩きをしていると、自然とこのアカモノが夏気分を上げさせてくれる大事な存在だったりする。

決して珍しい花ではないんだけど、そういう意味ではかなり貴重な存在。

 

馬蹄形でよく見る風景。

牧歌的だなぁ。コースタイムは鬼畜だけど(笑)

 

ゴゼンタチバナ。

 

しかし、この豪雪地帯によくこんな高圧線を通したもんだよ。

冬に何かあってもここまで来るのははっきり言って無理だよ。スキー隊で編成組んで、ラッセル代わる代わるやらなきゃ。

ヘリ輸送だったりして。

なんにしても、いろいろ言われてる東電だけど、インフラを守るって、尊敬される仕事だよ。

 

いよいよ朝日岳へ向けた激登り

池塘がでてきた。

ここで、朝日岳から下りてきたハイカーから「ここら辺でサンカヨウを見ましたか?」と聞かれ、瞬時にサンカヨウが何かを理解できなかった。

それぐらい脳内も疲れてたみたいで、

「さんかよう?はて?」

しばらくして、

「ああ、サンカヨウね!葉っぱの大きいあれ。見なかったですね」

とボケ老人みたいな回答をしてしまった。

 

幻の花とか言われてるみたいだけど、自分は割と見かけるし、扇沢の針ノ木岳登山口の前にたくさん咲いてるよ。

 

マイヅルソウ。

マイヅルソウもアカモノと同じく、どこの山でもたくさん咲いててとても身近だけど、こいつがいないと夏らしくないっていう大事な存在。

 

それまでの草原のトレイルから一転、樹林帯へ。そして一気に蒸し暑くなる。

清水峠が標高1,444mだからね、普通なら森林限界なはずがないんだよね。

 

これも鈴なりのベニサラサドウダン。

 

青空はフイルムシミュレーションをクラシッククロームで撮れば、100点満点の写真が簡単に出来上がる。

子供の頃から見てる空ってまさにこういう色だよね。

 

これはまさか!

足元にツバメオモト〜♫

 

こいつをしゃがんで写真撮ってたら上から下りてきたおじさんがこれは初めて見るなぁ~とおっしゃっていた。

それもそのはず、レッドリストには指定されてないけど、自分もあまり見かけない花。埼玉では準絶滅危惧種、奈良県では絶滅寸前種だったり、至るところで鹿の食害が心配されている。

東北に行けばたっくさん咲いてるけどね。

 

見よ、これが鬼畜な上り。

樹林帯を抜けたと思ったらこれだよ…。山野草を見て現実逃避してたけど、もう逃げられない。。

 

しかも本ピークはこの裏にあってまだまだ先という追い鬼畜も待っている。

 

谷間には雪渓がまだ多め。

とにかく暑くなってきたから、あそこでゴロゴロしたいという欲求にかられる。

 

すれ違うハイカーを捕まえて、

「あれが、あれが山頂でござるかのぉ…」

「いえいえ、あの奥です。そうですねぇ〜、あと30分といったところでしょうか。カーカッカッカ」

 

眼の前が暗くなった。

もう歩けない。

それぐらい疲れている。笠ヶ岳ぐらいまでは余力を残しておきたかったけど、そうも言ってられない。

 

何度も振り返って休む。やっと七ツ小屋山と同じぐらいの高さか。

1,444mまで下らせて朝日岳まで500m以上登らせる(笑)。

ここにきて高尾山一つ登るのねん。

 

武尊山が近くなってきて水上に戻ってきた気がする。

冷静になって考えてみれば、この景色を見て戻ってきた気にさせるのはもはや普通ではないんだけど。

 

尾瀬方面の至仏山、燧ケ岳と波打つ山並み。

何度も足を止めるからここら辺は似た写真ばかりだった(笑)

 

風が通るところではだいぶ長く休む。

もう無理なのよほんとに。20歩歩いて10秒休む感じ。

 

やっと山頂かと思いきや違うというね…。

で、よーく見てみると、ジャンクションピークって書いてあるじゃないの!

積雪期はここから巻機山へ行けちゃうところだね。

絶対に行かないけど(笑)。

 

つか、そんなことより、朝日岳山頂までここからまだ35分も先だなんて。。

白毛門145分て…。

ここで天を仰いで目を閉じたよ。

 

これが巻機山への稜線。

自分は眺めるだけで十分満足。

 

やっと山頂が見えた。あのぽっこりしてるところがそうだ。

肉眼でもへたり込むハイカーたちが見える。みんな疲れてるんだな。

 

チングルマ。

前編で書いたけど、チングルマとハクサンイチゲを見分けられたら登山中級者。

 

朝日岳分岐で宝川温泉に下っていくこともできるんだね。

 

こんな山奥で木道を整備してくれた方々に頭が下がる。

ぬかるんだトレイルを歩かなくて済むのがどれだけ体力の消耗を抑えられるか。

 

