3月1日。長野県の黒姫山(くろひめやま)に登ってきました。
「さぁ~って、気まぐれなブラックプリンセスに逢いに行くぜ!」
と言って向かったそこはガスガスプリンセス…
天気予報が曇りだったから少し覚悟はできてたけど、、まさか雪までしこたま降り始めたのは予想外。「まったく気分屋なお姫様だぜ」と、スノーハイクを適当に楽しんだら戸隠そば食べて温泉入って帰るパターンだなと、ピークハントは半ば諦めムードだった今回の登山。
顛末は本編まで乞うご期待。
黒姫様、ご覧下され!積雪期の七ツ池はハートマークの形をしてるでござる!
では、黒姫山の雪山登山のポイントです。
黒姫山雪山登山のポイント
①長大な稜線歩き
②山頂からは北信五岳の大パノラマ
③危険箇所は少ないものの距離はそれなりに長いため中級者向け
この山の最大の特長は、長く楽しめる稜線歩きとそこから見渡せる大パノラマの絶景に尽きると思う。
稜線に出るまでは我慢の登りが続くけど、ひとたび稜線に出てしまえば感動すること間違いなし!(晴れてればね…)
それと黒姫山名物、山頂から七ツ池に向かって伸びる自然にできた直滑降コース、七ツ池シュートが有名です。
こいつを目当てにやって来るバックカントリーがいるので、トレースは期待できます。ただ、それでもツボ足だとリスクは高いためスノーシューかワカンは必携ね。
ちなみにこの日はスキーヤーはいなかったから七ツ池シュートを滑り降りる姿を見学できなかったのは残念だったけど、前日歩いた方々のお陰でトレースはバッチリでした。
黒姫山は標高2,053m。斑尾山、妙高山、戸隠山、飯縄山とともに北信五岳、日本二百名山、新花の百名山です。
さあ、大パノラマが待つ稜線へ!
いざっ
ルートとコースタイム
■2020年3月1日 ※カッコ内は今回のタイム
大橋登山口⇒(90分)⇒新道分岐⇒(150分)⇒峰ノ大池分岐⇒(15分)⇒山頂⇒(15分)⇒峰ノ大池分岐(90分)⇒新道分岐⇒(75分)⇒大橋登山口
コースタイム:7時間15分(休憩含まず)
総距離 13.1キロ
単純標高差 915m
累積標高上り 993m
黒姫山登山 本編
大橋登山口から林道歩きスターティン
以前、高妻山に登った時に撮影した黒姫山です。時期は5月です。
こうやって見るとほんと分かりやすい火山です。
今回は黒姫山の全体が分かる写真が撮れなかったから過去の写真から探し出してきたんだけど、ご覧の通り独立峰でなんとも眉目秀麗、高嶺の黒姫様って感じ。
って言うわけで、大橋登山口からレッツスターティン♫
カーナビの設定はすぐ近くにある戸隠キャンプ場にしておけば良いと思います。車は詰めれば10台はとめられそうな感じだったかな。
ゲートの向こう側に行ったらもう二度とこっちの世界にゃ帰っちゃこれないぜ。
と、迫真の演技をかましてゲートを跨いだら足を引っ掛けていきなり転倒しそうになる。
予報では終日曇りだったけど少し日が差してきたし、これから晴れる予感がする。
本日も持ち前の晴れ男ぶり炸裂させるぜ。
と、思いきや曇った。。
しかしまあ見てなって、どうせ晴れるから。
踏み跡は多いからラッセルの心配はなさそう。歩き始めは余裕のツボ足スタート。
あ、ほれほれ、再びちょっとだけ青空が見えてきたよ。
と、そんな太陽と北風的なお天気バトルを見物しつつ、最後は自分の晴れヂカラに軍配が上がるはずだとこの時はまだ自信満々。
ガスと雪に支配される戸隠竹細工の森
しかし、すかさず強烈な雪雲が抵抗を見せ始める。
しかも曇を通り越して雪まで舞い始めるというダメ押し。
マジかよーとゲンナリしつつ、ゾンビのごとく戸隠竹細工の森と書かれた標識を右へ進む。
竹細工の森って言う割には竹なんてどこにも生えてないぞ、と思いながら歩いてたんだけど、ここで言う竹はごく一般的な太い竹ではなく、竹藪に生えてそうな細い竹なんだそうです。
うぁぁああ〜
雪が降りやまないぃ〜。。
今シーズンは暖冬で雪不足、スキー場が次々と倒産する非常事態だって言うのに、よりによってこのタイミングで雪が降り始めるというジラレヘン状態。
真っ白だ。。
しかもこの林道区間が長いのなんのって。。片道約3キロ。往復で6キロもある。オエッ。
両手を垂らしたまま前傾姿勢のゾンビ行進は続く。
