南アルプス屈指の難路、甲斐駒ヶ岳〜鋸岳を縦走してきました。
鋸岳についてヤマレコではこう説明されてます。
”的確なルートファインディングができ、どんな場面でも冷静に対処できる十分な経験を積んだ熟達者に薦めたい岩稜ルート”
やべぇ。。選ぶ山間違えたかも!
千葉の鋸山と間違えたかも!かも!
以前、黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳に登った時に右手に見えた鋸岳が少し気になったんですが、見るからに危険そうだしバリエーションルートだし、う~んこりゃ自分には登れそうにないぞと思って避けてきました。
ですが、気運が高まってきたというか何というか・・このシビれまくりな超危険なコースをよしゃ歩いてやろう!って気になれたので、少しの経験と度胸フル稼動で挑んできました!アドレナリン出まくり!
北沢峠から登り始めると、雨上がりの森に日が射した光景が綺麗で思わず足を止めました。今回は約1か月ぶりの登山。たまらん!!やっぱ山はいい!
ちなみにこれ、画像加工とか一切してません。JPEG撮って出しってやつです。フォトコンにでも出そうかな。。
梅雨の真っ只中の曇予報でしたが、山頂は雲の上ということもあって完璧な晴天。
で、毎度ですが首と顔面は大やけど。
く・・くやしぃ!
さて、そんな甲斐駒ヶ岳〜鋸岳縦走ルートを簡単に説明します。
甲斐駒ヶ岳〜鋸岳登山
①鋸岳はバリエーションルートです。不明瞭な箇所が多く、経験者との同行を強く薦めます。
②中ノ川乗越から先はガレ場と岩場が延々と続く難路です。
③鋸岳の水場は六合目石室付近の1箇所のみ。
④北沢峠〜甲斐駒ヶ岳は歩きやすく誰もが楽しめるルート。
簡単に補足しますっ!
登り始めの北沢峠から甲斐駒ヶ岳までは子供でも頑張れば登れる簡単なルートです。問題はその先。
鋸岳は日本二百名山のくせして一般ルートじゃありません。とは言え、二百名山というブランド力と登頂意欲を掻き立てる難コースの魅力に惹かれ、実際にはそこそこ登山客がいます。
中ノ川乗越から第2高点までのガレ場は足元だけじゃなく右側の岩壁からの落石にも注意が必要です。
第2高点から鹿窓までの区間はルートを間違えやすく、自分は散々探した挙句ルートを見いだせず大ギャップを無理やり登って中岳に這い上がり、第1高点を目指しました。
マジで怖かったです。
そのルートミスした箇所も詳細載せてるんで参考にして下さい。
そして最後、角兵衛沢まで下山したらそれで終わりと思うでないぞよ。
そこから仙流荘まで延々15キロも歩かなくてはならず、今振り返ってみても一番しんどかった区間だったです!
甲斐駒ヶ岳は標高2,967m。日本百名山、日本百景、新花の百名山、山梨百名山。説明不要、国内を代表する名峰です。
鋸岳は標高2,685m、日本二百名山、山梨百名山です。
ほんとハラハラしたけど、数日経って今振り返ってみると充実した素晴らしい2日間だったなと思えてくるから不思議です。
でももうここは歩かないけどね!怖かったから!
次はゆるゆる登山を楽しむよ!
