また奴が来る。
雪山に潜む妖怪。その名も「マウントゴリラ」。
高難度な雪山になればなるほど、パワーを増してくる厄介な妖怪だ。
立ち往生する山ガールがいれば、たちまち餌食にされてしまう。
「雪山をなめている。素人が来るところではない」。ここぞとばかりにヤマレコでディスりつつ、しっかり己のこれまでの輝かしい経験をご披露させるマウントゴリラ。
ちなみに、困っている山ガールに決して手を差し伸ばすことはしない。ただ、ネタにして楽しむだけ。
岩場を慎重に進んでるハイカーを見かければ、すかさず「危なっかしい人がいた。もっと冬の岩稜に慣れてから来てほしい」と、ヤマレコでマウントゴリラ。
アイゼンとピッケルの使い方を聞かれれば、「講習してあげた」と得意気ゴリラ。
スタックした車を見かけても手伝うことなんてしない。雪道をなめてるからだと吐き捨て、そんなことまでしっかりヤマレコで報告するホウレンソウゴリラ。
「こいつは違う。」
「こいつはデキるゴリラ。」
そう思われたいのだろう。
しかし残念ながら「このゴリラは、山以外に自慢できることがないんだなぁ」としか思われない、寂しいゴリラ。
雪山は、そんな悲しきマウントゴリラ達が躍動する場所。
山ってめんどくさい世界だとしみじみ思う。
もっと、自分をネタにすればいいのに。
自分なんて存在自体が恥部ゴリラ。自虐ネタには困らない。
あれ?
これってもしかして、、
自虐のマウントゴリラ?
ちょっと自覚あるかも…
でもさー、おっさんなんだから自虐ぐらい言わせてよぉ〜
まあ、ほんと、
冬のヤマレコやYAMAPのマウントレコを見て、改めて登山の楽しさや自然の美しさをしっかり書こうと思った次第です。
はい。
今回登る山は、北アルプスの霞沢岳(かすみさわだけ)西尾根ルート。
西尾根は積雪期限定のバリエーションルートで、ひたすら急登が続くのが、めっちゃ面白い。
日帰りで行けちゃうから、最近人気のルートでもあるよね。
冬期通行止めの釜トンネルを抜けて、上高地から登山スタート。
森林限界を超えて広がる奥穂高岳の大きさ、もはやパワハラですから。
「焼岳ばりかっけぇー!奥穂どすこーーい!」
って感動しながら写真撮りまくってきた。
カメラがあれば、いつもの登山の中にも新しい発見があったりする。撮りたいものがあるからカメラを持っていく一方で、カメラがあるから撮りたい風景が見つかる。
山の魅力を2倍にしてくれる大事なツール。
さあ、今日もカメラを持って山へ出かけよう。
左から西穂、真ん中が奥穂、右が前穂。
先日、電車の三人掛けシートで、両端にサラリーマンが座るところに、ゴツい黒人が真ん中に座った光景を思い出した。
霞沢岳は標高2,646m、日本二百名山。さわんど温泉から徳本峠越えで登るのが一般ルート。
ルートとコースタイム
■2023年2月5日 ※カッコ内は標準コースタイム
坂巻温泉⇒(30分)⇒釜トンネル⇒(50分)⇒西尾根取り付き⇒(120分)⇒幕営地⇒(80分)⇒岩場⇒(30分)⇒山頂⇒(180分)⇒西尾根取り付き場所⇒(60分)⇒坂巻温泉
コースタイム:9時間10分(休憩含まず)
総距離 14.3キロ
累積標高上り 1,640m
冬の霞沢岳西尾根 本編
坂巻温泉から釜トンネルへ
無料と聞いて、浮かれたハイカーがやって来たのは、坂巻温泉。1月初旬〜2月初旬は坂巻温泉が休館のため、無料開放してくれてるんだけど、見事に満車。
ちょっと舐めてた。
それでもなんとか車を止めて、まだ暗い中、釜トンネルを目指して出発。
