どーもこにゃにゃちわ、やっほっほ亭です。
新潟県の荒沢岳(あらさわだけ)に登ってきました。
荒沢岳。長く登山をしてる人なら知っている、そうでない人にはそれなりに知られている、そんな微妙な認知度の日本二百名山です。
そんな荒沢岳の特長は、前衛として荒々しくそびえる前嵓(まえぐら)と背後にそびえる荒沢岳の壮観な眺め。そしてその前嵓は、鎖場が連続する難所として知られるダッフンダなコースなのだ!!しかも、鎖すら設置されてない岩場だって連続して出てくるし、ビビリな自分には不向きな上級者コースだった!
そんな自分を癒やしてくれたのは、核心部の前嵓を過ぎてからの尾根歩き。ここが絶景で、下から吹き上げる風と越後駒ヶ岳のグレートビューが最高に気持ちが良かった。
豪雪地帯にあるため、雪害から守る事を目的に10月下旬に恒例の「鎖はずし」が行われるから、登れる期間は限られるんだよね。登る前にきちんと確認しとこう。
猛暑だった8月が過ぎ、やっと登山適期の秋がやってきたぜぃ!
越後駒ヶ岳から見えた荒沢岳がとても印象的だったし、以前朝日連峰の竜門小屋で一緒になった方からも薦められたし、前々から気になってた山だったから今回登ることができて良かったよ。
しかも、新潟の山は雪解け〜初夏は羽虫が多いって印象もあったから、9月はベストなタイミング!
やったね!
その筈だったんだけどさ、
羽虫どころか…
とんでもない奴の登場で被害者が続出する魔の山になっていた。
荒沢岳は標高1,969m。奥只見シルバーラインが開通するまでは秘境中の秘境だった銀山平。そんな銀山平を象徴する日本二百名山です。
まあしかし、、ほんと鎖場で襲われなくて良かったよ。
凄絶な被害現場からお送りする。
事件は現場で起きているんだ!
いざっ
ルートとコースタイム
■2020年9月12日 ※カッコ内は標準コースタイム。
荒沢岳登山口⇒(55分)⇒前山⇒(60分)⇒前嵓下⇒(40分)⇒前嵓⇒(85分)⇒荒沢岳山頂⇒(75分)⇒前嵓⇒(35分)⇒前嵓下⇒(50分)⇒前山⇒(45分)⇒荒沢岳登山口
コースタイム:7時間25分
総距離 9.6km
単純標高差 1,204m
累積標高上り 1,443m
荒沢岳登山
銀山平から登山開始
9月になった途端、天気予報は軒並み雨予報。
なんとかここだけは晴れそうだと、は〜るばる〜来たぜ新潟〜♫貴方と食べたい鮭茶漬け〜♫
奥只見シルバーラインが開通する前までは豪雪で閉ざされた秘境の銀山平。秘境過ぎて深田久弥だって登りに来れなかった荒沢岳にえっちらおっちらやって来た。
さって、参りますか。荒沢岳に直接登ることのできるルートはこの上級者コースの前嵓コースのみ。
他に選択肢はないと思え!前進あるのみじゃ!
と、ビビリなりに必死の自己暗示。セルフ鼓舞。
登山経験が浅い人は引き返す勇気を!だって。
登山経験は程よく浅く、考えも浅く、人としての深みは全く無い男が今から参るでござるよ。
登山道の周りに生い茂る雑草を見て、登山客って少ないのかな?と少し不安になったけどそこは日本二百名山。
踏み跡は良好なので心配無用。
どんどん先へ進もう。
歩き始めて3分で蛇口付きの水場に到着。
前山への一気登山 急登の始まり
水場を過ぎ、前岳までは一気に標高を上げる。
この登りでヤラれた。
いきなりだけど疲れた。
誰だ、どんどん先へ進もうとか言ったのは。
それにしてもバテるの早過ぎ。もしかしたら体調が悪いのかもしれない。コロナか?
しかしまだまだ続く前岳への登り。容赦ない。
まさに一直線に登っていく。
オレンジ色の彗星のシャア
まだまだ一直線に登っていく一気登山。
まあいつものことだけど、ヒーヒー悲鳴を上げつつ登っていると、
更に追い詰める事態が。。
とうとう、
けたたましい音とともに奴が現れた。
実はYAMAPで事前に情報を仕入れてたから、ここら辺だろうなと身構えつつ歩いてたんだよね。それで助かった。
やべぇ!来た!
