槍ヶ岳~穂高縦走、2日目の記録です。
(1日目の記事はこちら ⇒ 槍ヶ岳~南岳(飛騨沢コース) )
この日は南岳小屋を出発し、大キレット~北穂高岳~涸沢岳に登り、白出沢ルートで一気に新穂高温泉へと下山します。
北穂高岳:標高3,106m、国内9位。穂高連峰最北端。
涸沢岳:標高3,110m、国内8位。
なんと言っても大キレットから北穂高岳への登頂が最大の目的となります。
北穂高岳は、涸沢カールからの南稜ルート以外は国内屈指の険路に阻まれた鋭峰です。
南は涸沢岳、北は大キレット、西はクライミング聖地の滝谷の岩壁、東は涸沢谷に阻まれてて、人を寄せ付けない荒々しい姿が魅力的な山です。
そして涸沢岳。涸沢カールから見上げるときれいな涸沢槍が印象的な峰ですが、北穂~涸沢岳の区間も国内屈指の難所として有名です。個人的には大キレットよりスリリングと感じました。
反対側の穂高岳山荘からなら簡単に登れる山なので、岩場が苦手な方はそちらからどうぞ!
いずれにしてもこの日に歩く2区間は、大人気のルートでありながら、長野県の山のグレーディングでは最難関に指定されているルートで死亡事故も多く、油断は禁物です。
そして、1日目にシャリバテ起こしてすっかり懲りた自分は、とにかく食べ続けた1日でもありました。
食べるってほんと大事!(笑)。
真面目な話、高山で活動すると消費カロリーが半端ないから無理してでも食べないともちません。
2日間歩き続けた道のり。
難しいルートとは言え登山客が多いので、どこをどう登ればよいか親切にもペイントだらけだったし、鎖や梯子だって充実してるから、これなら慌てなければ難しくはないなぁ、というのが率直な感想です。
ただ、長いルートなので体力は必要です。
最後は全然時間がなくて、穂高岳山荘まで来といて奥穂高岳に登る時間がなく下山したのが、すっごくもったいなかったけど、、まあ奥穂高岳はまた今度登りに来ます!
実は槍ヶ岳もそうでしたが、この穂高エリアにやって来たのも今回が初めてです。
何度もネットや本で見てた北穂高岳の山頂や、穂高岳山荘の賑わいを実際に見ることができて、それだけで大満足の旅!
2日間、すばらしい眺めを満喫~
いざっ
■アクセス方法
・新穂高温泉の駐車場、鍋平駐車場の地図は、こちら。
・新穂高無料駐車場はこの地図のP5。鍋平の無料駐車場はP8。
・カーナビは深山荘 TEL 0578-89-2031でセット。新穂高無料駐車場は深山荘の目の前です。
■ルートとスケジュール
■2017年9月30日(1日目)
5:05 鍋平駐車場出発 ⇒ 6:00 新穂高登山センター ⇒ 9:30 槍平小屋 ⇒ 12:50 飛騨乗越 ⇒ 13:05 槍ヶ岳山荘 ⇒ 13:20~14:00 槍ヶ岳山頂 ⇒ 14:25 飛騨乗越 ⇒ 14:50 大喰岳山頂 ⇒ 15:40 中岳山頂 ⇒ 17:10 南岳山頂 ⇒ 17:15 南岳山荘
活動時間:12時間10分
■2017年10月1日(2日目)
7:00 南岳小屋出発 ⇒ 7:05 獅子鼻岩~大キレット開始~ ⇒ 8:40 長谷川ピーク ⇒ 10:25 北穂高小屋(昼食) ⇒ 10:55 北穂高山頂 ⇒ 12:15 最低コル ⇒ 13:30 涸沢岳山頂 ⇒ 13:50 穂高岳山荘(2度目の昼食) ⇒ 15:45 荷継沢 ⇒ 17:10 白出小屋 ⇒ 17:40 穂高平避難小屋 ⇒ 18:25 新穂高登山センター
活動時間:11時間25分
2日間合計:23時間35分
9/30 1日目 鍋平駐車場~新穂高温泉~槍ヶ岳~南岳小屋
※上記ログは飛騨乗越で途切れてます。
1日目
活動距離:17.0km
累積標高上り/下り:2,929m/1,342m
消費カロリー:5,800kcal(目安 身長180cm/73kg 男性)
10/1 2日目 南岳小屋~北穂高岳~涸沢岳~新穂高温泉~鍋平駐車場
2日目
活動距離:17.2km
累積標高上り/下り:1,206m / 2,987m
消費カロリー:5,679kcal(目安 身長180cm/73kg 男性)
■2日間の合計
・消費カロリー:11,479kcal
・活動距離:34.2km
・累積上り/下り:4,135m/4,329m
登山開始
2日目は南岳小屋の爽やかな朝からスタートです。
よく冷えた朝、空気が澄んでます。
みんなこれから上る朝陽を楽しみに待ってます。昨夜は-10℃ぐらいまで下がったというから寒さ半端ないです。
これみたら寒さ忘れました(笑)。左から八ヶ岳、富士山、南アルプスの大パノラマ。
朝陽が上る直前のマジックアワー。色彩の美しさに惚れ惚れとします。
これならきっと完璧な朝陽が見られるよ!
