槍ヶ岳 残雪期登山(上高地) 天を衝く穂先と雪に埋まる槍沢は登山者憧れの峰

槍ヶ岳 残雪期登山(上高地) 天を衝く穂先と雪に埋まる槍沢は登山者憧れの峰

 

GWの1週間後の5月12日〜13日、残雪たっぷりの槍ヶ岳に1泊2日で登ってきました。毎度のボンビー登山なので槍ヶ岳山荘素泊まりです。

「雪の槍ヶ岳に登りたい!!」

ある程度登山を続けてればそう願うものではないでしょうか。しかし厳冬期はさすがに自分には無理。きっと楽しめないし、たぶん死んじゃう。

と言うわけで残雪期。北アルプスは3月から天候が安定し始め、ゴールデンウイークになると槍ヶ岳山荘もオープンして格段に登りやすくなります

ゴールデンウイークは大混雑する槍ヶ岳も一週間ずらせばこんなにも空いてるかってぐらい快適だし、槍ヶ岳山荘までなら難所はないので雪山入門者レベルです

とは言っても、天気が悪化するとまだ吹雪く事もあるし、小屋に辿り着く前に遭難凍死してしまう残念な事故が起きてしまうのもこの時期の難しい側面ではあります。油断はできません。

槍ヶ岳山荘は3名以下なら予約不要なので、急な天候の悪化や体調不良の時は無理せず、槍沢ロッジに泊まる予備プランを考えといた方が良いです。いずれにしても天気を味方につけることが成功の絶対条件です。

 

笠ヶ岳に沈む夕日がとても綺麗でした~

槍ヶ岳(残雪期)のポイント

①穂先の鎖が雪に埋まってる場合は難易度がぐっと上がる

②ババ平から山頂まではひたすら雪渓

③朝夕の気温は-2℃〜5℃。天気が良ければ日中は10℃ぐらいまで上がり快適

ババ平から槍ヶ岳山荘まで、ひたすら続く雪渓こそこの時期の槍ヶ岳登山の醍醐味と言って良いでしょう。

雪が多い年は、穂先の鎖はまだ雪に埋まっててアイゼンとピッケルが必要です。下りで立ち往生する人もでるので、無理は禁物です。

朝夕になると気温はぐっと下がりますが、日中は風もなくぽかぽか陽気であれば半袖でもOKってぐらいです。しかし標高3,000mの紫外線と雪渓の照り返しで大やけどすること間違いなしなので、長そでは必須ですね。

ちなみにこの日、槍ヶ岳山荘のテン場は2張でした。グズグズの雪の上を歩いてテン泊装備を担ぎ上げる人は相当タフだと思います。

自分は食料を多めに持って行き槍ヶ岳山荘の素泊まりにしました。温かいご飯には惹かれますが、食事の時間によって行動時間が制限されるのが嫌だったし、やっぱり値段が格段に上がるので。。

上高地〜槍ヶ岳山荘までは途中に明神、徳沢、横尾、槍沢と小屋がたくさんあるので、自分の腹時計と相談しながらその時に立ち寄った小屋でカレーでも食べるスタイルの方がいいかなと思っての素泊まりするのも良いと思いますよっ!

 

槍ヶ岳は日本百名山、新日本百名山、花の百名山。標高3,180mの山で国内第5位の高峰です。

さあ、憧れだった残雪期の槍ヶ岳へ!

いざっ

 

アクセス

沢渡駐車場
足湯駐車場からバス停までは徒歩約5分

・住所:〒390-1520 長野県松本市安曇沢渡4166

 

ルートとコースタイム

■2019年5月11~12日

上高地⇒(60分)⇒明神館⇒(60分)⇒徳沢⇒(80分)⇒横尾⇒(90分)⇒槍沢ロッジ⇒(90分)⇒大曲⇒(160分)⇒殺生ヒュッテ⇒(55分)⇒槍ヶ岳山荘⇒(10分)⇒山頂⇒(10分)⇒槍ヶ岳山荘⇒(40分)⇒殺生ヒュッテ⇒(130分)⇒大曲⇒(60分)⇒槍沢ロッジ⇒(90分)⇒横尾⇒(80分)⇒徳沢⇒(60分)⇒明神館⇒(60分)⇒上高地

標準コースタイム:18時間55分

■活動距離40.5キロ
■単純標高差1,685m
■累積標高上り3,560m

 

