3月11日。残雪期1発目の雪山登山は、満を持しての谷川岳。
圧倒的な積雪量で他の山より一際白さが目立つ谷川岳は、スノーピークの社名の由来にもなりました。
と、最近知った知識のひけらかしから開始する今回の当ブログ。なんせ谷川岳の記事を書くのも今回で4回目なんでね、率直に言って、
もうネタがないんじゃ~!
とか言っておきながら、雪山シーズンに天神尾根から登ったことがなかったから、今回の登山はほんと楽しみにしてました。ほんとよ、ほんと。
まあしかし、3月になったとは言え、まだまだ雪は降るし天候は安定しません。
実際、この日も完璧な晴れ予報でしたがまんまと裏切られ、辺りは深いガスがたれこめる地獄絵図。視界30mのガッスガスの中をテンション低めに歩き始めました。
改めてここ谷川の天候はよめないなぁ~、と難しさを噛みしめる。ぐそっ。
それが結果的にこんなに晴れるんだから分からないもんです。
やべぇ俺の祈り通じたわと、この日谷川岳にいた誰しもがそんな意味不明なことを口走ってしまう劇的な登山となりました。
今更ですが、谷川岳は標高1,977mの日本百名山で、群馬県と新潟県の県境にある山です。万太郎山や仙ノ倉山などの一帯が谷川連峰とよばれ、中央分水嶺となってます。
ちなみにこの山の下を関越トンネルが走ってます。
特徴を簡単にまとめるとこんな感じです。
1.厳しい自然環境にさらされているため谷川岳の森林限界は1,500mと低く、その険しい景観は見応えあります。
2.雪はめちゃ豊富。他の山で融雪が進んでも谷川岳は長く雪山登山が楽しめます。
3.ロープウェイで楽ちん登山。
4.天神尾根は登山客でごった返してます。土日ならトレースはほぼ間違いなくついてますから安心して登れます。
遭難死亡者数が断トツの世界一で魔の山と呼ばれる怖い一面がある一方で、天神尾根はロープウェイで簡単にアプローチでき、雪山初級の山として紹介されることが多い比較的簡単なルートです。
そりゃ登山客が後を絶たないわけです。
ツンデレな男に最初ムカついてた女が、最終的にはきゃっきゃっ言いながら捕獲されて行く様子と似てます。いや、ぜんぜん違うか。
撤退する人もいてモチベーション底辺でしたが、山頂に着く頃に見事に晴れてくれて、今シーズン1番の絶景を拝むことができました。
そんな折角の絶景だったのに、ゴーグル越しに撮影してたからカメラの設定で失敗した写真ばかり撮ってしまったのが悔やまれます。
風が弱く山頂で手袋なしでご飯が食べられる最高のコンディション。
雪面に反射する強烈な日差し。
雪山装備で一番大事なのはサングラスやゴーグルかもしれません。
日焼け止めもしっかり塗って、残雪期登山の幕開けです。
いざっ
■アクセス方法
・谷川岳ロープウェイ駅へのアクセスは、こちらをご参照ください。
・駐車場料金は、1,000円/日。
■ルートとコースタイム
■2018年3月11日 ※カッコ内は標準コースタイム
天神平駅⇒(60分)⇒避難小屋⇒ (90分) ⇒肩の小屋⇒(25分)⇒オキの耳⇒(15分)⇒トマの耳⇒(70分)⇒避難小屋⇒(50分)⇒天神平駅
標準コースタイム:5時間10分(休憩含まず)
3/11 天神平駅~山頂(ピストン)
活動距離:7.0km
高低差:673m
累積標高上り:904m
消費カロリー:2,249kcal(目安 身長180cm/73kg 男性)
はじまり
天神平ロープウェイで天国までひとっ飛びだぜ〜。
ゴンドラの中でおもちゃのスキー板を抱えた子供たちと話が弾みました。しゃんしゃい(3才)、本当はよんしゃい(4才)にはほっこりさせられちまったぜ。