どんどん明るくなってきました。
槍ヶ岳の山頂も今頃は大賑わいなんだろうな。
あの穂先で人がすし詰めになってるところを思い浮かべるとげんなりしますね。。
考えるのはよしときましょう。
朝陽が無重力に上がっていきます。
一気に差し込む光と、逆に暗さを増す影。辺りの空気が一変します。
夢中でシャッターを切り続けました。
モルゲンロート。わずか10分ほどの感動のシーンに、足を止めて眺める登山客たち。とても絵になります。
地球ってほんと美しい!とそんな安っぽい感想しか出てこない自分ではございますが、
それは置いといて、長い1日が始まりましたよっと!
急いでテントに戻ってご飯食べて身支度して出発です!
朝食をしっかりとって、テントを撤収。時間かかったけど出発です。
ほんと言うと、昨日バテてしまったし、南岳から槍平に向けて下山するかでしばらく悩んでました。
でもあれだけの景色を見せられたら行くしかないっしょ。
なんとも爽快な朝。この青く折り重なる山脈の美しさ。ジャパンブルーって感じ。
獅子鼻岩から大キレットがスタートします。
危ないのでトレッキングポールはしまいましょう。
このペイントを見るとなるほど、いよいよ始まるなって気にさせられますね。
まずは大下り。
岩場を一気に標高差300mほど下っていきます。
ルートを間違えると浮き石だらけになるから慎重に進まないと事故ります。
逆に、ペイントの印を頼りに行けばそれほど怖くはないということ。下ばかりではなく、前方のペイントにも注意を怠らずに進みます。
ところどころ岩じゃないところはザレてるので滑りやすいです。
定番の園芸用の手袋です。
3枚入りで500円。何度も同じことを書いてますが、このゴムの滑り止めは抜群です。手の甲はポリエステルで速乾性で額の汗を拭うのに最適。耐久性もあるし、何より安いから使い回せて衛生的。
弱点は薄手だから手の保護は期待できない。岩場で強打した時は痛みに耐えるしかないっす。
足はトレランシューズ。
人それぞれですが、自分はブーツよりこっちの方が滑った時の感覚が足の裏でダイレクトに感じられて、素早い対応がとれるから自分には向いてます。
もちろんブーツも持ってますが、アイゼン装着しそうな時にしか履きません。
延々と続く岩稜をまだまだ下っていきます。高低差300mだから不帰ノ嶮と同じぐらいですね。
今年は八峰キレットにも行きたかったんだけど、自分が風邪引いてしまい断念。もし行けてたら3大キレット制覇できただけに、惜しい。
さあ、だいぶ下りてきました。こうやって振り返ってみると、よくこんなとこ下りてきたなという感想しかでてきませんわぃ。
でもまだ下る。
知り合いから「大キレットは難しくないけど、長いよ」と聞いてたけど、このことか!と実感。まだ始まったばかりです。
やっとこさ最低のコルに着きました。
目の前のピークの上に人が立ってるのが見える。あそこが長谷川ピークです。
以前、法政大学の学生、長谷川さんがここで滑落して奇跡的に救助されたそうです。それ以降、北穂高小屋のスタッフが長谷川ピークと呼んでたのがいつの間にか広まったそうです。
両側切れ落ちてますから要注意です。特に飛騨側に落ちたらまず命はないでしょうね。
さあ着きましたぞ。その有名な長谷川ピークです。
長谷川ピークからの下りがこれまた怖い。ここでも印を辿って慎重に慎重に。
突如すのこが登場します。ここが一番歩きやすい。
岩場にひっそりとイワツメクサが咲いてました。漢字だと岩爪草と書きますが、岩場に自生する野草なんでしょうかね?
