大分県の九重連山にある平治岳(ひいじだけ)に登ってきました。
「へいじ」ではなく「ひいじ」です。人によっては「ひじだけ」と読んだりするみたいで、キラキラネームの走りです。
平治岳の標高は1,643m、日本三百名山の大船山(たいせんざん)や豊かな原生林が評判の黒岳と隣接する九重連山の一座です。
そしてこの山を有名にさせているのが「ミヤマキリシマ」です。ミヤマキリシマの名所と言えば阿蘇山や普賢岳、万年山(はねやま)などたくさんありますが、真っ先に名前が挙がるのはやはり平治岳。ヤマレコでもこの時期は平治岳のレポをよく見かけますが、この山のミヤマキリシマの群生の規模は段違いです。
そして今回、念願叶って最盛期にやって来ることができましたが、噂どおりミヤマキリシマの群生は半端なかったです!!
この上の写真は雑誌で良く見かける定番の角度からの1枚。ミヤマキリシマ越しの三俣山や久住山、そして眼下に広がる坊ガツル。この角度からの写真を見て平治岳に登りたいとずっと思ってたので、今回同じ位置に立ってカメラを構えた時は感無量でした(安物のコンデジですが。。)。
平治岳へのアプローチは、コースタイムが往復で約6時間と比較的短い男池ルートが一般的。ただ、この時期はすごく混むから平日に来るか、土日だったら車中泊しないと車を停めるのは難しいみたいです。
それでは平治岳登山のポイントです。
平治岳登山のポイント
①5月末~6月中旬のミヤマキリシマの群生
②山頂からは三俣山や大船山などの九重連山、遠くに由布岳など360度の大パノラマ
③法華院温泉山荘での小屋泊か坊がつるでのテント泊を組み合わせればより楽しめます
九州の山と言えば花。その代表格のミヤマキリシマで最も有名な平治岳に登ることは国内の登山者にとって憧れの一つだと思います。毎年5月末~6月中旬のミヤマキリシマの時期を狙って全国から登山者が九重にやってきます。
そんな訳なので、とにかく混みます。駐車場もトレイルも混むのでついせかせかしがち。なので、できれば坊ガツルで一泊してのんびりこの世の極楽を楽しみたいところです。
駐車場ですが、今回自分の場合、男池は駐車できたとしてもトレイルは渋滞するし、せっかくの九重なんだから長く歩いてもいいかなと考えてたから九重の表玄関「長者原」から雨ヶ池ルートでアタックすることにしました。
標準コースタイムは往復で約7時間。まあ言うほど長くないですね。山頂付近は予想通り大渋滞だったけどお陰でゆっくりミヤマキリシマを鑑賞できました。
山頂付近を除けば超ハイペースで飛ばしたので、自分のコースタイムはあまり参考にしないで下さい。あくまで標準コースタイムは往復7時間。余裕を持って行動してください!!
坊ガツルに着いて平治岳を見上げると、遠目からでもピンクに染まる山の姿が分かり、本当に驚きました。
大戸越で樹林帯から抜けると、そこは一面ミヤマキリシマの絨毯!
