【北アルプス】大天井岳 アパッチの雄叫び!天国に最も近いテン場とキラキラ輝く満天星空(大天荘テント泊)

【北アルプス】大天井岳 アパッチの雄叫び!天国に最も近いテン場とキラキラ輝く満天星空(大天荘テント泊)

なぎさのハイカラ人魚〜キュートなお山に

ずっきんどっきんッ!

 

中房温泉を起点に北アルプスの大天井岳に登って、大天井岳(おてんしょうだけ)でテント泊してきたYO!

大天井岳のテン場はまさにリアル天竺!愛の国ガンダーラ♫

三蔵法師様、あちきも行ってみたいっス、大天井岳。って感じでフラフラとリアル天国を求めにやって来た今回の山旅。

ほんとに話に聞いていた通り、テン場からの眺めは素晴らしく、広くてフラットだし、小屋もすぐ近く。

ここにはテントだけを目的に訪れてもいい、道楽ハイカー達のエルドラドだった。

 

強風ですぐに目が覚めてしまう。

うーん、もう眠れない!とテントから顔を出してみればキラキラ輝く満天の星々。うへぇー!こうしちゃおられんっ!だいぶ早い朝ごはんを食べて、たくさん着込んで外に出た。

テント泊の醍醐味はなんつったって夜じゃい!

月明かりが照らす大天井岳の山頂に立って、約1時間ほど、夜から朝へと移りゆく空の色を楽しんだ。うーん、至福!

最初は一人だった山頂も日の出前には50人以上に増え、見渡す限りの雲海を前にテンションアゲアゲだ。

槍ヶ岳から穂高岳。大キレットを指でなぞる。裏銀座の山々が屏風の様に迫る。遠くに見える南アルプスと富士山のシルエットが濃くなっていく。360度の大パノラマ。

さァさァさァ!完璧な朝日が上る!

全員で共有する夜明けに胸アツっ!

 

大天井岳は標高2,922m、北アルプス常念山脈の最高峰。日本二百名山。

山ガールの聖地燕岳はおっさんには眩しすぎたから寄らずに大天井岳だけに登ってきた(笑)

 

 

ルートとコースタイム

■2021年8月28〜29日 ※カッコ内は標準コースタイム

中房温泉⇒(150分)⇒合戦小屋⇒(70分)⇒燕山荘⇒(55分)⇒大下りの頭⇒(85分)⇒切通岩⇒(35分)⇒大天荘⇒(10分)⇒大天井岳山頂⇒(10分)⇒大天荘⇒(25分)⇒切通岩⇒(75分)⇒大下りの頭⇒(55分)⇒燕山荘⇒(45分)⇒合戦小屋⇒(105分)⇒中房温泉
上り 6時間45分、下り 5時間15分

コースタイム:12時間(休憩含まず)

総距離 17.5キロ
累積標高上り 2,110m

大天井岳テント泊登山 本編

有明山神社から中房温泉までまさかのバス移動

有明山神社の駐車場から、中房温泉へのバスに乗り込む。朝の4時半のバスに乗るために3時50分に並び始めた。

深夜1時に中房温泉に着いたけど、時すでに遅し。中房温泉はすでに満車で、誘導員の方にここ有明山神社の臨時駐車場に回されたってわけ。泣ける…。

さすが人気の燕岳の登山口。心配してたけど、まさに不安が的中した形だ。

 

予期せぬバス移動となってしまい、激しく睡眠不足。

まあ仕方ない。

食欲なかったけど、バス待ちで並んでる時に涙目になりながら焼肉弁当を食べたし、睡眠不足でも歩けるだろう。

中房温泉は標高1,462m。大天井岳まで単純標高差で約1,500mもあるのね。

 

中房温泉のテント場の水場で補充して出発。

大天荘(だいてんそう)のインディアンカレーを食べることも今回の登山の目的の1つ。いや、最大の目的と言っていい。しかし、厳しいのはコロナ禍のため小屋の食堂は13時45分でクローズするという制限付き。

営業時間に間に合うか、寿命が尽きるのが先か、走れメロス!こいつはデッド・オア・アライブな旅だ!

