いよいよアルプスのシーズンが到来。
今回は種池山荘にテントを張って、爺ヶ岳と後立山の盟主鹿島槍ヶ岳に登ってきました。
アルプスで見る夕焼けは普段見るそれよりも空が赤く、空気が澄んだ朝は後立山の峰々が鮮やかに輝く楽園でした。
鹿島槍ヶ岳は南峰と北峰の双耳峰になっているのが特徴的な山で、日本百名山、花の百名山です。最高峰は南峰の2,889m。
爺ヶ岳は南峰、中央峰、北峰の3つのピークからなる山で、最高峰は中央峰の2,670m。種池山荘から鹿島槍ヶ岳への稜線の途中にある日本三百名山、花の百名山に選定されている山です。
人でごった返す直前の6月、まだ少し雪が残るこの時期にしか出会えない世界を狙って、
今年4月にオープンしたばかりのバスタ新宿から夜行バスでアクセスしてきました。
晴天と雄大なアルプスの峰々~。
いざっ。
アクセス方法
・行き:さわやか信州号でバスタ新宿 → 扇沢駅。
・帰り:帰りは路線バスで扇沢駅 → 信濃大町駅。信濃大町駅からはアルピコ高速バスでバスタ新宿まで。こちらをご参照下さい。
自分の場合は、下山の時間が定かでなかったので、扇沢からアルピコ長野予約センターに電話して当日予約しました。
■ルート
■全行程スケジュール 2016年6月18日~19日
6/17~18 23:05 バスタ新宿発 高速バス乗車 ⇒ 5:40 出発 ⇒ 5:55 柏原新道登山口 ⇒ 8:50 種池山荘~テント設営~ ⇒ 9:40 出発 ⇒ 10:23 爺ヶ岳南峰 ⇒ 10:43 爺ヶ岳中央峰 ⇒ 11:00 爺ヶ岳北峰 ⇒ 11:26 冷乗越(つべたのっこし) ⇒ 11:40 冷池山荘(つめたいけさんそう) ⇒ 12:40 布引岳(ぬのびきやま) ⇒ 13:30 鹿島槍ヶ岳南峰山頂 ⇒ 17:55 種池山荘
6/19 6:30 下山開始 ⇒ 8:20 登山口 ⇒ 8:35 扇沢駅 ⇒ 8:55 信濃大町駅行きバス乗車 ⇒ 9:57 信濃大町駅から新宿行き高速バス乗車
今年4月にオープンしたばかりのバスタ新宿に初めてやってきました!
新宿南口の真ん前によくこんな巨大な建造物を建てる場所があったなぁ。
新南口の改札と直結してるから、JRや丸ノ内線だと雨の日でも濡れずにアクセスできてとても便利です。
中も広々。でもコンビニや売店が見当たらなかったので、予め必要なものは買っておくことを薦めます。
さわやか信州号、23:05発の夜行バスに乗って扇沢で下車します。
この時期は安く乗れるのが良いですね。北アルプスに往復1万円ぐらいで行けちゃいます。
扇沢に着きました。朝5:05。3時間は眠れたかな。
鼻っからバスでは眠れないと割り切ってたので、意外と眠れて良かった。
バスを降りると、自分を含めソロハイカーが何人か集まって身支度しながら自然とお互いの行き先や危険箇所なんかの情報交換が始まる。
こんな閑散としてますが、ここに何度も来てる方から、立山黒部ダム行きトロリーバス乗り場は海の日以降は外にズラ〜っと行列ができると聞きました。いつか行ってみたいです。
ちなみに、ここ扇沢に水場があるので、忘れずに汲んでおきましょう。
扇沢、標高1,425m。
よしっ、行くぜっ!
山を想えば人恋し、人を想えば山恋し。
にゃるほどにゃるほどー
自分だったらこういうの思いついても恥ずかしくて披露できないなぁ(笑)
気合い入れたのに登山口を間違えてしまいました。
こっちは針ノ木岳の登山口。柏原新道の登山口はバスで来た道を少し戻ります。
下り坂を15分ほど歩くと緑の橋が見えてくるので、それを過ぎて左に曲がると柏原新道の登山口があります。
見えました。
登山口前の駐車場は満車で、シーズン前だけど賑わってるみたいで安心。
やはりソロの時は百名山に限ります。
日がぐんぐん上がってきました。
暑くなる前に森林限界を超えたい。
登山口から種池山荘までの標高差は約1,150m。
テント泊装備20キロ。今日も余計なものをたくさん持ってきたので重いっ(^◇^;)
前回の巻機山で水を切らしてしまった教訓を生かし、水を4リットル汲んできました。ちょっとやり過ぎだったな。
景色を楽しみながら、のんびりコースタイム通りに進む。
針ノ木岳が見えます。針ノ木大雪渓は、白馬大雪渓、剱沢大雪渓にならぶ三大雪渓の1つ。
今回は針ノ木大雪渓を下山ルートで使うことも検討しましたが、雪不足のため危ないと思ってやめました。
アイゼン持ってくんじゃなかったぜ。
笑顔が印象的なおじさんから、もし帽子が落ちてたら枝に引っ掛けといてと言われましたが、このケルンのそばで見つけましたよ、マムートの黒い帽子。
目立つように掛けといたけど見つけてくれただろうか?