釜トンネルまでは約2.3キロ、更に釜トンネルで1.9キロ、合計4.2キロを、雪山用ブーツによって自由を奪われた足で登山口までたどり着かなくてはいけない。
しかもだ。
何を隠そう、この日は出発前に血圧が下がってしまい、30分ほど横になって休むという絶不調ぶり。体育館で生徒が冷や汗かいてぶっ倒れちゃうアレだ。ダルくて朝ごはんもたべられなかった。
出発前に、なんという絶不調ぶり。
坂巻温泉から2つほどトンネルを抜けると、釜トンネルの手前ですっかり明るくなった。
気温は−7度。2月初旬、朝の上高地でこの気温は異様に暖かい気がする。
カマトンから上高地へ
なんとか歩けている。
ここで書いた登山届に、「超ダルビッシュ」と嘆き節を書きたくなるぐらい、不調だ。
ちなみにここ釜トンネルから先、車両は冬期通行止め。歩行者は左端の開放されたゲートから入ることができる。
どうでもいいけど、冬期の「期」って、冬季と冬期で迷うよね。夏期休暇って会社の行き先掲示板に書く時も悩むんだよね。
ほんと、どーでもいいけど。
自分が釜トンネルを歩いて上高地にアクセスする日が来るとはね。こんなとこ一部のエキスパートの世界だと思ってただけに意外。
ちなみに、釜トンネルは1.3km、その次の上高地トンネルが0.6kmで、合計1.9km。
最初、トレランシューズを用意しようか悩んだけど、荷物増えるし面倒になってやめた。
約2キロの釜トンネルを抜ければウエルカム焼岳。
いよいよ北アルプスにやって来たなって気分になってきた。
相変わらずダルビッシュだけど、ちょっとずつ回復してきてる感じ。
トンネルの出口でアイゼン装換。座って準備してる間にたいぶ体調が戻った。
今日は急登が続くらしいから、途中で休めるところがあるのか分からない。念のため、ここでアミノ酸をチャージしておく。
スノーシューハイクに来てる人達がキャッキャッしている。
なんて楽しそうなんだ。きっと美味しいランチも準備してるんだろう、羨ましいぞ。
想像してよだれも出てたと思う。
急登で幕開け
しかし、ここまで来たら引き返せない。
今日は晴れ予報だ。こんな良い条件に恵まれる事なんて今後無いかもしれない。
トライして、無理そうなら引き返せば良い。
人生はトライアンドエラーだ。
生きたまま死んでいくのか、死んだまま生きていくのか。トライしない人生なんかつまらない。
血圧低下なんかに負けないぞ。めざせ高血圧。塩分カマーン!
早速、急登で幕を開ける霞沢岳。
昨晩雪が降ったというのに、もうこれだけ踏まれてる。
自分が倒れている間に、多くのハイカーが入ったんだな。
最初の急登を登れば、今度は穂高がずどん。
北アルプスに来たことを激しく実感。テンションと共に血圧も急上昇。
西穂は猛吹雪で撤退してるから、晴れが巡ってくるのをずっと待ってる。
まだまだチャレンジは始まったばかり。おっさんは頑張るぞ。
尾根伝いに登っていく。
ちなみに今日はアツアツのミルクティーを持ってきたよ。
雪山でミルクティーって、考えただけで美味そうでしょ。
これを眺めながら飲むミルクティーは格別。
あなたと飲みたいレモンティー♫
レモンティーを知らない人は置いていくけど、シーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠が亡くなったのが個人的には2023年2月一番のニュース。
積雪期以外は藪が生い茂って歩けない冬季限定のバリエーションルート。
霞沢岳は夏道なら徳本峠から登るのが正規ルートだけど、そのルートも開通したのは、実はつい最近らしいよ。
なんだこのダサいポーズは…。
それはひとまず置いといて。