ウスユキソウとコスミレのコラボ。

 

これが馬蹄形7座目。

鬼畜セブンサミットゲット。

後で知ったけど、朝日岳って日本三百名山なんだね。

百とか二百とか、そういうのどうでもいいんだけど。

登山って登る前の企画や登ってる時の心持ち、下山後の温泉やグルメまで含めたトータルで楽しむことが一番大事だと思う。

 

少し前に、ここから昇る朝日をあの茂倉岳と武能岳の間から眺めた。

ここまでよく歩いてきたよ。

まだ終わっちゃいないんだけど…。

 

山頂にはホソバヒナウスユキソウがもりもり。

 

体力温存作戦は見事に失敗し、なりふり構わず朝日岳まで登ったから、最後は神頼み。

 

まだまだ余裕だ、ここからが本領発揮だと、脳内催眠をかけても、わずか一歩踏み出しただけで足に来てることを実感する(泣)

 

まだまだ続く絶景。笠ヶ岳へ

朝日岳の山頂は風が強くて、10分もいたら体が冷え切ったからそそくさと出発。

 

まだまだ絶景は終わらない。

前に見える大きなピークが大烏帽子だけど、標柱も何もないただの通過点。

笠ヶ岳は右下に見える小さなピークという意外。

アップダウンは繰り返すけど、朝日岳からは全体的に下り基調だからそれほどしんどくはない。

果たして…。。

 

バイカオウレン。

 

大烏帽子に向けてゆっくり登っていけば、冷え切った体が一気に熱を持って暑いけど、難関だった朝日岳を越えれば、馬蹄形もいよいよ最終局面だ。

がんばれがんばれーおっさん(セルフエール)。

 

大烏帽子山を越えれば、反対側の谷川岳の切れ落ちた東壁がまるでCGみたいに見える。

笠ヶ岳へと言うか、東壁へと吸い込まれる様に向かっていくというすごい感覚だ。

 

人はいつ死ぬか分からない。

自分の場合、上司からのパワハラ的な仕事の押しつけによっていつ過労で倒れるか分かったもんじゃない。

今日、この絶景が見られてほんと良かった。

 

そして、生きていることを実感する登りが始まる。はっきり言ってありがた迷惑な話だ。

電動キックボードでスイスイ〜と登りたい。

 

もはや抜け殻。

意外とハイカーが多い笠ヶ岳に到着。これで馬蹄形8座目。

 

左から谷川岳、真ん中が一ノ倉、右が茂倉岳。

まだ茂倉岳から麓の方まで雪渓が繋がってるんだな。

冬のあれだけあった雪がわずか3ヶ月半でこんなに減ってしまったことに驚くべきか、まだ雪が残ってることに驚くべきか。

日本は代謝の良い国だな。政治家の代謝は悪いけど。

 

笠ヶ岳の山頂でいかにも登山はしたことはありませんという風貌のおじさんから、

「あれが朝日岳かい?」と聞かれた。

えっ、まさか…と思いながら

「ええ、あの奥がそうですよ」と答えると、

「OK」とだけ言い残して朝日岳へと向かわれたしまった。

 

見た目で体力は分からない。

やはりというか、ここは変態が多い山域なんだろう。

 

場違いなところに来てしまった。自分は最後の力を振り絞り、ラストの白毛門へだらだら移動開始。

 

タムシバ満開の白毛門

白毛門までの途中、タムシバが咲いてたよ。

 

白毛門は標高が低いから樹林がそこそこ高く育っている。

 

ツツジがまだ咲いてる。

エゾツツジかな。

 

タムシバ満開。これだけ咲いてるとさすがに圧巻だね。

もうカメラを向ける気力もわずかしか残っていない。

 

タムシバ越しの笠ヶ岳と朝日岳。

ありがとう馬蹄形。

これが今生の別れだ(笑)

 

土合駅周辺の施設が見えた。山の奥の奥のもっと奥からやっと戻ってきた…。

つか、遠っ!!

 

ああ、見えた。白毛門の山頂は大賑わいじゃないか。

ここには冬と初夏に2回登っている。

冬は下山中に太ももがつって、しばらく横になって動けなかった。

初夏に登ったときは下山中に残雪で何度も何度も足を滑らせ、泥だらけになりながら二度と白毛門には来ないと誓った。

 

そう、ここの下山は半端なく辛いのだ。

 

今からそれが始まると思ったらここでゆっくり休んでおかねばなるまい。

 

 

こんな風に。

 

馬蹄形9座目。白毛門ゲット。

 

これでもう登らなくて済む。

 

あとは白毛門の激下りを堪能するだけだ。

 

いよいよ馬蹄形最終章、白毛門の激下り

行動食で残しておいた羊羹をゆっくり食べ、いよいよ最後の下りへ突入。

谷川岳東壁とハイカーの姿が実に絵になる。

果てしなく絶景は続く。

 