やっとトレイルを登り始めたと思いきや、これは林道のショートカット。
近道ウエルカム!と喜び勇んで飛び込んだここは踏み抜きざんまい。必死にもがきあがいて、踏み抜き地獄をなんとか通過。
「こりゃアカーン!ワカーン!」と高らかにギブアップ宣言し、ワカン装着。
前回の日白山で切れてしまったワカンのベルトはしっかり修復済み。
白い。めちゃ曇ってる。。
相変わらず雪降ってるし。
これはこれで神秘的なんだけど、登山向きの天気ではない。心が凍死しちゃいそう。
ここにも戸隠竹細工の森と書かれた標柱見っけ。
無雪期ならここまでは未舗装のハイキングコースみたいね。ここから先もしばらくは歩きやすいコースが続くけど、少しずつ登り勾配がきつくなっていく。
平坦な様で意外と登ってる。するとどうなるか?そう、お腹が空いてくるんですね〜。
と言う訳で雪を見上げながらここでおにぎりを1つ頬張る。
体力的には全然余裕なんだけど、なんせ単調過ぎるし真っ白なのが忍耐的に辛い。
おにぎりを飲み込んで再びガスハイク開始。
すると、
「少佐ぁー!シャア少佐ぁー!!減速できません!!」
「ザクには雪雲を突破する性能は無い。気の毒だが・・・。 しかし、無駄死にではないぞ!」
「少佐ぁー!うああーー!!」
うあっ!
突然、雪雲を突破。嘘みたい。
登りが急になってきていよいよハイキングコースは終わったなと思った瞬間、辺り一面クリアな世界に早変わり。
あまりに突然過ぎて目の前に現れた黒姫山の白い巨体が雲にしか見えなかった。
すげー。これだから山はやめられないね。
快晴男の面目躍如。笑いが止まらん。
青い空と明るい雪原 大展望の稜線歩き
雪原に伸びるトレースと青空。
さあ安心するが良い。無事雪雲を突破した我々はガルマ隊が待ち受ける山頂に向けて歩みを進めるのみ。
ガーハッハッハ(ガーハッハッハ)と、快晴男の笑い声が静かな雪山にやまびこする。
最高の一日になることを確信。
ガーハッハッハ!
振り返れば後ろはガスガス。雲の層を抜けてきたと言うのが実に分かりやすい。
雪雲は重そうだし、山頂を覆ってしまう事はなさそう。
胸のすくような雪原と青空。森を通り抜ける風と明るい斜面。
まだ厳しい冬そのままの景色だけど、これだけ晴れるとどこか春に向けた気配を感じるな。
いよいよ近づいてくる山頂。というのは間違いで、あれはニセピーク。
地図を見てみると本ピークは左ではなく右へ進路を取る。
という訳でトレースは右へ右へと伸びている。最初にトレースを付けてくれた人に感謝。お陰で迷わずにすんだよ。
そしてここら辺が黒姫山で一番の踏ん張りどころで、地図で最も等高線の幅が狭まるポイント。
ただ、それでもこれぐらい緩い斜面なんだから黒姫山は難易度だけで言えば初級。アイゼンよりワカンやスノーシューが必要な緩斜面が連続して岩場はでてこない。とは言え距離は少し長めだから少し気をつけた方が良いって感じです。
ふい~。青空と白い斜面。たまらんっ。
山頂の標高は2,053mだから森林限界には出ないけどなんとも開放的。
せっかく長野まで行くのに森林限界の山ではないんだなーと、少しもったいなく感じたけど、そんなの吹っ飛ばすぐらいの景色。
パッと青空が開けた景色が爽快過ぎる。
稜線はもう目の前。標高を上げてきたから雪質は上質で、トレースを一歩外れるとワカンを履いてても軽く膝下まで沈み込む、バックカントリーからは泣いて喜ばれる激パウ状態ってやつ。
しかもこの無風。出だしのガスガス地獄で諦めなくてほんと良かったよ。
さぁーって、いよいよ稜線に出たよ!
樹林の隙間から姿を現したのは妙高、火打山だね。
……
ええーい!見にくいっ!
そしてドーンと目の前に見えるのは御巣鷹山、またの名を小黒姫山。標高は2,046mで黒姫山より7mほど低い。
冒頭の高妻山から撮った黒姫山の写真で分かるとおり、この御巣鷹山は火口丘で、黒姫山は噴火口壁が時間と共に崩壊や侵食され今の形になってます。
まあそんなつまらない話はいいとして、
早速、稜線歩きが始まるかと思いきや、もう少しだけ焦らされタイムをくらいやきもきさせられる。
なんとか早る気持ちを抑えて横移動していく。
そして右手側に景色が開けると、そこは一面の雲海!
