きた、きた。この季節が来ました!
オオキツネノカミソリの群生で有名な井原山(いわらやま)に登ってきました。
漢字だと「大狐の剃刀」と書きます。オオキツネノカミソリは関東以西で見られるヒガンバナ科の花で、関東の三毳山(みかもやま)、佐賀県の多良岳(たらだけ)など、いくつか群生地はありますが、ここ井原山は恐らく国内では最も有名な群生地だと思います。
もう何度も登ってる井原山。ささっと登った時はもういちいちブログにしないぐらい身近な山なのですが、このオオキツネノカミソリの最盛期だけは
ぜんぜんべつ!!
しかし、連続猛暑日を記録する7月末に、九州の容赦ない日差しと、低山ときたもんだ。
やばい・・こりはやばいぞ。
じ、地獄!蒸し殺されるばい!!!
こんな世界に違いない!きっと!
と、想像してました。
が、あら不思議。森に入ると木陰だし清流で冷やされた風が気持ち良い。なんだ、もっと早く登りにくりゃ良かった!
実はこの2日前にも軽く偵察しに来て、下山してきた方々に開花情報を聞いたりして万全を期して登ってきました。
おかげで狙い通り、満開のタイミングでやってくることができました!
すごく良かったので、ぜひ多くの方に見に来てもらいたいと思います。
さて、井原山登山のポイントです。
井原山登山のポイント
①7月中旬〜下旬に最盛期を迎えるオオキツネノカミソリの大群生。
②4月下旬~5月上旬はコバノミツバツツジが見頃。
③山頂は360度の大パノラマ。
④キトク橋ルート、水無ルートともに清流と原生林の渓谷美。
ほいじゃ簡単ですが補足します。
井原山はオオキツネノカミソリだけではなく、4月のコバノミツバツツジの群生地でも知られ、福岡や佐賀のハイカーたちの間では知名度はそこそこ高い山です。個人的には水無登山口から原生林の森の中を清流に沿って登っていくルートがお気に入りです。
山頂からは360度の大パノラマが広がり、稜線を辿ってすぐ隣の雷山とプチ縦走も楽しめます。
(井原山、雷山縦走の記録は、こちら)
しかし、何といってもこの山の良さは好アクセスでしょう。井原山のキトク橋登山口は福岡市のすぐ隣の糸島市にあって筑前前原駅からバスでアクセスすることが可能です。
もし遠方の方が福岡に出張しに来た際にはフラっと立ち寄れる近さだと思います。
井原山は福岡県と佐賀県の県境にある脊振山地第2の高峰で標高は982m、九州百名山です。
オオキツネノカミソリの群生地は福岡県側の水無登山口付近にあります。
ピンと背筋を伸ばした百花繚乱の景色は感動しますよ!
この山が全国的に衆目を集めないのが不思議なぐらいです。
いざっ!
■周辺地図
・筑前前原駅発のバスはまぼう号の井原山登山口への時刻表は、こちら。
■ルートとコースタイム
■2018年7月28日 ※()カッコ内は標準コースタイム
キトク橋⇒(60分)⇒アンノ滝⇒(25分)⇒水無ルート出合⇒ (65分) ⇒井原山山頂⇒(55分)⇒アンノ滝⇒(50分)⇒アンノ滝
標準コースタイム:4時間15分
登山開始
麓の糸島市から眺める井原山。これは2日前に事前偵察でやって来た時に撮影した写真です。
ここ脊振山地は日本海側に位置するため冬は曇りが多く、春は黄砂の影響ですぐ霞んでしまうため、夏と初秋が狙い目かもです。
井原交差点を瑞梅寺ダム方面にずーっと進むとキトク橋登山口駐車場に着きます。
事前偵察は2時間ほど歩いて豪雨災害の影響を簡単に確認して引き返してきました。
とまあ道案内はここまで。
ここからが登山当日の朝です。
この日は平日だったので朝6時のキトク橋駐車場には3台しか停まってません。
この時期を首を長く待っていたハイカー達でごった返してると思ってましたが、肩透かしです。
キトク橋から先に進めばオオキツネノカミソリの群生地に最も近い水無登山口駐車場まで行けますが、西日本豪雨の影響で全面通行止め。
やはり各地に爪痕が残ってます。
愛車のスターターが壊れたのでディーラーに修理にだしてて、この日は代車の軽自動車でやって来ました。
最近の軽自動車は加速は良いし車内は広いし技術の進歩がすごいです。もう大きな車に乗るメリットってあまりないかなぁ。。
とまあそんなわけで、下山後は午前10時にディーラーに車を引き取りに行かなくてはならないので9時頃の下山予定です。
登山口の看板には7月〜8月に見られる花が紹介されてました。
はい、ここ大事ですよー!