朝の5時、ゴングが鳴り響く。上りのコースタイムは約7時間だ。

テン泊装備だけど、まあちょうど良い時間に着きそう♪

 

急登の先に山ガールの聖地があーる

さすが、人気のルートだけあってわんさか登山客がいる。

ここは第1ベンチ。

この後第2、第3、見晴ベンチと合戦小屋まで定期的に休憩ポイントがでてくるけど、水場があるのはここ第1ベンチだけ。登り始めたばかりだから給水しない人がほとんどだと思う。

 

中房温泉から第2ベンチ辺りまでがなかなかキツイ急登が続く。

トレラン、日帰り装備、小屋泊装備の人が多いから自分のペースを見失わない事が肝要だ。

不惑の年齢でありながら、惑わされまくりな自分にはそれがなかなか難しい。

 

ちなみに、コロナの予防措置で2021シーズンの燕山荘のテン場は予約制。予約してない人は自分と同じく予約が不要の大天荘のテン場を目指してるはずで不便を余儀なくされている。

そんな訳で、例年よりテン泊装備の人は少ないのかもしれない。周囲は身軽なハイカーばかりだで元気に抜いていく。

 

第2ベンチまでの試練の登りを過ぎた頃、やっと景色が開けた。遠くに見えてきたのは八ヶ岳。蓼科山がぽっこりした姿で実に分かりやすい。

近くにいた二人が、え?あれ八ヶ岳なの?違うっしょ。だってここ長野県だよ?きっと南アルプスだよ。

説明してあげたくなるところだがそんな野暮なことはしない。でもモヤモヤする。聞きたくなかった会話だ。

 

第2ベンチから上も容赦ない急登が続く。第2ベンチを過ぎればあとは楽だと思っていたのは完全な思い込みだったらしく、精神的にもくたばった。おだぶつ。

ここまで汗をかかないぐらいのゆっくりしたペースで歩いてきたから足は大丈夫だけど、もう登ることに早くもお腹いっぱいだ。

 

中房温泉から燕山荘までは5.5キロなのね。富士見ベンチで燕山荘まで来てしまえば残り2.4キロ。やっと半分消化した感じ。

ここで長い長い休憩を取ることとする!

 

やっと稜線上に大天井岳が見えた。左の肩にある大天荘も肉眼で認識できる。空気はクリアなり。

先週まで週末になれば雨天っていう週が続いたけど今日は完璧だ。

 

合戦小屋まであと5分。

赤いきつねが出来上がる時間で到着だ。いつも待てずに3分で食べ始めてしまうから5分もあれば食べ終わる。

 

合戦小屋は上りと下りの登山客で大盛況。

炎天下の下で座ってる方々は休んでるだけでむしろ体力を奪われてないかい?

 

合戦小屋の名物はスイカ。

名物ならなんでも食べておきたいという欲張りな気持ちはあるものの、いい歳して上手に食べる自信がないからパス。

スイカ汁まみれになって手をベトベトにさせた時のことを考えると、どうしても食べる気が失せちゃうんだよね。

そんな訳で、日陰の席をゲットして持参したおにぎりを1つ頬張ってここでものんびり休憩。

 

インディアンカレーに間に合わなくなるわ!と慌てて出発。

合戦小屋から先はナナカマドやダケカンバなど高山らしい植生に変わる。

森林限界が近づいてきたことで、日差しが更にキツくなるのもここら辺から。

 

りんどう!