夏のアルプスシーズン開幕を告げるのにふさわしい、暑く長い旅の開幕です。
いざっ
■周辺地図
・仙流荘のすぐ隣に登山者専用駐車場あり。
・バスは仙流荘前が始発。仙流荘へのアクセスはこちら
■ルートとコースタイム
■2018年6月17日~18日
・1日目コースタイム:5時間40分
北沢峠⇒(10分)⇒長衛小屋⇒(40分)⇒仙水小屋⇒ (40分) ⇒仙水峠⇒(90分)⇒駒津峰⇒(70分)⇒甲斐駒ヶ岳山頂⇒(90分)⇒六合目石室
・2日目コースタイム:12時間40分
六合目石室⇒(130分)⇒第2高点⇒(130分)⇒第1高点⇒ (180分) ⇒角兵衛沢⇒(90分)⇒駒津峰⇒(200分)⇒仙流荘
2日合計:18時間20分
仙流荘から北沢峠へ
仙流荘前の駐車場です。金曜の夜に集合して深夜に到着。3時間ほど仮眠できました。
曇り予報だし登山客少ないと思ってたけど、、
マジか。。
梅雨入りしたこの時期はアルプスシーズンの序章って感じですが、それでも順番確保のザックの列がこんなに並んでました。
ハイシーズンだと始発は5:30。更に臨時便も出るそうですが、この日はまだ始発は6:05。本格的なシーズン前だってのにこんな状態ですわ。
来ましたー!この小型のバスを見ると南アルプスに来たぜ!って感じがするんよね。
これ真ん中の補助席がキツイんです。それが分かる人はなかなかの南アルプス通です。
眠りへといざなう噛みまくりの運ちゃんの名ガイド、、
もとい、親切丁寧なガイドを聞きながら北沢峠へは約50分で到着。
ここに来るのは2年ぶりかな。
前回は長衛小屋前にテントを張って甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳を登りました。南アルプス鉄板ルートです。
水場はたくさんあります。
ここで用意してきた粉末ポカリを500mlのナルゲンに溶かします。残った粉末は翌日の鋸岳で使います。
ここのテン場はバスを降りてすぐのところにあるのが最大の利点でしょう。水はうまいし、腹減ったら長衛小屋は目の前だし、至れり尽くせりです。
金峰、瑞牆山の富士見平小屋とここはよく初めてのテント泊でお薦めの場所として紹介される事が多いです。
北沢峠から登山開始
長衛小屋の前を通過して仙水峠を目指します。前はここでワッフルとポッキーを買ったなぁ。いつもお菓子ばっか食べてます。
左の沢沿いルートで甲斐駒ヶ岳を目指す。右へ行くとヒッキーが登った栗沢山です。宇多田ヒカルのことです。引きこもりのことじゃありません。
沢沿いを歩きます。
雨上がりの森が朝日を浴びてきらきら輝いてます。
まだ朝の7時で涼しく感じられる中を久しぶりのデカザックでゆっくり歩きます。
40分も歩けば仙水小屋に到着。
予約者以外入るな!といった感じにロープが張られてます。
なかなかの拒絶感。
そんなロープをためらうフリしつつまたいで侵入。咲いてたミヤマオダマキをパチリと1枚いただき。
仙水小屋を過ぎて突然出てくるのがこちら。
なんでここだけこんな岩雪崩を起こしたみたいになってるのか不思議に思いますが、この翌日に登る鋸岳はこんなガレ場が延々続くから、むしろこの山域では当たり前の光景と思える様になりました。
仙水峠に着きました。ここは普段なら多くの登山客で賑わってるところ。
まだ本格的なシーズン前ということもあって貸し切りです。
仙水峠から先は1時間以上続く急坂が始まる。
ここで一気に標高を稼ぐから踏ん張りどころだと思って頑張りましょう。
少し標高を上げて振り返れば栗沢山。先程宇多田ヒカルが登ったと言った山です。
雨上がりで山から沸き立つガスがなかなか神秘的な光景を創り出してます。晴れてたら栗沢山の後ろに鳳凰三山や北岳、間ノ岳なんかが見えるんだけど今日は期待できそうにありません。
山桜が少しだけ残ってました。その背後に甲斐駒ヶ岳の摩利支天がうっすら見えます。
うーん、山頂の眺望は期待できないかも。
この日は上空に冷たい空気が入ってきて、気温は北沢峠で10度ないぐらい。登ってれば暑いけど、立ち止まった途端、寒いです。
一息ついてる姿。
荷が重いんじゃ
駒津峰から甲斐駒ヶ岳へ
それでも頑張って標高2,759mの駒津峰に到着。よく頑張りました。
そしてここからは仙丈ヶ岳がよく見えるんだけど、ご覧の通りガスの中。残念です。
しかしその仙丈ヶ岳の反対側には、
ずどーーん!
甲斐駒ヶ岳!
少し待ったら見事にガスが晴れてくれました!
