【北アルプス】白馬岳 紅葉の飽和状態!坂の上の黒い雲と雷雨に怯える大池テント泊

【北アルプス】白馬岳 紅葉の飽和状態!坂の上の黒い雲と雷雨に怯える大池テント泊

「まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。」

このセリフ知ってる!というあなたはなかなかの歴史好き。

坂の上のポニョでしょ?

いやいや、ジブリ好きではござらんでゴザル。

坂の下の千里子?

いやいや、もしもツアーズ!って古すぎっ!切腹!!

はい正解は、あのイケメン俳優本木雅弘と濃いメン俳優阿部寛が兄弟役で主演した(ありえへんキャスティング!)ドラマ、「坂の上の雲」の冒頭のセリフでゴザルよー!!

てな訳で、今回は坂の上の雲のエンディングに使われた小蓮華山に登って、白馬岳まで歩いてきたぜぃ!

歩きながら、エンディングソングに使われたサラ・ブライトマンばりの天使の歌声を響かせようにも、あまりの急登に、ル〜♪うっ、ゼーゼー。ル〜♪ぐはっ!ひー!と全く歌にならず天に召されたおっさんの物語さ。

 

涙ちょちょぎれる絶景じゃー!

10月初旬の白馬岳は、紅葉のピークを迎えた絶好のタイミング。

白馬大池は人気のテント場なだけに、なかなか予約が取れなかったけど、奇跡的に10月初旬のベストなタイミングでやって来ることができた。

7月に予約したからね。

ムフッ。

大池のテン場はフラット、景色良し、小屋だって目の前。思い描いてた通り、最高のテン場だったyo!

幕営料が1人2,500円と、テン場の相場では信じられない高値で飛び出した目玉を探し回っちまったが、、うん!それ相応の価値はあった!

ちなみに、今回歩いたルートは、蓮華温泉〜白馬大池〜白馬岳のピストンさ。

 

さあ、これが坂の上の雲の舞台だ。

憧れの稜線に笑いが止まらんわい。

白馬岳は標高2,932m。日本百名山、花の百名山。小蓮華山は標高2,766mで新潟県の最高峰。

カーモンベイビーアメリカー!

 

ルートとコースタイム

■2021年10月2日~3日 ※カッコ内は標準コースタイム

蓮華温泉⇒(90分)⇒天狗の庭⇒(65分)⇒大池山荘⇒(50分)⇒船越ノ頭⇒(55分)⇒小蓮華山⇒(45分)⇒三国境⇒(50分)⇒白馬岳⇒(40分)⇒三国境⇒(45分)⇒小蓮華山⇒(45分)⇒船越ノ頭⇒(40分)⇒大池山荘⇒(55分)⇒天狗の庭⇒(70分)⇒蓮華温泉

コースタイム:10時間50分(休憩含まず)

総距離 19キロ
累積標高上り 1,880m

白馬大池テント泊登山本編

はじまりは雨

6:00

蓮華温泉の駐車場。

「当たった!ほらここ、当たったって!」と球審に迫る達川。

一昔前の珍プレー好プレーで定番だった達川のデッドボールばりに、関東をほんのちょっとかすめた台風が過ぎ去った翌日、蓮華温泉にやって来た。

台風一過のど快晴を狙ってやって来たのだが、あいにく霧雨が降ってる。

マジかよ~早くやんでくれないかなー、とぶつぶつ言いながらトイレに行くと、遠くに虹が見えた。

スカッとした晴れという訳ではないけど、この霧雨もすぐにやんでくれそうだ。

 

準備をしてると霧雨はやんだので出発。朝日岳の山頂は雲の中。

太陽が気温アゲアゲで雲をにふっ飛ばしてくれることを祈る。

ちなみに、自分の再訪したいテン場ランキングのトップ3に入るのが、朝日小屋のテン場。

次に訪れるときはやはり栂池新道だろうか。一時はゴールが海だなんて楽しそう!って盛り上がったけど、歩く距離の長さを後で知り、テンションは急速冷凍。

 

