5月13日。
足尾のジャンダルム。
登山客を寄せ付けない恐ろしく切り立ったこの岩峰は栃木県日光市足尾町の松木渓谷にあります。別名日本のグランドキャニオンとも言うらしいです。
今回はこのジャンダルムを越えて中倉山へ登るガチのバリエーションルートです。
※今回のルートは大変危険です。間違っても興味本位だけで登りにきてはいけません。
足尾のジャンダルムと中倉山の特徴
①岩場がもろいため落石には要注意。
②高度感が半端ない。
③中倉山の見所は孤高のブナと足尾の山々の展望
↓こちらが登山界で話題沸騰中?の孤高のブナになるわけですが、言いたいことがある!本文で分かりやすく書いたので読んで下さい。
ふむ、確かにこりゃ登山客引き寄せるわ。
さて、ほいじゃルートの補足しますっ!
まずひとつめー!
足尾のジャンダルムは、取り付き場所を自分で探して岩場を登っていく超上級者ルートです。
中倉山と孤高のブナだけを楽しみたいなら安全な一般ルートがきちんと整備されてますので、そちらをご利用ください。
今回は下山でその一般ルートを利用してるのでどんな感じのルートか参考にしてください。
ふたつめー!
中倉山までは一般ルートが整備されてるにも関わらずヤマップにはルートの表示がありません。ここを歩いた人の軌跡をダウンロードするか、紙の地図を必ず用意しておきましょう。
みっつめー!
中倉山の稜線は足尾銅山の煙害の影響で木々が少なく360度に広がる峰々の大展望が楽しめます。皮肉なもんですね!
中倉山は標高1,520m。登山口は銅親水公園(あかがねしんすいこうえん)です。すぐ近くには足尾銅山鉱毒事件の名残の製錬所が残されてるので是非立ち寄ってみてください。
大冒険の始まりです。
ジャンダルムを越えろ!
いざっ
■周辺地図
銅親水公園の住所:栃木県日光市足尾町原レ885番地2の先
■ルートとコースタイム
■2018年5月13日
7:30 銅親水公園 ⇒ 8:30 渡渉ポイント ⇒ 11:05 孤高のブナ ⇒ 11:20 山頂(軽く昼食) ⇒ 13:00 銅親水公園
コースタイム:約5時間30分
登山開始
栃木県日光市足尾町の銅親水公園(あかがねしんすいこうえん)にやってきました。
すぐ隣のエリアに男体山などの日光連山があるので山深いです。
駐車場はご覧の通り30台近く停めることができます。
最近密かなブームになりつつある孤高のブナを見にやって来る登山客や渓流釣りをする方々の車で天気が悪くてもそこそこ埋まってました。
駐車場からは古い煙突が見えます。今は動いていない製錬所です。煙害の記憶を無くさないために残してるのでしょう。
公害の歴史を経て今の日本があることを忘れてはいけませんね。原発もこうなると良いのに。
松木川沿いを長く歩いてジャンダルムに取り付きます。
ん?
さすがすぐ隣ということもあって日光の山々も載ってます。こないだ登った社山(しゃざん)も記載ありますね。
でもちょいと待てよ。
「やしろやま」って書いてあるよ!?
みんな”しゃざん”って読んでたからてっきりしゃざんかと思ったよ!
いや、後で調べてみたらどちらも正しいことが分かりました。それに写真を振り返り、山中の標識にも「SHAZAN」と読み仮名が振られてることを確認しました。
でも確かに最初「やしろやま」と読んでた自分としてはこっちの方がしっくりきます。
1956年から多くの人手をかけて治山事業に取り組んできたそうです。
土砂流出を防ぐジャカゴを設置したり植林したり。
駐車場にはこんな説明書きがありました。
1600年代に銅山の開発が始まり、煙害により山の森林は枯れ、山が水を溜めなくなったため洪水が何度も起きたそうです。
こうやって教科書で習った現場に来るって、とても大事なことだと思いました。
こちらが渡良瀬川です。今はきれいな水が流れてます。
更に奥地へ、松木渓谷を目指します。
渡良瀬川の源流の碑。
読んでる方からスタートするまでが長げぇよと突っ込まれそうですが、ここからやっと登山スタートです。
銅親水公園のこのゲートをくぐります。
ジャンダルムってどんなだろ。不安です。
この久蔵川を渡って左に曲がり、ぐるーっと左前方に見える山を巻くように歩いていきます。
そして松木川にでたら右岸を上流に向けて移動します。松木渓谷の遊歩道を歩きます。
旧松木村に緑を戻そうと、今でも地道に植林活動が行われてます。杉を植えないあたりが素晴らしいですね。
途中にみちくさなる松木渓谷のコミュニケーションの場がでてきます。
無人でしたけどね。
ここまでちらほら釣り客を見かけました。魚も戻ってきたんだと想像できますが、しかしなぜまだこういった護岸工事?治水工事?砂防工事?が必要なのか疑問です。
ありのままの自然の姿で残してたらどんな問題が生じるというのか?自分にはよく分かりません。
見えました!
