都内の紅葉スポットが見ごろを迎える11月中旬、山ではすっかり冬の空気に変わってます。
今回は高谷池ヒュッテを冬季避難小屋として利用して、1泊2日で火打山と妙高山に登ってきました。
といっても、妙高山は延々と続くラッセルの末、標高差残り200mというところでタイムオーバーとなり撤退!
11月中旬だと言うのに予想を上回る積雪量で、特に谷の吹き溜まりの積雪はひどかった。ほんと、よく頑張ったよ。。
ああ、今思い出してもほんとくやしい!!
で、火打山の方はと言うと、トレースがばっちり残ってたから楽して登らせていただきました~。
火打山から眺める北アルプス、妙高山や焼山の頚城山塊(くびきさんかい)、日本海の景色は素晴らしかった。
雪山の難しさを味わった登山。妙高山の手痛い失敗はそう簡単には登らせてくれないんだなぁと、よい勉強になったし、その教訓は今後生きてくると思う。
失敗があったからこそ、余計に印象深い山行にもなったし、何も悪い事ばかりじゃない。
人がいない真っ白な世界の美しさと怖さを堪能し、結果的に癒されてきました~。
火打山、標高は2,462m。頚城山塊の最高峰です。
妙高山は2,454m。どちらも日本百名山です。
いざっ
アクセス方法
・休暇村妙高笹ヶ峰キャンプ場へのアクセスは、こちら
・住所:新潟県妙高市杉野沢字笹ヶ峰
・TEL:0255-82-3168
■ルート
【1日目】
【2日目】
2日間の合計、活動距離24キロ、高低差2,084m。
■全行程スケジュール 2016年11月12日~13日
【1日目】
6:50 笹ヶ峰登山口 ⇒ 7:50 黒沢橋 ⇒ 9:30 黒沢ヒュッテ/高谷池ヒュッテ分岐 ⇒ 10:50 黒沢ヒュッテ ⇒ 11:40 大倉乗越 ⇒ 12:30 黒沢・大倉分岐 ⇒ 13:30 妙高山撤退 ⇒ 17:00 高谷池ヒュッテ
【2日目】
7:20 高谷池ヒュッテ出発 ⇒ 9:10 火打山山頂 ⇒ 9:40 下山開始 ⇒ 10:40 高谷池ヒュッテ(準備/休憩) ⇒ 11:25 下山開始 ⇒ 13:40 笹ヶ峰登山口
登山開始
東京を前日の夜に出発して、笹ヶ峰キャンプ場の駐車場に着いたのが深夜2時前。3〜4時間は眠れたし、今日もバッチリです!
それにしても最近は前夜発ってのが定着してきたなぁ。
のっけから雪。
まだ標高低いのにこれだけ積もってるなんてね。やっぱ日本海側の山は違うな。
黒沢橋です。滑って川にドボンなんてしたら即リタイアです。おっかねぇ〜。
夏の間は落下防止の柵が付いてるんだけど、冬季は雪の重みで橋が壊れてしまうという理由で、小屋閉めと同じタイミングで取り外されてしまいます。
一応、地図ではここが水場になってたんだけど、行きはスルーしました。
この上の高谷池ヒュッテの水場は煮沸しないと飲めないから、ここの水もそのまま飲んでよいか分かりませんね・・ただ、帰りに少しだけそのまま飲んでみたんだけど美味かったです。
十二曲がりに突入。ここから急坂を九十九折に登っていく。
雪がどんどん深くなっていく。
ガチガチに凍ってるわけじゃないし、登りだからアイゼンはまだ必要ありません。
意味なくアイゼンを装着すると足が疲れるし、登山道も痛めてしまうからね。
久しぶりに雪の感触を楽しみながら、えっちらおっちら。
ってよくよく思い返してみると9月の鳥海山で雪渓の上を歩いてんだな。
その時はカチコチでこんなザクザク感はなかったけど。
黒沢池ヒュッテと高谷池ヒュッテの分岐点に着きました。
実はここに来るまで初日に高谷池ヒュッテ経由で火打山に登るか、黒沢池ヒュッテ経由で妙高山を登るかで悩んでました。
初日に妙高山から登ってしまえば2日目が火打山だけだからずいぶんラクになる。。
えいっ、初日に妙高山へ行こう。
と、決めたのは良いけど、ここからなんと踏み跡なし!