槍ヶ岳登山 本編

沢渡から上高地へ

深夜に沢渡駐車場(さわんど)の足湯がある駐車場に着きました。ここに来るのは2回目だけど足湯に浸かったことは一度もありません。

この足湯の裏にトイレもあるので車中泊するにはベストな場所だと思います。

ちなみに沢渡駐車場は1日600円っていう計算方法だから、深夜12時前に着きそうな場合は手前にある風穴の里という道の駅で車中泊するのが良いです。

 

まだ花見ができるとは。。

5月中旬だってのに駐車場の桜がちょうど見頃を迎えてました。

 

足湯の駐車場からバスターミナルまでは徒歩5分ほどです。

時間は調べなかったけど、5:20発のバスにタイミング良く乗ることができました。

オフシーズンだしゴールデンウイークでもないし、車内はガラガラです。一般観光客が乗るバスなだけに南アルプス登山バスと比べたら天国の様な乗り心地です。できることならこのまま横尾まで運転して欲しい。。

 

上高地に着きました。

ゴールデンウイークはここに登山客が溢れかえってたそうです。

ゴールデンウイークに上高地に来てはいけませんね。

上高地から槍沢ロッジへ

もう見飽きたよ!という声が聞こえてきそうですが、河童橋の写真はブロガーにとって外すことのできない鉄板のポイントです、はい。

 

さて、では早速ですが、眠気を覚ましながらまずは明神館へ向かいまひょ。

河童橋~明神館、明神館~徳沢はそれぞれ1時間、徳沢~横尾は1時間20分、横尾~槍沢ロッジは1時間50分のコースタイムでっせ。

 

危うく河童橋から残雪の穂高を撮り忘れるところでした。これも鉄板の一枚なんでね、はい。

登山しに来といてなんですが、よくあんな雪山に登るよな、と思ってしまいますね。見るからに険しそうなところです。

 

明神館に着きました。

上高地から横尾までは除雪されてます。ここから3キロごとに小屋がでてきます。

 

とりあえず明神館のジュースの相場でもチェックしときましょう。コーラはすでに250円まで跳ね上がってます。ここで買っておくべきか、山小屋まで我慢すべきか悩むところです。

日頃、もったいなくてスーパー以外ではジュースなんて買わない私ですが、本音は飲みたい時に好きな物を買える、いつかそんな大きな人間になりたい。

大きいのか?それ。

 

「もぐらだ!!」

ちょろちょろ何か探しながら歩いてるモグラを発見。可愛い!

 

がばっと捕獲。

写真撮ったらすぐ逃してあげるからね。

後で調べてみるとヒミズという種類のもぐらで、地表での活動も割と多いそうです。子供の頃、もぐらは日光に当たると死んでしまうと聞いた事がありましたがデマだった様です。

 

徳沢に着いてセブンで買った長野限定のおにぎりを1ついただきます。

片道20キロという長丁場。まだまだ先は長いし、ただでさえシャリバテし易い体質なので休憩の度に何か食べるようにしときます。

 

そして横尾

横尾へは徳沢からコースタイム1時間10分です。上高地から平坦な道をてくてく歩くだけなので、ここまではブーツをザックにしまいスニーカーで歩いてやって来ました。

ここからは雪がでてくるので防水のブーツに履き替えます。

 

横尾といえばこれまた良く見かける涸沢方面へ向かう橋。

横尾は涸沢と槍ヶ岳方面の分岐です。自分はまだこの橋を渡ったことがありません。

上高地にやって来るだけでお金がかかるし、この橋を渡れるのは当分先になりそうだな・・。

まあ気長に機会を待ちます。

いつか好きな時に上高地に来れる大きな男になりたい。染み付いたボンビー体質なんでたぶん一生無理です。

ちなみにここから槍ヶ岳方面は一気に人が減ります。槍ヶ岳は遠いからやはり涸沢方面に歩く人の方が多いみたいです。

 

フキノトウがあちらこちらに咲いてます。

苦い野菜が意外と好きな自分は好きかもしれませんが、一度も食べたことがありません。

 

横尾を過ぎると徐々に雪が混じります。日向はだいぶ雪解けが進んでるけどやはり横尾でブーツに履き替えて正解。

 

すごい、雪の下から梓川がゴーゴー流れてる。

雪解けの切れ間から見える梓川はすごく綺麗で、一ノ俣、二ノ俣の橋を渡るポイントで景色を楽しんで下さい。

 