急いでその場を通り過ぎる。
「あたし違います!あたしは通りすがりの与兵衛です。あたしは何もしりませんー!」
と意味不明なことを吐きつつ足早に過ぎ去る。
ブオオオオオーーン!!!
もうね、音がブヨやアブなんかとは次元が違う。与兵衛だろうが誰だろうが奴には関係ない。何だ、与兵衛って?
追いかけてくる。
「このスピードで迫れるザクなんてありません!通常の3倍のスピードで接近します!」
振り返る。
「シャ、シャアだ。あ、赤い彗星だ…。ルウム戦役で5隻の艦隊がシャア1人のために撃破された。に、逃げろー!!」
ブオオオオーーン!!!
再び振り返る。狙いすますハンター。殺そうか生かしてやろうか、楽しんでいるのか?
「見せてもらおうか。連邦のモビルスーツの性能とやらを!」
ひ、ひーー!!!
敵は一匹。恐ろしくどす黒いオレンジ。殺人鬼の色だ。丸々太った奴は、オオスズメバチ。
よく山のスズメバチって、キイロスズメバチとかクロスズメバチとかいるけどそんなんじゃない。紛れもなくスズメバチ界のキング。
あいつに刺されたら死ぬっ!
小便ちびりながら逃げきってやる!
意外とあっけなかったけど、10mほど追いかけて来て、その場を飛び去って行くキング。
木の根っこの地面に巣を作ってたみたい。
日本における野生生物による死亡事故で、最も多いのはヘビでもクマでもサメでもなく、スズメバチ。
9月頃からスズメバチは凶暴化するから気をつけないと。
蜂の被害が多い理由は、蜂と人の生活圏が近い事が要因らしい。ましてやこちとら自然を相手に遊んでるから遭遇しないなんて事はハッキリ言って無理。
なので、こいつから身を守るには結局登山者一人一人が巣に近づかない、黒い物を身に着けない、肌の露出を避ける、手で払わない、身を低くしてそーっと逃げる、ポイズンリムーバーを携帯するという感じで自己防衛するしかないと思う。
県に巣の除去を依頼しても、家の敷地内ならまだしも、山の中で除去したって他の蜂がやって来て違うところに巣を作るだけで、結局いたちごっこだからね。
あー怖かった。危険ポイントはこの前山の50mぐらい登山口寄りの急登の途中にあったよ。
うっかりそんな所で腰を下ろして休んでたら大変なことになってたな。アレルギー体質の自分は考えただけでゾッとする。
前嵓尾根の核心部へ
前岳まで来たら荒沢岳の山脈がやっと見えてくる。
残念ながら山頂付近はガスがかかってんな。
アキノキリンソウ。
銀山平方面の景色。もう少し標高を上げれば奥只見湖が見えてくるから頑張らねば。
前岳を過ぎると上り勾配は緩くなり、ゆっくり標高を上げていく感じになる。
でもやっぱりこの日は調子がいまいちで、前岳の登りだけでマジでバテた。超ダルビッシュ。
なんでこんなに足が重いんだろうと、トボトボ歩き続けていると容赦なく前嵓が近づいてきた。
ここからが前嵓尾根の真骨頂って感じ。
鎖場がおっ始まるぜ。
いよいよ鎖場
疲れてるからトレッキングポールはしまいたくなかったんだけどね、仕方あるめぇ。
まずは前哨戦。体をほぐしながら難易度の低い鎖場を突破していく。
鎖場のところどころにダイモンジソウ。
そして秋らしくリンドウ。
次々と現れる鎖場。
ここでもまさかの泣きっ面に蜂状態。
梯子、いただきます。
いよいよ前嵓へ取り付く時がきた。
「覚悟があってここに来たんだろ?」って感じだけど本当にこれを見た時は、ぎょえー!って感じだった訳よ。
この前嵓を見渡してルートを探しても、初めて歩くしどこを歩かせるのかさっぱり分からなかった。
とにかく、ビビリを無口にさせるには十分過ぎるヤバいルートなのだよ。
まずはここを下らせるのね。下から巻いていくのかな?