オオキツネノカミソリの群生地を黄色の四角で囲ってみました。キトク橋からだとアンノ滝を過ぎて左に折れ、水無林間歩道で水無登山口方面へ進みます。
群生地から山頂まではこの地図にも書かれてる通りなかなかの急坂なので、一般的にはキトク橋から山頂まで赤いルートで登って、下りで白線ルートを辿り群生地を通る人が多い様です。
自分の場合は、むしろ急坂を下る方が嫌だったし、早くオオキツネノカミソリを見たかったので登りで白線ルートを使いました。
“危篤“を連想させるキトク橋登山口は標高264m。
山頂までの標高差は約800m。急坂、そして猛暑。先を急ぐと誰だってバテます。
時間制限はありますがのんびり行きますぜっ!
6:05
さて出発。
登り始めは舗装路です。
山間の畑を眼下に眺めながらゆっくりと標高を上げていきます。
まさかの周囲に登山者が1人もいないスタートです。
静かな山歩きになって気楽なのはいいんだけど、お祭り騒ぎを期待してただけに、なんか、なんかなぁ。
登山口まで車を走らせてる途中にも地滑りしてる箇所とか西日本豪雨の爪痕をいくつか見ましたが、登山道が破壊されてたのはここ1箇所だけでした。
ヒョイヒョイっと倒木を避けながら橋を渡っていきます。
アンノ滝まで710m。
歩きにくかった舗装路はここで終了。この標識からはトレイルです。
そして出てくるのがこれ。
川の渡渉は片道だけで5回はあったと思います。往復で10回ぐらい。結構多いです。
渡渉する事は見た目ほど難しくはありませんが、以前バランス崩して片足をドボンしたことがあるので慎重に渡ります。
突然林道がでてきますが、土砂に覆われてました。これも豪雨の爪痕でしょうね。
こうやって橋が架かってる所もあります。
まだ日の出からさほど時間が経過してないこともあって、清流に冷やされた風が心地よいです。
こんな滝も出てきます。金銭欲にまみれた自分が打たれるのにはちょうど良い滝ばかり。
アンノ滝が見えてきました。
6:30
登りでオオキツネノカミソリの群生地を通る場合は、アンノ滝を過ぎたらすぐに出てくるこの分岐で水無登山口方面へ進みます。
間違えて山頂方面に進んでしまったら下山で群生地を通ってください。
おっ!シーボルトミミズ発見!
西日本にしかいないミミズです。これを見て少し小ぶりサイズだなと思えるんだからすっかりお馴染みになった存在ですが、相変わらず気持ち悪い。
水無鍾乳洞に進みます。
この鍾乳洞の入り口には柵があって中には入れませんが、入り口から10度近い冷気が出てくるため寒すぎるぐらいです。
カエルもたくさんいました。分かりますかね?真ん中で同系色に化けてるヤツです。
水無林間歩道というと、あたかも手軽な遊歩道を想像してしまいますが騙されちゃいけない!
意外とエグい登りが続きます。
調子に乗って飛ばしたらバテてしまうことでしょう。
クサアイジサイ
再び山頂と水無登山口の分岐が出てきますが、ここでも水無登山口へ進みます。
迷いがちなので地図は必ず携行しましょう。
おお!!!