槍沢ロッジ手前までやって来ると完全に雪道。

横尾から槍沢ロッジがなかなか長く感じたので少し疲れてきました。

横尾~槍沢ロッジのコースタイムは1時間50分。

 

10:30

槍沢ロッジに着きました。ここまでなかなか良いペースです。やはり横尾までスニーカーで歩けたのが大きい。

隣のテーブルに座った5人に運ばれて来たカレーで大歓声が上がるのを横目でしっかりチェックしつつ、「下山はここでカレーを食う!」と槍ヶ岳の神様に密かに誓いました。

見た目が特製カレーって感じでそそられました。

 

スポーツドリンクのパウダーを持ってきてるからあたしゃここで水だけゲット。

 

ひたすら続く雪渓歩き

槍沢ロッジからお次は槍沢キャンプ場、通称ババ平まで約30分の道のり。デブリで踏み跡を見失い、ほんの少しだけタイムロス。

実はここでかなり遠くに槍ヶ岳が見えます。この写真の真正面ど真ん中。

すげー遠い!!

 

そしてババ平に到着。とりあえずここでもザックを置いてちょいと休憩。テントは担いでないけど星空撮影を楽しもうとたくさんの防寒具と多めの食料によって荷物はウルトラヘビーです。

流行りのウルトラライト、やってみたい。。

ちなみにここで石垣が組まれてるのが旧槍沢小屋跡です。

 

ババ平のトイレはしっかり掘り返されてました。夏は男女別々らしいけど、この時期はまだ男女共用です。

 

槍沢ロッジから上は森林限界なのでご覧の通りの大絶景が広がります。

雪の槍ヶ岳。北アルプスに吹き荒れた厳冬期の爪痕が残る景色です。これが見たかったんだよね。

 

広大な雪原のど真ん中を歩ける喜びー。

上高地からは初めて歩くけど、さすがに踏み跡がたくさんあって道迷いの心配はありません。

 

振り返る。少しずつ登ってるのが分かります。それにしてもすごい景色です。

うーん、誰もいません。さっきカレー食べてた5人組がやってるくるまではまだ少し時間がかかりそうです。

 

大曲を過ぎてこの登りを越えれば天狗原です。

だいぶ傾斜が増してきました。

 

延々と続く雪渓。景色が変わらない様に見えますが、ゆっくりゆっくり登ってます。

とにかく行程が長いことだけ気を付ければ、槍ヶ岳山荘までなら難易度は低く雪山初心者向けです。

気を付けるべきは穂先だけ。

 

前からバックカントリーのスノーボーダーが滑り降りて来る。

雪はだいぶゆるんできたからエッヂが効かなくて滑りにくいだろうなぁ。

 

あちらこちらで雪崩れた跡があります。

 

長い長い急登。振り返れば槍沢ロッジでカレーでフル充電した若いパーティが追い上げてくる。

それにしても登山客は少ないです。槍って登山する者にとって憧れじゃないのけ?

 

左に見えるのは中岳か南岳か?

雪がテカテカに輝いてます。

 

そして未だ一向に見えてこない槍ヶ岳。

噂には聞いてたけど本当に長い。

 

景色があまりにも変わらないからつまんなくなってくるのもここら辺から。

変わってきた事と言えば、標高を上げるに連れ茶色い雪が白くになってきたぐらいか。

今更気付いたけど、樹林帯の方が見どころ多いわ。この時期の楽しみを台無しにする発言でごめんなさい。

 

「あーー!!!」

「見えた!!穂先が見えた!」

まだあんな小さいけど、とりあえずターゲットを発見できたのは、撃沈しかけたモチベーションを一気にアゲる効力があります。

 

上空にはセスナが何度も旋回してます。何してんでしょうね。とにかくなんもかんも槍ヶ岳らしい。

 

左は相変わらず素晴らしいこの時期のアルプスの眺め。

槍の穂先が見えただけで、それまでへっぴり腰且つ死んだ魚の目でゼーゼー息を乱してた自分が、気持ち的にこんなにも楽になるのかって感じ。

メタボ一直線のダボダボの体が5キロは軽くなりました。

 

いやぁしかしほんと天気に恵まれたぜ!ガッハッハー!