昨夜は台風の影響でザーザー雨が降ってたというのに、夜中の1時過ぎに着いた頃には駐車場の8割は埋まってるという人気の高さに驚愕した。

今日行く白馬大池のテン場もいいけど、朝日岳のテン場も良かったし、その拠点となる蓮華温泉が混むのはよく分かる。

 

白馬大池に向けて出発進行。眠気がまだ取れないし、濡れた草とこの日陰な感じが、歩く気力を萎えさせる。それに寒いし。

確実に秋の深まりというか、冬がすぐそこまで来てることを実感させる寒さだ。10月初旬だと言うのに。

 

登山開始

標高1,475mの蓮華温泉周辺は紅葉してるものの、色付きは日光市の手前(いまいち)。

標高2,300mの白馬大池周辺がちょうど見頃のタイミングらしいから、ここら辺はまだまだ緑が目立つ。

 

左へ行くと露天風呂。

下山後は露天に浸かるのもいいなーと、すでに下山モード。

 

そんな情けないことを考えてたら、晴れてきたよ。

 

ふう~っと涼しげな風が吹くように日が射した。

晴れると森が信じられないぐらいに輝きだす。

 

蓮華の森に到着。

まだ歩き始めたばかりで寒いから休憩はとらない。

 

こういう標識が頻繁に出てきてくれるから、自分の居場所が容易に判別できるのが助かる。

蓮華温泉から白馬大池までは5キロの距離。栂池自然園から白馬大池までは3.7キロだから、蓮華温泉からの方が1.3キロほど長く歩くことになるけど、その分ロープウェイ代がかからない事を考えれば、蓮華温泉の方が混むのは当然なのだ。

浮いたお金で下山後はプリッツでもポッキーでも食ってやる(安いな)。

 

白馬大池までは樹林帯のため、もっぱら日陰だ。

前日の達川台風の影響で、朝までずっと雨が降り続いてたし、風もそれなりに吹いただろうから、倒木やトレイルの崩壊を気にしながら歩いたけど、影響は皆無だった。

さすが達川、やはりボールなんて当たってなかったんだな。

 

太陽が昇り、湿って重そうにしてた葉っぱも徐々に生気を取り戻していく。

朝が一番森の呼吸を感じられる時間帯だ。

 

日当たりの良い場所では、こんがり焼けた紅葉が色鮮やか。

 

樹林帯を歩いてる間は、日焼けの心配はいらないなーと日焼け止めは塗らないでやり過ごすのが毎度のパティーン。どうせ汗で流れちゃうからと言って、森林限界まではすっぴん勝負を挑んだ結果、いつも軽く後悔するパティーン。

ずっと樹林帯ではあるけど、ここら辺から風景がコロコロ変わってとても面白くなる。

 

天狗の庭と紅葉祭り

ふおっ!超絶キレー!

とすっぴん親父が感嘆してしまう別世界が広がった。

紅葉したカラマツが美しい日本庭園の様な場所に出た。「天狗の庭」だ。

 

植生がカラマツの紅葉に変わった。

とてつもなく繊細で、あちきのメンタルのようだ。

 

テングガーデンからの大絶景。雲もすっかり晴れてくれた。

雪倉岳は縦走で地獄を見た山だ。日が暮れるぎりぎりに朝日小屋までたどり着けるかどうか、太陽との勝負でガチで走った。

ほんと、自分の計画の甘さによって数々のぎりぎりのスレスレ登山を重ねてきた。

 

遠くに見えるのは小蓮華山だろうか。

まだまだ遥か遠い。繊細なメンタルなだけに、あんなところまで歩けるのか不安になるじゃないか。目指す白馬岳はあのもっと先なんだぜ?

 

ちょちょちょちょチョレーイ!