どんなに科学技術が進歩したとは言え、未だ天気予報は博打の要素を多分に含んでいる。
どぼぼーん。
タブ屋と天気予報士が同じに思えた瞬間。晴れ予報を信じた自分が愚か者でした。
ロープウェイを降りるとほっこり気分を一瞬で吹き飛ばす、ガスガスの現実が目の前に突きつけられました。
一気にテンションダウン。
9:40 登山開始。
テンション低いけどロープウエイ代もったいないから行きますぜ。
最初から12本爪アイゼン装着。6本爪でも行けると思うけど、最初から急坂だから前爪がある方が良いです。
こんな天気でも多くの人で賑わってるのが天神尾根ルート。撤退した2月の西黒尾根の時は誰とも会わなかったのにえらい違いです。
ラッセルしてるわけじゃないけど、トレースが狭いから一列で登っていく。
登り始めてまだ100メートルほどだったけど気温が高かったので横にそれてさっさとオーバーパンツとフリースを脱ぎました。
急坂を登りきったところで山頂の景色を拝むことができるんだけど、見事なガスっぷりです。
今日は運動のつもりで登るけど、なんとかして面白いこと探さなきゃ飽きちゃいそうです。
白髪門の方にほんの少しだけ光が差してるけど、絶望的に遠い。
どの天気予報も晴れだったのに信じられへん。
それでもどちらかと言えば午後からの方が天気は良かったので、ゆっくり登ってわずかな可能性にかけてみることにします。
山頂に向けて、列を連ねて登る登山客たちが遠目からでもよく分かります。
こんな天気でも登りに来るなんてまったく酔狂な連中が多いもんだと、ちょっと嬉しくなります。
ビバークして遊んだ方々。
今日は日曜日だから、昨日から穴掘って遊んでたのでしょう。
こういう遊びをする人逹ってトイレどうするんだろう?と疑問に思う人もいることでしょう。ええ、野グソでしょうね。
左から右に風は抜けるからなのか、左側に雪庇は発達しません。
綺麗に積んだ雪のブロックで昼食を楽しむ子供達と、汗をかいて満足気な大人たちの図。
風は弱いから必要なかったと思うけど、必要かどうかじゃないんです。
この目印の下に避難小屋が埋まってます。
入り口付近だけ除雪されてるので中に入ることはできますが、一晩大雪が降ったら外に出れなくなってしまう危うさがあるので、遊び半分で一晩泊まろうとか思わない方が良いでしょう。
横移動と急坂を繰り返す天神尾根。急坂が意外としんどくて「雪山入門ってマジですか?」って感じ。最近怠けてたから体力落ちたかも。。
平日だとラッセルして撤退なんてことも良く聞くから、ガスガスだけど今日は山頂立てるだけラッキーでしょう。
さあいよいよガスの中に突入だす!
真っ白だす!
真っ白だす。。
むなしい。。
灰になっちまったよ。
木も凍ってる。
「もう景色なんてとても期待できないから」と言って撤退する人がいたり、なかなか難しい登山となりました。
一気にガスが濃くなり、視界が10mぐらいになったかと思えば、
ご覧の通り50mほど離れた人たちも確認できるぐらい、少しマシになったりするのを繰り返す。
うーん、このまま行くべきか?どうする?という考えがよぎる。
そんな絶望感に打ちひしがれた自分の顔を見て、察したと思われる下山中の女性がすれ違い様に、
「山頂はすっごくクリアでしたよ!」
と嬉しそうに話し掛けてきてくれて耳を疑いました。
嘘でしょ?まだガスは濃いけどね。
でも言われてみれば少しだけ空の色が変わってきた気がする。。
来た来た、お待ちどーさま。
ご覧あれ。
どんなに科学技術が進歩したとは言え、未だ天気予報は博打の要素を多分に含んで、、、
いる!