いざっ
■アクセス方法
・長者原ビジターセンターへのアクセスは、こちら。
■ルート
■全行程スケジュール
■2017年6月10日
( )カッコ内は標準コースタイム
長者原登山口⇒(80分)⇒雨ヶ池⇒(50分)⇒坊ガツル⇒(55分)⇒大戸越⇒(25分)⇒平治岳山頂⇒(60分)⇒坊ガツル⇒(50分)⇒雨ヶ池⇒(70分)⇒長者原登山口
標準コースタイム:6時間30分
■活動距離14.5キロ
■累積標高上り1,230m
登山開始
長者原から坊ガツルへ
のんびり起きて長者原にやってきました。朝の10時です。この時間からだと男池の駐車場は満車だから長者原からスタートします。
長者原もすごく混んでて、490台分の広大な駐車場で1台分の空きを探すのも一苦労でした。
妻と子供達は自分が登山してる間はくじゅう牧場で遊んだり焼肉を食べて待ってるそうなので、ちょっとハイペースで登ってきたいと思います。
長者原のビジターセンターでおにぎり弁当を買って、筑後川源流のくじゅうタデ原湿原からスタートです。
階段を上がると広大な湿原があらわれ、優しい風を感じます。これぞ九重だと思わず深呼吸したくなる景色です。
アザミをお食事中のクマバチ君。
くじゅうタデ原湿原は標高1,000mにある日本最大級の中間湿原として全国的にその名を知られてます。
ちなみに日本一の湿原、いや失言王の麻生太郎さんは、衆院選に初出馬したときの演説、登壇して一言めが
「え~、下々のみなさん」
だったそうです(笑)。
失言というか、本音がポロリと出ちゃった感じ。こんなこと言っても当選するんだから財閥の力ってすごいです。更にちなみにカップラーメンの市場価格を聞かれ「え〜と、500円ぐらいですかね?」って答えてしまう感覚もすごい(爆)
そりゃ消費税上げますって言えるよな、そりゃ。
とまあ、九州の恥になるのでこれ以上は書きませんが、失言の数々はどれもパンチあるので興味のある方はネットで検索してみてください。
話は戻しますが、今日は雨ヶ池ルートのピストンです。
九重らしい火山風景を楽しめるのは断然、諏蛾守越ルート(すがもりごし)の方です。雨ヶ池よりちょっとコースタイムが延びるため本日はパスしますが、時間があれば断然お薦めしちゃうっ!
坊ガツルまでは樹林帯をゆるやかに登っていきます。高尾山ぐらいの小さな山を一つ越えていくと坊ガツルが現れるってイメージです。
湧水がとてもきれいで癒されます。が、山頂でくつろぐ時間を稼ぎたいからここはコースタイムの半分以上のハイペースでとばします。
そんなわけで長者原から約40分で雨ヶ池に到着。雨ヶ池の入口からミヤマキリシマのお出迎えで「よしよし、咲いてる咲いてる!」って感じです。
1週間前まではまだ七分咲きで、今週に入って一気に開花が進んだそうです。このタイミングの見極めが難しい。全国から見にやって来る人の中には遠方から飛行機で来る人もいると思います。早くから予約しないといけないから最盛期に当たるかどうかは博打みたいなもんですね。
ノハナショウブやキスゲにはちょっと早かった様です。
梅雨らしいどんよりした天気。すこしぐらい青空が見られたら写真映えるんだけどな、と贅沢な悩みです。雨が降らなかっただけラッキーです。
快調に飛ばしながら眼下に坊ガツルが見えてきました。雨ヶ池越ルートの最高地点からちょっと下ったところです。
はじめてここから坊ガツルを見た時の感動が蘇ってきます。
坊ガツルは九州で登山する者にとってオアシスの様な所です。
多くの登山客がここを目指してやって来る理由がよく分かる。
1年ぶりの坊ガツルは何も変わってませんでした。この草原の先にテン場や法華院温泉小屋があります。
平治岳登山口はテン場の近くにあります。吉部登山口方面に平治岳が見えるからそっち方面に行ってしまいがちですが、この標識の坊がつる・法華院方面に進んでください。間違わないよーに。
テン場越しの平治岳。
手前のピンクのテントがすげー目立つなと思って見てたら、なんと所有者の方もピンクの服でした。
ミヤマキリシマ大フィーバーって感じです。俺もピンクの服にしてくりゃ良かったよー。
坊ガツルからミヤマキリシマの平治岳へ
やっと平治岳登山口に着きました。ここは日本三百名山の大船山(たいせんざん)と同じ登山口です。
(以前、大船山に登った記事はこちらです)
大船山は人気のない記事ですが、自分にとっちゃ子供と諏蛾守越をして楽しかった思い出が詰まってます。川端康成も歩いたという超おすすめのルートです。
1人1石運動、ここでもしてるんだな。
天城山を登った時に初めて知った運動で、伯耆大山が有名な活動です。
自然崩壊が進んでる箇所やぬかるんだところに石を置いて自然を守るため活動のことです。
なるべく前を歩く人にプレッシャーをかけない様に「広いところまでぜんぜんゆっくりでいいですから!」と声は掛けるけど、何人か驚かせちゃったかなと反省しながら快調にとばしました。
やっとつまらなかった樹林帯も終わりです。この先の展望に期待できそう。
おおっ、あれか!期待通り!!