見事な晴天の下、常念山脈も見えてきて気分は最高です。

槍の穂先は仙豆効果抜群。「オラ見違えったぞクリリン!」

 

さあ頑張れ、槍の穂先はもう少しだ。

と言いたいけど、噓みたいに近づいてこない。

「これが話に聞いてた見えてからが長いって現象だな!ハッハッハー!」

 

「いやー見えてからがほんと長いぜー!」

「もうだいぶ歩いてるのにまだあんな小さい。さすが槍ヶ岳だな!」

 

「って、おい!!」

 

本気で騙された!!

こんなただの岩と穂先を間違えて頑張ってたなんて、浮かれ過ぎてもう立ち直れんです。

 

でも折角だし、この岩も登頂しときますかね。

 

よし、岩の上から雄たけび上げてやる!

ショックによって手足の震えが止まらない姿があたかも生まれたての子牛の様です。

ぷるぷるぷるぷる・・

 

 

ばっ!

わーい立った!!

クララが立ったー!!

 

あははははー、クララが立ったー!

おじいさーん、

クララが立ったー!

 

あ!!!!!

 

「本物だ!!」

 

と・・

 

と・・

 

遠っ!!

 

 

オーマイガだぜ・・。

昇天。もう駄目。。

 

しかし、もしここにハイジがいたら鬼の追い打ちを仕掛けること間違いないでしょう。

「クララの甘えん坊!なによ意気地なしっ!恐がり!」

おじいさん、助けて。

 

と言う訳でクララ頑張る。疲れてきたけど、ここから更に急登になっていくのでアイゼンを装着します。重たくなった足に更に足かせを追加する奴隷ハイクの始まり。

アイゼン付けると気が滅入るんだわ。。

 

でも歩かなきゃ着かないよ!

そうです、まだまだ大変なのはここからなんです。

 

雪解けと共に浮いた岩がゴロゴロ落ちてくるからこの時期の雪渓歩きは気を付けねば。

こんな落石が雪渓の上には至るところに落ちてます。

 

分かっちゃいるけど長い。。

本日の65リットルザックは以前から体と合わないと感じてるヤツだから長く背負ってると肩が痛くなってきてしんどい。

これよりも大きくて重たい75+10リットルのドイターのザックの方が長く背負ってても疲れないから、自分に合ってるかどうかってほんと大事だと痛感します。

 

槍ヶ岳で角を作ってみました。

常念岳でも試みましたが、槍ほど鋭角ではないためうまくいきませんでした。

 

やっと、まだ半分以上は雪に埋まった殺生ヒュッテまでやってきました。

標高は2,860m、槍ヶ岳の8合目に位置します

山頂までの標高差は300m。近く思えるけど高尾山1つ分ですね(笑)

 

そして槍ヶ岳山荘も見え、最後の激登りゾーンに突入。

標高上げてきて空気吸いづらくなってきたし息は上がりまくり。

 

最後の最後で急坂を用意するなんておじいさんも人が悪いじゃないか。。

ゼーゼーマンです。。

 

急登を振り返る。思わずいやーんとへっぴり腰になってしまう角度です。

うっかり下まで滑り落ちてしまったらもうここまで這い上がってくる体力は残されてはいないでしょう。

 

ああ、やっとだ。感無量。雪がぐずぐずで歩きにくかったけどよく20キロも歩いたよ。

なんで多くの人が涸沢方面に行くのかよく分かった初日となりました。

 

槍ヶ岳山荘のテラスからは穂先がこんな近くに見える。

槍ヶ岳はやっぱり特別です。

奥穂にしなくてほんと良かった。

槍ヶ岳山荘に到着

もうだめ、疲れてすぐにチェックインの手続きすらできない。

少し休んでから手続きしました。どうせガラガラでしょうから。

 

通された部屋はまさかの「奥穂」。

槍ヶ岳に登っておきながら奥穂まで登頂できる一粒で二度美味しい旅となるなんて。

ちなみに掃除の効率からか、人が少ないから余裕をもった部屋割ではなく、一部屋にどんどん詰められていきます。それでも一人一つの寝床を使えるから良いんですけどね。

この部屋は結局8人で使用しました。

 

テラスに戻って槍ヶ岳を眺めながらコーヒーを沸かし、抹茶ケーキを食す至福の時間。燃焼した脂肪を取り戻します。

食べならがら、槍ヶ岳は鎖が出てない所があるからアイゼンとピッケルが必要と周りにいた登山客から状況を確認。

山頂からの大絶景と夕焼け小焼け

とりあえず偵察に行ってみますか。明日の朝にも登るのが本番です。これはあくまで偵察ね。

 

上りは特段難しいところはありませんが、アイゼン付けてるので引っ掛けないように注意が必要です。

アイゼンを滑らせて火花が散った時の焦げ臭さが新鮮です。

 

ここね、鎖が雪に埋まってるってポイントは。下りだと大変そうです。

この方たちは槍ヶ岳山荘の企画で登ってるので、ザイルを出してより慎重に下ってました。

 

ゼーゼー、どうじゃい!