もうりんとうが咲いてるのか。これを見ると秋が来たことを実感する。まだ8月なのに。山の季節のめぐりは早い。

 

標高を上げ、景色だってどんどん良くなる。

振り返れば青い山脈の奥に大きな浅間山の姿を確認。左奥の山は四阿山。

 

そして南に目を向ければど真ん中に富士山。右の巨大な山脈は南アルプスだ。

今年の夏は雨が多く、泣く泣く登山を諦めることが続いた週末が嘘みたいな快晴だ。運なんて結局とんとんで終わる。これまでのツイてない日々を一気に取り返す絶景だ。

 

やっと近づいてきた燕山荘。

山ガールの聖地って言われてるけど、おっさんだって一度は泊まってみたいところだ。肩身が狭いなら女裝してでも泊まってみたい。

 

容赦ない日差し。合戦小屋でしっかり日焼け止めを塗り直しといた。いつの日か燕山荘に泊まれる様な上流おっさんになるためには、日頃から日焼け止めでしっかり肌ケアしとかなきゃいけないのだ。

「おいおい、ここは山ガールの聖地だぜ?肌が浅黒いおっさんはお断りですぅー」って言われたくないからね。いびきは爆音だけど。

それにしても、8月下旬にもなると日差しが強いと言ってもすっかり涼しくなった。

今年の夏はめちゃ短かく感じるのは寂しいけど、やっと登山適期が到来した。

 

燕山荘直下はお花畑だった。

トリカブト、ウメバチソウ、イブキトラノオ。アルプスでは夏の終りの花々が全部乗せ状態だ。アルプス以外では7月から見られるよ。

 

初秋の花の代表格、ウメバチソウ

 

最後の登り。

青空が気持ちいい。ちょー気持ちいい。なんも言えねー。メダルかじりてー。

 

燕岳がどどんっ。

撮るなら左斜からお願い!と注文をつけてくる女優さんと同じで、小屋からの角度が超絶美人で、北アルプスの女王と言われてる。

美人はチラ見だけする。写真を撮るだけにして、登頂意欲はわかないから今回はパス。

 

敬礼っ!

 

大絶景の表銀ブラ

という訳で、本日のお目当ての表銀座縦走路へ。

大天井岳方面へ進路を取る!

 

ダントツ失神っ!

まさかの1ラウンドノックアウト劇。この絶景をずっと首を長くして待っていた。予想をはるかに上回る光景に狂喜乱舞せずにはいられない。

 

どこまでも続く稜線。インパクト絶大。平常心がぶっ飛ぶ景色を前にもはやテンションもおかしい。

初めて歩いたけど、なんでこれまで歩いてこなかったんだと激しく後悔する光景だ。

これまでの山歩きでこれ程までの衝撃を受けたことはない。いや、あるな。やっぱあるわ。

 

ちょちょちょ、

チョレーーイ!

なんちゅうダイナミックな景色。

多くのハイカーが歩きたくなる訳だ。納得。何度も立ち止まって見入ってしまう。

しかもこの先に待っているのは天国のテン場と来たもんだ。今から山の夜も楽しみだ。楽しみは尽きぬわぃ。

 

この狭い岩の間を抜けると、

 

やっぱり相変わらずの絶景。

トレランするほど荷物は軽くないけど、思わず走り出したくなる稜線だ。

こんな絶景が日本にはあるんだぜ、と山に登らないピーポーが気の毒に思えるグレートビューだ。

 

おいおい、振り返ればさっきまで角度的に手前の山に隠れてた立山と剱岳が見えるじゃないッ!

大自然とかそう言う次元じゃない。そんな表現が小さく思える地球剥き出しの世界。

 

さっきから似た写真ばかりだけど、歩いても歩いても似た風景なのだから仕方ないっスー。

でも飽きることは決して無い。

なぜ定番ルートなのにこれまで足を踏み入れてこなかったのか不思議だ。ずっと遠回りしてきたからこそ感動はひとしおなのかもしれない。

ここにたどり着くまで、どれほどの汗を流してきたか。今日垂れ流した嬉ションの比じゃないぜ!

 

ハクサンフウロ

 

反対側の斜面になった途端、風が当たらずぽっかぽか。

ほんと別世界で途端に汗が吹き出す。

 

再び反対側の斜面に出ると槍ヶ岳の大絶景。

この景色を前に、何か難しいことに悩みながら歩く人なんているのか?