どれだけ急登なのか分かりやすいのが、このトレッキングポールの短さ。
今年から自分はポールを夏用と冬用で使い分けている。
夏用はとにかく軽さ重視で、安くて簡単に折れちゃってもいいやつで、スノーバスケットは取り付けられないタイプ。
一方、積雪期は重くても頑丈で、スノーバスケットが取り付けられるタイプ。
なんにしても冬は金が掛かるから、楽天ポイントをうまく活用しながら何年もかけてギアを揃えていったよ。
眼下には上高地のホテル。
一気に標高を上げてきた。
たまに倒木に通せんぼされながらもススム君。かがむと坐骨神経が激しく痛むのはいつものこと。OK。
ところで最近、グーグルに見張られている。
福岡空港の混雑中にYouTubeMusicが薦めてきた曲が中森明菜の北ウイングだったり、尊敬するさかなくんの「ギョギョッとサカナスター(ゴンズイ編)」を録画予約すると、その所作を見られていたのか、翌日のGoogle検索画面で複数のさかなくんがお薦めで登場してきた。
間違いない。
聞かれているし、見られている。
今使ってるスマホも実はGooglePixel。もはやGoogleに囚われの身だ。機種変しようかマジで悩む。
どうだGoogleよ、一緒にこんな景色が見られて幸せだろう。
標高的には、まだ焼岳の4合目付近だろうか。
今日はマグマカイロを持ってきた。
自宅でリモート研修を受けてるときに部屋が寒すぎて、お昼時間に急いで薬局まで買いに行った残り。
普通のカイロとの違いがいまいち分からなかったけど、マグマっていうインパクトにイチコロさ。
ここから更に急登になっていく。
第六感がここでストックからピッケルに持ち替えろと警鐘を鳴らしたんだよね。
この急登が途中で、一部傾斜70度以上になるから、ピッケルに持ち替えといてほんと良かったよ。
なんせ体重はゴリラ級。
軽けりゃひょいひょい上がれちゃうんだろうけどね、自分を支えるか細いピッケルが健気で泣けてくる。
頼むから折れないでおくれ。
急登を登り終えたらテント村に到着。
ここはバリエーションルートだから、当然幕営地ではない。
そう、こういうところでは人糞に気をつけなくてはいけない。雪に埋もれたうんこ地雷がそこら中に仕掛けられている。
気をつけろ!
なお、テント村と言っても狭いから4張ぐらいが限界だと思う。
冬のテント泊で良く見かけるモンベルがやっぱり一番信用できるのかもしれないね。ただ、自分はチャックが噛むのがどうしても苦手だけど。
日当たりの良い西尾根
テント村から先でやっと日差しが差し込んできた。
ここまでずっと日陰で寒かった。
福岡ローカル番組のゴリパラ見聞録で、ゴリけんさんが「満潮」を「まんしお」と読んだことを思い出して、キショい一人笑いを浮かべて歩いている。
あたかも日が差した森の美しさにニヤニヤしてる風に。
しかも、ゴリけんさんをパラシュート部隊の2人が即座に「みちしおだよ!」とツッコんだのにもズッコケた。
いやいや、「まんちょう」ね。
海沿いで育ち、宮崎育ちで釣り好きな父の影響で潮見表が冷蔵庫に貼られてある様な家で育った。
今も海まで徒歩5分のところに暮らしている。
月を見上げて、明日は大潮だなぁ〜、なんていうのが親子の会話だった。
確かにみちしおとも読むんだけど、そこは譲れない。正しいのは「まんちょう」です。
そんな海ばかりを見てきた自分にとって、真冬の北アルプスの景色は丹波哲郎の大霊界クラスの異世界。
シラビソの森も大霊界。
また話はそれるけど、先日、さらば青春の光の森田が「さかなクン、実は魚よりも車に詳しい」とか言ってネタにしてたけど、ほんとやめておくれ。