晴天をもたらすのは諦めない気持ちだけだ!
キタぜぇぇぇぇーーーーー!!
わっとね。
もう歓声が上がったもんね。
信じられない光景を前に、今を逃してなるものかと一斉に記念撮影を始める登山客達。
一通り騒いだら、景色に見入って静かになったり、大忙し。
この劇的な展開に鼻血噴き出しそうです。天孫降臨か?
晴れた山頂を写真に収めたいと、それまで休み休み登ってた俺のケツに火がつきました。
ここから肩の小屋までは休憩なしで登りきるよ!
あっという間に肩の小屋。気付けば同行者を置き去りにしてしまったので、ここでしばし撮影しながら待つ。
再び山頂に向けて登り始めるが、ここで再びガスに包まれる。
でもこのガスはどうせすぐ晴れるという確信をここにいる誰しもが持ってたと思うから別に焦んない。
オキの耳のピークが雲の上からひょっこりはん!
谷川岳の山頂は双耳峰といって、猫耳の様に2つのピークがあります。鹿島槍や由布岳と同じです。
それぞれ、トマの耳、オキの耳と言う名が付けられてる訳ですが、肩の小屋寄りにある方がトマの耳です。トマは下山で立ち寄るから巻いて、まずはオキを目指します。
おお〜、徐々にガスが晴れて行く。
こんなドラマチックな展開、今回の登山は間違いなく今シーズン1番だよ!
オキの耳へのトレイルを登っていく。
振り返ればトマの耳もいい感じにガスがかかってカッコいい。
トマとかオキとか、初めて谷川岳に登った頃はなんのこっちゃ分からなかったけど、今では普通に使えてるなと、そんなどうでもいいことを考えてました。
ここから更にガスが晴れていきます。その様子をどうぞ。
前
後
万太郎谷を埋め尽くしていたガスが、どこへ消えていくのか不思議な思いで見てました。
前
後
髪がどこへ消えていくのか不思議な思いで見てました。
オキの耳までもうわずか。
諦めなくてよかったよ。何気に疲れました。
やっぱ体力ないわ、俺。
風も吹いてないし、なるべく長くこの景色を見ていたいから肩の小屋まで下るのではなく、鳥居の近くまで行ってお昼にしようと提案しました。
今日のお昼は大好きなカップヌードルシンガポールラクサ味にゆで卵のトッピング。
ちなみにストーブはSOTOのウインドマスターを使ってます。5本ゴトクが別売りとか、ケチくさい売り方しないでもらいたいんだよなー。標準で付いてくる3本ゴトクだと不安定でしょうがないよ。
神様、ありがたや~
最高の登山となりましたよ。
ナンマンダブー
もう、大満足。ぞんぶんに景色を堪能できたし、そろそろトマの耳に立ち寄ってから下山しますかね。
トマに近づいていく様子をお楽しみください
人でごった返してるのがこの距離でも良く分かる。
この時期は高尾山や大山などの近場の低山が上位を占めるヤマレコで10位以内に入るんだからほんと人気の山です。
来ました来ました。
定番のアングルです。雪庇も育ってるので要注意です。
トマの耳に到着。
標識って雪に隠れてないんですね。ちょっと意外。
こっちはたぶん上州武尊山。
たぶんね。
んで、奥の方に見える立派なアイツが燧ヶ岳ね。たぶんねたぶんね。
山当てクイズ界の巨匠が近くで誰かに説明してるのを盗み聞きしたいのですが、みんな静かに楽しまれてました。
カップラーメンのスープですでにお腹ちゃぽちゃぼですが、
名残惜しいので肩の小屋で無理矢理お茶にします。
シュークリームばかり食べてます。太る一方です。それがやっほっほ亭スタイル。イエァ
切腹にちょうど良さそうなツララがあったので遊ばないわけにはいきません。
後ろ髪を引かれる想いですが、下山しましょ。
どこから湧いてきたのか、雲もではじめました。
はい~皆さんこっち〜
雲がでてきたとは言え、ロープウェイの天神平駅までくっきり見えるぐらいクリアです。
そんな天気に誘われたのか分かりませんが、ジーンズとバッシューでチェーンアイゼンという新たな雪山の境地を切り開こうとする若者とすれ違いました。ソロでしかもこの時間から山頂を目指すんだから気合の入り方が違います。こんにちわと話しかけると無視されました(苦笑)。
高度感はありませんが、岩の上で1枚。
下山はところどころ尻セードで遊ぶ。パンツまでびちゃびちゃになりました。すっかり春山です。
天神平駅に戻ってきました。雪が降り始め、山頂は再びガスガス。
ジーンズの青年は大丈夫だろうか?