あたしゃ山に来たら仕事のごたごたなんて1ミリも思い出さない、完全に魂のエスケープができる。

そう言ってこの1週間後、仕事の都合により土日返上で仕事する事となり、更にその2週間後には3連休で予定していた今シーズンのビッグイベント北陸遠征もコロナ影響による半導体不足の影響で首が回らず、一泊二日の弾丸となったのだった。

コロナめぇ!

 

何人かここで記念撮影してたからご多聞に漏れずあちきも一枚。

大天井岳まで残り3.5キロか。稜線に出てからが楽し過ぎて、あっという間に感じそうだ。

足はさすがに疲れてきたけど。

 

高山病になりやすい自分は、体の変調に気付いてからシャリバテがダブルで襲ってきたらマジでやばい。頭痛やら気だるさやらでそれこそ全く動けなくなるから、早いぐらいの栄養補給がちょうど良い。

それなりに気を使ってるのよ。

 

風はたまに10mぐらいの猛烈なのがブワッと吹く。右下の谷から吹き上げてくる風が冷たくて、上着を着ないと体温低下が心配になるぐらいだ。

お腹をすぐに冷やしてしまう質なんでね、ケアが必要だ。

最近聞いたけど、登山用の腹巻きがあるってほんとかいな?

 

タカネナデシコ

 

日差したっぷり。日焼けたっぷりだ。

この稜線歩きで日差しから守るために日焼け止めオイル以外に用意してきた物がある。

それがモンベルのサンブロックアンブレラだ!

しかしいかんせん、こう風が強かったらまったく出番なし。うぐっ・・ただの重りになっちまった。

 

しかーし!更にもう1つ用意してきた物があーる!

これまたモンベルで、首の日焼け防止用にハットに取り付けるUVカットスクリーン!(まさかの今更ネタ!)

これが超使える(いや、だから今更だっつーの)。真夏なら暑くて鬱陶しかったかもだけど8月末のアルプスでは超タイムリー。

残念なのは、影に映る自分がまるでロン毛で、だいぶ気が悪いぐらいだ。

 

ひゅー。この先、日差しから逃げられるところ皆無だな。

トレッキンポールでたまにバランスを取らなきゃまともに立ってられないほどの強風になってきた。逃げ場がないっ!お腹を!もっとお腹を守らねばッ!

必死にお腹をブロックしつつ、トレッキングポールに支えられて歩く姿は徘徊する老人と変わらない。登山用の腹巻き…くそっ気になるぞ!

バカボンのパパ風の腹巻で、ハイカーならぬ徘徊するおっさんか。悪くない!

 

まあ、なんだかんだ言いながらも、めっちゃ楽しい山歩き。楽しい時間は短いとは言うけれど、もう目の前に立ちはだかるのが大天井岳だ。

嬉しいじゃないの、最後になかなかの上りを用意してくれてるなんて(泣)。

 

その前にこのコース唯一の鎖場を通過。

久しぶりの鎖場は、こんな簡単なポイントでもちょっとドキドキした(笑)

 

最後の急登にヘタレ爆発

そして最低のコルから見上げる大天井岳。

疲れてきたところに直視したくない急登だ。おかげでお腹がもっと痛くなってきたじゃないか。

ちなみに、地道に続けてきたテン泊装備の軽量化は結構進んで、明らかに以前より軽くなったと実感できるまでになった。以前までの重量ならこの急登を前に休憩を挟んでたと思う。

次は手っ取り早く体重を減らす。

 

この表銀座縦走路は正しくは喜作新道と言って、この猟師だった小林喜作さんが開通させたルートなのは有名なお話。

 

さあ、いよいよラストスパート。楽しかった表銀座縦走路ともおさらばして、大天荘(だいてんそう)がある常念岳方面へ。

ここは要注意で、大天井岳には大天荘と大天井ヒュッテという2つの山小屋があるんだけど、テント場があるのは大天荘だけ。

大天井ヒュッテはここの分岐で槍ヶ岳方面へ進むけど、大天荘は常念岳方面と覚えておこう。間違えて槍ヶ岳方面に進むとコースタイムで30分以上ロスしちゃうよ!

