南アルプスの山奥にテカった山があるという。
その山は本州では唯一の原生林保護地域として今なお原始的な森が残り、山頂近くには世界最南端のハイマツが自生し、ライチョウ生息地の南限としても知られる、まさに秘境の地。
そんな光岳の山頂にひときわテカリ輝く神秘の岩があるという。
その岩の上で中年太りしたおっさんが裸踊りをすれば、たちまちダイエットに成功するというテカりライザップ伝説。
ブ〜ン〜ブンッ♫ブ〜ン〜ブンッ♫(ライザップの音楽)
いくつになっても大盛りを食べ続けていたいのに、おっさんの基礎代謝はお化けフォークばりに下がり、食べたら食べただけデブ化に向かって火の玉ストレート。
肝臓の数値は危険水位をはるかに超え、ドクターからは「あなたほんとに死にますよ」と優しさに溢れる宣告を受け、だいぶ困惑している。
仕方あるまい。
再び大手を振って大盛りを食べるためにも、一旦痩せるしかない。
おっさんは裸になって「痩せて心置き無く大盛りを!」と踊り狂う。
すべては大盛りのために。
オール・フォー・オーモリ。オーモリ・フォー・ワン。
わがままボディを見せつけ、踊り狂う。
さあ、ライザップ伝説を信じ、南アルプスの山へと分け入ろう。
さてさて、2泊3日で念願だった南アルプスの光岳〜聖岳の縦走をしてきました。
芝沢ゲートを起点に2つの百名山を結ぶゴールデントライアングルルートで、全行程は47km、累積標高上り4612mというスーパー鬼畜プラン。
まず初日は光岳小屋でテント泊。
そして光岳から300名山の茶臼岳、200名山の上河内岳、100名山の聖岳へと、スリーツーワンのカウントダウン登山をしちゃおうという、なんとも贅沢な縦走コースだよ。
光岳の原生林の森はすっごく良かったから、めちゃくちゃ長いし大変だったけど、登る価値は間違いなくあります。
YAMAPなんかでは、辛い、甘かった、マジ修行といったコメントが多いけど(否定はしない)、それ以上に歩いてて気持ちの良い森だったので、良かったところを少しでもお伝えできればと思います。
2泊3日の山旅、1日目です。
標準コースタイム
■2024年9月6~8日 ※カッコ内は標準コースタイム
1日目 芝沢ゲート⇒(90分)⇒易老渡⇒(280分)⇒易老岳⇒(55分)⇒三吉平⇒(90分)⇒光岳小屋⇒(15分)⇒光岳⇒(15分)⇒光岩⇒(30分)⇒光岳小屋
コースタイム:9時間35分
距離:15.8㎞、累積登り:2428m
光岳と聖岳 1日目
芝沢ゲートからスタート
芝沢ゲート。
今回は贅沢にも会社を休んで平日の金曜スタート。
そのおかげで駐車場の空きはあったんだけど、それでもこんなに混雑してるからね、土日は深夜に来たって止められなそう。
トイレもしっかり完備されてるけど、なかなかの匂い。
囲いがあるだけラッキーか。
自販機は一本300円という既に山の相場価格。
芝沢ゲートまでのアクセス難を考えればそれも無理はないか。ふむふむ。
「だが断る!!」
下山後どんなに喉が渇いててもボンビーの名にかけて買わないぞ!と誓ってからのスタート。
芝沢ゲートまでが土砂崩れで迂回路ばかりだったから、必ず事前に光岳小屋のホームページで交通情報はチェックしとくべし。
5:40 登山開始と言いたいところだけど、ゲートから易老渡まで5キロの林道歩きで幕を開ける。
なるほど、YAMAPで光岳のレコを見ると20kmオーバーなのはこの区間の往復なのか。
易老渡登山口から急坂スタート
易老渡に着いた頃にはすでに汗がじゅわっ。
以前はここまで車で来れたらしいからね、現代に生きるハイカーは実に我慢強いよ。
6:55
やっと登山開始。
予想はしてたけど最初からかなりの急登。
この初日は累積で2400mも登ったからね。3日間通して初日が1番登るという覚悟が必要。
9月なのにヤマアジサイが咲いている。
でも9月だからキノコもたくさん。
お腹が緩いから毎回テント泊って心配なんだよね。
奇跡的になんとか前日に調子が良くなってきてこの日を迎えることができたから、その時点で9割方成功したも同然なのだよ。