ここから北穂高岳に向けて登りが始まる。エッジがきいた登りで、飛騨泣きと呼ばれるポイントです。右の飛騨側が滝谷と呼ばれる壮絶な断崖絶壁なので左へ巻いていくルートになってます。
ここら辺も危ないけど、もし妙義山を登ったことがある人なら、大キレットってこんなもんかぁ~、と感じると思う。
いよいよ長かった大キレットもラストスパート。北穂高岳まで残り200mです。
ちなみに北穂高岳は北峰と南峰があって、一般的な山頂は北峰で、ここでいう北ホも北峰のことを言ってます。
大きな大きな山ですが、歩けるルートはペイントで記された狭い一本道だけ。なんか不思議ですね。
もちろんルートを外れて歩くこともできるけど、途端に登りにくくなるから危険が伴います。人と行き交う時は立ち止まって慎重に待ちます。
最後の登り。遠目からも垂直な壁に登っていく感じに見えた通り、最後にこれは苦しい。
よくこんなとこに小屋を建てたよ。。近づいてきました。
着きました!
北穂小屋は槍ヶ岳の最高のビューポイント。
これまで歩いてきた道を振り返ると感無量です。
四方から槍ヶ岳へ通じるルートを眺めてると、改めて槍ヶ岳は偉大だなぁと思います。
ここでも腹ごしらえ。ラーメン食べます。下山したら太ってるパターン。
最高の景色を楽しみながらのご飯でしたが、隣にやって来た方がタバコを吸いだしたのでそそくさと撤収。
小屋から山頂まではたった1分。やったよ!っと。
北穂を下るとすぐに涸沢方面と奥穂方面への分岐にでます。ここは奥穂方面へ。
少し登ると涸沢岳と奥穂高岳、そしてジャンダルムがえも言われぬ姿を現す。原始の地球にいるかような剥き出しの世界。
ここから本日の第2区間の始まりです。
大きな岩峰をかすめる様に左側にルートを取っていきます。
そして開始早々、こんな急なところを下ってきました。噂通り容赦ないルートです。
右下に見える岩峰を登ってるクライマーがいたんだけど、先に登った人が下の人に向かって、「登ってきてー!!」と何度も何度も大声で叫んでるから下の人が落ちたのかと思って心配しました。
しばらくすると普通に登ってくる姿が見えてほっとしたけど、端から見てる方はハラハラドキドキです。自分がこの人たちの親なら叱ってしまうわ。
だいぶ疲れてきました。表面がツルツルした岩稜を登っては下るを繰り返します。
昨日の絶不調が嘘みたいに体は動くんだけど、さすがに足が重くなってきました。
穂高山荘まで、ちょうど中間地点となる最低コルに到達。
下りの方が危ないからね、ここからの登りは大変だけど少しは安全に行ける。
眼下に涸沢カール。涸沢ヒュッテが見えます。紅葉真っ盛りのはずなんだけど、やはりこんな高いところからだと全然紅葉なんて見えんわ。
ふぅ。見上げて深呼吸を1つ。登りが続きます。
右に大きく回って行くと梯子と鎖の連続。
ここから日本一長いと言われる鎖場に突入します。
このルートで氷が付いたらとてもじゃないけど登れないだろうな。
涸沢槍から涸沢岳へ、斜めに移動していきます。左下は切れ落ちてるから滑落したら大変です。
高いところが苦手な自分は、「怖ぇー!」を連発しながら鎖をガッチリ握りながらゆっくり進みました。
息が上がる。ここら辺で行き交う時、下りの人が「どうぞ!」と待ってくれるんだけど、こっちも急ぎたいけど急げない。
前穂高岳。
その奥に見える山々の連なりがすごく綺麗です。周囲が一瞬静かに感じられます。
ふぅ~。まだまだ続く。
岩だらけで若干飽きてきました。。
そしてこっちはジャンダルムから西穂高岳へと続く稜線。なんとも、荒涼としてます。
遠目に見ても危険なのがよく分かります。コースタイムの2倍かかってもいいからぜひ歩いてみたいルートです。
見渡す限り岩だらけですが、山頂がすぐ近くになってきたことを感じさせる景色。
やっと、やっとです。
涸沢岳のピークが見えました。
ここまで簡単に書いてますけど、すげぇー長かったよ!最後の登りです。
今回最後の3,000m峰、6座目踏破っ!
達成感半端ないです!ここまできたら国内の3,000m峰を全部登ってやる。
たまたまこのアングルに人は写ってませんが、穂高山荘からだと簡単に登れるから山頂は熟年山ガールを中心に賑わってました。
振り返る2日間の道程。
すごい、全部見えます。
穂高小屋は山頂からすぐ下にあります。とりあえず下りて休みましょ。
涸沢らしいおしゃれな標識。
なんとなく、来たんだなぁ~って気にさせられます。
山にくると無性に白いご飯が食べたくなる!
さっきラーメン食べたばかりだけど、ここでもしっかり食べときます。何と言っても涸沢岳の山頂から新穂高温泉までざっと標高差2,100mの激下りが待ってますからね!