 

標識の下の岩に、こんな風に大天荘はこっち!って記されてるから見落とさないように!

たまに配慮の無いおっちゃんがこういう岩に腰掛けてたり、集団で標柱を囲ってくつろいだりしてると、見落とす心配があるんだよね。

ほんと最低な行為だけど、そういう人たちって悪気がないだけに余計やっかいだ。

この日は誰もいなくて良かったよ。

 

風が強く吹いている。なんか昔そんな本読んだな。三浦しをんさんだったかな。面白かった記憶がある。舟を編むは2回読んだ、名作。

それはいいとして、ここに来て風が強く吹いているとか言ってる場合じゃない、強風が更に強風になってきた。

ちょっとの強風ぐらいなら持ち前の体重でびくともしない自分でも軽くふらつく程だ。バテてるし油断できない。

トレッキングポールにもたれながらゆっくり歩いてると、血だらけのお爺さんが倒れてた。

ぎょええええええ!!!!

バンソーコーしかないですが…と差し出そうとしたけど、開放骨折してるかもしれない状態で、焼け石に水だった。

幸い小屋が近くで、すぐトランシーバーを持った方が駆けつけてきた。

風で煽られてバランスを崩したんだろうけど、ほんと、小屋の近くで良かった。

 

振り返る。

てきぱきとトランシーバーで状況を説明するお兄さんが眩しすぎた。

血を見た途端、オエェ〜と涙目になっていた自分が情けない。近くにいた女性から「コイツ…超ヘタレ」と思われたに違いない。

ぐっ。弁解の余地もない…。

そして、自分がテントを張り終えた頃、ヘリがやって来た。

後で小屋の方から話を聞くと、この強風の中、3回トライしてなんとか収容できたそうだ。以前読んだ本で、北アルプスの様な高山では気圧が低くてヘリの操作はかなり難しいらしい。歩いてるだけでバランスを崩すほどの強風の中でコントロールする技術は凄い!

 

大天荘まで残り100m。

やっとだ。

 

おお、立派な小屋!住みたい!

 

爆風のテント生活とインディアン

さあ、ここが天国に最も近いテン場グランプリで上位に食い込んでくる大天井のテン場だ(そんなグランプリは無い)。

ん?ひどくガスってきたな、と思ったと同時に軽く雨が降ってきた。やべぇやべぇ。

 

強風に苦労しながら、なんとかテントを張り終えた。

そして楽しみにしてた大天荘名物インディアンカレーへと洒落込もうぜ。

お笑い芸人のインディアンスにも是非とも訪れてもらいたい所だ。

コロナ禍による時短営業の13:45に余裕で間に合った。

 

なんと、ランチは小屋の中で食べることができる。

大天荘のサービスは素晴らしい。しかもこの清潔さ。

ランプもオシャンティだ!

 

ウララーーー!!

伝説の超人ジェロニモの必殺技「アパッチの雄叫び」を彷彿とさせる勝ちどきを小屋中に響き渡らせてしまう美味さ!

鼻血吹き出る!さいこー!

カレーはキーマ、グリーン、チキンの3種類から選べて、ナンとサフランライスが付いてくるよ。

カレーを2種類とご飯だけってのがいいんだけど、山は炭水化物が大好きな食いしん坊が多いんだろう。

とにかく、締めのチャイが美味過ぎてリアル天竺に昇天した。

 

食後は強風と小雨のため外でブラブラすることもできず、ひたすらテントの中で過ごす。

テントに入って30分で飽きた。

まだ15時。朝までずーーっとテントの中で過ごすって辛過ぎね?

この辛さが自粛生活ってやつなのか。

とりあえず3時のおやつは気圧でパンパンに膨らみ無駄にザック内のスペースを食ってたかっぱえびせんを食らう。

サクサク食べる音が暴風を切り裂いて隣のテントにも聞こえてたに違いない。

 

えびせん後、えび。そんなにエビが好きなのか?