1日で登り切ってやったぜ。ふぅー

 

山頂に立ってやっと見えるのが穂高方面の絶景。

小屋からだと手前の大喰岳の裏に隠れて穂高は見えないんです。

 

こちらは加藤文太郎や松濤明といった有名な登山家が命を落とした北鎌尾根。

ここを歩くことが今後あるかどうかは分かりませんが、、高所恐怖症なんで多分ないかな。

 

西鎌尾根と裏銀座、雲ノ平方面です。新穂高温泉から双六岳までしか歩いた事がない自分にとって、雲ノ平は憧れの存在です。

 

こちらが東鎌尾根と常念山脈。西鎌尾根に比べると雪が少ないのが一目瞭然。

 

偵察を終えて下ってると掴んでた岩がボロっと取れて超怖かったです。

 

無事に下山すると、ちょうど夕焼けのショータイムの始まりだぜー!!

今日の夕日は期待できそうっ!

 

夕日が雪渓を染めます。もう歩いてる登山客はいません。

雪渓を歩いてるのはイワヒバリです。

 

この時期は2千メートル付近で濁った空気と上空の澄んだ空気とで大気の層ができるのをよく見ます。

今、夕日が沈んでいくのは地平線ではなく、そんな大気の層です。

普段生活を送る地上と3,000mオーバーの環境では吸っている空気が全然違うということをまざまざと見せつけられた。

今はそんな特別な時間です。

長かった一日が終わります。

ここの空気はきれいだけど、おっさん達のいびき合唱が炸裂する部屋へ戻ります。

ちなみに1番うるさかったのは自分みたいですが。

 

夕日?

いえ、朝日です。おはよーございます!

4時40分。常念山脈から上る朝日を待ち構え、30枚近くこの一瞬のために撮影し、使われるのはたったの1枚〜2枚。それでも、1枚でも納得いく写真が撮れたらラッキーです。

いろいろね、ホワイトバランスを変えてみたり試し撮りしたいことがあったんです。

 

さあ、1日の始まり。

まずは穂先を目指すよ!!

ちなみに、星空撮影のためにたくさん防寒具担ぎ上げてきたのに、朝まで爆睡してしまいました。

OK、また来ます。

 

登る前にまずは飯!

朝ラーです。

実は寝起きで空腹のあまりフラついて通路でしばらく倒れてしまいました。しっかり食べれば治ります。

 

元気になって穂先のテッペンに立つよ!

朝は氷点下。昨日の雪解け水が岩を凍らせてます。

 

山頂は貸切状態。

「残尿感があってつい前かがみになってしまった」というテーマで1枚。

槍ヶ岳のてっぺんでやる事ではなかったですね。

 

槍ヶ岳の祠を覗いてみると可愛らしい神様がちょこんとおりました。

 

眼下に槍ヶ岳山荘、そして向こうには笠ヶ岳。笠ヶ岳を見下ろせるなんて、さすが槍ヶ岳!

 

そして雲ノ平方面。

圧倒的な降雪量で黒部五郎岳は真っ白です。

真ん中のピークは鷲羽岳かな?

歩いたことないからよく分からないけど、、なんにしてもあそこには早く行かないとっ!