そんな雲海から頭を出してる山は飯縄山。
いよいよ始まる至福の時間。
もっふもふのパウダー。踏み跡バッチリだから新雪の上を歩くのに疲れたらトレース泥棒しちゃえば良いしね、愉快痛快念力集中ピキピキドカーンタイム。
圧倒的な存在感の高妻山。やっぱ百名山なだけあるわ。登ってみると行程は長いし壁みたいな急登がでてくるし、途中撤退したであろう先行者が山頂踏んできたよと意味不明な強がりを炸裂させたりと、なかなか記憶に残る登山だったな。
そんな高妻山の左に位置するのは未だ大気圏を突破できないでいるザク。もとい、戸隠山。
山頂まで続く片道1.5キロの稜線歩き。
絶景の連続に「開放感が半端ねえ〜」とうわ言を繰り返す。軽く失禁してたかも。
ところどころ踏み抜かれた跡があったんだけど、そこを覗くと岩と岩の隙間や藪が見え、ずぼっと落ちてしまったら大変だぞ、と軽く恐怖を感じる。
そんな踏み抜きからのぞかせる藪を見ると、きっとこんな大展望の連続は冬季ならではなんだろうな、と思えた。
右手に見える雲海と飯縄山の景色は見飽きない。
左に山頂から七ツ池に向かって一直線に伸びる七ツ池シュートを発見!
あそこを滑れたらさぞ楽しいだろうけど、滑った後また山頂に登り返す事を考えると…とてもやる気にならんわ。。
こんな開放的な稜線歩きができる山、なかなかないと思う。
この角度、なんか四阿山の山頂直下からの景色に似てるなと思ったんだけど、どうでしょう?
四阿山の雪山登山は風が強かったけど危険なところは無かったし景色もバッチリでした。雪山の定番として雑誌に多く取り上げられるのも納得なんだけど、だったら黒姫山はどうなのよ?黒姫山も負けてないと思う。
もっとこの稜線を歩いていたい気分ではあるんだけど、突然、猛烈にお腹が空いてきた。
ほんと突然。
途端に一刻も早く山頂に着いてご飯にしたい欲に駆られる。ここが黒姫山登山で一番の見どころだと言うのに。
あちき、充足感より満腹感に満たされたい。
しかしくどいけどこの雲海には感動したな。腹の足しにもならんけど素晴らしい景色によだれが止まらない。
シャリバテ寸前だし、金欠だし、新型コロナウイルスで東京マラソンのエントリー料の16,200円ドブに捨てたけど、とにかく山頂までひと踏ん張り!
東京マラソンについては、これまでのそれなりの頑張りを違う形で報告するか悩んでるんだけど、、意気消沈し過ぎてやさぐれ過ぎてこれまでの我慢の反動で暴飲暴食が止まらな過ぎて全く筆が進まないないので、期待しないで下さい。。
ここでやっと先行者発見。って実は山頂には10名以上のパーティが待ってて、その群れから遥かに遅れをとった最後尾のお方。
てっきりその方々がトレースをつけてくれたと思い、山頂に着いてから全員に向かって感謝を伝えたら、最初からトレースは付いてて自分たちはツボ足で登れちゃいました〜だって。
まだ山頂に着いてないのに山頂に着いてからの話を先に書いてしまったけど、そうこうしてる内に黒姫様のピークは目の前。
やっと飯だー!
北信五岳の大パノラマと四股踏み
到着!
振り返った稜線と高妻山の景色がちょ〜気持ちいいっ!
そしてやっと大気圏から脱出できたのは戸隠山。
山頂に着くのを見計らったかの様な演出。
ほんで、こちらがぼっこーんと妙高山。
ほんと、ぼっこーんって感じ。
この特徴的な姿形、妙高山はやはり名山ですなー。もちろん百名山。
ちょっと樹林が邪魔して見にくいけど真ん中が焼山。右の綺麗な三角錐が火打山。
ギョギョギョ!と、先程から登場回数最多の高妻山。
唯一無二っぷりはさかなクンに遠く及ばないものの際立って目を引く存在。
どの山がお好みですか?
えーっと、さかなクン!
素晴らしい景色にはシコ踏みが良く似合う。
ほんと、百名山だけで火打、妙高、高妻の三座、二百名山が飯縄と戸隠、そんな名山たちに取り囲まれ、贅沢すぎてこれがシコ踏まずにいられるかって。
遊んでらんないほど腹が減ってるから飯にするぜぃ!