 

足元に目を移せば山肌の紅葉のなんという美しさ。

この贅沢な景色を噛みしめて、歯ぎしりギリギリ鳴らしまくりだ。

 

この広大な景色やひんやりした空気感と、矛盾する暖かな日差しが混ざった状況で絶景を見渡すという世界は、リモートではなかなか伝わらない。というかリモートで仕事をしたかった。

コロナ禍の猛烈な忙しさをやっと乗り越えたと思いきや、それまで他の部門が当たり前の様に取得していたリモートワークが予防接種の普及が進んだことで、既にできなくなっていたという浦島太郎状態。

正確には、まだ週に2回のテレワークは認められてるのだが、上司から「あなたは駄目。毎日来てね」と釘をさされる始末。

ふっ、テレワークとか片腹痛いわ。ちょうど会社で仕事ができる幸せを噛み締めたかったところじゃー!もっと仕事持ってこーい(泣)

あぁ、樹林帯が俺を呼んでいる。

「おーい、そこの迷えるおっさーん、カムバーック!」と呼んでいる。

テルマエ・ロマエで、いか八朗さんが「おーい、俺の大好きな外人さーん、カムバーック!」と叫ぶシーンが大好きで、それに掛けてみたんだけど、それに気付いたという人は皆無でしょう。

分かりにくくてスンマソン。

とにかく、俺もテレワークがしてみたかったなぁ…。

 

紅葉を楽しみにしてるなら、別にアルプスじゃなくてもいいんだけどね。

しかし、今回は欲張り登山なのだ。

紅葉、大池でのテント泊、坂の上の雲、白馬岳、下山後の蓮華温泉、そしてロープウェイ代をケチった分の長野グルメ、ぜんぶ欲張っちゃうよ!

 

登山道だって極彩色。

ゆっくり歩かないと楽しめない。もとよりテント泊装備で鈍ペースだし、こうしてかがんで撮影した拍子に、坐骨神経痛による痛みがおケツに走った。

電気でびりびりされた様な耐え難い痛みだ。早く治さねば!

 

シラタマ。

 

苔むした岩に光が当たった時の美しさに、胸がときめきまくってるキモいおっさんはあちきのことだ。

通報しないで優しく見守ってほしい。

光の指す方に向かって進めば、そろそろシンリンオブジョイトイだ。違った、森林限界だ。

 

森林限界のちょい手前で紅葉のピークを迎えた。

これ以上も以下でも無い色の付き方は、まさに紅葉の飽和状態だ。

温暖化が着実に自然界を蝕んでいる昨今、残念ながらこうした紅葉がいつまでも楽しめると思ったら大間違いなのだ。

グレタさんに叱られる前になんとかせにゃならんぜ。

 

ハイマツも出てきていよいよ森林限界って感じだ。

白馬大池までは秒読み。

 

白馬大池のテン場と紅葉

どっぱーん印刷!!

一面に広がるチングルマの紅葉!すんげぇー!

こないだ歩いた立山にも感動したけどそれを上回る赤い絨毯。

 

ここは天国や。なんちゅう爽快な世界だ。

初めて来たけど、予想以上だ。

 

陽の光に照らされた水面なんてまるで海みたいだ。これが標高2,400mだなんてジラレヘン。今にもシャチがジャンプしそうだ。

 

大池山荘とテン場。コロナ禍で予約制っていうのもあるけど、早めに先着できたみたい。鈍足だったのに。栂池自然園からスタートする人は、10月だとロープウェイの運行開始が8時からだからそりゃこの時間には着かないよな。

それに、きっと今日はテントを張って泊まるだけにして、白馬には明日登るつもりで朝はのんびり来ようっていう人が多いんだと思う。

テン場はどこもフラットで一等地だから、急ぐ必要なんてないしね。

ちゃちゃっとテントを設営したら出発じゃい!

 

坂の上の雲

さあ、登ろうじゃないの。

自分も明日の朝イチに登るか悩んだんだけど、今だって晴れてるからね。

これまで、明日も晴れるし今日慌てて登る必要ないぜーっと余裕かまして、翌日見事にガスって後悔したことが何度かあるからね、チャンスと見たらそのときに登っておくべし!だ。

 

振り返る大池。

行ったことないけど、福島にある一切経山の魔女の瞳を遥かに超える美しさだ(たぶん)。

 

白馬大池から白馬岳までは特に危険な箇所はない。緊張感ゼロで歩けちゃう絶景コースは、コースタイムが長いということをうっかり忘れさせる。

こんな気持ちいいならもうテントに戻るのが何時になったっていいやと、ついつい思ってしまう。

しかし、突然痛い目にあうのが森林限界。油断してはいけなかった。

それは後ほど。

 