意識はしてなかったんだけど、夕げはエビのスープリゾット。アルファ米で作るインスタントだよ。

下界にいる時でさえさっぱり料理をしない男が、テントになった途端料理を始める訳がないのだよ、ふっ。どりゃー!とよく分からない威勢と共にお湯へ即席スープリゾットを投入すれば出来上がりだ。

オェ…。まずい。。

やはり、ずっとテントに引きこもっているからなのか、はたまたパッケージの見た目で味に期待し過ぎてしまったからなのか、ちっとも美味くない。

もう買わないな、これ。。

 

まあそれでも満腹にはなったから、後はひたすら横になって本を読むか音楽を聴くか、寝るだけ。

ちょー時間を持て余す。

天国に最も近いテン場を完全に持て余した。

 

暗くなる前にペグを差し直したり、ガイラインの緩みを直したり夜の暴風に備えておく。

それでも深夜にペグが2本吹っ飛び、風でバタバタ言うテントを押さえながら補修するという試練を堪能した。

天国に最も近いテン場のはずが。

 

ああ、夢にまで見た大天井岳。。

外で絶景を見ながら食べたらあのえびリゾットだってきっと美味かったに違いないんだ。ぐぞっ。

まあこんな日もあるさ。

 

夜から朝へ

深夜2時。

風は相変わらず強いけど、外はどんな感じかな?と外を見てみるとすっかりガスは晴れ、お月さんが眩しく輝いていた。

 

だいぶ早い朝食を食べ、ダウンの上からレインウエアを着込んで外に出てみる。

うん、これなら寒くない。手袋は厚手の物を用意してある。ちょっと月が眩しすぎる難しい条件だけど、星空撮影を楽しむぜぃ。

 

月よりトイレの明かりの方がはるかに眩しかったか。。

ちなみにここのテン場は小屋のトイレを借りられるのが有り難い。めちゃくちゃ綺麗だったよ。

まあ、なんにしてもこの明かりが邪魔しないところまで離れなきゃな。

 

これぐらい離れたら大丈夫かな?

うー、まだ明かりが邪魔する。もう少し離れてみるか。これぐらい?うーむ。まだ明るい。

 

 

山頂に着いちゃったよ!

しかしお陰で完璧なロケーションだ。しかも貸し切り。さて、最高のひと時を楽しもうじゃないか。

大天井岳の山頂標柱と背後の星空。最高だ。ひとり撮影会開始ィィィィ!!

 

ちょちょちょ、

ちょレい待てよ!!(キムタク風に)

 

説明不要の大絶景!!

月が明るすぎて撮影が難しいけど感動しっぱなし。

相変わらず風は強いけど。

 

4:10

東の空がゆっくりと明るんできた。

一日の始まりが一日で最も美しいな時間だ。

こんなに晴れてくれるなんて、早く起きた甲斐があったぜー!と感動していると、あろうことか、テン場に戻らざるを得ない事態が発生。

便意だ!

うぅ…。これは仕方あるまい。

「認めたくないものだな、自分自身のお腹の弱さ故の過ちというものを」(by赤い彗星)

とにかく日の出まで1時間もあるからここは仕切り直しだ。

やはり腹巻が必要だな、とブツブツ呟きながらテントに戻る。

 

テン場の明かりが近い。山頂とテン場は約10分の距離だ。

夜道の登山道をお腹をいたわりながらフラフラ下っていく。

 

テン場に戻ると腹痛はおさまっていた。なんのこっちゃだ。

しばらく小屋のベンチの前に腰掛けて休んでいると、早起きなハイカー達が起きだしてきた。

被写体が入るといい感じ。

 

そして再び山頂へ。

猛烈に湧き出した雲海のうねりが絶景の立役者。

 

 

明るくなってきた。そろそろ日が昇るという時間だ。富士山に釘付け。

 

おっ!

 

おおおお!

 

サンシャイーン!!

にっぽんの夜明けぜよ!

