【八ヶ岳】赤岳と横岳 ツクモグサ満開!長大な杣添尾根と喘息登山

【八ヶ岳】赤岳と横岳 ツクモグサ満開!長大な杣添尾根と喘息登山

国宝級ニャンダホー!!

本州では八ヶ岳の横岳と、北アルプスの白馬岳にしか咲かないという「ツクモグサ」を見てきたよ。

しかも、いろんなツクモグサをネットで検索してみたけど、あちきの撮ったこのツクモグサが一番きれいに撮れてるじゃないのー!どやっ。

 

今回歩いたルートは「杣添尾根(そまぞえ)」。横岳への最短ルートと言われる杣添尾根で一気に稜線にでて、赤岳の山頂を踏んで戻ってくるピストン。

この杣添尾根という名は、ちらっと聞いたことはあったんだけど、実際に歩くのは今回が初めて。

南八ヶ岳の稜線に出るには、最も安全なルートとかいう評判だったんだけど……

果たして。。

 

快晴すぎて鼻血っ!!

ほんと、久しぶりの南八ヶ岳でこんな快晴に恵まれ、涙ちょちょぎれた。

思い起こせば、初めてテント泊したのも、ここ赤岳。日帰りもできたけど、当時どうしてもテント泊とやらを経験してみたかった自分は、友人の二人用テントにデカいおっさん二人でぎゅうぎゅうになって泊まるというアクロバティックなテント泊を敢行。

それはそれで楽しかったのだが、その後、アウトレットで見つけたモンベルのテントをソッコー購入したのは言うまでもない。

そんな思い入れの強いエリア。

ナイスな天気に素晴らしい景色、ツクモグサも満開でテンションアゲアゲ。さぁーて、条件は揃った。

しかし、そんなノリノリなあちきにアイツが襲ってきたのだよ。よりによって、久しぶりの南八ヶ岳でアイツが。

く、る、し、い。

た、ち、け、て。

必死の形相で登るあちきを、涼しい顔で抜いていく他のハイカーたち。

試練の登山は、まあいつものことなんだけど、今回はちょっとやばかった。

 

日帰りで歩くにはもったいない景色が広がっているYo!

 

ルートとコースタイム

■2022年6月4日 ※カッコ内は標準コースタイム

杣添尾根駐車場⇒(35分)⇒登山口⇒(110分)⇒枯木帯⇒(70分)⇒三叉峰⇒(40分)⇒地蔵ノ頭⇒(35分)⇒赤岳⇒(30分)⇒地蔵ノ頭⇒(45分)⇒三叉峰⇒(170分)⇒杣添尾根駐車場

コースタイム:8時間55分(休憩含まず)

総距離 11.4キロ
累積標高上り 1,480m

ツクモグサと赤岳登山 本編

二ホンオオカネモチと別荘地

好きな言葉は、「控除」と「半額」。

しかし、いくら半額だからって、これはやり過ぎた。よりによってマヨネーズ系の菓子パンばかり、果たしてこんな食べ切れるのか。

高カロリーパンをお供に、久しぶりの高山を攻略しに行くぜぃ!

 

ここは杣添尾根登山口前の駐車場。

早出が基本の高山で、まさかの朝10時を過ぎてやって来た。

当然、車は溢れかえっていた。

駐車場は5台ちょっとしか停められないし、路駐ですら停める場所が見つからないという恐ろしい状態。

杣添尾根はコースタイム9時間と長めだから、当たり前だけど、最後発となる。うーむ。

どこに停めるか探していると、ちょうど運良く駐車場が1台空くというミラクル。のんびり来たことが功を奏した。

ラッキー。

 

さて、ここから登山開始。

と言っても、しばらくは別荘地を抜けていくだけ。

 

溜め池とミツバツツジ。

 

清里周辺にはペンションが多い。

ブルジョアの風が吹いている。

 

何度か林道と出会いと別れを繰り返す。

 

鹿よけのフェンスがあったけど、ペンション周辺で鹿を多く見かけたし、こいつは果たして意味あるのかね。

ちなみに、ここに来る道中で、カルガモ親子の行進を初めて見ることができて、ホクホクした。

 

ここで、金持ちの香りを放つご夫婦とすれ違った。世にも奇妙な物語風に言う、ニホンオオカネモチだ。

派手な格好はしてなかったけど、さりげない着こなしやたたずまいで、貴族デスっていう雰囲気が出てる人いるよね。

まさにそれ。ペンションの所有者だろう。もしかして、皇族だったのかも。

当然ながらマヨネーズ系の菓子パンの匂いはしなかった。ましてや半額のという言葉も知らないかもしれない。

 

目指すべき稜線が見えた。

あれ、赤岳ってあんな高かったっけ?