温暖化を追い風に、森林限界の引き上げに挑もうとする木々たちを眺める。

グレタさんこないだのテレビでも怒ってたよなーと思いながら、この時間を大切に歩く。

大切にというか、早く歩けないだけなんだけど…。

 

船越英一郎ノ頭に到着。

ああ、これこれ!これだよ坂の上の雲の上り坂は!なーんて思いながら歩いた道のりは小蓮華山ではなく、アデランスと歩んだ15年の歴史だった。

 

気を取り直して、これ!これが小蓮華山の頂へと続く稜線だ。

今回ははっきり言って白馬岳以上の本命がコイツ、坂の上の雲だ。

 

ジャーン!そんな訳で持ってきた。

司馬遼太郎作品ならおそらく全部読んだ。嘘偽りなく司馬文学が好きだ。

五竜岳名物の「山が好き、酒が好き」Tシャツに対抗して、「山が好き、ホンマは司馬が好き」Tシャツでも販売してみるか。

 

ここまで書いといて、カバーをめくってみるとまさかの坂の上の雲ではなく、青春スポコン小説「一瞬の風になれ」だった。

一体なんのために持ってきたのか、目を疑う顛末。

まあいい。白馬大池のテン場は電波悪くてスマホ見れないから、やっぱ本持ってきて良かったわーと、この後テントの中でひたすら読みあさったのさ。

ちなみに坂の上の雲の冒頭の、

「彼らは明治という時代人の体質で、前のみを見つめながら歩く。上って行く坂の上の青い天に、もし一朶(いちだ)の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて、坂を上っていくであろう」

という、この一節がすごく好き。

 

坂の上よりも目の前の雲がもくもくモックンで焦る。

本来なら圧倒的な紅葉と白馬主稜線の景色が見えたであろう景色は台無しなのだが、ガスの湧き立つ様子はそれはそれで超絶神秘的なのだ。

 

小蓮華山の上にちぎれ雲が流れていく。

まさに坂の上の雲の情景そのものだ。

ここでサラ・ブライトマンの天使の歌声を真似てエンディングの曲を歌ってみる。超絶音痴な自分が奏でる鼻歌だ。音を一つとして合わせずに歌うというのは逆に難しいものだが、そんな離れ業を軽々とやってのけた。

大自然の中だ、恥ずかしくなんてないぞ。

 

勢力を拡大し始めたモックン。うごめく雲の動きは、ずっと見ていられる面白さがある。

山頂に着く頃にはモックンに巻かれちゃうかもなー、やはりピークハントは明日にすればよかったかなーと冷や汗かきまくりだ。

 

太陽に温められた上昇気流によってガスが山頂を覆いだしたが、白馬岳から杓子岳への稜線が見えてきた。

そして再び姿を消す。

残念だが、これが登山だ。ガスこそ登山の本質だ。もし山頂に着いてガスガスだったなら、アハハハー、今まさに本質〜!と笑ってやる。

 

小蓮華山の山頂は目の前田マエダ。

「まことに小さな男が、更年期を迎えようとしている。」

ひー、しんどっ。崖の上のポニョでも、もしもツアーズでも、司馬遼太郎でもない。せっかく憧れだった坂道も普通のおっさんにしてみれば、たくさんあるしんどい上り坂の1つに過ぎないのだ。

 

初めて白馬岳に登ったのは猿倉からだった。その時は天狗山荘でテント泊して、不帰キレット経由で八方尾根に下山した。その時に、次はのんびり栂池方面から登ってみたいと思ってから早5年。

やっと念願が叶って歩けたのに、もっと体力があればもっと楽しんで歩けたのに、無念だ。

 

 

なんとかとうちゃく!

新潟県最高峰の山でありながら、頭に小が付いているのがちと残念だ。

そもそも「小」いるのか?