この姿、他の山とはやっぱ風格が違うわ。
甲斐駒ヶ岳に取り付くため、せっかく駒津峰までで稼いだ標高を断腸の思いで一旦下る。
八合目の標識が出てきたら直登コースと迂回コースの分岐です。
こちらが直登コース。
明日の鋸岳登山に向けた予行練習だ!と、若干浮かれ気味なテンションで登っていきます。
足を大きく上げようとするとデカザックが邪魔するから大きな岩でも小股でちょこちょこ登っていきます。
荷が重いから大股で歩かない方が安定します。
ハクサンイチゲです。チングルマと間違えそうになりますが花びらが細くて少し長めなのがハクサンイチゲの特徴です。
キタダケソウではありません。
見上げれば甲斐駒の山頂が見える。威風堂々って感じ。
この直登コースは見た目以上に難しくはありません。
しばらくするとガスが濃くなって目指すべきピークが隠れてしまい迷いそうになりました。
急がず少しガスが晴れるのを待って再び登り始める。振り返るとなかなかの高度感です。
山頂はすぐそこです。
ひゃっほーい
まずは簡単に一座目。
よいしょっと。
せっかくなんでね、山頂の一番高い所に立たせてもらいますよ。
うえーい
本日のお昼ご飯。
今回は普通にカップラーメン。特にご紹介したいデザートとか用意してこなかったんです。
少しでも荷物を軽くしようと思いまして。。
な、情けねえっ!
山頂は黒戸尾根を登ってきたトレランの方々がはっちゃけてます。
自分はこれから挑む鋸岳に向けた安全祈願ではっちゃけてます。
七合目石室へ
進路を鋸岳へ!いざゆかん!
立て看板には、この先鋸岳ザイル、ハーネス、ヘルメット所持してない者の入山を禁ず、と書いてあります。
上等じゃい!
鋸岳山頂へは5時間40分。
あのトレランの人達なら日帰りも可能でしょうが、普通に歩けばここから2時間ほどの所にある六合目石室で避難小屋泊かテント泊が妥当でしょう。
ガスが鋸岳の半分を飲み込んで全体像が見えません。とにかく石室までは稜線の一本道なんで間違えることはありません。
ちなみに自分の赤い手袋は相変わらず園芸仕様です。
ハイマツの花?じゃないよね。どうみてもツツジ、シャクナゲ系です。
石室までのトレイルは全体的にこんな感じで歩きやすい。涼しいし、楽しい稜線歩きです。
たまにこんな鎖場も出てきますが、鎖を設置してくれてるだけラッキーです。
雷鳥です!
初めて南アルプスで雷鳥見ました!
手ブレがひ、ひでぇ!
慌てて回り込んで写真撮ろうとしたら雷鳥もクイックターン。可愛いおけつを向けて去っていきました。
南アルプスの雷鳥は貴重ですからね、出会えただけラッキーです。
そしてずっとガスに隠れてた仙丈ヶ岳も姿を見せてくれました。もう今日はいいから明日晴れてくれることを祈る。
見えた!
ヤマップで石室がすぐ近くにあることを確認したらケルンがでてきて、眼下に石室が見えました。
甲斐駒ヶ岳から割とすぐ着くと思ってたけど意外と遠かったな。
聞いてた通り、本当に石室です。
トイレは無いので遠く離れたところでひっそりやってください。
先着者は1名。小屋の中でテント泊するスタイル。
なぜ?
テントのメリットって自分のスペースを確保して気兼ねなくのんびりできる事に尽きると思うんだけど、これだとトイレ行くときもお湯沸かすときも周りに気を使いながら外に出なきゃいけないし。
俺なら絶対外に貼るけど。。
水場はトレイルを少し下った所のこの広場に水場へと下っていく入り口があります。ピンクテープがあったのですぐ分かると思います。
水場までは下り15分、登り20分と聞いてた通り、結構遠かったです。
奥まった所でちょろちょろ出てるためプラティパスだとうまく汲むことができません。
ご覧の通り、自分は口の広いナルゲンで汲んでプラティパスに注ぐというのを何度か繰り返しました。
ちなみにここの水場は枯れることもあるそうです。常に十分な水の確保を心がけておきましょう。
これ、下山する時に水が尽きて苦しんだっていう前フリね。
鋸岳登山開始 まずは第2高点へ
おはよーございます。いきなり朝を迎えました。仙丈ヶ岳くっきりです。
昨夜は石室で特にやることもなかったので18時頃に眠りに落ち、3:40に鳥のさえずりで目が覚めました。
相変わらず寝過ぎですが、自分の実力はこんなもんじゃない。もっと眠れます。
どんな自慢だ?