美濃戸からこんな風に見たことなかったから、ポカーンとしてしまった。

甘く考えてたかも。。

 

杣添尾根で登山開始

やっとペンション界隈を抜け、ここが杣添尾根の登山口。

ここまで駐車場から20分ぐらいかかったかな。

 

仮設トイレもあるよ。

 

ここの標高は1,890m。

駐車場が1,750mだったから140mも登ってきたことになる。

ほんで横岳の標高は2,829mで、赤岳は2,899m。駐車場からだと単純標高差1,250mもあるのねん。

YAMAPだったかな。どなたかのレコで「最も簡単に稜線に上がれるルート」だと書いてあったけど、、

ほんとに?って感じ。

 

とは言え、今日は長く歩きたい気分でもある。

よしゃ、頑張るぞ!

しかし、そんな気分とは裏腹に、ちょっと体が窮屈に感じるというか、とにかく変な違和感がある。もしかしたら体調はあんまり良くないかも。

ともかく、スタート。

 

沢を渡ったら、登山開始。

 

苔がとてもきれいだ。

 

この時はまだ、YAMAPの書き込みを鵜呑みにして、どうせ楽なんだよねという頭でしかなかった。

杣添尾根、だ〜い好き。うふっ。

そんな風に浮かれていたのだ。

 

トレイルに矢印を描くのが、杣添流。

 

永遠に続く急登

最初は急登。

ふむ、どこの山でも登り始めはたいてい急登で幕を開けるもんね。

やっと手に入れた赤岳への片道切符。これぐらいなんてことない。

 

なかなか終わらない急登。

まあ。。まだ序盤だからね。

早くも呼吸が苦しいのは一体なんなのか。気のせいか?

 

まだまだ続く急登。

しかも、この代わり映えしない樹林帯がサブリミナル効果の如く繰り返される。

なんだこの息苦しさは。早くもノックダウン気味。

「話に聞いてたのと全然違うじゃないのぉ!」と、癇癪を起こしたブライト・ノアの様な遠吠え。

 

天気もいまいちというのが、疲労に拍車をかける。

昼から晴れる予報らしいけど、ほんまかいな。

杣添尾根は深い樹林帯に遮られ外界の様子は分からない。ともかく今は晴れを信じて登るしかない。

 

やっとこさ2,100m地点。

横岳の山頂まではあと730m。

今更だけど、YAMAPで杣添尾根を歩くレコの多さにビビる。よくこんな辛い尾根をみんな登る。変態ばかりだ。

 

お~っと、早くもここで、掟破りの「半額パン」を投入だぁ!

しかし、今回痛感させられたのは、パンではさっぱり力が出ないということ。

やはり日本人には米なのだよ。おにぎりに勝る行動食はないと思い知った。

 

再び歩き始めても手を緩めないのが杣添流。

もう勘弁してぇ〜。

ゼェゼェ、ハァハァ。息苦しさに押しつぶされそうだ。

どんなにペースを落としても呼吸が整わない。

これは、なんか体が変だぞ!と初めに気付いたのはここら辺だった。

 

八ヶ岳らしい苔の森で立ち止まって休憩。

もう何度も休憩をしている。

 

休憩して見える景色は登山口から大して変わらないという、諸行無常。赤岳に登ってる手触りは皆無だ。

樹林の隙間から見える外の世界は相変わらずホワイトルームだし。

きっとここは雲と同じ標高なんだ。だからこんな景色に見えるだけなんだ。そう信じて進むしかない。

 

尚も続く急登地獄。

杣添尾根が一番楽ちんだと書いた人は、超人的なアスリートか詐欺師のどっちかだろう。

悪意のないレコだと信じたいが、今まさに「くそ、騙された」と100万回つぶやきながらこの急登に喘ぐデブゴリラがいることを知ってもらいたい。

 

立ち枯れたポイントで、とうとうへたり込んだ。

今日はもう無理かもしれない。

本気でそう思った。

しばらく休んでいると息が整ってきたから、アミノバイタルを飲んで栄養補給。

そもそも、久しぶりの南八ヶ岳で浮かれ過ぎてたんじゃないのか?