蓮華岳と区別するために小を付けたのなら、発想が長州小力じゃないか。

しかし、新潟県にはこれが最高峰だろうと、そんな事はどうでもいいという、確固たる自信があるに違いない。

妙高山に越後駒ヶ岳、コシヒカリに雪国まいたけ、魚介なら角上魚類とか、途中から山じゃないけど小蓮華山にこだわる必要なんてない自慢の品揃えだ。

新潟に住んでみたかった。

 

しかし、よく見渡してみれば、派手な鉄剣ぶっ刺して新潟県最高峰をしっかり主張してた。

山岳信仰の山だったということか?とにかくこれで新潟県最高峰としてカッコ付いた感じだな。

 

白馬岳への大きな稜線

ふぅー、まだ旅は始まったばかりだ。

既にヘトヘトだが、これから向かう白馬岳へと続く、このとんでもなく大きな稜線が歩く活力を与えてくれる。

何年か前に白馬乗鞍岳に登った時に、想像してたよりも遥か遠くに感じられた白馬岳。

やはりタフな登山には間違いないが、それでもここまで来ちゃえば歩ききる自信はある。

今日は寝起きからガッツリ鳥の照り焼き弁当を食べてきたのが効いてるのだ。胃袋がパンパンで破水寸前だが、テンションはアゲアゲだ。

 

この素晴らしいドラマを楽しもうじゃないか。丁寧に、しっかりと。

もう終わってしまった、もうやってくれないんだ、と2年前ドクターXの最終回に涙を流したが、この秋に再開してくれた。毎回録画して、丁寧に、しっかりと見てる。白馬岳のブログを書くのなんてそっちのけで。

おかげで最近は「御意」が口癖だ。

 

ぎょ、ぎょ、御意ッ!!

突然横からの暴風!

急速に冷やされる下腹部。

や、やめてくれー、余はお腹が弱いんじゃー!

すかさずレインウエアを着込み、お腹を守る不自然な耐風姿勢で進む。

とてもじゃないが、ここら辺は丁寧にしっかりと楽しむ余裕なんてなかった。

 

雪倉岳、朝日岳へと続く稜線がでてきた。この先は栂海新道を経て日本海へと続いている。

のびやかで巨大な稜線に舞い上がってしまいそうなものだが、あまりに過酷だった朝日岳への縦走を思い出し、漏れるのは嗚咽ばかり。

このトラウマを払拭するために、もう一度歩くのも悪くない。朝日岳のテン場を満喫して、白馬岳に登って蓮華温泉へ下山するというのもよさそうだ。

栂海新道は……。悩むところだ。

 

三国境に到着。富山、長野、新潟の県境で、県またぎマニア垂涎のポイントだ。

県またぎ遊びをしたいところだが、山頂が今にもガスで巻かれそうな勢いなため、下山までお預けとする。

 

ここも風が強い!

ところどころ横風をもろに受けるポイントがあって、右からの風で右半身が急激に冷やされる。

半身だけ冷やすと、心臓に負担がかかって心臓発作を起こすぞ!と子供の頃に聞いて以来、車の窓を開けるだけで軽くビビってしまうノミの心臓の自分にとって、この強風は恐怖だ(別に狙ったダジャレじゃない)。

しかも気温は5℃も無かったと思う。

下山してくるハイカーはダウンを着てる人もいた。

 

吸い込まれそうな谷底。岩が剥き出しの原風景。

スリルと絶景は紙一重だ。

 

ゆっくりと近づいてきたクライマックス。強風ポイントも過ぎ去った。

何度見ても白馬岳は長野県側がスパッと切れ落ちてるのがエグくてカッコいい。

恐ろしくがらんとした風景。しんと静まり返る。

 

剱岳、立山も見えてきた。

 

山頂はすぐそこだ。

くどい終わり方だけはするまい。

クールに終わらせる。

それが俺流。

 

いいか、よーく見とくんだ。

わいはクールや。

 

どぼぼーーん

 

シナリオ通りのぐだぐだゴール。ありがとうございもぉす(トロサーモン風に)。

小蓮華山までで既にヘトヘトだったんだから、こうなるのも無理はない。

それにしても派手な靴が目立つな、安かったからと言って安易に手を出すもんじゃない。いい加減恥ずかしくなってきたぞ。

 

まず大雪渓を探しちゃうのがハイカーってもんよ。

 

向こうに見えるのは杓子岳。手前は白馬山荘。

白馬山荘のきれいなレストランでなにか食べてもいいなと思ったけど、地図で等高線を見てみると100mも下ることが分かってソッコーやめた。

 