こちらは中央アルプスと右奥に御嶽山。雲海がすごいんじゃ。
4:50 さて出発。
朝方は寒いぐらいだったけど歩きだして5分ほどで丁度良いぐらいになりました。こりゃ暑くなりそうです。
朝日が見たかったけど東側は樹林帯だったのが残念でした。
先行者、鹿。
やっと東の景色が開けたと思ったら、この雲海には度肝抜かれました!見渡す限りとはこのこと。
上空は雲1つない快晴。
月曜にこんがり日焼けして出社したら、土日ずっと曇りだったのにどこ行ってたの?と同僚に聞かれこう答えました。
「もっぱら雲の上だぜ」
軽くアホと思われたに違いありません。
途中、獣道を歩いてしまいルートロスト。
トレイルに戻ったのは良いけど、実はこれって違うルートなんだわ。
この岩を登って山頂までもう少し。
山頂ってこんな近かったっけ?と訝しげに登る。
烏帽子岳に来ちゃったよ!!
トレイルに戻った所が運悪く鋸岳と烏帽子岳の分岐を過ぎた所で、烏帽子岳へと続くトレイルに合流してしまった様です。
まあこんなことでもなけりゃ烏帽子岳に登ることはなかっただろうと、前向きに捉えるしかないですね。
で、20分ほど戻って鋸岳との分岐、三ツ頭に戻ることができました。
ここから鋸岳へは1.4h。
へ?
0.4時間は24分だから、1時間24分ってことね。ふむふむ。
つか、分かりにくいわ!
1.4キロって書き方なら分かるけどね~
なんつって笑い話にもなるのでオッケーです。
ここから鋸の歯らしく稜線はちょいちょいアップダウンを繰り返します。
こんな崩落してるところもあったりして、「危ねえ危ねえ」なんて言いながら通過しましたが、この時は知りませんでしたよ。
この先、こういうところを普通に登ったり下ったりするんだからこの山はほんと恐ろしいです。
ところどころ景色が開ければ素晴らしい眺め。
左から順に北岳、間ノ岳、真ん中の一番奥に塩見岳。そして右にそびえるのが先程から何度も紹介してる仙丈ヶ岳。ほんと仙丈の存在感半端なかったな。
こちらは雲海に浮かぶ八ヶ岳。
もうすっかり雪は融けました。子連れでも楽しめる優しい山域で、す、好きです!
(#^^#)
この先は切れ落ちてるためガツンと下ります。
崩落してて近づけないところに花って群生してたりするんですよね。
ハクサンコザクラです。
オエェー!あそこ登るのかよ!
下ってる途中、真向かいに見えた第2高点への取り付きルート。
まず最初の衝撃でちびりました。
突然こんなガレ場に変わる。ここを下れば中ノ川乗越(なかのがわのっこし)です。
とうとう鋸岳が始まったわ。。まさにそんな風に思った瞬間でした。
今度は中ノ川乗越からぐいっと登っていく。右側が比較的登りやすいですが落石に要注意です。
真ん中あたりに1人見えますね。石室で一緒になった方です。自分たちが烏帽子岳に間違えて登ってるすきに先を越されました。
下から見上げると傾斜のキツさってなかなか伝わりませんが、振り返って見下ろすと少しは伝わりますよね?
このガレ場で200メートル近く登ったんじゃないかな。とにかく浮石だらけで登るのが大変っ!
ガレ場の真ん中で朽ちた木一本だけでこんな大きな岩を支えてました。
これを見たときはゾッとしたわ。
まだ続きますがここまで来れば左側の草が生えた方に移動します。そっちの方が比較的登りやすいです。
次第に草が覆い始め第2高点への稜線が近づいてきました。
ここまで落石が怖くて少し急いだため、ここら辺で疲れて立ち止まる回数が増えてきた。
第2高点のピークも見えてきました。もう一息っ!
8:00 着きました!
素晴らしい眺めです。奥に見えるのは中央アルプス。
そして第2高点から大ギャップを挟んで見えるのが第1高点。
鋸岳の最高峰です。ここからあそこまでがこの山の本当に気をつけないといけない区間。
反対には甲斐駒ヶ岳。やっぱでかいわ。
不明瞭なルートで道に迷って大ギャップへ
さあ、第1高点を目指して出発です。間違えてガレ場の方から下らない様にしましょう。
ご覧の通り、草が生えた中にルートがあります。
そしてここが本日の核心部。
ルートが見つかりません!
ここでずいぶん時間を使いました。
どこだ?まさかここを下るわけないよな。。
こっちか?
ここを登るってのも信じがたい。。
正解はこっち。
20メートルほど下れば右側に登っていくルートが見つかるらしいです。踏み跡も明瞭らしいけど、そのちょっと手前まで探しに行って見つけられず引き返してしまいました。
ええーい!こっちだ!