鎖場や岩場はもうカメラを構える余裕がなくて、すっ飛ばす。

このなんの変哲もない下りでさえザレがひどくて、足の踏ん張りも効かないこともあって、2回すっ転んだ。

 

白毛門を振り返る。これが本当に最後なんだ。

よく歩いたね。

でも不思議。振り返っても名残惜しさゼロ。

足の裏に豆ができて痛いし、なんだか罰ゲームみたいになっちゃった。

もういい加減帰りたい(笑)

 

白毛門は改めて思うけど、冬の方がはるかに歩きやすい。

それぐらいこの時期の白毛門はガレ、ザレ、鎖場がイヤらしい。

雪を味方につけて登る山の典型だね、ここは。

 

抜いたご高齢マダムも、昔は若かったから分からなかったけどこんなに大変だったのかねぇ、と疲れ切っていたけど、明らかに今の自分より元気そうだった。

 

こんな大木が倒れてて行く手を阻む。

もう下山が始まってから何度足を止めて休んだだろうか。

 

遊び尽くした。

心の底からそう言える。

人生でそんな風に言えることって、一体何度あるんだろう。

 

樹林帯に突入すると強烈な日差しは避けられるけど、風が通らなくてこれまた地獄。

ここまで来ればもう急ぐ必要はないんだけど、早く終わらせたいという気持ちもあって急ぎたい、その葛藤の連続。

 

たまに風が通るところを見つければ小休止。

さっきまで「朝日岳からは全体的に下り基調だからそれほどしんどくはない」、そんなことを言っていた己は最底辺のアホだ。

考えの甘さを痛感しておりまんがな。

 

このゴールへの架け橋を渡った時の嬉しさは忘れられない。

なんのために山で遊んでいるのか、もはや目的が分からないぐらい疲れ切ってしまったけど、きっとこの出し切った時に喜べるというのが一番ニュートラルな感情なんだろうな。

 

この地図を見て、いつかやってやろうとずっと思ってきた。

足は痛いけど、やっぱりうれしい。

でももう二度と歩かないよ(笑)

 

ほいっ、下山完了。

白毛門の駐車場に警察とレスキューが来てたけど、まさか笠ヶ岳の山頂で朝日岳ってあれかい?と聞いてきたおじさんではないよねと不安がよぎった。

 

谷川岳インフォメーションセンターの駐車場までへと移動してる途中、水しぶきがミストになって降り注ぐのが超気持ち良い。

 

スノーシェッドを抜ければ、左側に駐車場が出てくる。

 

今回は「土合山の家」の谷川岳温泉湯吹の湯に立ち寄ったよ。

いつも湯テルメとか猿ヶ京温泉だけど、谷川岳インフォメーションセンターから最も近いところにあるこちらが気になってお邪魔してみました。

露天もあるし、内湯もぬるくて疲れた体には心地よかったよ。

 

おわり

とにかくよく晴れた2日間だった。

絶景に次ぐ絶景で、どこまでも続く山並みと足元できらきら輝く草花の光景は、驚くほど綿密でありながら淡く、とにかく明るい世界だった。

大袈裟かもしれないけど、2日間みっちり馬蹄形という魔法にかかったような、そんな夢の様な時間を過ごすことができたというのが率直な感想。

2日間で歩いた距離は25㎞、累積標高上りは3,000m以上。

もし自分が、これぐらい余裕だなと思える体力の持ち主で、1dayで挑戦していたとしたら、今回の様な感動は得られなかったと思う。

ぜひ、2日間かけてゆっくり、そして長く魔法にかかってほしい。いや、絶対にかかるべきだね。

決して気軽に歩けるコースではないけど、谷川連峰馬蹄形はそんな特別なコースだったよ。

 

パノラマ撮影2連ちゃん。こちらは蓬ヒュッテあたりからの1枚。

衝撃を受け続け、そして本当にやりきったと、心からそう思える登山になった。

 

これは朝日岳山頂からの風景。左には大烏帽子と笠ヶ岳。

 

さてさて、馬蹄形前編では本当にたくさんの方が当ブログを訪れ、そして内容が限りなく浅いおっさんのチャレンジを読んでいただき、大変有難う御座います。

 

そして、毎度、相変わらず更新が遅くてすみません…。

 

そんな更新の遅さもあって、ずーっとマイナー路線でえっちらおっちら続けられてこれているのは、励ましの言葉をいただける方がいたり、昔から見てくれている方が励みになっているから。

 

毎度アホなことばかり書いてるし、いつまでも初心者みたいな登山ばかりしてて、のび太ばりに成長がないけど、少しでも参考になるところがあれば、書いてる甲斐があるというもの。

 

まるで日本ではないみたい、日本離れした風景、よく聞くセリフだけど、実はそんな風景に溢れているのが日本だし、微塵ながらそんな素晴らしさや山の楽しさを発信していきたいと思っているショゾンでゴザルです。

 

ではでは

 


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