あちらは旭岳。崩壊が進んで、積雪期にしか登れない山だと聞いてたけど、何人か登ってる姿が見えた。

もう疲れ切った自分にあれは登れない。鼻っから登る気はさらさらなかったけど、登れない。

 

着いた時は貸し切りだったけど、やはり白馬岳は人気の山なだけに、ひっきりなしに登ってくる。

北アルプスで間違いなくトップ3に入る山なのだから当然だよね。

 

足元には白馬主稜線。積雪期限定で歩けるルートだけど、よくこんなところ歩くもんだな。

ジラレヘンよ。

 

さぁーって、風が強くて体がガチガチに冷え切ったからそろそろゲッザーンするよ。

滞在時間は30分てところか。インスタント登山みたいでもったいないけど、もう冬はすぐ近くまで来てるのを実感する寒さだったのだから仕方ない。

確実に、東京の冬より寒かったよ。

 

もっくんとランニングゲッザーン

ガスに巻かれる白馬岳よ、さらば。

激しくうごめく雲によって、稜線は一瞬一瞬で見せる姿を変える。

白馬大池までも実に神秘的な山の姿を見せてくれるに違いない。

 

3県またぎの術じゃー!

これまたなんと神秘的な光景だ。一瞬一瞬で見せる姿を変えながら、3県をまだぎ歩く勇姿がこれだ。

よしゃ!先へ進もう。

 

ここだけ周りとは違う岩石が表面に露出してた。

白馬岳は隆起してできた山だけど、白馬大池は火山活動によって生まれた湖だし、火山活動の名残なんだろうか?

 

何度も振り返り、足を止めて見入ってしまうダイナミックな風景。

何度振り返っても興奮が冷めることはない。

ここでソロハイカーとすれ違ったけど、なんと彼の出で立ちは、上はライダースの革ジャン、下はジーンズ、靴はコンバース、ザックはタウンユース。目を疑う姿に、何度振り返って見入ってしまった。興奮が冷めることはない。

さすが北アルプス、ツワモノ揃いだ。

 

遠くに見えるのは白馬村。

あんなところに住めたら毎日最高だろうな。庭に出てアルプスを眺めながら熱いコーヒーを飲みたいものだ。タイムラプスで撮影したり、想像しただけであそこの住民が羨ましいぞ!

さっきまで新潟に住みたかったとか言ってたくせに。

 

小蓮華山の山頂に着いてよーく目を凝らして見れば、白馬大池が見えるじゃないの。

しかし、なんだこのモックンの量は。

「もし一朶(いちだ)の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて、坂を上っていくであろう」

一朶とは、ひとかたまりという意味。

ちと多すぎやしないかい?

 

もはや一朶の白い雲とか言ってられない状態になってきたんですけどー!

ガチやばくね?

 

向こうに虹がかかってる!あっちは雨が降ってたってことね。

つーことは、マジやべぇ!こっちも降るって!

はしれー!!

ガスこそ登山の本質。アハハハー俺は今本質に触れてるんだ~!今まさに本質〜!とか、とても笑えない状況なのだ。

 

ハァハァハァハァ!

ひー!もうムリ!あちき走れない!ちかれたぽん!

やべぇっすやべぇっすー。背後から真っ黒な雲が猛烈な速さで襲いかかってくるっすー!

心なしかテン場の人たちが下山する自分を見て心配してるかの様に感じた。

 

ゴロゴロゴロゴロ!

バリバリッ!!

ざばーー!!

テントに飛び込んでほんと10秒後に土砂降りとなった。あられも混ざる横殴りの雨だ。

とにかく雷がひどい。近くで落ちる恐怖!

テントごと丸焦げになったらどうしようとビビりまくってたな。

今思えばテントではなく、小屋に避難しておけばよかった。狭いテントの中で2時間ぐらい雷の恐怖に耐えながら「一瞬の風になれ」を読み続けた。電波が悪い環境では本が有難い。しかし恐ろしかった。

 

雨あがりの大池

2時間降り続け(読み続け)、ようやく豪雨は過ぎ去った。

みんなテントから顔を出し、やっとやんだ、よかった、マジやばみー、等と口々に報告し合っている。

雷をこんな近くに感じたのは山では初めてだったかも。

 

なんてことだ…

下山してくるパーティがいるよ!