帰りの道中で、みなかみのB級グルメ若どりの高橋にやってきました。
蒸し鶏は骨つきで味付けは割とさっぱり、照り焼きは骨なしで味付けが濃いです。
今回は照り焼きを注文しました。蒸し鶏の方が自分好みです。
どちらにしても折角みなかみまで来たなら立ち寄るべし!
振り返って
絶望を感じさせる薄墨色の空。
濃いガスの彼方に、ほんのわずかだけ陽の光が差し込んでるのが見えましたが、とても晴れるとは思えませんでした。
登り始めの服装は、上半身はベースレイヤー+フリース+ハードシェル。ザックには厳冬期用の分厚いダウンジャケットや大量の貼るカイロをしのばせてます。下半身はタイツ+トレッキングパンツ+オーバーパンツの組み合わせ。
気温は高く、登り始めてすぐにフリースとオーバーパンツを脱ぎました。
天神尾根は全体的になだらかな尾根ですが、登ってるとそれでも暑くて、ベンチレーションは全て全開。たまに吹く風を体に少しでも多く当てて体温を下げ様と試みる。
登り始めはほんの少しですが、雪も舞ってました。それでも厳冬期の刺す冷たさはなく、3月の温かみを感じる。
ほんと、すっかり春です。残雪期だなぁと実感しながら登りました。
そして巡って来た快晴。ほんと、諦めなくて良かった。
危険がないなら、とにかくやってみる。
まずはやってみる。
たまにこういう劇的な展開が訪れることがありますが、谷川岳でそれが起きてくれたのがたまらんです。
人それぞれ、苦手な食べ物があると思います。
自分の場合、かぼちゃが食べられません。どうにもこうにも野菜のくせに甘いってのが許せない。小さい頃からどうしてもその違和感に拒否反応がでて、口に入れるとすぐに吐き出してしまう。
そんなただでさえ甘いかぼちゃを甘く煮た物は自分にとって最悪な食べ物です。
世間的にかぼちゃが好きな人は結構多く、そんな話をするとしこたま驚かれます。
ただ、どんなに驚かれても別にかぼちゃを食べられないなら食べられなくていい。生きていく上で困る事なんて何もありません。
無理して苦手を克服する必要なんてないんだ、そう思ってました。
なのに、なぜか少しずつかぼちゃが食べられる様になってきて今自分が一番驚いてます。というか実は食べられるということに気付いてしまったという感じ。
食べられるのは、かぼちゃのスープと天ぷら。
なんとなく、これぐらいなら食べられそうだなという感覚があって、実際に食べてみたら意外といけたといった感じ。
ほうとうが好きです。かぼちゃの出汁がよくでたスープが美味い。このスープを美味いと感じるなら、中に入ってるかぼちゃだって美味いと感じるはず!きっと食べられる!
そう思えたので、試しに一口大のかぼちゃを頬張ってみる。
瞬間的に嗚咽。
止まらないえずき。
とにかくやってみる。
まずはやってみる。
待ちわびた春の光の季節がやってきました。
ではでは。