もう少し謙虚に歩こう。

更にペースを落とすことにした。

この時期にしか咲かないツクモグサはハイカーであるならば一度はお目にかかっておきたい。

ここでリタイアする訳にはいかないんだ。

その想いだけで、なんとか登りきってやる。

 

標高2,500mまで来た。

横岳までなら、あと330m。

赤岳までなら、あと400m。

南八ヶ岳に来たなら、最高峰の赤岳にもこだわりたい。ピークハントだけが登山の目的ではないが、大事な理由の一つであることは間違いないのだ。

登頂意欲ってやつはどうしようもない。

 

次第に雪も出てきた。

標高が高く、日当たりの悪い樹林帯は雪が消えるまで時間がかかる。

 

振り返ると、あたかも雪景色かと見間違えそうになる清里、北杜市の風物詩。

実際には白マルチを張った畑が雪景色に見えるだけ。

 

かなり頑張っている。自分で自分を誉めてあげたい。

その甲斐あって、少しずつ樹林の密度も薄くなってきた。

今更ながら、南アルプスと八ヶ岳の森林限界の遠さに口数は減る一方だ。

なんせ杣添尾根の単調な登りがしんどすぎる。

 

高山にやって来たらお決まりのラマーズ法も自然にでてくる様になってきた頃、やっと稜線が見えた。

見晴台の手前30mといったところだ。本当に見晴台にたどり着くまでノン景色というひどい仕打ち。

ヒーヒーフー、ヒーヒーフー。

 

見晴台に着いて、やっと赤岳を捉えた。

鬱憤が溜まりすぎて嬉ションしちゃいそうだ。

 

こっちは硫黄岳。

ちょっとだけ赤岳ではなく硫黄岳に変更してもいいんじゃない?とよぎったけど、こうして見比べちゃうとザンネンながら役不足。

 

さあ、この尾根を一直線に登っていけば、横岳の山頂だ。

実は横岳は初めて登頂する山。

定番の赤岳、横岳、硫黄岳の周回ルートを歩いたことがないんだよね。

こうやって見ると硫黄岳よりも、よっぽど迫力があってカッコ良いじゃないか。

 

 

相変わらず息遣いが激しいのが自分でもどうにかしたい。

 

晴れた。

森林限界に達し、ハイマツに覆われた尾根道を直射日光を浴びてフラフラになりながら登っていく。

せっかくの赤岳だ。どんな目にあったって諦めないぞ。

 

初めての横岳

三叉峰(さんしゃほう)に着いた。

初めての横岳に登頂!

「やったー!やったー!これでやっと横岳ゲットー!」。苦しかった登りの反動もあって、いつも以上に浮かれてしまったが、横岳の正式なピークは2019年に奥ノ院になっていることをこの時は知る由もなかった。

ここは横岳のピークではないのだよ。

 

だがこの男はそんなことを知らない。

「横岳の山頂って三叉峰(さんしゃほう)って言うんだなー♫」

と呑気につぶやきながら、ザックの中から取り出したのは、早くも本日4個目の「半額パン」。

朝ご飯に2個食べてるから実は4個目。

胃の中はマヨネーズだらけだ。

 

更に、本気で疲れたから武州パイも補給しとく。

青空に白マルチの様な武州パイが映える。

 

三叉峰から眺める奥ノ院。

ここから大した距離じゃないけど、こっちが山頂なんだからわざわざ奥ノ院まで行く必要ないよなー、などと浮かれていた。

ふっ。

 

さあ、目指すは南八ヶ岳のボス、赤岳だ。

右奥に見えるのは南アルプス。右から仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、そして北岳。

素晴らしい景色が待っている。

 

ツクモグサの群生地

結局、横岳の本当のピークを踏まないまま、赤岳へと出発。

もういいのだ。この男はきっと一生横岳のピークを踏むことはないだろう。

そんなことより、横岳さんが持つ気性の荒さをここから絶賛堪能することになる。

気が抜けない岩稜帯に突入。

 

あ!

いたぁ!いきなり発見、ツクモグサだ!