 

さて下山します。ご覧の通り鎖は雪の下に隠れてるのでピッケルがないと下れません。

こんなところが30mほど続きます。滑落すると大怪我するポイントなので慎重に下ります。

 

滑落したらピッケルはこうやって刺すんだよね、とか言ってる人はいざ滑落した時、何もできないと思います。

一度シャーっと滑ってしまったことがあるのですが、ほんと滑ってから下に到達するまで一瞬です。その時に、倒れたと同時にピッケルが壁面に刺さる体制でいないと意味がないと学びました。

一度、かなりの急斜面で滑落してみることをオススメします。緩斜面で練習しても全く役に立たないと思うので。

 

カレーを求めゲッザーン

「槍沢ロッジのカレーを食べるよ!!!」

と宣誓して下山。

なんと言っても片道20キロ。時間に余裕持って行動します。

 

さよなら槍ヶ岳山荘。

雲ひとつない晴天に恵まれました。

 

尻セードでオケツがびちゃびちゃになりしたが、上高地に着くまでに余裕で乾いてしまうぐらいの陽気です。

 

見事な三角形。これが見たかったんです。

新穂高温泉からの方がラクに登れますが、あっちからだとこんな綺麗な穂先は見られません。

途中まで小槍なのか独標なのか本物の槍なのか、その違いが分からずどれが槍ヶ岳なの?って感じで登りました。

 

下山はあっという間です。あまりに雪渓の下りが気持ちよくて自然とペースが上がり、もうババ平まで戻ってきてしまいました。

こんなに早かったら槍沢ロッジのレストランオープンしてないよ。。確か10時半からだったと思ったな。。

 

案の定、槍沢ロッジに早く着きすぎてしまい、今回は諦めました。次回のお楽しみに回します。

槍沢をちょっと過ぎたあたりでスモール玄米ブランでちょいと休憩。

 

結局、横尾でカレー食べました。

横尾のカレーは槍沢ロッジの様な特製感はないですが、往復30キロ近く歩いてきた自分にとってミシュラン三つ星を上回る美味さで脳みそがとろけました。

 

ちなみに隣のテーブルではトイレから手を洗わずに出てきたおっさんがそのままの手でうどんをすすってました。

俺はずっと見てたよ。

 

徳沢で定番のソフトクリームをゲット。

旅の終わりを感じます。河童橋まではここからまだ約6キロもあるっていうのに。

 

上高地名物の猿がそこら中にいます。

みんな人に慣れてる様子でのんびり過ごしてます。

平和だな。

 

と思った矢先、歯ぐきをむき出しにして

「ギャー!!」

と叫びながら走り寄って来たから超ビビった。

自分にではなく自分の後ろにいた猿にキレてました。

 

帰路は猿だらけです。赤ちゃんを抱えた猿もいてめちゃ可愛いです。

外国人観光客も猿の歓迎ぶりに嬉しそうにしてました。

 

どうせ上高地に来たんならと言って、明神橋を渡って岳沢登山口の前を通って河童橋に戻りましたが、疲れてるのに余計に長く歩いただけになってしまいほんと後悔しました。

みんな、やめようね。

 

見納めの穂高連峰に別れを告げてアルピコバスで帰ります。

ちょうど混む時間帯だったので臨時便も出てました。登山シーズン前だと言うのに、やっぱりこのエリアはすごいです。

 

振り返って

雪の槍ヶ岳を登る。しかもど快晴。登山客は少なめ。こんな贅沢なことってありますかね。

昔、槍ヶ岳に登った人の話を聞いて「いつか自分も!」と羨ましく思ったのが懐かしい。その時の事を思い出して、今回の旅は久しぶりに初心者の様なわくわくした気持ちで登れました。

 

「行ける内に行っとく!」と即席感はありましたが、出来過ぎた旅となりました。

どこの山に行こうか悩む時、天気や移動距離、花の見頃、時期によっては危険なルートだったり、いろんな条件を考慮に入れますが、行ける内に行っとくという芯は持っておきたいものです。

 

なるべく柔軟な見方を持って山に登らないと、経験を重ねれば重ねるほど、得られる物は少なくなっていきます。「ああ、毎度の樹林帯ね」とダラダラ上って、そして急いで下りてくるだけの登山になってしまいがちで、それでは旅ではなくただの散歩と変わりないです。

山に登り始めた頃は杉の樹林帯でさえ感動できたし、ガスガスの山頂でさえ達成感を得ることができました。

それがいつしか樹林帯を「我慢の時間」とか言ったりして、すっかり頭が固くなってきた事にたまに気付かされます。

 

往復40キロ。通常なら2泊3日の行程ですが、1泊2日でも問題なく歩けるだろうと踏んで企画しました。

途中、登っても登っても変わらない雪景色にさすがに飽きてきましたが、やっと姿を現した槍の遠さに衝撃を受ける一方で、昔、羨ましいと思った頃の新鮮さを思い出す事ができました。

ではでは


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