なるほろ、下から巻いて左から一気に前嵓を登り詰めるって訳か。やっと分かった。
やっと分かったけどさ、恐ろしいルートを見い出すもんだよ。
分かりにくいからルートに色を付けてみるよ。
はい、クレイジー。
右を向くと前嵓の岩壁が圧倒的。
いよいよ前嵓へと登っていく。
傾斜は見た目より緩く、意外と登りやすい。
だけど少し岩が濡れてる箇所があったり、下りは慎重に歩かなきゃヤバい。
イワショウブ。
バテたとか言ってらんない難所が続く。
本気でバテてんだけどね。
鎖すら設置されて無いゾーンに突入した。ジラレヘン。
他の山なら確実に鎖かロープ、ハシゴがかかってるだろうに。岩稜マニアにとって垂涎の山だってことは良く分かったよ。
歩いてきたルートを振り返る。
なんちゅう角度のところで立ち止まってるんだ?って言うのがお分かりいただけるだろうか。
越後駒ヶ岳が見えてきた。
秋に超お薦めの山。大した登山経験ではないけど、自分史上越後駒ヶ岳の紅葉が1番素晴らしかった。
痩せ尾根からは絶景
前嵓を通過すれば絶景の尾根道がしばらく続く。
目の前は荒沢岳。本当は前嵓の背後にそびえる荒沢岳がこのルートにおける最高の撮影スポットだったんだけどね、ガスがしつこくかかってて今回はチャンス無かった。無念。
振り返れば奥只見湖。
鎖場は大変だったけど、前嵓さえ登り切ってしまえば大パノラマが待ってるよ!
ここら辺で先行者に追いついた。話すことはもちろんスズメバチのこと。
衝撃だったのはこの方々の内、頭を刺された人がいるってこと。ナンマンダブナンマンダブ。
刺された人は少し気持ち悪いって言ってたし、他のメンバーには帰りたそうにしてる人もいる。でもリーダーが強そうな人で、どうやらこのまま登山を強行するみたい。しかも更に衝撃だったのが、この日は中岳方面に向かってテント泊するんだと。。
やめた方がいいって…。リーダーって臆病なぐらいが丁度良いね。
絶景だけど、前嵓尾根は痩せ尾根だからフラフラ歩くとちょっと危ない。
風が気持ち良いぐらいだったけど、強風の日も注意が必要なポイントだね。
痩せ尾根が終わりに近づくと、荒沢岳の山頂に向けた急登が始まる。
なんかこの日はほんと調子悪くて(コロナか?)、すかさずストックを出してなんとか4本足で登っていく感じ。ちょーダルダル。
よしよし、ここまで来ればあともう少し。
気持ち的に余裕が出てくるのはここら辺から。時間的に頻繁に休みを挟んだって確実に山頂まで行って戻ってこれるのが確信できた。
ソバナ。
気づけば銀山平ははるか下。
山頂に向けて最後の稜線歩き
トレッキングポールさまさまのお陰でなんとか急登を登りきった。
ここからは山頂に向けた稜線。
稜線に出た途端に風が強い!
厳しい冬には木が耐えられるはずないよな、と思わせる風だった。
奥に見えるのが荒沢岳の本ピーク。手前に2つほどニセピークがあって、それがまた意外と気を抜けない岩場だった。
反対側には花降岳というピーク。
歩いたら気持ち良さそうな稜線が続いてるけど、ルートはないので藪漕ぎが大好きって人はぜひどーぞ。
積雪期は荒沢岳の鎖が設置されてないし、まさに秘境って感じなんだけど、ネットで調べてみると積雪期に銀山平から花降岳北尾根を登るやんちゃな人がごく稀にいるみたいね。いやぁすごい。
まず1つ目のニセピークに取り付く。2つニセピークがあると書いたけど、一つ一つはとても小さなピークだから体力的にはなんてことない。
調子の悪い自分でも軽々登れたんでね。
下から吹き上げる風が強さを増し、途端に体が冷えてきた。
9月初旬の新潟はまだまだ暑くて、たくさん汗かいたから汗冷えした。
少しずつ元気になってきたし、暑さでバテてただけかもしれないな。
2つ目のニセピークの手前で、先程の蜂に刺されたメンバーを要する強いリーダーが1人だけ駆け抜けて行った。
メンバーは下山させて、1人でピークを踏みに来たのかな。
さっ、本ピークだ。
行くぜ!
山頂で水不足に気付く
立派な山頂の標柱。山頂に到着。1969m。
スズメバチもいたし、バテたし、まあよく頑張ったよ。
ちにみに強いリーダーさんはザックを置いて駆け下りて行ったから、後方のメンバーを助けに行った模様。
下山させたらいいのに…。無理に登らせても絶対楽しく無いってと、独り言。
こちらが中岳へと続く稜線。
途中に避難小屋もあって一泊で銀山平を周回する縦走を楽しむことができる。今回はパスして日帰りピストンにするけどね。
山頂ではスズメバチの話題ばかりだったけど、山頂にいる方々はみんな刺されずに済んだとのことで、一安心。
稜線が雲を堰き止めてる。
前嵓はすっかりガスの中。
この日はどこもかしこも雨予報だったからこれぐらいの天気の崩れで済んでくれて良かった。
9月になり、秋らしくセブンの「さつまいもこ」でご褒美タイムじゃ。
で、ここでやばいことに気付いた。
登山において何よりも大事な、水がもう少ないじゃないかァ!!