赤岳方面に歩き始めてすぐに見つかった。

 

こんな崖っぷちに咲いてるから、撮影は気を付けねば。

 

キバナシャクナゲも咲いてた。

 

横岳から赤岳までは岩稜帯

これが横岳さんの気性の荒さってやつだ。

際どいところを歩いていく。前に見えるピークは阿弥陀岳。どこを見ても絶景タイムと危険とのツンデレに山ガールたちはイチコロだ。

 

三叉峰でお昼休憩中のハイカーに、どこら辺にツクモグサが咲いてるか聞いてみたけど、確認するまでもなく、至るところにポツポツ咲いている。

しかし、奥ノ院の方にはほんのわずかしか咲いてないとのことだったから、当初の予定通り、赤岳を目指すことにした。

やはり、横岳には一生登頂できない運命なのだ。

 

オヤマノエンドウ。

 

こんなところを下ってきた。

雪山では上級者向けと言われる所以は、ここら辺の難所が理由なんだろう。

 

ツクモグサがたくさん。

晴れてるのにあまり花が開いていない。

そんなもんなのかと思ったけど、下山で14時過ぎにここを通ったときはバァーン!って花開いてた。

午後がおすすめ。

 

横岳の難所を越えながら、近付いてくる赤岳がなんともダイナミック。

もしこの先、定番の赤岳、横岳、硫黄岳の周回ルートを歩くことがあれば、赤岳側から硫黄岳を目指すより、硫黄岳→赤岳の方が展開としては楽しいだろうな。

 

ワイルドどころか、ちょーやべぇー!

下ってるときはなかなか写真を撮る余裕なんて無かったけど、振り返ってみればこんなやべぇところを下ってきた。

初めての横岳に最初は興味津々で楽しめたけど、ピストンでまたここを登らにゃならんのよ。それを考えるとほんとウンザリする。

 

ケルン越しの赤岳。

 

岩稜帯を登ったり降りたり。

岩場を歩く慎重さはともかく、体力的にもうしんどい。

 

二十三夜峰。この時はそんなピークの存在を知らなかったから、この石碑に書かれた意味が何なのか分からなかった。

 

そして地蔵尾根と合流。

 

いざ、赤岳へ。

ここからは勝手知ったるコース。

 

眼下には行者小屋が見える。

本当はあそこでテント泊で来るつもりだったけど、翌日の天気が曇のち雨だったから、日帰りに切り替えて、この地獄の杣添尾根を歩くことになったのだ。

もっとゆっくり登りたかった。

こんなはずじゃなかったのだよ(泣)

 

赤岳展望荘に到着。

ここまで来たら赤岳まで目と鼻の先っていうイメージだったんだけど、疲れすぎて赤岳までまだ意外とあるんだな…としか思えなかった。

 

赤岳への最後の登りと明治乳業

時間的に厳しいため、長く休むわけにもいかず、ゆっくりでいいから登る。

山頂付近に見える小屋は頂上山荘。

赤岳と北穂は山頂にわざわざ小屋を建てなくてもいいのになぁと、景観を台無しにしてると思ってしまう。

展望荘があれば安全面では十分だと思うんだけど、収容人数が不足した際に補完する役目もあるんだろうね。北穂は大キレットの避難場所としては要だし、やむ無しってとこか。

 

どんなに疲れてても、悲しいことに登らないと着かないのよ。

ここまて来て撤退はありえないのだ。

青空が広がってこんなベストコンディションで登れる機会なんてそう無いんだし。

 

国内で初めて缶ジュースの販売を開始したのは、どこでしょうか?4択です。

ポッカ、アサヒ、キリン、明治。

 

はい〜、明治乳業なんだとさー。

このジュースはその頃の遺産。

今から50年近く昔の缶だ。

 

冬の方がはるかに登りやすい岩場が続く。

山頂がすぐ近くに見えてきた。

この一歩は小さいが、人類にとっては偉大な一歩だ。

どこかで聞いたことセリフだな。

 

山頂の目印にもなる頂上山荘。

ここは赤岳北峰だよ。

 

頂上山荘は2022年度も自粛するらしい。

収容人数で展望荘の補完の役目は果たせないのね。

 

赤岳頂上からの大絶景

北峰の方が南峰に比べたら広いから、くつろぐならこっちがおすすめ。

 