つか、プロなら他人をいじって笑いを取らないでもらいたい。よりによって、尊敬するさかなクンを。
さかなクンは、好きなことをとことん追求しただけではなく、本当の自分らしさを貫く最高にブラボーな存在。
さかなくんを否定せずに育ててきた母親も実にかっこいい。
さらば森田よ、お前の出る幕はない。さらばだ。
ああ、これでまたGoogle検索でさらば森田がたくさん出てくる。
くそっ。
日差しが強くなってきたから、ようやくここで日焼け止めを塗った。
もはや手遅れな気もするけど…。
ちなみにサングラスもしっかり装着。
雪目にかかり、東京都内を眼科までゴーグルつけて歩き彷徨った恥ずかしさこそ、我が過去の栄光。
恥部も全部ネタと思えば愛おしい。
わが恥部に一片の悔い無し。
いかんいかん、またいつもの恥部の上塗りをするところだった。
本来の楽しみに戻って、こういう変哲もない光景もカメラで切り撮っていく。山とは不思議なもので、すべてが絵になる。
景色が開けた。
ピークだらけの乗鞍岳。剣ヶ峰がどこにあるのか分かんないよ。
見た目以上に急な上りはまだまだ続く。
樹林と雪と青空の美しさに、仕事によるストレスで濁った心が晴れ渡っていく。
とは言え、さすがに疲れてきた。もしかして霞沢岳の山頂ってあれ?
遠いのか近いのか分からん(全然違うピークだった)。
以前、針ノ木岳で見かけた外国人の親子がいた。YAMAPでは有名なオーストラリア人の親子。
話しかけようかなぁと思ったけど、英語で返されたらタジタジだからやめといた。
ここから痩せ尾根と絶景
おお、見えた。あれが核心部って言われてる岩場ね。
あそこで少しでも手こずれば、マウントンゴリラの格好の餌食だ。めんどくさい。
まあしかし、恥部こそ我が人生。
人間は失敗から学ぶ生き物、かっこ悪くて何が悪い。
さあ、行くぜ。
振り返れば、焼岳よりも高くなったYo!
左奥のとんがった山は笠ヶ岳かな?
なかなか際どいところを歩いてきた。
最初にトレース付けてくれた人、あんがと。
そして核心部。
岩もロープも雪に埋まってなかったから、見た目より簡単に登れる。
心配なのは上りより下りだしね。
核心部を登って、下を見下ろすとなかなかの高度感。
高いところは苦手だけど、立ち位置をしっかり確保すれば大丈夫。気持ちいい。
そして正面を向けば、山頂を捉えた。
ピークに向かって登っていくハイカーは3人。
手前で団子になって立ち止まっている3人組は、痩せ尾根で離合ができないため待ってくれている。
自分の後ろにも2人登ってくる人がいるから、まだかまだかと待っている。
寒そうだ。
というわけで、待ってくれている方のところまで来て入れ替わる。
自分が急いだところで、後続が来ないとあの方々も動けないんだけど、しっかり感謝は伝えておく。
ちょっと登って、振り返ってもまだ待ってた(笑)
ここはちょうど風が当たらないところで、日差しもポカポカだったから良かったけど、寒かったらたまらんわ。
山頂へ
この先に見えるのは偽ピーク。
核心部の手前からこの奥にピークがあったのはばっちり見えてたからね。焦らずゆっくり歩く。
北アルプスの標高2,600m以上の世界観を楽しまなきゃ。息も苦しいけど。
やっと見えた。左奥がピーク。
登山をしていなければ、まるで海外みたいってつい言っちゃいそうだけど、日本の山岳美をなめてもらっちゃ困る。
海外の山ぜんぜん知らないけど。
でも日本ほど豪雪なエリアって世界を見渡してもなかなか無いし、海外からたくさん日本の雪を求めてやってくるんだから、日本の山は本当に世界に誇れる。