核心部までもうちょっと登らなきゃだけど、ここからでも一面ピンクに染まってるのがよく分かる!
半端ねえっす。
言葉を知らないんで、ここら辺から「やべぇ」を連発することになります。
ピンク色に染まるトレイル。こんなの見たことありません。超やべえ。
ミヤマキリシマを近くで映すとこんな感じ。主張しすぎない淡いピンク色はアカヤシオに近いかな。それと小ぶりで密集して咲くのが特徴です。
いよいよです。
もう少し、もう少し。
きたーーー!!
やべぇーーー!
これよ!!これこれ、この構図が欲しかった!もう写真撮りまくりです。
最大の目的だったミヤマキリシマ越しの坊ガツルと九重の山々を写真に収め、おいらの顔はきっとホクホクだったはず。
山頂までまだまだ続くミヤマキリシマの大パノラマ。
いろんな方言の「やべぇ」が飛び交ってます。
しかしなんでこの山だけこんなに咲いてるんでしょう、不思議ですね。
2年前にミヤマキリシマの名所として有名な普賢岳にも登ったけど平治岳は次元が違う。すぐ隣の大船山もたくさん咲いてるみたいだけどとてもここまでじゃないです。
真っピンクの平治岳山頂
関係者の方々による植生の保護活動も地道に行われてるみたいです。本当に感謝です。
山頂が見えてきました。
そしてタイミング良く晴れ間がさしてきました。
到着です!
多くの人で賑わう山頂で山マダムと写真を撮り合いました。
後ろ向きで1枚お願いしたら、
「あ~はっはっは!後ろね!!ほんと!?それでいいの!?あ~はっはっはっ!!」
ってすごいウケちゃって、周りで見てた人たちもつられて笑いだしちゃったから山頂は爆笑でした。すげー恥ずかしかったです。
てへっ。
隣の北大船山です。北大船山の上に奥に控える大船山の山頂がちょこっと見えます。
北大船もうっすらピンクに色付いてる所が見えるけどぜんぜん、平治岳とは格が違います。
霞の影響で分かりにくいけどうっすら見えた由布岳。猫耳の山頂が分かるかな?