光岳は本州で唯一の原生林保護地域とのこと。
そんな情報を聞いちゃうとね、ここの森がよりキレイに見えたりする。
急な尾根を登って、少し緩んだところで一休みして、再び急登、そんなことを何度も繰り返す。
ちなみにこの時期はヤマビルがいると聞いて超ビビってたけど、一度も姿を見ることはなかったよ。
この日は快晴だったから日が差した樹林帯の美しさったらなかった。
芝沢ゲートからまだ800mほどしか標高を上げてないからまだ景色を楽しむ余裕があったな。
面平というポイントに着いて、ここでも一休み。
テント泊装備で今日みたいな長丁場は久しぶりだからゆっくり進まなきゃなと警戒し過ぎてたから、逆にまだまだ歩ける感じ。
マインドって大事だよね。
9月初旬ということもあってまだまだ暑いけど、それでも8月に登ってたら死んでたよ。
まさか長崎の銘菓「よりより」にここで出会えるとは。
こんな大木がでてきたり、南アルプスの悠久の自然を感じる。
光岳の高純度の森
とにかく森が気持ち良い。
地面にびっしり生えた苔と、木々の間隔も広くて樹林帯なのに開放感すら感じる。
これまでたくさん山を歩いてきたけど、そのどことも雰囲気がちょっと違う。
これもマインドの問題か?
しらびその森に楓が混ざるとね、これがまた目が覚めるほど明るい緑で見惚れる。
そして足元には真っ赤なキノコがたくさん。
突然、木々の隙間から姿をのぞかせる聖岳。
ここまで上がってくると、時々樹林の隙間から涼しい風が吹き上げてきて生き返る。
テント泊装備だから、休憩のたびに肩をぐるぐる回すことを意識して、何度もぐるぐる回してた(笑)
この初日さえ乗り切っちゃえば、あとはテントの中で湿布を肩と足に貼りまくって、あとはコムレケアとマグオンとアミノバイタルでなんとか乗り切れるという自信がある(薬に頼りまくって何が悪い)。
標高2000mを超えたあたりで、なんとグランピング施設がでてくる。
ええ違います、携帯トイレブースどえす。
11月頃までは設置されているらしいよ。
まあ、こういう定番の苔のショットもおさえておく。
最近はどれもこれも似た写真ばかりになりがちだけど。
面白い写真の撮り方とかインスタで探してみようかな。
この山を歩荷する人はほんと偉いよ、それに比べて自分はずいぶん楽させてもらってますわ。
そんなことを考えながら登れば、まだまだ頑張れそうな気がする。
見晴らしが良いわけではないんだけど、三角点がでてくる。
ここで標高2254m。
芝沢ゲートが標高718m、光岳が2592mだから単純標高差は1874m。
それでも初日はイザルガ岳に登ったり、易老岳から光岳への登り返しもあるから、累積すると2400mオーバーになるわけね(鼻血)。
樹林から姿を見せたのは2百名山の上河内岳。
河内って何が正しい読み方が最後まで分からなかったから、いい加減統一選挙をしてほしい。
「こうち」「かわち」「かわうち」
もうめんどくさい。
とりあえず小学生で習う通りの読み方で「かわうち」に一票。
ちなみに、菅野も統一しておくれ。
三角点から少し下って、易老岳への登りが始まる。
お腹の調子が良いから今日は体がよく動く。
番号が振られてたなんて、ファイナルカウントの29で初めて知った。
ヤマビルを警戒してたとか言っときながら、こんな目立つ標識をここまで28個も見落としてきたんだから、我ながら超節穴どえす。
足元に日が届くところはシダ植物がびっしり。
小学校で習ったことなんてあまり覚えてないけど復習すると、シダ植物は苔とかと同じで胞子で増える胞子植物。
藻→コケ→シダ→裸子植物→被子植物と進化していったから、シダはとても原始的な植物。
いや、改めて理科ってやっぱり楽しい。
数学と理科が得意だったのに、ラクして文系に進んだことを、おっさんになってから後悔している。
易老岳に到着。
ここで暗いうちにスタートした先行組みに追いつく。
YAMAPのヒートマップだと黄色と青色だったからペースはゆっくりだったんだけどね、今年の異様な暑さを考えればまあまあ良いペースだったのかもしれない。