こんな世界を見ることができて幸せものだよ、ほんと。
ここからでも山頂が賑わってるのが分かる。
霞沢岳山頂で土下座
溢れ出るニッポンの山への感謝の姿がこれだ。
何度も何度も頭を下げて、健気で謙虚じゃないか。泣けてくる。
眼の前は穂高岳。
この景色を見に来た訳ではないけど、やはりスケールの大きさはハンパない。
岳沢小屋は雪に埋もれちゃってる感じ。
あそこで写真撮りたいけど、先客が穂高をバックに撮影中。
楽しそうだ。もう少し待とう。
遠くの空まで雲ひとつないなぁーと思いきや目線より少し低いところにぷかぷか漂ってた。
あの山、やっぱ笠ヶ岳だと思うんだけどなぁ。
こちらが乗鞍岳。
左奥に御嶽山も見える。
御嶽山は噴火の跡が痛々しくて、、なんか自分は胸がいっぱいになってしまったので、2回目の登山はちょっと遠慮したい。
お昼ごはん時に噴火するなんて、言葉にならない。
遠くに見える真っ白な山が白山。
北アルプスも日本海側の気候になるけど、白山があんなに晴れてクリアに見えるなんてね。
白山は日帰りじゃなくて、もう1回テント泊で訪れたい。
太平洋側に目を向ければ、遠くに八ヶ岳。
三度の飯より八ヶ岳が好き。
そして、分かりにくいけど、左奥に南アルプス、そして中央アルプスが重なる様に見える。
南アルプスにV字の切れ込みが入ってるところが北沢峠で、その左が甲斐駒ヶ岳、右が仙丈ヶ岳。
日本の代表的な山がぜーんぶ見える。
まだ撮影会してんのね、
もういいや。
ゲッザーン開始
山頂は風が強かったから長居は無用、体が冷えきって核心部で体が動かなかったら危ないからね、ゲッザーンする。
短かったけど絶景を堪能できたよ。
途中に景色が開けて無風なポイントがあったから、そこでご飯食べよっと。
とは言え、下山中もパワハラ絶景のため一向に足が進まない。
日光さる軍団の虐待動画に指が止まったかの様だ。
ゴリラな自分は、仲間が苦しんでる姿を見て心が痛んだ。
穂高も良いけど、やはりこの焼岳のどすこい感がたまらん。
にしても、さっきから同じものばっか撮ってるな。
しかも雪山用の手袋を外せないからカメラの設定も変えられないし。結局、家に帰ってからたくさん捨てた。
足が長く見えるし、顔が小さく見える。
影だったらモテた人生だったかもしれない。
無骨な焼岳にツンツンしてやる。
心配していた核心部手前の離合はちょうどハイカーがいないタイミングだったから、待つことなく渡ることができたよ。
ここを降りていく。ロープもでてるし、岩のホールドもしっかりしてる。
慎重に降りれば余裕。
ただ、ロープは誰が設置したものか分からないし、信用して掴んで果たして大丈夫なのか?という心配もあるから、同時に2本つかもう。
最近、レンズフードを壊しちゃって、付けずに撮影してるから右上にゴーストが入っちゃったよ。
サングラスかけながら撮影してるから、こういうの気付けない。
さて、昼めしにするぜぃ。
信州名物オブセと茨城名物のメロンのバウムクーヘンのコラボ。
すごいカロリーだな。
飲めねぇー。うけるー。
山専ボトルに入れてきたミルクティーは下山後もアツアツだったよ。
ここまでは楽しかった。
ここの斜度は70度以上。
慎重に時間をかけて下ったけど、激疲れた。
あちきの体力はここで尽きた。
ここから先、集中力も底をつき、何度滑ったか。。
これがその成れの果てだ。
マウントンコリラ達に見られたら、格好の餌食だ。
「身の程知らずがいた」
「浮かれゴリラが雪山でやられてた」
「つかブタじゃね?」
いいさ。ヤマレコやYAMAPで悦に浸るがいい。
ノー自虐ノーライフだ。
我が恥部に一片の悔い無し!