遠目からオレンジ色が見えたと思ったらやっぱり!
水無ルートとの合流前で早速オオキツネノカミソリ出てきました!!
いきなりの群生に完全に面食らいました。
すっげぇ!!と1人で興奮して写真撮影開始。
トレイルに沿ってたくさん咲いてますが、本格的な群生地が出てくるのは水無ルートに合流してから。まだ序の口です。
7:10
はい、ここで合流。
割とすぐここまで来れると踏んでたんだけど、意外と長く感じました。ほぼコースタイム通りです。
ここでやっと井原山方面に向けて進んでいきます。
徐々に本格的になってくる群生。清流沿いに咲くオオキツネノカミソリ。
辺りには誰もいないし、撮影に時間かける余裕があるって最高です。
登山道を彩るオレンジ。ヒガンバナ科の花なので毒がありますが、こんなに綺麗に咲くなんて驚きです。
井原山は登る度に違う景色に出くわすから飽きません。
これでもか!
えぇーい、これでもか!
と、使いもしないのに何百枚も撮影していきますが、カメラの腕がないのでどれも似た様な写真ばかり。
キツネノカミソリは県によっては絶滅危惧植物に指定されてます。
井原山の自然保護活動をされてる方々に感謝しなきゃいけませんね。
来て良かった。この景色を見てそう思わない人はいないでしょう。
奥の方までびっしり密集して咲いてます。
ヒガンバナ科の特徴ですが、どれも背筋がピンと伸びて葉がついていません。
実は葉はあるのですが、花が咲く前に全て抜け落ちてしまいます。葉が抜けてから花が咲くなんて不思議ですね。
ちなみにその葉の形がカミソリの様に細く長いことがこの花の名の由来となってます。
原生林と柔らかな太陽光とオオキツネノカミソリ。撮影方法はそれなりに試してみたけど飾らずに撮ったこれが本日1番かな、結局。。
改めてきちんと写真の撮り方を覚えなきゃ折角の景色とカメラがもったいないなと思います。
ただ、立ち止まってカメラの操作に試行錯誤してると蚊の餌食になるのでそう長くも立ち止まっていられない。
それに、そろそろ代車を戻す時間が心配になってきたので、ペース上げていきます。
と思ったら再び群生地がでてきて足止め。
オオキツネノカミソリ通り。
この時期の暑さは本当に厳しいですが、早朝なら耐えられるぐらいなので足を運ぶべし!これは見とくべき景色だと思う。
くどいですが、平日とは言え周りに誰もいないのが信じられません。
何枚も載せますがこれでも厳選した方なんです(笑)
夏の太陽が勢いよくどんどん上り、日差しが強さを増す。
この日に照らされたオオキツネノカミソリが見納め。群生地はここまで。自分のくどくオチの無い花の説明もここまで。
途端に急坂が始まります。
ここからがしんどい所なので、登りで使うか下りで使うかはよく考えてください。
下りで通ると遅れてやってきた団体客と鉢合わせになってゆっくり観賞できないかもしれませんけどね。
急坂が少し緩んでくればあとは山頂までなだらかなトレイル。少し気が早いですがよく頑張りました。
稜線に出ました。と言っても樹林帯ですけどね。
左へ行けば三瀬峠、脊振山へ行けます。井原山山頂はここを右へ。
ヤブミョウガ
ハンカイソウ
青空が近づいてきました。低山とは言え東京スカイツリーや福岡タワーなんかよりだいぶ高い。空を近くに感じられるはずです。
山頂はすぐそこ。
なんでしょうね?
山頂手前にコオニユリ。
着きましたー!!
困った挙げ句、この謎のポーズ。何かしないとと思うのは貧乏性の宿命なのか。。
山頂からの眺めを紹介するぜぃ!
まずこちらが唐津方面の景色です。少し雲がかかってる山が羽金山で、井原山と同じ脊振山地に属する山です。
羽金山は白糸の滝から登れ、山頂には巨大な電波塔が立ってるため遠くからも目立つ山です。
まだ登ったことないぜ!