易老岳はご覧の通り、開けた山頂ではないのであくまで通過点。ちなみに標高は2.354m。
光岳までは単純標高差はあと200mほどだ。
しかし、等高線を見てガッカリするけど、易老岳から悲しくなるぐらい下るわけです。
顔色はもはやアバター。
三吉崩れというポイントは景色が開けて絶好の休憩ポイントだけど、軽くスルー。
ちなみに、芝沢ゲートからずーっとスマホ(ドコモとソフトバンク)の電波が入らなかったけど、ここでようやく入ったよ。
前日のサッカー日本代表のワールドカップ最終予選中国戦の結果をすかさずチェック。
この三吉崩れから正面に見える左奥のピークがイザルガ岳。右奥が光岳。
まだまだ遠いけどやっと目標を捉えて、俄然やる気でてきた。
途中沼地みたいなところがあったりするからどこを歩くか気をつけて進む。
ちなみに、標高を上げれば気温も下がるからヤマビルはいないだろうなと、三角点を過ぎたあたりからすっかり警戒心を解いてるよ。
三吉平に到着。
みよし平ではなく、さんきち平と読む。
2つ目のグランピングブース。
易老岳からたくさん下って、本日最高峰の光岳への登りが始まる。
さすがに疲れてきたけど、この岩がたくさん転がってるポイントを頑張れたら天国が待っている。
トリカブト。
まだまだ登る。
直前のYAMAPのレコで水場は枯れてるって聞いてたけど、左を流れる沢の音が大きくなってきた。
もうすぐ光岳小屋
静高平に到着。
ここはオアシス。
ドバドバでてる!!
指が痛くなるぐらい冷たくてめちゃくちゃ美味い。
頭から何度も浴びてさっぱりもなったし、水が豊富な山はこれだからいい。
静高平からほんのちょっと登れば、写真では分かりにくいけど肉眼ではっきり小屋を確認できて、おっさんは泣いた。
「この山を歩荷する人は偉いよ」を何度も励みにしてきたけど、噂に違わず長かった。
平ヶ岳とどっちが日帰り最難関だろう。
この木道はレコでみんなが良い風景だったと紹介してるところだけど、こんな小屋のすぐ手前だったのね。
13:05
テン場に到着。まさかの一番乗り。
光岳小屋のテン場って小屋の上と下の2箇所あるってことを知らずに、とりあえず下のテン場で1番良さそうなところにザックを置いて場所を確保したんだけど、このあとすぐ上のテン場へと移動した。
上のテン場の方が小屋とトイレが近いし、景色も良い。
どうもこの日はカメラ(富士フイルムX-T1)の調子がいまいちでね、この写真もなぜか露出オーバーしちゃって、カレーメシの値段がぜんぜん分からないじゃないか!
(お湯付きで500円だよ)
毎度、登山に付き合わせて酷使してるからね、常に心配はしている。
こちらが小屋の上にあるテン場。
鹿の防護ネットで囲われてて、鹿の多さが伺い知れる。
南アルプスでヤマビルも出る様になったのも鹿のせいなんだろうな。
光岳と光岩
テントを張って一息ついたら、お待ちかねの光岳の山頂に行ってみよう。
光岳は国内では最南端の2500m峰。
繰り返しになるけど、本州では唯一の原生林保護エリアとなってて、土どころか落ち葉すらも持ち帰ることは許されてないよ。
ペグに付いた土は?とかそんなことアホなこと言うでない!
きっと意図して持ち帰ろうとするアホな輩がいるんだろうな。
山頂はそんな貴重な原生林に囲まれて眺望ゼロなのも実に光岳らしいじゃないか。
無骨な山って感じ、嫌いじゃないよ。
ちなみに山頂から20mぐらいのところに展望が開けたところもあるからご安心を。
すぐ手前に見えるのはイザルガ岳。
展望が良い山みたいなので、夕方になってテン場で暇を持て余したら行ってみようと思う。
思ってた以上に低いところに光岩が見えて、行く気がめちゃくちゃ削がれた(ToT)
でもご安心を。
あれは光岩ではなく、本物はもっと手前にあったよ。
それでもだいぶ下ったけど…。
つらい思いして光岳に登ったのも、すべてテカリ岩のライザップ伝説を信じているからだ。
さあ、ここがテカリ岩だ。
テカってないのね。
ライザップ伝説が本当かどうか、この目で確かめるんだ。
そして俺は伝説の生き証人になる。
さあ、舞うぞ。
カマーーーン!!