ズーム!
ここで稜線上にちょこんとたたずむ種池山荘を確認できました。
まだまだ遠い。
開放的な稜線歩きばかりが取り上げられるアルプスですが、そこに出るまでは長い長い樹林帯が続くわけです。それを覚悟しておかないと心が折られてしまうので要注意ですね。
風もなく、暑い。我慢の時間帯が続く。
登山道沿いにひときわ目立つ大きな花が咲いてました。
写真を撮ってたら後ろからやってきた山マダムから
「めずらしいの撮ってるね、シラネアオイだよ。天然記念物だよ。ヘェ〜、こういうの写真撮るんだねぇ!」
と江戸っ子口調で教えてもらいました。あざっす。
雪渓をトラバースします。
ご覧の通りステップもあってノーアイゼンで大丈夫ですが、雪渓では上からの落石に十分気をつけましょう。音もせず転がってくるみたいです。
やっとこさ種池山荘に着きました。
可愛いオレンジの屋根が晴れた空とよく合う。
テントの受付を済ませて早速設営しに行きます。
右前方の雪が残ってるところがサンショウウオがいる種池です。
今晩の我が家の完成です。自分の他にはまだ1張しかなかったけど、今日は天気良いし、後からたくさん来るかもなぁと思って端っこに詰めました。まあ、当たり前ですけどね。
もう1張の方は真ん中に堂々と(笑)。。
テン場の半分はご覧の通り、まだ雪が覆ってます。
この日は6月初の猛暑日になる予報。梅雨の雨と相まって7月後半には雪は解けてなくなるんでしょうね。
テン場からは爺ヶ岳がよく見える。種池山荘から鹿島槍ヶ岳までは往復でコースタイム約8時間。すぐ出発しないと日が暮れてしまうぜってわけで出発!
登り始めて振り返ると小屋の後ろに、立山!
剣岳!
針ノ木岳!
じいさん!
ばあさん!
ってちゃうちゃう。
本日の主役、鹿島槍ヶ岳デス。
なんどもなんども立ち止まっては振り返って、立山と剣岳を眺めてしまう。
マジかっけええわ。
なだらかで女性的な山と評される爺ヶ岳。じゃあなぜ婆ヶ岳にしなかったのか。
山頂まで近くに見えるけど、見た目以上に遠い。
くどくてすみませんです。前方の爺ヶ岳と後ろの立山を何度も見やりながら、嬉々として進む。
大満足の稜線歩き。喜びのあまり笑いが漏れてしまいます。
ふー、爺ヶ岳の山頂が見えました。
南峰の山頂からの鹿島槍ヶ岳。
高気圧が張り出して雲の位置が高い。これだったら午後になっても山頂にガスがかかることは無さそうです。
爺ヶ岳の3峰は巻き道を使わず、全て踏んで周りたいと思います。
次にアタックするのは手前に見える中央峰。その奥に見えるのが北峰です。
待ってやがれ!