 

強風に震えたテントの一夜もこれを見たら報われた。

ああ神様お願い。このタイミングで腹痛が襲ってこないでおくれー。ってことばかり考えてた。

 

 

振り返ればモルゲンに染まる槍ヶ岳〜穂高連峰。

 

 

冷えた空気が一気に温まっていく。太陽は偉大だ。

お腹もぬくぬくになっていくのを感じる。

 

裏銀座。いつか歩いてみたい縦走路だけど、そのちょっと手前の船窪が気になる存在。

今年は船窪テン場の日本一危険な水場は崩落してしまい、名実ともに命がけの水場になってしまったそうで立入禁止。

名物の水場が復活したらぜひ行ってみたい。

 

三俣蓮華岳〜双六岳。

今ごろ、どこの山でも登山客が歓声を上げてるに違いない。朝は平等に訪れる。

 

再び大絶景の稜線歩きとモンキー

テントをだらだら撤収したら、ピストンで中房温泉へ下山開始だ。

表銀座でこれから槍ヶ岳を目指すハイカーは忙しく荷物をまとめて出発してたけど、大半の人が自分みたいにたらだらモード。

せっかくの北アルプスだ。ちんたら楽しむ余裕が欲しい。

 

ピストンだから上りで見た景色と基本一緒だけど、朝一のクリアな空気の下だと輪郭がくっきりするし、色も実に鮮やか。何度だって感動できちゃうよ。

 

ドライアイスを水に沈める演出の1億倍のスケール。波打つ雲は大シケの模様。

この雲海の下の世界では洗濯物はびちゃびちゃだ。

 

大天井岳ともおさらば。

次は表銀座縦走かパノラマ銀座縦走で再びお目にかかろうぞ。ばいび。

 

何度も見てしまうというか、燕山荘まで左手に見える景色はずーっとこの裏銀座。

ちょうど真ん中が鷲羽岳、そのちょい右に水晶岳。

 

八ヶ岳や南アルプスが白い海に浮かぶ島の様だ。

左の山塊が八ヶ岳。真ん中のすっごく遠くに富士山、そして右の山塊が南アルプスね。

 

ほとんど枯れちゃってたけど、コマクサが一輪だけ残ってた。

自分なら最後の1人になるぐらいなら先に枯れてしまいたい。メンタル的にも強い一輪だ。

 

やけに暑いと思ったら背中にカイロ貼ったままだった。しかも2枚。

寒がりなもんでね、カイロ無しでのテント泊はありえない。2枚貼って、更にダウンを着ても寒くて目が覚めるんだから、次はベースレイヤーを二枚重ねにしようと思う。

 

この上り返しを前に前後に誰もいないことを確認してズボンを脱ぎ、その下に履いていたタイツを脱いだ。光の速度での所作。

やっぱ俺世界最速!と自画自賛してたら、このピークの上で休憩中の方々からばっちり丸見えだったらしい。

パンツ姿なんて見られようが、別になんとも無いけど、見る側の目に猛毒だろうから、それなりに気を使う。

お気の毒に。どうも失礼しました〜。

 

槍ヶ岳をずーっと見ながら歩けるなんて登山冥利に尽きる。何度も言うけど、これまで歩いてこなかったのがほんと不思議だ。もったいない。

 

燕岳〜大天井岳間は多少のアップダウンはあるけど、これまでいろんな縦走をしてきた中では高低差はぜんぜん少ない方だね。

この絶景がそう感じさせてるだけなのかもしれないけど、大したことないアップダウンが2〜3回登場するぐらい。

谷川主脈縦走や槍ヶ岳〜穂高、白峰三山縦走に比べたら全然大したことないから、歩いてて万人が楽しめるコースだと思う。唯一しんどいのは大天井岳の上りかな。

 

燕山荘の手前で猿の集団と遭遇。

こんな高山帯にも猿が上がってくるなんて。これって問題だよ。ハイカーの食べ残しが原因か?