そしてこっちは佐賀県三瀬(みつせ)方面。
三瀬の鶏肉は全国に出荷されているブランドだから”みつせ”の名は全国区だぜ!
三瀬の顔「マっちゃん」はリニューアルしたのはいいけど、なぜざる豆腐の味付けも変えたんだ!あの豆板醤が美味かったのに!!残念だわー。
(分からない人は置いてくよ!)
こっちは福岡市方面。
冒頭で夏が一番空気が澄んでると書いたけど・・すっげぇ霞んでる。
何も見えねぇ。
何も言えねぇ。
ファミマで買ったバターチキンカレーナン。
撮るつもりなかったけど美味かったので1枚残しときます。めちゃくちゃ食いかけです。
下山はキトク橋への最短ルートを辿ります。
まずは雷山方面に移動します。
ちなみに雷山の標高は954mです。
井原山から縦走する場合は下っていく感じになるので割と簡単に着くことができますが、1点注意か必要なのが途中にある洗谷ルートは急坂のためエスケープには向きません。安全を取るなら頑張って雷山まで行って下山するか、井原山だけで下山することを薦めます。
この標識がでてきたらアンノ滝、キトク橋方面に下っていきます。このルートはなだらかでとても歩きやすいです。登りで利用する人が多いのも納得。
ここでバシャバシャと汗を流しました。最初顔だけ洗ってたのですが、しまいには頭も洗って全身びちょびちょです。ワイルド過ぎ。
駐車場に着く頃には乾いてましたが。
カラスウリの花。
下山中、何人も登ってきます。20人以上の団体ともすれ違いました。すごいすごい。やっぱ賑わうよなー。
ゴールが見えました。登山口付近まで車が溢れてるのが見える。
下はどうなってんだろ。車出せなかったらどうしようと少し不安になりながら急いで駆け下りました。
ひえ~、路肩までびっしりです。
なんでみんな朝遅いんだろ。暑いでしょ?
オエェー、駐車場溢れてる。
土日はヤバイよ、こりゃ。
着替えを済ませて車を走らせます。
ディーラーに行かなくてはいけませんが田んぼの緑が綺麗だったのでちょっと車を停めました。
夏らしい景色ですね。
振り返って
外に出ただけでじわっと噴き出る汗。青々とした山々とセミの鳴き声。この日は夏らしい夏、そんな日でした。
車から下りて登山の準備をしていると本当にこの暑さで登れるんだろうかと不安になってきます。
「ゆっくり行きまひょ」と独り言をつぶやいて登山開始。
連日の猛暑を受けて気象庁が「災害と認識」と異例の会見をした今年の夏。
大袈裟な表現ではなく熱中症で毎日バタバタと人が死に、埼玉県熊谷市では国内最高気温41.1℃を記録した7月下旬に、いくらオオキツネノカミソリのシーズンとは言えわざわざ山登りするか?
自分もこの暑さの中で登れるか心配だったので、狙ったのは朝一か夕方。
結局朝一を選んで正解でした。
水無ルートと合流すると、森の奥の方までオオキツネノカミソリの群生が広がってます。微妙な距離を置いて咲く様子はていねいに植えられたかの様です。
なぜここにだけ咲くんだろ?
同じ山塊でも隣の背振山や雷山とは植生が全く異なる。つくづく自然が残る残らないは紙一重だなと思います。
初めて見た満開のオオキツネノカミソリの光景を思い出し、「来て良かった、ほんとに来れて良かった」と長い余韻を楽しむ様に急坂を登っていきます。
なかなかしんどい登りですが「これこそ九州の低山!」とプラスに考える。
樹林の隙間から太陽の光が燦燦と降り注ぎ、夏の太陽が上っていく速さに驚きます。
ふむぅ、誤魔化しようのない本物の暑さ。
鬱蒼とした樹林帯、セミがせからしい。
夏らしい夏。今年も楽しめました。
ではでは