山頂は平頂峰の様に少しですが横広がりになってて、三股山の方に向かって約100mぐらい歩けます。ここのミヤマキリシマが一番すごかった。
良く見るとつぼみもまだ残ってますね。
こんなすごい山が花の百名山に選ばれてないんだから、何とか名山ってのはまったくもって当てになりませんね。
再び山頂に戻ってきました。山頂でお昼ご飯を食べてる人もいるけど人の往来が激しいので遠慮して、少し下ったところでお昼にしたいと思います。
カンカン照りになってきたし山頂は暑いですからね。
長者原ビジターセンターで買ったおにぎり弁当。山で食べるご飯はなんでも美味いですね。
6月だけど虫は少ないし気持ち良く食べられましたー。
ご飯を食べる場所に選んだのはここ。日向で暑いけど、折角なんだから視界いっぱいにミヤマキリシマの絶景を見上げながら食べたいと思って選びました。すごい混んでたけど一人だとちゃちゃっと場所取りできて便利です。
長者原に向けてゲッザーン
こだわって場所取りしたくせに食べ終わるのに5分とかからんかった。。
名残惜しいですが下山します。
トレイルは大渋滞。えっちらおっちら下山します。
大戸越まではトレイルが狭いため登りと下りでトレイルが分かれてます。一方通行です。
前を歩く人を抜くスペースもありません。
見るからに登山はあまりやりませんって感じの方が多く、前を譲る配慮もないから本当にゆっくり下りました。
焦らせて怪我させたら嫌なので、距離は詰めずにゆっくりゆっくり。
やっと大戸越まで下りてきました。北大船山もここから簡単に登れるから少し悩んだけど、渋滞にハマってしまったため時間の余裕もないし、欲張る登山は自分のポリシーではないので今回は諦めます。
坊がつるに下山しまーす。
最後に見納めと思って振り返ったけど山頂は奥にあるからもう見えませんでした。
それでも十分。ほんと堪能できました。素晴らしいタイミングで来れて達成感はひとしおです。
山頂付近で晴れるという幸運にも感謝です。
軽快にとばそうと思ってましたが、大戸越から坊ガツルまでも渋滞でした。。
ミヤマキリシマがフィーバーしてる間は仕方ないですね。お祭り騒ぎです。
今日みたいな日は法華院温泉も相当混んでることでしょう。
その法華院温泉小屋を望遠で狙う。
テントもいいけど小屋泊でも訪れたい。
できれば厳冬期の閑散とした日を狙って静かな坊ガツルを楽しみたいと思ってます。
360度山に囲まれたここはまさに九重の懐。
自分の中では久住山や中岳に登るより、坊ガツルこそが九重らしさを最大に感じられる場所だと思う。山に登らなくてもここに来るだけの価値は間違いなくあります。
長者原に戻ってきました。渋滞の遅れを取り戻すため、ところどころ走ったので早く着きました。
まだ生きている火山、硫黄岳が元気に煙を出してます。
今回は雨ヶ池ルートのピストンですが、時間があればぜひ諏蛾守越ルート(すがもりごし)で長者原に戻ることをお薦めします。
諏蛾守越だと硫黄岳の横を抜けていくので迫力満点です。
長者原に戻ってきました。
こちらはガイド犬として活躍した秋田犬の平治号です。平治号が現役だった13年間、遭難者はゼロだったそうです。
駐車場まで戻ってきました。
今日も無事、安全登山お疲れ様っす。下山後の飲むヨーグルトはミヤマキリシマの余韻を吹き飛ばしてしまう別格の美味さでした!やべぇっす。
振り返って
平治岳の登山道は温暖な九州の山らしく薄暗くジメッとしてます。トレイルも泥濘が多く滑りやすいから注意が必要です。
そんなじめじめした時間帯は突然大戸越で終わりを迎え、ミヤマキリシマのどえらい景色が幕を開ける。
大戸越から山頂まで続くピンク色の世界は圧巻でした。平治岳がミヤマキリシマの群生では国内一と評されるだけあります。
山頂に向けて標高を上げていくと益々咲き乱れるミヤマキリシマに「やべぇ」連発。
ピンクだなー。
先週登った北アルプスの針ノ木岳では6月なのにあられが降る雪山登山。滑落までしたっていうのに、それに比べるとえらい違いです。
改めて狭い日本で気候や環境が大きく異なるという事に驚きます。小さな島国に3,000m峰が多く連ねるというのも稀有なことです。
それぞれの山で植生も大きく違い、登ってて飽きることがありません。
今日登った平治岳みたいな山はどこを探してもないと思う。たぶんね!
去年、子供とテント泊をした坊ガツルを流れるせせらぎと吹き抜ける風が涼しい。6月初旬ですが、九重の夏山シーズンはとっくに開幕してるんだな。ミヤマキリシマも良かったけど、思い出が詰まった場所に後ろ髪を引かれました。
ではでは