ここら辺までは体力的に楽勝。
足の筋肉疲労は一切感じない。心配なのはこの暑さだけです。水を切らしたら冷池山荘で補充しよう。
爺ヶ岳北峰から再びの鹿島槍ヶ岳。
今日はソロなので喜び合う仲間はいないけど、それでも楽しい。
それと一人だと声をかけられやすいみたいで、行き交う人たちとの会話も弾みます。
北峰から冷池山荘まで一気に300m以上下ります。
気持ちいい稜線歩きなんだけど、帰りの登り返しを考えると鬱。。
冷乗越に到着。
虫の多さに辟易としながらなんとか冷池山荘に到着です。
小蝿が耳、鼻、口の穴という穴をめがけて飛んでくるのは一体どういう要件なんだ。ペッペッ。
次回は必ず帽子に取り付けられる虫除けネット買っておこっと。
とりあえず水の残量は十分なので、山荘には寄らずに鹿島槍の山頂に向けて移動します。
ノースフェイスのテントがイカす。
冷池山荘のテン場は日当たりが良いので残雪はありませんでした。で、いつもは混み合うこちらもまだシーズン前のためガラガラ。
種池山荘のテン場と違って眺めが良いです。扇沢から鹿島槍ピストンで使うには遠いテン場だけど、五龍岳へ縦走する際は中継地点にちょうど良い位置にあります。
シナノキンバイが道端に咲くトレイルを布引岳に向けて進む。小蝿もすごい数です。
あれを超えたら鹿島槍ヶ岳に取り付けます。
群生ボンっ。シナノキンバイです。
なんかここら辺から足取りが重くなってきた。暑いからでしょう。
大汗をかきながらとぼとぼ進み、一息ついてまたとぼとぼ。雪を顔に当てて気分転換。
バテてきました。急にやってきました。
睡眠不足だからだろうか。体がだるい。足が前に出ない。いつもの自分じゃないみたいです。
チングルマです。鹿島槍ヶ岳は代表的な群生地として有名です。
布引岳に到着。
途中からバテてしまい、思うようにペース上げられなかったけどなんとかここまで来ました。
ふーあそこまで行けるか不安だ、まだあんな遠いよ。
せっかくここまで頑張ったんだから休み休みピークを目指す。
稜線だから風はひんやりとしてて気持ち良いんだけど、3,000mの強烈な紫外線はちりちりと肌を焼いて体力を奪っていく。
だいぶ近づいてきた。やっと最後の登り。
次々と抜かれる。もうフラフラ。自分を抜いていく人たちから頑張ってくださいと励まされるのが有り難い。
苦しい、息切れだけじゃない、動悸までしてきた。
睡眠不足が原因じゃない、脱水症状だ!
手がむくんでることに気づくのが遅かった。。
くそっ、睡眠不足じゃなかったら早く気付けたのに!だっふんだだぜ。
自分は脱水症状になり易い体質で、それでいて一度に多くの水分を摂取するとすぐ片頭痛になるというなかなか難しい体質なので、脱水症状との付き合いは長いです(≧∇≦)
おかげでどう対処するかは慣れっこです。
ふぅ~とりあえず心拍数が上がると気を失ってしまうので、息を乱さない様に牛歩で進む。あと10mちょっとで山頂です。
やっと着いた。とりあえず横になろう。それと大事に飲んできた水を、片頭痛にならない程度のピッチで飲む。
2,889mの山頂は想像してたより広かったです。
遠く信濃大町の界隈が見えます。
きっと下界では挨拶代わりに「今日は鹿島槍がよく見えるばい、ところでソフトバンク強かねぇ〜また勝ったばい」なんて会話がされてることでしょう。
博多弁なわけないか。
八峰キレットと五龍岳。
キレットと聞くだけでワクワクするけど、エスケープルートがないから、歩くならせめてキレット小屋が営業開始する7月以降にした方が良いです。
さて、帰りは超スローペースになるから余裕を持って小屋に向けて移動開始します。
シラネアオイも群生してました。
高山植物の宝庫ですね。雪解けが早いから咲き始めも早いらしいです。
写真なんて撮ってる余裕なかったな。フラフラになりながら冷池山荘に到着。
ポカリと即攻元気という栄養補給ゼリーを買って飲んで日陰で30分ほど休ませてもらいました。
水も購入。1リットル150円です。600mlだけ欲しいなんていう注文にも応えてくれます。ペットボトルを渡して小屋の人に入れてもらいます。
よっしゃ、復活したぜ、と調子こいて少し急いだら意識が朦朧として座り込む。
ふー、落ち着け落ち着け~。大丈夫、体調は崩したけど体力は十分残ってる。
種池山荘まで牛歩で、汗をかかないように、息を乱さないように慎重に歩けばたどり着ける。時間はたっぷりあるので焦りは禁物です。
ついさっきまでここは楽園だと思ってましたが、冷池山荘と種池山荘の間にそびえる爺ヶ岳が憎い。
巻道あるけど山頂のすぐ横を通るので、巻いてる意味があまりない。
種池山荘までもう少し。この時点で17:50。19時に着ければ良いかな、と思ってたから予定よりだいぶ早く着けて良かった。
コーラ〜くださぁーい!