以前、大天井岳付近で猿が雷鳥を捕まえて食べてるニュースを見たけど、当然卵も狙われるだろうから、どげんかせんといかん。猿に罪はないけどさー。

 

猿と何度もすれ違いながら、燕山荘はもう目の前だ。

モンキーバイビー。

日光の猿は近付いたら歯をむき出しにして威嚇してくるのに、ここの猿は人を怖がってるのか、逆に慣れてるのか、ちょっと警戒する素振りを見せるだけでさり気なくすれ違っていく。

 

雲ひとつない燕岳。

今年はこの裏にそびえる餓鬼岳も狙ってたけど、また来年以降かな。焦って登ったりしない。

登ってみたいところが多くて大変だっ(汗)

 

定番のこの標識で撮影する人達が順番待ちしてる真横のテーブルでくつろいでた。

ハイカーが次々に繰り出す謎のポーズを、いけない物を見る心地で目を背けてくつろぐってなかなか不自然だ(笑)

 

そんな場所でちょいとラーメンタイム。

中房温泉からバスの人は、時刻表を燕山荘で確認させてもらったらよいよ。

コースタイムを半分近く巻いて歩けばバスに間に合うけど、それを逃せば2時間後という中途半端な時間だったから、のんびりラーメンを食べることに決めた。

 

燕山荘に泊まってた登山客も捌けた模様で、静かな時間が流れている。

 

ゲッザーンと中房温泉

ぺっ。

 

燕山荘の前のヤマハハコがちょうど見頃を迎えてた。

さーって、ゲッザーンするよ。

 

ウサギギク

 

少し下ってきた。大天井岳と槍ヶ岳も見納めだ。

強風には参ったけど、最高の2日間だった。

 

雲海に突入するまで日差しがキッツイ。

急ぐ必要ないのに、下山は必然的にペースはコースタイムの半分近く巻いてしまう。急いでる訳ではないんだけどね。

 

登山道の真ん中にいたゴマダラカミキリ。

こんなとこにいたら踏まれちまうぜと、捕まえて遠くにぶん投げといた。

 

近くにいたおばちゃんと「お疲れさまでしたー」と挨拶を交わしてゴール。

ベンチで何回か休んだけど、やっぱりコースタイムの半分近く巻いてた。

 

という訳で、バスの待ち時間が1時間以上残ってしまったため、中房温泉に入ることにした。

下山した場所が温泉だなんて超ラッキーだよ。

しかもまさかの貸し切り!秘湯感もあったし、極楽浄土へひとっとびだ。

最高の湯を楽しんだ後、さっきまで履いてた汗びちょパンツを再び履くという地獄に無口になった。

 

それでも帰りに食べたぶっかけ蕎麦は美味かった。長野バンザイ。

 

 

振り返って

中房温泉の駐車場が金曜の夜23時で満車になったことで計算が狂った。相変わらずすこい人気だ。

果たして、インディアンカレーには間に合うのか。

燕山荘に着いたタイミングで間に合わないと判断したら燕山荘のカツカレーを食らうという2ndプランに変更するのもやむなしだ。

それでも5時に歩き始めることができたから、ほっと一安心。

風が強すぎてテントを張るのにずいぶん時間がかかってしまったけど、それでもインディアンカレーは美味かった。

 

夜明けの雲海。マジックアワーやブルーアワーと言われる時間帯。

空気が澄んだ高山でこの一日の始まりを見られるのが、テント泊最大の醍醐味だと思う。

夏の終りのアルプスは風はもう冷たい。あと半月もすれば紅葉が見られる。そんな夏と秋が混ざった時間を楽しめたよ。

小屋泊もいいけど、夜の撮影会をするにはまだぐっすり寝てる登山客を起さないように外に出なきゃならないから気を遣う。テントの方が気楽でいい。

やっぱり自分はテント泊が好きだ。

夜中の強風にはほんと困ったけど。中房温泉までの移動が大変だったけど。

それでもインディアンカレーは美味かった。大天荘は間違いなく天国だったYO!

 

ばいなら

 

【今回の使用カメラ】

富士フイルムX-T1、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS。


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