おりゃおりゃおりゃーーー!!!
これが徹夜で考えた「イモムシ脱皮ダンス」じゃい!
ただの裸踊りじゃ物足りない。大盛りだ!カレーは飲み物ダー!と叫びながら脱皮する。
これを見ていたギャラリーの何名かはこの型破りなダンスを目の当たりにして感動し泣いていたとか、泣いていなかったとか。
小屋周辺で暇つぶし
踊り疲れたし、光岩からの登り返しが意外としんどくてヘトヘトだよ。
そしてちょうど15時のおやつタイム。
おやつのカレーメシです。
付け合せはじゃがりこ。
ちなみにSEIYU(ウオールマート系)で売られてるマッサマンカレーが大好物なんだよね。
福岡ではサニーで買えるよ(超ローカル情報)。
ライザップ伝説だからおやつでカレーメシ食べたって痩せちゃうなーと、浮かれながらイザルガ岳まで散歩しに来たよ。
山頂標識は至ってシンプルで自分好み。
おサルのマスコットも横に置いとけばそれなりに名物になりそう。
午後になって気温が上がると、上昇気流に乗った雲がプカプカ浮遊して明日歩く予定の稜線を隠してしまった。
そんな光景がとても平和だ。
再び水場に立ち寄って、手ぬぐいを濡らして体をこれでもかと洗いまくった。
水場のある山小屋ってやっぱサイコーだな。
ちなみに翌日の聖平小屋の水場でもガシガシ体を拭けたから、今回の旅はお風呂に入れないことのストレスはほぼゼロで終えることができたのも良かった。
前夜の睡眠が2時間ほどだったから今夜はぐっすり眠れるなー。
だけど夏用シュラフが寒くてね、ダウンを着込んでも寒くて何度も目が覚めたな(笑)
下界は真夏だけど、山ではすっかり秋が到来してたよ。
振り返って
2泊3日の山行でもブログを書く時はいつも1回か2回にまとめてるんだけど、
初日の光岳がね、予想をはるかに超えて良かったもんだから端折り過ぎたらもったいないと思って3回に分けて書くことにしたよ。
2日目の光岳小屋から上河内岳への縦走、3日目の聖岳登山。
9月の台風シーズンにもかかわらず3日間ずーっと晴天に恵まれ、今年一番の山行になったと思う。
仕事的には月初が忙しいから、かなり無理して金曜を休んだけど、まあほんと、無理して休んで良かった(笑)
この翌週の3連休はずっと仕事してたけど、くそっ。
南アルプスはずいぶん久しぶりで、数えてみたらなんともう3年前の北岳以来。
東京からだとアクセスが悪いからね、どうしても八ヶ岳や北関東の山が多くなるけど、3年はさすがに開きすぎた。
ほんとひっさしぶりの南アルプスは、やっぱりその大きさに圧倒されたよ(バテ田バテ男)。
便利な時代になったというのに、登山口まで5キロも歩かないといけないという不便さに泣けてくる。
ちなみに下山は便ヶ島(たよりがしま)から芝沢ゲートまでは、なんと7キロ!も歩くという苦行。3日間ほんとよく歩いたよ。
ちなみにテント泊登山では、必ず、必ず、お菓子を持っていきます。
今回はじゃがりこ。
でも好きなお菓子はハッピーターン。メロンパンの皮だけも好物。
でもやっぱり山ではぱんぱんに膨らんだポテチの袋を見ると、頑張った自分へのご褒美みたいに感じられて、す、す、好きです!
じゃがりこはザックの隙間にスポッと入るので荷物が多い時は重宝するね。ポテロングよりダントツじゃがりこ派です、はい。
どんなに食べてもテカり岩の上で裸踊りすればカロリーゼロ。
ではでは。
2日目へ続く