(こっちは大ギャップです!)
ええ、間違いです。
少し登って偵察したら鎖かザイルの様な物が見えたのでこっちが正解だと思ってしまった。
この先はガチのバリエーションルートなんで皆さん気を付けましょう。
かなり厳しいルートを登ってます。
振り返るとよくこんなところ登ってきたなと、恐ろしくなってきます。
ガレ場に足をとられながら見えてきた先は鹿窓ではなく、第2高点直下の大ギャップです。
何本かザイルが垂れ下がってるのが見える。
このザイルが使えなければ中ノ川乗越まで引き返して撤退することを考えてました。
ザイルは2本あったので、体重をかけても問題ないかしっかり確認し、2本を一緒につかみながら登ることにしました。それと、なるべくザイルに頼らないようにして登ります。
難所は越えましたがまだ油断できません。
ここは右から巻いて稜線へ登りつめます。
恐怖の鋸岳 いよいよ第1高点へ
必死に稜線まで出ると先程登った第2高点が目の前にあります。
ということはここは中岳か!
鋸岳は中ノ川乗越、第2高点、大ギャップ、中岳、鹿窓、小ギャップ、第1高点の順で鋸の歯を形成してます。
そしてあいつが第1高点。
しかしまだまだ油断できない。
この稜線を歩いてあの第1高点まで行けるかがまだ分かりません。もし途中にギャップがあってそれを越えられなければ中ノ川乗越まで引き返さなくてはならない危険性をはらんでます。
体力的にもやばい。この時は不安と焦りで極度な緊張が襲ってくる。
あの先がスパッと切れ落ちてたらどうしよう。
もうほんと不安でしょうがなかった。
同行者は後ろでゆっくりしててなかなか来てくれないから先に行って様子を見に行くこともできない。
心臓バクバク、緊迫した状況に押し潰されそう。
と、その時。
鹿窓だ!
突然左に現れた。ほんと突然。
この鹿窓で救われた!
「正規ルートに戻ったよ!!」
うしゃー!!と拳作って大声で叫んだもんね。鹿窓も正規ルートって言えるほど整備されたルートじゃないんだけど、もう天を仰いで喜んだな。
鹿窓を覗いてみるときちんと鎖だって設置されてるし、なんて素晴らしいルートなんだと思えました。心細いザイルに頼って登った恐怖は忘れられません。
正規ルートは先程迷ったガレ場からこの鹿窓へと続くルートなんですが、今回はそのルートの詳細を紹介できずスミマセン(汗)
でも、もう安心です!!
第1高点手前の小ギャップに着きました。
もう完全に感覚が麻痺してるから、鎖が設置されてるから楽勝だなとしか思えない。
少ギャップのコルに下り立って見上げたところ。
40m?もっとあるかも。それぐらい長い鎖場ですが、妙義山の鷹戻しより傾斜は緩いし、距離も少し短いぐらいです。
自分は高所恐怖症なんで少し怖かったけど、これぐらいの緊張感が丁度良いわ。
そして登り返しも鎖場。
もうルンルン。これぐらいが楽しいんだよ。大ギャップとかガチ過ぎやろ。
第1高点が近付いてきた。
もう焦る必要はない。
距離以上に長く感じたけど(ルートミスが原因だよ!)、南アルプス屈指の難路の最高峰までいよいよカウントダウン開始。
ほわちゃー!
11:00
山頂は狭く、自分たちと釜無川登山口から登ってきた2人の合計4名でほぼ満員。
お互いの健闘を称え合いました。登った人にしか分からんよね、この達成感は。
腹切りじゃ!
ルートミスの責任を取ろうとしましたが、残念ながらが腹切りには不適切なサイズでした。
ちなみに鋸岳の開山は歴史が浅く、第1高点に登頂した記録が残ってるのは1911年らしいです。その前にウォルターウェストンも少しだけ入山したことがあるみたいですが登頂はしてません。
やっぱり昔の人もみんな登るなら甲斐駒ヶ岳の方を選びますよね。
ここまで幾度となく見てきた景色ですが見飽きない。北岳、間ノ岳、遠くの塩見岳、そして仙丈ヶ岳。
この完璧な晴天に来ることができてもう思い残すことはありません。
もうここには二度と登らないぞ!
やりきったぜ!