トボトボと4キロほど歩いてやっと足尾のジャンダルムに着きましたぜ。。
すごい景色です!と同時に不安でもある!
ルートを赤字で簡単にお絵描きしてみたので参考にしてください。いや、マジで簡単でスミマセン。
でも登ることは薦めせんけどね。
川の渡渉ポイントは対岸に黄色のペイントがされた岩があるのでそれを探して下さい。
膝上までキンキンに冷えた川を渡る。冷たすぎて痛いし、流れが急で怖いです。
恥ずかしがってんじゃない!ズボンは脱ぐべし!
渡渉の目印になる岩をアップで。
これに気づかなかったら今日の登山は終わってました。
渡渉したらまずは樹林の中を歩きます。樹林を巻くように右に行ってみたらガレがひどくて歩きにくかったのですぐ樹林に戻りました。
ジャンダルムの2つの岩峰の間に見える緑の部分を目指す。標的を見失わない様に常に気をつけて歩く。
樹林の中も歩きやすいとは言えないけど、なんとなく踏み跡もあるしそこそこ山を歩いてる方ならルートを見つけやすいと思います。
まずはこの簡単な取り付きからスタート。
全然これは序の口なので、ここを登ってラクラク引き返せることをイメージできない方はここで引き返した方が良いです。
途中の大きな岩盤を前にクライマー達が3人いました。軽く挨拶して自分達は先程の緑の方へ右へ右へ巻く様に移動しこの岩に取り付きます。
岩には亀裂が多く入ってるから見るからにつかみやすそうだし、足の置き場にも困らなそう。でもここの岩場はとてももろく、つかんではボロボロと剥がれていくから見た目に騙されちゃいけませんぜよ。
ガシガシ登り続けて、振り返れば目がくらむ高度感で本気でガクガク震えてきます。
絶対に落ちるわけにはいかない。より慎重に、全神経を研ぎすませて集中します。
左を向くとクライマー達が登ろうとしてた岩壁。
自分のことは置いといて、まったく物好きな連中だよ!
しかしほぼ垂直に登ることによる高度を上げる速さに驚きでふ。
ここが最大の難所。
左の少し岩雪崩を起こしてる所を登っていきましたが、とにかく岩がもろくて危険。くどい様ですが見た目の簡単さに騙されちゃいけない!
とにかくホールドできそうな岩をつかんではポロッ。えっ!!ここは?ポロッ。えー!
足場はグラグラ。
グラッ。
えー!ポロッ。
ぎょえー!
どこつかめばいいのー!
これの繰り返し。もう少し右を巻けば良かったという反省点はあるものの決してこのルートでも間違いではありません。
とにかく一歩上がるのがとにかく恐怖で、体もすくみっぱなし。
「ここを登り切ってまだこんな岩場が続くようなら本気でヤバイ!」と本気で思いました。
ほぼ垂直に登っていくから先が見えないし。
「お願い!頼むからこれで終わって!」
と祈る思いで登りました。
「よぉぉおおっしゃー!」
登りきった先は岩壁ではなく、小さな森でした。
下から見上げて目指してたポイントです。
この景色が目の前に広がった時の安堵感は言葉では言い表せない。。助かったと本気で思ったし、登りきって雄叫びをあげました。
いや、マジで助かったよ。。
怖くてなかなか写真が撮れなかったけど、ほんとここまで長かったです。
少し進むとまた岩場がでてきますが、先程までの難関を突破してきた直後なんでこれぐらい楽勝です。
これぐらいでも通常ルートではあまり見かけないレベルのガレと岩場です。
もはや感覚が狂いまくり。
振り返る。
無事に道迷いせずに来れました。
ほんの少しですが雨が降ってきて岩場が滑りますが、ここまで来れば大した危険はありません。
とは言えガレて歩きにくいので常に上を確認しながら登りやすいルートを探して進みます。
で、鹿の足跡を追うとそこが一番歩きやすいことに気付きました。妙高山でも小動物の足跡から少しでも外れると雪を踏み抜いて苦労したことを思い出します。
獣ってすごいですね。
それと、ここら辺でジャカゴもでてきました。この写真の緑色のネットがジャカゴです。人工物がでてきたってことはここからは作業者のルートがあるはず。もう安心です。
また岩場がでてきましたが、ここら辺はもうモロい岩じゃないんで楽勝です。
安心した直後が一番危険だとは言いますが、ポンコツな自分は気持ち緩みっぱなしです。
孤高のブナが楽しみ〜♪って感じです。
奥に見えるピークが中倉山です。
こんな岩場を鼻歌交じりに越えていきます。これぐらいが楽しめるレベルなんでしょうね。
背後には松木川を挟んで大きな山がそびえてます。
ジャンダルムを登ってる時は何度も振り返ってこの山を参考にどれぐらい標高を上げてきたか確認して、まだ低いことに何度も愕然としました。
こんな落石防止用の柵もでてきました。
このガレ場でこんな柵を運んだ作業者たちはきっとアスリートかなんかでしょう。
前方に2人いるの分かりますか?