南峰に向けて、四つん這いになりながら進む。

もう涙で先が見えない。

いや、ただの加齢によるかすみ目だ。

 

ああ、地球を感じられる風景。ララァ、時が見える〜。

八ヶ岳ってやっぱいいね。

 

昔は赤岳と一つの山を形成し、富士山よりはるかに大きかったと言われる阿弥陀ババア岳。

信仰色が強すぎる名前なんで、ちょっと足してみました。

 

南峰に到着。

やっぱり山頂まで頑張ってよかった。

達成感が突き抜ける。

 

これが達成感が突き抜けた男の後ろ姿だ。

山ガールがきゃっきゃっ言ってる傍で、尋常じゃなく疲れ果てている。

浮かれた山ガールをよそに、今後も登山を続けるかどうかの進退をかけた攻防だった。

へたり込んじゃいるけど、これでも喜びを爆発させている。

 

歩いたからこそ見られる景色がこれだ。

こんな風景、見たことある?山頂からの景色なんてもうすっかり忘れてたから、おっさんだけど感動して子鹿の様に震えたわ。

手前は権現岳とギボシ。

奥にはドーンと南アルプス。

あの誰もが知ってる名作アニメ、アルプスのニセ少女平次(へいじ)、の舞台にもなったところだ。

 

権現岳をアーーップ!

左のピークが権現岳の山頂で、右がギボシ。

右奥の丸いピークが編笠山。

編笠山の頭をなでたら気持ち良さそうだ。

 

ここで取り出したのはもちろん半額パン。

こんどは焼きそばパンだよ。

マヨネーズパンばかりで、ハッキリ言ってゲロ吐きそうだったからこそ、このソース味が異常に美味く感じた。

 

ミヤマキンバイ。

 

横岳への登り返しと呼吸困難

さて、ゲッザーン!!

ではなく、横岳へ登り返すのだ。

嫌だな。

ほんと嫌だな。

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。

 

現実逃避、その1。

諏訪湖が見える。こうして見ると近くに感じるな。

鳥になれたら、あそこまで飛んでいけるのに。

そんな妄想をして、途中でカラスに襲われて殺されるところまで連想して、鳥だけは絶対に嫌だなと思い直した。

 

現実逃避、その2。

金峰山と奥秩父の山々。その麓に目をやってみる。

あの白マルチに近い標高まで下山するなんて、リアルに黄昏れちゃうよ。

 

赤岳からの下山は、現実逃避を織り交ぜつつ、簡単そうに見えて油断できないガレ場に「ひ、ヒー!!」と雄叫びを上げながら下りてきた。

昔、軽く足を滑らせて滑落しかかったこともあったからね。

 

今から登り返し、はっじまーるよー!(錦鯉風に)

マジでゲロする5秒前。

 

後ろを振り返る。なにはともあれ、ベストなタイミングで晴れてくれて、最後まで雲がかからなかった八ヶ岳に感謝。

はい、これも現実逃避。

いい加減、前を向きな。

 

オエェ〜。

こんなの登れんのかよぉー。しかも登りになった途端、尋常じゃない息切れが始まった。

ゼェゼェ。やばい。

ゼェゼェゼェゼェゼェゼェ。

やばいやばい。体がおかしい!!

 

体の変調を感じつつ、集中を切らしたら大事故だぞ!とにかく全集中!!と奮い立って、休みつつ登っていく。

トレッキングポールを使いたいけど、こういうところではしまったままじゃないとかえってめんどくさい。

 

影を落とすってこういう事なんだな。

山に登ったらよく分かる。

 

まだまだ続く絶望。

やはりパンだけだと力が出ないんだ。おにぎりにしないとだめなんだ。

もう体が動かないよ。

原因はパン以外に何が考えられる?

まさかコロナか?

無症状でコロナにかかってるんじゃないのか?

そんな不安にかられるぐらい息苦しい。

高山病か?

 

おお!

岩場でへたりそうになっていると、こんな見事に花を開いたツクモグサがいた。

間違いない、今日イチだ!