この森永ミルクココアワッフル、冷凍食品だけど自然解凍OKで山頂でちょうど良い感じに解凍されてて美味すぎた。カチコチっていうベタ過ぎるオチを提供できずスンマソン。
どんどんガスが晴れていくゲッザーン
ゲッザーンします。調子に乗って食べ過ぎたために涙目です。ゆっくりでしか歩けない。
とにかくゆっくり、見渡す限りの大パノラマを満喫しながら歩く。うぷっ
七ツ池は積雪期だとハート型になるんだな。
屋久島のウィルソン株が角度によってはハート型に見えるのは有名だけど、ここだってもっと知名度上がってもいいのに。
今の俺は俄然、黒姫山の肩を持つぜ。
長大な稜線。雪山に登っている人なら憧憬を感じてしまうダイナミックな光景だと思う。
「登りでたくさん歩いたんだから」
と前置きし、ミルクココアワッフルを3つ、おにぎり、更に天ぷらそばを完食した事で急いで歩けばリバースしそうな勢いで気持ち悪い。
暴飲暴食が止まらんのよ、ほんと。それもこれも全部東京マラソンのせいだ!
(完全なあてつけ)
ゆっくり歩いた恩恵か、雲が晴れて麓の景色まで見える。
そしてこちらが先程も紹介した戸隠山。なかなか男前。
真ん中の奥、少し右に見える山は雨飾山(まだ登ったことないから、たぶん・・)。
トレースが付いてる事を狙った登山は打算的でチャレンジングではない!と、一部のガチ勢からは批判を受けるかもしれないけど、冒険し過ぎてこの絶景を見られず、惨めで青臭い撤退をかますよりかはよっぽど打算登山ウエルカムじゃい!
と言うのが正解だと確信できる大展望。
トレース付けてくれたチャレンジャーには感謝しかありません。
そろそろ稜線歩きも終わりに近づいてきた。今シーズンのパウダースノーは恐らくこれが最後かな。次回以降は残雪期の重たい雪になってるだろうと思うとなんとも寂しい。
稜線から一気に下りへ。
もう胃袋の消化も進んで調子がでてきた。新雪の所を選んでもふもふを味わい尽くす様に下っていく。
有名ブログやヤマレコで雪山シーズンのレコを見かけないのが不思議なぐらい楽しかったよ。なんとも名残惜しい。
等高線が一番詰まってるポイントを駆け下りると、あっという間に標高を下げた。
疲れてきたところで始まる林道歩きがかったる過ぎて、辺りを見渡して真新しい物がないか、気を紛らわせられる物を探しながら歩く。
長い。。
飽きちまったぜぃ。。
景色も変わらないし、飽きてくるとゴールは近いはずなのにちっとも進んでない気がしてきて余計長く感じた。
疲れてきて歩幅も狭くなって惰性で足を前に出すだけの作業を繰り返して、やっとゲートまで戻ってきた時は本気で嬉しかったよ。
ワカンを外して駐車場へ、無事帰還。
雪の上を13キロも歩いてたんだね、そりゃ疲れるわ。終始ガスガスだったらやさぐれる距離だけど、天気に恵まれてほんとラッキーな1日になりました。
振り返って
黒姫山は北信五岳の一座で名の知れた山であるにも関わらず、すぐ近くの妙高山、火打山、高妻山、唐松岳と言った一線級のメジャー選手達の人気に押され、いまいちパッとしない印象がありました。
確かに、このエリアの選手層の厚さはまるでホークス打線を見てるかの様でなんとも羨ましい。
少なくとも自分はハッキリ言って地味な山だと思ってた一人です。
しかも雪山登山となると、雑誌じゃサッパリ見かけないし、有名ブロガーさん達からはちっとも見向きされてない感じで、今回の登山は良い意味で裏切られました。充実した登山に巡りあえて幸運でした。
今回黒姫山に登ろうと思ったきっかけは、秋に知り合いが登ったという話を聞いたから。それ以来、雪山ならちょうど良さそうな標高、距離だなと思ってチャンスが巡ってくるのを狙ってました。
ところで、
新型コロナウイルスの影響で東京マラソンの一般ランナーの参加は中止となり、エントリー費用1万6200円はパー。小遣いの80%を気前よくドブに捨ててやったわー、アーッハッハッハ
( ノД`)シクシク…ウッ…
そりゃ東京都よ、今回の判断は正しかったと思うよ。うん、絶対に。でも百合子さん、あたしゃ泣いたさ。
お金の問題だけではなく、3月1日の本番に向けて、毎週走れる距離を少しずつ伸ばし、毎週筋肉痛と戦いながら調整を続けてきた頑張りが全て無意味になったのは、マジで立ち直れなかったわ。。
心の声:ふっ、これで撃沈レースを演じずに済んだぜ。。
いやいや、でももういいんです。
東京マラソンのこの日、黒姫山登山のお陰で充足感に満たされました。
下山後に見たYahoo!ニュースの大迫のハンパねぇ日本新記録にも感動したし!
ではでは