先程抜いていきました。なんとトレランです。
「えー!ジャンダルム越えてきたんですかー!」
とすごく驚かれたけどこっちも
「えぇ!ジャンダルム越えてきたの?」
と驚いて同じことを聞き返しました。
「普通ここ歩いてる人いませんから!いやぁすげぇっす!」と信じられない様子だったけど、
俺のセリフだよ!しかもハーフパンツで膝から流血してるし(笑)
って感じで会話を交わしました。
ええ、普通こんなとこ歩きませんよ。激しく同意します。
山頂が見えてからが長く感じます。近そうに見えて遠い。
でもやっとすぐそこまで来ました。
足尾のジャンダルムを越えろ!
自分史上最大のミッションはもう少しで完遂!
先程抜いて行ったトレランの二人が大きな声で、
「こっちは山頂です!ブナは向こうです!」
と教えてくれる。
こういう山ならではの出逢いが嬉しい。気持ちの良い二人組でした。
さって稜線に出て一般ルートと合流しました。
まずはブナよ、ブナ!
山頂よりも孤高のブナが目的です。さっき教えてもらった方に向かって歩きます。
気持ちの良い稜線歩きができる評判通りのルートです。
ちなみに中倉山はヤマップだと皇海山の地図の中に記載されてますが、一般ルートでさえ表示がないのが不思議です。
話は戻して、
ブナはすぐそこです。
ぜんぜん孤高じゃねぇし!!
まさかのブナだらけ。
なるほど、この角度からなら確かに孤高感でてるわ
((´∀`))ケラケラ
率直にガッカリだぜ。。
でもジャンダルムを越えてきたわけだし達成感を爆発させてみますかね。
それなりにポーズとって遊びましたけど。。
なんか・・・
ここまでが壮絶過ぎてブナを前にしても達成感が希薄です。
希薄です!
と言うわけでそそくさ移動。
こっちが山頂です。
皮肉なもんですが、銅山の煙害のせいでこの稜線歩きはとても気持ち良い。見晴良すぎー!
軽くご飯食べて下山しまっせ。
ここからは一般ルートで下山します。
中倉山登山を検討されてる方はトレイル状況とか参考にしてください。
トレイルの斜度は緩いし、とにかく整備されてるので危険ゼロです。
ところどころシロヤシオが満開でした。
子連れでも安心できる登山道。
少し雨がぱらついてきましたが、いつも下りでは超ハイペースで歩く同行者が遅いのが心配。疲れ切ったみたいです。
急な斜面もつづら折りになってて緩やかだから歩きやすいです。
原生林の森が続く。杉が生えてないって素晴らしいです。
下山完了!
ここからは銅親水公園まで約4キロの林道歩きです。
長い。。
猿が道を横断中。たくさんいます。
襲われないか恐怖です。
橋を渡って振り返ったところの一枚です。左に行くと中倉山登山口。右に行くとジャンダルムの分岐です。
駐車場に戻ってきて、着替えながら足尾銅山の説明書きを読みました。
足尾銅山って1610年に農民が銅山を発見してから開発が始まり、約400年の歴史があるんだそうです。すごいですね。
あ!ジャンダルムだ!
日本のグ、グランドキャニオンって言うのか。。
帰りに立ち寄ったお土産屋さんで栃木名物レモン牛乳を購入。
パッケージに「まろやか仕立て」って書いてるコイツが美味い!
栃木のアンテナショップで飲んだパックの物より美味かったです!
振り返って
有名な孤高のブナがある中倉山の麓に、知る人ぞ知る恐怖の岩峰があるなんて知りませんでした。
これまで妙義山の鷹戻し、北アルプスの大キレットや八ヶ岳の阿弥陀岳南稜、八海山など岩峰はそこそこ歩いてきましたが、比較対象外です。段違いに危険度マックスな旅となりました。
そんなジャンダルムを越えて中倉山の山頂まで登りつめると、天気が悪いのにお年寄りのパーティーが記念撮影してました。地獄から天国へ。まさにそんな感じ。
本家本元の北アルプスのジャンダルムにはまだ登ったことがありません。ですが、適当なこと言いますが足尾のジャンダルムの方が難易度上だよ、絶対に!!
(ヤマレコで登った気になって言ってるだけなんだけどね!!)
もしこれ以上難しかったら自分には到底登れそうにありません。
そう、だから今年は必ずジャンダルムに登って比較してみようと誓いました。
ガレ場から眺める中倉山の山頂。
ジャンダルムを越えて山頂まではジャカゴだけじゃなく石垣も組まれてました。
昔、治山事業に携わった方々はかなりの手練達だったに違いありません。
苦労も相当されたはず。
治山事業には数百年という時間がかかるそうです。
それでも少しずつ緑が戻り、獣も戻ってきました。
鹿の足跡に助けられ、道を横切る猿の群れにビビる、そんな中倉山登山となりました。
ではでは