暑かったし、急登だったし、スズメバチで緊張したし、いつも以上に水の減りが早過ぎた。
下山も暑いだろうし残りの水は超貴重になるだろうな…。という訳で、断腸の思いで登山において水の次に大事なカップラーメンを我慢して、ここではおにぎり1個とおやつだけにしとく。
この判断は正しかったよ。
さっ、この中ノ岳へと続く稜線も見納め。下山するよ。
銀山平へゲッザーン
少しずつ紅葉が始まってるね。
毎年10月アタマの涸沢カールの紅葉を狙ってるけど、今年は行けるといいな。
10月下旬の新潟の紅葉を超えるなら涸沢カールしかない!と期待してんだけど、それぐらい越後駒ヶ岳の紅葉は素晴らしかった。
登った道を戻るだけとは言え、前嵓は上りより下りの方がはるかに難易度は高い。
再び通過することになるスズメバチゾーンでは、その手前でレインウエアを羽織り、頭をフードと帽子で守りを固めておく。
そして、刺激しないようにそろーり、そろり。
幸い、蜂って昼間は狩りに出掛けてるらしくこの時間は巣の周りにいなかったよ。とにかく気をつけないといけないのは早朝。暗いうちはまだ大丈夫だろうけど、日の出以降の朝方は気をつけないとヤバいよ。
うあぁぁ
もぉだめだ〜
ゴールがあと少しってところで、ちびちび飲んでた水も尽きた。しかも蜂対応でレインウエアを着込んで汗だくだし、緊張して喉カラカラだし。
喉乾いて死んじゃう。
水場に着いたら勢い余って頭から水を浴びて服までびちゃ男。でも生き返ったぜ…。
今日は2リットルじゃぜんぜん足りなかった。山頂でラーメン食べなかったのはナイっスーな判断。
無事ゴール!
荒沢岳のこと少し舐めてたよ。蜂には刺されなかったけど、痛い目にあった感じ。とにかくクタクタ。
魚沼産コシヒカリむすび「はざ掛米」
帰りの奥只見シルバーライン。
初めてここを走った時は不気味なトンネルが延々続きしこたま驚いたけど、改めてこのトンネル事業に関わった関係者に敬意ですな。
窓を開けるとトンネル内の寒さにビビる。
うーん、真夏の車中泊にちょうど良さそうな環境だな。
折角なので雪国まいたけのお土産屋さんを覗きにきたよ。
舞茸が一株1,000円。すごく大きい!
まあ散々物色して、いつもの様に何も買わずに店を出ました。
いつものことさ。
たまたま通りかかったおにぎり屋さん。魚沼だしコシヒカリを食らうのにもってこいだ!と、おにぎりの看板が見えて反射的にお店に車を突っ込んだ。
一番右に並んだ限定品の「はざ掛米」を注文。1つ260円と高価だけど折角だからね。
美味い!天日干しと書かれてる通り太陽の味がする!
ボンビー舌な自分には全てが美味しく感じられるんだけど、とにかく美味しかったよ!
振り返って
山には危険がいっぱい。前回の登山では熊も見たし。
すれ違う方々みんなスズメバチに追いかけられたと恐怖体験を語るまさに修羅場の山だった…。
スズメバチはどこの山でも油断ならない奴だけど、9月から特に凶暴化するのでほんと気をつけないとね。
なんにしても刺された人が気の毒だった。
自分で言うのも何だけど、自分ぐらいびびりな方がちょうど良いのかもしれない。びびり万歳。
はざ掛米ってなに?
刈り取った稲を逆さに天日干しして乾燥させたお米だって。天日で乾燥してる間にお米は完熟し、旨味が増すそうです。
今は乾燥も機械化が進み、重労働のはざ掛け作業は姿を消したそうです。
そんな貴重なはざ掛け米を買おうとすると、5キロで7,000円とか、2キロで3,000円とか。。とても手が出せない高価な物だから、おにぎりでちょっと楽しむぐらいがボンビーな自分にはお似合いか。
とにかく、こういう昔ながらの技法で作ったお米、せっかく魚沼の山に登りに来たのだから、ぜひぜひ味わうべし!
ボンビーには贅沢過ぎる旅となりました。
ではでは