日没前に下山したいから急いで食べて出発です。
白出沢(しらだしざわ)ルートでの下り、スタートです。
写真じゃ分かりにくいけど、このガレ場の中にもきちんとルートが隠れてるから、ペイントの印をよく確認しながら進みましょう。
下から湧いてくるガスを見てると、この白い世界に取り囲まれるんじゃないかとちょっと怖くなりますが、とても神秘的な景色でもあります。
ちょっと天気が崩れた方が劇的な写真が撮れるので何枚も撮りましたが、腕が未熟なので全然だめでした。
ガスっては晴れるを何度か繰り返します。
急峻な谷になってるため、ガスが駆け上がってきます。
そしてすぐまた晴れる。絶景。
すごく綺麗なんだけど、このルートを登りで利用するとひたすら単調だからかなりしんどいと思う。雪渓を歩ける時期なら良いけど、夏道は自分には無理っす。
標高を下げるとナナカマドの紅葉エリアへ。
日没前には林道に出たい。ぎりぎりのタイミングなんで先を急ぎます。
荷継のポイントを通過。
白出大滝です。
このルート最後の見どころ。
ここからひたすら樹林帯が続きますが、これまでの岩場に比べたらだいぶ歩きやすいです。
17:10 途中は端折って、林道出合に着きました。
前日、槍ヶ岳へ向けて登った飛騨沢ルートの林道と合流。
長かったけどなんとか明るいうちに林道まで下りてこれた。良かった!
ちょっとだけ休ませて!疲れた。よく頑張ったよ、俺。
ここから新穂高温泉まではコースタイム1時間40分。着く頃には真っ暗になってるだろうけど、ここまで来れたなら大丈夫。
18:20 新穂高温泉の登山センターに到着。ハイペースで歩いたけど予想通り真っ暗です。
いよいよ都心で解散してから終電に間に合うか怪しい時間帯になってきたので、ここでザックをデポって遠く離れた鍋平まで走って車を取りに行きました。ボロボロでクタクタでしたが、そんなこと言ってらんない!
達成感を味わうことなく、大慌てで帰りました。
振り返って
5~6年ぐらい前のこと。
主に子供と近所の山ばかり登ってた頃、いつか行ってみたいと思って槍ヶ岳の本を買いました。
当時はほんと里山ぐらいにしか登ってなかったから、槍ヶ岳というか、北アルプス自体がものすごく遠い存在でした。
しばらくして、色々な山を登っていくうちに北アルプスがだんだん身近な存在になっていく感じがして、思い切ってアルピコバスに乗って鹿島槍ヶ岳に登りに行きました。初めてのアルプスは一人旅。吸い込まれるような絶景に感動したのをよく覚えています。
それから白馬岳~唐松岳縦走や、剱岳を大きな空の下、とんとんとんと登っていくうちに、槍・穂はそろそろかな、と考えられる様になりました。
実は槍ヶ岳の本を買うまで穂高岳の存在は知りませんでした。少し北アルプスのことが分かってくると、「穂高って、前にも奥にも西にもある!わけ分からん!」となりました。たぶん多くの人がそうだと思います。
で、「おい、北にもあるよ!」ですよ。
更に、
「群馬にもホタカあるやん!」ですよですよ。
登山経験を重ねていくと、穂高岳と槍ヶ岳が登山者の選ぶ好きな山1位、2位に輝く名山だということを知りました。
そんな山に登れたんだなぁと、しみじみ思うわけです、はい。
モルゲンロートで真っ赤に染まる穂高連峰は、火山の様でした。
大キレット越しに眺める北穂高岳に朝陽が差すと、より影を増して暗く映る滝谷の岩壁がとても印象的。目にも鮮やかな景色にすっかり心を動かされました。
ギザギザに延びる大キレットを眺めていると、ほんとにここ歩くの?と思いつつも、ワクワクしてきます。
以前までだったら尻込みしてたと思いますが、これまでの経験が余裕を生んだんだと思います。
槍ヶ岳と穂高岳。せっせと歩く一方で、憧れだった山に登ってるというふわふわした不思議な感覚が少しありました。ちょうど紅葉の最盛期で多くの登山客で賑わってたこともあって、国内屈指の難所というのには程遠い雰囲気があったからかもしれません。
夜中はすごくすごく寒かったけど、昼間の太陽は山登りをするには暑すぎるぐらいで、西側斜面に出た時に吹く風が心地よかった。
今回のルートはすごく長かったけど、これまで色々な登山を経てやっとここにたどり着いたと思えば、短い2日間でした。
何年か前に買った槍ヶ岳の本は今でも大事にしまってあります。
ではでは