ハイマツの中に逃げ込んでたんだろうか。とにかく地獄だったはず。ほんと、よく耐えたよ。可哀想に。

彼らは一旦小屋に入って休息してたけど、体は冷え切ったはず。

下山中にすれ違った革ジャンとジーンズの兄やんもアウトだっただろうな。雨に降られるとかの前にアウトだけど。

 

前室に置いてた靴がびちょびちょで、言葉を失った。

水を吸水しきった靴は10倍ぐらいの重さに感じる。

仕方ないから靴下は脱ぎ、裸足で靴を履いて外に出た。

みんなテントから出て胸をなでおろしてはいるけど、なんもかんもびちょびちょだぜーと困惑してる、そんな一幕。

 

山の上から新しい川が流れてる。

なんという惨状だ。

 

白馬大池に夕暮れが訪れる。

周りを山々に取り囲まれてるから、西日になると暗くなるのも早い。

 

高山で空気がクリアな上に、更に雨で洗い流されてピカピカな大気。

 

さきほど大池山荘に避難してたパーティが、蓮華温泉に向けて下山していく。

あと数分で真っ暗になるだろうけど、もう雨の心配はないから安心だ。

 

テントに明かりが灯りだす。

 

先ほどまでの雷雨が嘘のようだ。雲一つない空にきらめき出す星々。

よしゃ、星空撮影じゃい!

といつもならテントから飛び出て撮影を始めるところだけど、びっちょり濡れた靴はどうしても履く気になれなかったから、この日の夜はパスした。

 

翌朝

という訳で翌朝。

起きてすぐ、靴の乾き具合をチェックしてみると、なんとパリパリに乾いてた!

昨夜は0℃を下回る寒さも手伝って、乾燥した空気と風によって見事脱水に成功。

お肌もカサカサだぜ!

 

夜と朝が混ざった時間に突入。山でテント泊する理由はこれを見るためと言って良い。

船越ノ頭の手前までえっちらおっちら移動して、日の出ショータイムの始まりだ。

 

テント泊した人、小屋泊した人の多くが早朝出発で白馬岳登頂という計画だったらしく、次々と登っていく。

 

白馬大池にも光が射す。

なんと神秘的な光景。風はないけど、さすがに寒い。もう東京の冬より寒いのは間違いない。

けどあまり気にならない。

 

きた。

 

ぬおっ。

たまに昇るなり雲に隠れてしまう残念な日の出に遭遇するけど、今回は完璧。

 

生気を取り戻す様に、赤く染まるハイマツ。

 

雪倉岳、朝日岳も生き返る。

 

おひさま!どすこーーい!!

 

 

チングルマの紅葉もどすこい映える。

今更ながらだけど、光の反射によるフレアが目立つからレンズの保護フィルター外して撮影すれば良かった。それにこういうシーンでこそナノGIコートされた16mmF1.4レンズを持ってくりゃよかったぜーと悔やまれる。

せっかくの絶景がもったいない。

 

水溜りは凍ってる。寒いわけだよ。

 

なるべくなら到着した日にピークを踏んだ方が、翌日は下山だけで済むからのんびりできていい。自分は片付けとか遅い方人だから、こっちのスタイルが向いてる。

猛スピード下山とか、終電に飛び乗るとか、ほんとドキドキするから避けたい。

 

蓮華温泉へのゲザーンと小栗旬

さーって、ゲッザーンするよ。

遠くに日本海が見え、何気なく「海だぁ…」と呟いたら、それが小栗旬にクリソツだと言うことに気付いた。今の感覚を忘れちゃならんっ!と、ここから「海だぁ」を連発しながら蓮華温泉まで歩いた。おかげで小栗旬のモノマネの腕は相当上がった。

 