あの甲斐駒ヶ岳へはこの先何度も登るだろうけどね。
長い長い長い長いゲッザーン
角兵衛沢に向けて下山開始。まずは釜無川登山口方面へ下ります。
岩稜なんで最後まで油断しないで慎重に下ります。
遥か眼下に見えました。
まだ終わっちゃいない。角兵衛沢へはあのガレ場を延々と、ほんと延々と下ります。
恐怖の鋸岳、終わらせてくれない。
え~っとこれはどっちだ?この花弁からするとチングルマでしょう!(たぶん!)
こういう危険な山って高山植物が豊富に残ってたり雷鳥に出会えたり、素晴らしいところも多いんだけどね。疲れたよ。
こんなだぜ。。
浮石だらけなのでペースを上げて雑に下ると足を折りますよ、マジで。
今回自分はここのガレ場を警戒してトレランシューズではなくブーツを選択しましたが、大正解だったな。
14:15 第1高点から3時間かけてやっと角兵衛沢の終わり、戸台川に着きました。
簡単に書いたけど長かった。単調だったし。
まずはこの清流で頭からざばっと洗って左岸に渡渉します。
案内標識もあるしピンクリボンもあります。
釣り客もいるのでそこそこ歩きやすくなってたんだけど、もうバテバテでしんどかった。
この河原の道を10キロ近く歩いただろうか。まだ終わりが見えない。
飲み水が。。底を尽きそう。。やばい。マジやばい。
喉カラカラ。瀕死の状態で戸台の駐車場になんとか着きました。
でも、ここから仙流荘ってすぐだと思ってたら更に林道を5キロ以上歩くんだよね。。
ブーツにして大失敗だったわ。。
戸台大橋。
ここから仙流荘はまだまだあります。
こんなに歩くっけ?と不安になって途中でグーグルマップで調べてみたら絶望を煽るだけの結果でした。
17:30 遠くに赤い屋根の仙流荘が確認できました。
足はマメだらけ。喉カラカラ。
じ・・地獄だったぜ。。
角兵衛沢からここまで3時間半かかりました。
暑く長いアルプスのシーズン開幕戦にしちゃあちとやり過ぎだったな。
振り返って
鋸岳へのルートは自分が知る限り以下4ルートあります。
①黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳に登り鋸岳経由で八丁尾根を下山するルート
②釜無川ルート
③戸台を起点に角兵衛沢から登り熊ノ穴沢へ下山する日帰りコース
④今回自分が登ったルート
ヤマレコを見る限り、③の日帰りを選択する人が最も多いみたいです。実際、この日も角兵衛沢から登ってくる方を5〜6人見かけました。このルートのメリットは戸台登山口駐車場に車を停められるので沢に下りてからの移動が少し短くて済みます。
まあしかし今回自分が選択した④のルートが体力、時間的にも無理はないと思いますので、やはり1番のお薦めです。
実際に歩いてみたから分かりますが、1日で角兵衛沢のガレ場を登って熊ノ穴沢のガレ場を下るなんてこと、ちょっと自分には想像できません。超人です。
それに折角の南アルプスを日帰りで終わらせるなんてもったいないですよ。
鋸岳、噂通り手強い相手でした。
ルートファイティングの難しさもそうですが、最後の仙流荘までの果てしない道のりは硬い靴底の登山ブーツではもはや修行でした(修行大嫌いだ!)。
今回のルートを薦めた直後になんですが、
悪いことは言わない。鋸岳はやめた方が良いです(笑)
いや、真面目な話、今回の山行記事をアップするかどうか悩みました。興味本位で登ってみようと思う人が増えるのを危惧したからです。しかしこんな小さなブログが影響する範囲なんて狭いだろうし、自分がルートミスした所や落石が危ないと感じた所を伝えることの方が事故を減らせられるという思いもあってアップすることにしました。
なので今回はいつもよりずいぶん長くなってしまいましたが、そこはご容赦くだされ。
危険なところばかりフォーカスした一方で忘れちゃいけないのが、景色の素晴らしさ、岩峰ならではの登りごたえ、山頂を踏んだ時の筆舌しがたい達成感。今思い返しても素晴らしい2日間だったなぁ~と実感がこみ上げてきます。
烏帽子岳にも登ったし、普通なら歩かない大ギャップや中岳も通過して、鋸岳完全コンプリートです!
一度ぐらい経験しといて良いかもしれません。
一度だけ。
ゲプッ。自分はもう満腹ですが。
どこまでも広がる雲海が頭にこびりついたまま残ってます。
ではでは