 

これまで見てきた景色と対象的な、八ヶ岳の濃厚な樹林帯。

下っているうちに、あそこで日が陰ったらそれこそ真っ暗になってしまうだろうな。

スマホ2台とヘッデン。ライトはたくさんあるから夜になってもそれほど不安はないけど、明るいに越したことはない。

 

やっと登りきったと思いきや、三叉峰はまだあんな先という絶望感。

 

ミネズオウ。

 

コメバツガザクラ。

 

ハシゴと鎖場の繰り返し。

三叉峰、三叉峰、

まだですか、三叉峰。

ブツブツ…。

この先、めっぽう写真が減る。

歩幅は10cmぐらいに縮まり、なんとか歩いてる感じ。

 

三叉峰に着いたときには気力、体力の全てがエンプティ状態。

 

キャラメルとSOYJOYをアミノバイタルで流し込んだ。

日陰で少し休んでたら、またちょっと復活した。

急がなくていい。何よりも怪我せず、無事に戻ることだけを考えよう。

そんな訳で、Get the sun(ゲッザーーン!!)

 

杣添尾根ゲッザーン

振り返れば、ハイカーと三叉峰が絵になる。

ツクモグサより絶景だな。

 

さらば、赤岳。次はいつ登れるのかな。

なんだかんだ横岳も登ることができたし(この時はまだ登れたと信じていた)、当分来ることはないかもしれない。

 

もはや軽く踏ん張っただけで足がつってしまう。

見晴台に着くなり、湿布薬を投入。ズボンを脱いでパンイチ姿で、ももとふくらはぎ、合計六ヶ所貼ってやったぞ。

 

杣添尾根の延々と続く樹林帯に何度も挫けながら、やっと登山口手前の橋まで下ってきた。

いつもなら下りはダーっとハイペースなんだけど、コースタイムと同じぐらいがやっと。

 

「おいおい、近くにデブゴリラがいるぞ」

そう言って出てきたのは鹿たち。

同じ獣臭で親近感が湧いたのだろうが、今の自分に君たちをかまってる余裕なんて無いのだよ。

 

戻ってくると、当たり前だけど最後の一人さ。

溢れかえっていた車はすっかりいなくなり、閑散としていた。

展望荘とかに宿泊する人もいるのかと思ってたけど、信じられないことにみんな日帰りでこの尾根を歩くのか…。

誰よりも息が絶え絶えとなり、挫けそうになったというのに。

自分の不甲斐なさを痛感させられたじょ。。

 

清里名物に舌鼓

下山後に立ち寄った道の駅で牛乳フォンデュなるものを発見。

買わなかったけど、せっかくだから買っておけば良かったと、今書きながら後悔している。

 

武川米というのは、山梨県北杜市武川町で採れるお米で、清里側から登った際にはイチオシのワンコイングルメ。

農産物直売所に立ち寄って、店員さんに頼むとおにぎりを握ってくれるからぜったいに食べるべし!!

 

マヨネーズパンばかり食べて味覚がおかしくなってたけど、この素朴なおにぎりが劇的に美味くて生き返ったよ。

 

振り返って

下山した2日後。

軽く5キロほど流そうとランニングに出かけて、あまりの息苦しさに3分で戻ってきた。

苦しい!!これ赤岳の稜線で息が詰まったのと同じやつだ!!

しかもこの苦しみは身覚えある。

間違いない。やつだ。やつが来たんだ。

赤い彗星の。。ちがう。

 

喘息!!

 

夏になるとたまに発症する厄介なやつ。

そりゃ苦しかったわけだよ。体が動かなくなったのも納得。

 

以前、地蔵尾根から冬の赤岳に登ったことがあったけど、雪山の方がはるかに歩きやすかった。

夏道はザレ、ガレ、岩場の連続テレビ小説で気が抜けない。

たまにヤマレコとかで見かける、「雪山を始めて一年目に冬の赤岳に登れちゃいましたー!」というレコがあるけど、そんなもん天気さえ良けりゃみんな登れるよ。自然が味方に付いてくれたんだから。

 

そう、登るだけなら、みんな登れるんだよ。

でもね、今回は違った。

晴れててもしんどかった。

久しぶりにネブライザーでもしに行くか…。アドエア(おくすり)ももらっておこうか。。

体調管理が甘いと言えばそれまで。でも喘息持ちの方なら分かってもらえると思う。軽い症状だと、日常生活を送ってるだけなら気付けないんだよ。

何にしてもこれから夏山シーズン到来。気をつけねばっ!

ではでは

 


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