まだ日が高くないから山の影が濃いけど、紅葉は相変わらずど真ん中。

登りでは疲れて半分死んでたから、下山でゆっくり楽しむ。最高の時間。

10月初旬の白馬大池に来れてほんと良かった。

ついでに、ホークスの2022シーズンの監督が藤本博史さんに決まり、「やったぜー!小久保じゃなくて一安心だぜー!」と胸をなでおろしたホークスファンも多いことだろう。ともかく良かった。日ハムの監督は新庄だし、2022のパ・リーグはほんと面白そうだね。

 

山桜の実?かな。

赤い枝がサンゴみたいでいつも気になる。

 

山あじさいがなぜかまだ咲いてた。蓮華温泉の近くで地熱が影響してるのかな。

 

秋の代表格、リンドウ。

前にも書いたけど、ホームセンターで1ポット280円で売られてた(笑)

 

時間に追われることなく、のんびり、山の季節の移り変わりを楽しみながらの平和な下山だった。

 

蓮華温泉からは朝日岳の大絶景が楽しめるから、ここには必ず立ち寄りたい。

今日は昨日より空気が澄んでる。今日ピークを踏む人たちは最高の秋の景色を満喫できただろう、それはほんと良かった。

昨日の豪雨の中を下山してきた人たちを見てるから心からそう思える。

 

浮いた金の使い道

さあ、ロープウェイ使わなかったんだから長野グルメを楽しむぜぃ!

もし時間があればここへ立ち寄っておくれ!カーモンベイビー!縄文おやき村へ!

長野県小川村にあるこのおやき村では本格的なおやきと蕎麦が楽しめちゃうのだ。

マジでこれまて食べてたおやきが偽物だと知ることになるよ。

 

リアルおやきはしっかり20分以上かけて焼く。

注文して待つ時間も楽しみたいところだけど、席が少ないので、すぐ食べることのできる野沢菜を頼んで、他人が注文したおやきが焼かれてるところを激写だ。

 

これが本物のおやきだ。新世界!美味い!安い!

熱々で、しかも小籠包みたいに一口目で中の汁がブシューと飛び出すから要注意だけどね。

ちなみにおやき村では蕎麦も食べられる。

見るからに本格的な蕎麦。実にウマそうだった。

しかしあろうことか、おやき村の手前にあった道の駅で空腹の限界!と言い放ち、立ち食い蕎麦を食らってしまってたのだ。

 

それがこれだ。

だって、空腹だったんだもーん。

まあ、天ぷらそば(かき揚げ)は、それなりに美味かったけどね。

 

振り返って

白馬大池は人気のテント場なだけに、なかなか予約が取れなかった。

1年前は小屋締めの10月末にやっと予約が取れたんだけど、生憎の雨で泣く泣くキャンセル。

その時電話で応対してくれた女性の「残念でしたね、ではまた来年〜♪」がそれから1年間ひたすらリフレイン。

 

しかし今年に入ってもなかなか予約が取れない。本当は真夏に来たかった。

「余は今、大池ロングビーチにおるぞー!」と、あたかも湘南にいるかの様に楽しむ予定だった。

タピオカドリンクを片手にモルディブ風に「まさに開化期を迎えてるでおじゃるー!」とか言っちゃったり、

おっさんのアホな妄想は広がっていた。

 

しかし、真夏に予約は取れなかった。

 

仕方ない。。7月のタイミングで割り切って3ヶ月先の10月初旬の予約を入れることにした。

 

お土産屋さんに並ぶ試食用のお菓子を狙う猿の様に、観光客の弁当を狙う猿の様に、テン場の空き状況をじーーっと狙ってきたが夏は無理だった。わいは猿や。

※白馬大池の空き状況はネットで確認ができる

 

10月初旬は下手すると雪が降るしなー、濡れたらめんどくさいなー、と心配したけど秋にして大正解だった。

紅葉のど真ん中をぶち抜いて歩く。白馬岳のピークに向かって突き進むトレイルは、そこら中がサプライズだ。

 

ガチな雪山は避けて通る道楽ハイカーの自分にとって、これが今シーズン最後の北アルプス登山になるかもなー、と名残惜しむように歩いた。

テン場の料金設定には驚いたけど、来てよかった。

ではでは

 

 

【今回の使用カメラ】

富士フイルムX-T1、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS。


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