ぶっ倒れながらも、木々の隙間から霞沢岳を発見。
なるほど、あんな形してたんだな。
気温が上がったからアイゼンに雪だんごができて滑る滑る。
こんなに転んだのは何年ぶりだろう。
谷に向かって斜面を滑りそうになって、ピッケルで止めたり、生きた滑落訓練にもなったけど、滑るたびに体力は更に削られていく。
グダグダになった自分を、後ろから追い抜いていくハイカーはニヤニヤしていた。
ふっ。
こっちもカッコよく笑みで返してやったぜ。
この電信柱が目印。
もう登山口はすぐそこだ。
最後の急坂はシリセードという滑落で一気に下山完了。
無事に戻ってきた。
登り始めは低血圧に苦しんだけど、よく持ち直した。
トンネルくぐって坂巻温泉へ
怖い怖い。
誰が作ったんだか。うまいけど…
これは、
アカンやつや。
頭を冷やすってのはな、こうやるんだよぉぉおお!
体ごと飛び込んで胸ポケットのサングラスを破壊したことがあるから、最近は頭を冷やすことだけにしている。
北アルプスにも、こんな晴れる冬の日があるんだね。
ここで中国人観光客に、英語で話しかけられた。
爆買いイメージしかなかったけど、素晴らしい観光地のチョイスだ。
しかし、ぜんぜん話せなかった。この年になって、もう1回英語を勉強し直すのもいい。
子供の英検2級の勉強に付き合うか。
釜トンネルの避難場所には除雪車。
壁との隙間1センチ未満。
縦列駐車ってだけで緊張するのに、重機を扱う職人の腕に脱帽するわ。
帰りの釜トンネルの傾斜がエグかった。行きは知らず知らずにこんなに登ってたんだな。
どうりで釜トンネル抜けたら疲れてたわけだ、と納得した。
釜トンネルの入り口に中の湯の喫茶店があった。
仮設トイレも設置されてるし、スノートレッキングにも安心して来れるね。
中の湯のバス停には20人は並んでた。
晴れたし、冬の上高地ってこんな人気だったんだね。
こんなに人が入るなら釜トンネルも封鎖しなければいいのになぁ。
坂巻温泉に着いたよ。
厳冬期は営業休止中だけど、しっかり温泉はかけ流し状態。ここで顔を洗ったらめっちゃ気持ちよかった。
車はまだ半分ぐらい残っている。
日当たりの良いところでのんびりお昼ごはんが食べられる雪山なんてそうないよ。
2年ほど機会を伺いぬがら、待った甲斐のあった一日だった。
振り返って
コンビニで「袋はいらないでーす」と断って、商品を持ち帰る時って、万引きに間違えられないか少なからず心配になる。
買い忘れた物を思い出して、もう一度店に戻らないといけない時とかためらうもんね。もはや諦める時もあるし。
店員さんが袋に入れてくれるのが当たり前だった慣習が抜けないから、そんなことで心配しちゃう、そんな小さな自分でも霞沢岳に登れたよ(繋げ方むちゃくちゃ)。
雪山って、荷物増えるし、濡れるし、寒いし。
車汚れるし、スタックするし。
本来、山って楽しむところなのに、何でそんなにリスクを背負う必要あんの?ってよく疑問に思う。
登山はチャレンジングである以前に、他のどんな遊びより計画性が求められる遊びだと思う。
それが雪山だとなおさら。
天気、山の難易度、装備、体力、経験、その日のお腹の調子。あと血圧も。
それらの程よいバランスからどこに登るかを決めるのは決して無謀ではない訳で、高い次元でそれを楽しむことができるのが登山の魅力の一つだと思う。
山とは不思議なもので、上手くなると上手くいかない。
ちなみに、うっかり八兵衛以上に浮かれやすい自分でも初めて登る山に入る時は少なからず躊躇する。
でも、まずは登ってみないと何も始まらない。人生はトライアンドエラー。
無理だと思えば、いつでも撤退すれば良いし、トライしないと楽しくないからね。
雪山だとリスクが高まる分、より計画的になるのもおもしろい。
まあなんにしても、朝の低血圧には気を付けなきゃ。
ではでは