小屋になだれ込むなり小屋のお兄さんに注文して、今日の恥ずかしい顛末を談笑。
テントに戻ってしばしボー然。
写真は今日の自分を救ってくれた2品。
前回の巻機山でもそうでしたが、水で困るのはもうこりごりです。今後は吸収を早めるポカリを携帯する事にしよう。
テントの外に出てみると爺ヶ岳の右に満月が見えました。
そろそろ日没。いろいろあった1日も幕引きです。
時間を忘れ、しばらく見入ってると徐々に薄暗くなってきました。
誰もいない小屋の前のベンチに移動して、立山の峰々と夕焼けを眺めながらゆっくりした時間が流れます。
山で過ごす1日は最高です。
辺りはだいぶ冷えてきました。
登山中は脱水症状で苦労したけど、この時ばかりは穏やかな時間が流れる。
ひとつひとつの苦労がこの山に来た楽しみに変わっていく。
とても印象的な景色でした。
おやすみんみんゼミ。
本を片手に1ページも進まない内に記憶がぶっ飛びました。
おはようございます。気温が低いから空気が澄んだ朝。
夜中はやっぱり5度近くまで下がったんじゃないかなぁ。ぐっすり眠れましたが、寒くて2〜3回目が覚めました。
爺ヶ岳に少し登って、
そこから眺める立山連峰は、昨日とは違い冷えた空気の中で輪郭がくっきりしてました。
今日は晴れのち曇りの予報。山では午後から雨になるかもしれません。
鹿島槍ヶ岳も見納め。
早々にテントを撤収し、下山の準備をします。
テン場で会話を交わした方々に
「じゃ、お先にー。8:55のバスか間に合わなかったら10時のバスです。その時はバス停でお会いしましょー」
と、爽やかに別れを告げた直後、手拭いを出し忘れたことに気づき、小屋の前で荷物を広げてたら、別れを告げたばかりの方々に抜かれるという間の悪さ。
「奇遇ですねー」と苦笑いしながら、下山開始。
半分以上進んだ辺りから沢の音が聞こえてきました。
とうとう針ノ木岳にガスが覆い始めました。
8:20登山口に着きました。下山を開始して約1時間50分。
マメができるのを避けるため、足裏が熱を持たない様ゆっくり歩きました。
テン泊装備を担いでの下山にもだいぶ慣れてきた感じ。
登山口から扇沢までは20分ぐらい歩くので、バスの時刻もその分考慮して計算してください。
山にはガスが。。
バスの時間まで20分ほど時間があったのでトイレで体をボディペーパーで綺麗に拭いて、帰りの高速バスの予約を電話で済ませました。
大町温泉郷発の高速バスがあれば温泉入れたのですが、信濃大町駅からの便しかないそうです。9:57発のバスが余裕で予約できました。
信濃大町駅に着いて、高速バスが来るまでの30分、駅構内の立ち食いそばで山菜そばを食べました。後から入ってくる客が自分以外みんな顔見知りで、アウェイ感たっぷりの中で食べるそばは格別でした(^^;;
駅前のお土産やさんで買った野沢菜のおやきを食べながら、長野から新宿まで乗車率50%未満のバスでゆったり帰りました。
片道なんと4,200円。お得だわ〜。
振り返って
梅雨の晴れ間を狙って金峰山と瑞牆山に行こうと考えてましたが、「太平洋高気圧が張り出して絶好の週末になるでしょう」との天気予報を聞いたらいてもたってもいられず、前からプランを練ってた鹿島槍ヶ岳の案に変更しました。
決めたのは水曜の夜でしたが、さわやか信州号が運良く2席だけ空いてたのですぐ予約しました。
結果的に大成功の旅となりました。
鹿島槍ヶ岳から種池山荘までの戻りでは脱水症状で苦しみましたが、それも旅の楽しみの隠し味ですね。
今回のことは次回の教訓に生かします。
全てが計画通りにピタッとはまった旅はそれはそれで楽しいものですが、自然の中で失敗を繰り返して、自己責任で乗り越えていくことこそ、山登りの醍醐味ではないでしょうか。
自己弁護・・・ですかね。
アルプスにはまだ登ってない峰々がたくさん残ってます。
今回は初めて眺める剱岳に驚嘆しました。
爺ヶ岳へのアプローチの途中、すれ違った方に、
「あの目立つ山は何ですか?」と聞いたら
「ああ、あれは剣ですよ。で、あっちが立山。いろんなところから見てますがここからの眺めが僕は一番好きです」
と答えるソロで来てた若いお兄さんの言葉がとても印象的でした。
穂高や槍ヶ岳と並び、鹿島槍ヶ岳も都心からのアクセスが良い山なので、ぜひお薦めです。
行きのバスと帰りのバスで偶然にも一緒になった方はデカザックに釣竿片手に山に登る方で、
「この時期は岩魚が楽しいんですけどね、ダムの方まで歩いたんだけど今日はあまり釣れなかったなぁ」、と言ってました。
夜行バスでやって来て、山越えしながら糸を垂らすなんて渋すぎですね。
自分なんて堤防から投げても何も釣れないってのに。
ではでは