少しためらったけど、えーっい!!とツボ足で進む。
突然、だだっ広い雪原にでて同行者と「わーーー!」と声を上げて驚きました。
こっちのルートにしてほんと良かったぁ、とこの時は思った。この時までは、です。
雪原の上をたぬきかキツネの小動物の足跡がずっと続いてて、あたかも案内してくれてる様でした。
ところどころ雪にマーキングした黄色いオシッコが残ってたり( ^ω^ )
その小動物の足跡から道を外れるとズボッとはまる。
雪で全然分からないんだけど、どこに木道があるのかこの小動物はよく分かってるんだなぁと感心するわ。
振り返って一枚。木道のないところはご覧の通りラッセルしながら進んできました。
黒沢池ヒュッテの手前の下り坂の積雪は深くて、進むのに難儀しました。といってもここで頑張ってくれたのは同行者なんだけどね。自分は楽して後ろを歩かせてもらいました~
結局、動物の足跡は黒沢池ヒュッテまで続いてて、最後まで道案内されてしまいました( ^ω^ )
ここでデカザックはデポ。アタックザックに持ち替えます。
まずは最初の中継地点、大倉乗越に向けてこの踏み跡のない急坂を切り拓く。
ここからは自分の出番。股下まで完全に雪にハマりながらのラッセルが延々と続く。
とめどなく汗が流れ、無心になってラッセルを続ける。
まぎれも無く本物の雪山。急坂で苦しい。どこまでやれるか、己との戦いって感じだったな。
やっと大倉乗越に着いた。ここまで簡単に書いたけど、ほんとに大変だったんだわ。。
そして、ここで初めて姿を現した妙高山に圧倒される。こりゃ、100名山に選ばれるわ、納得。
ずっと外輪山に隠れてたから、やっと目にできて感慨深かったな。
でも時間が心配だったから、感動もそこそこにすぐ出発。
頑張って稼いだ標高を一気に下っていくという信じられへん展開。くそ〜。
踏み跡が無かったので、コースタイムの2倍は見ておかないとだめだった。
人気の山と聞いてただけに予想外の展開。
これは今日はピーク踏めないかも、と思い始めたのはここら辺から。
同行者と代わる代わるラッセルで道を開拓していく。
大倉分岐からは微妙に谷間になってるから雪が吹き溜まり、最も積雪の深いところ。
しかも急坂。
体全体で雪を掻き分けていくから体力が続かない。
ラッセル苦労、なんつって。
もう、オラ限界!!雪でお腹いっぱいだぁ。
ラッセルクロウの中年の渋さを微塵も感じさせないこの体たらく。
制限時間に設定した13:30となりました。
「じゃ、残念だけど引き返そうか」
「OK」。
山頂までの標高差200mってとこまで来てただけに悔しいけど、これ以上進むと日が出てるうちにヒュッテに戻れないから、仕方ない。
大倉乗越に向け登り返す。
横から撮った方が傾斜角度が分かりやすいから妙高山をバックに1枚撮ってみた。
同行者も見るからにバテバテで、足が重そう。ほんと、大変な登山になったな。
自分たちで切り拓いたトレースを登り、やっと大倉乗越まで戻ってきました。
登りの時に妙高山が見えて興奮したこの場所から、逆方向に凛々しい火打山の姿が確認できました。
立冬を過ぎた太陽が、無情な速度で沈んでいく。
「やばいやばい!」と内心では思いながら、「がんばれがんばれ!」と口にしながら進む。
まさか、黒沢池ヒュッテから高谷池ヒュッテ間のルートもトレースないなんてね、ほんと試練だったな。
ツボ足、ところによってラッセルって感じで進む。
「もうすぐだよ、頑張れ!もうすぐ!」と何度繰り返したか、それぐらい大変だったんです。
疲れて立ち止まって、息を整えて、顔を上げれば北アルプスに沈んでいく夕日の美しさ。
いつもなら感動する景色ですが、今は頼むから沈まないでくれ!と祈るばかり。
長かった。。
同行者と無事にたどり着けたことを喜ぶと言うか・・、疲れきってなだれ込む感じの到着。
ここ高谷池ヒュッテは3Fを避難小屋として解放してくれてるんだけどね、まさかの貸し切りでした。
着替えてから少し休むと、すぐ日が暮れました。
普段の満月より明るさが30%増しになるスーパームーンの前々日の夜なだけに、月明かりがすごく眩しく、雪山が白く浮かんで見える幻想的な夜。
晩ご飯は同行者を驚かそうとおでんを持ってきたんだけど、まさかのおでんかぶり(笑)
おでんを囲んで乾杯しました~(^^)v
しばらく外を眺めながら静かな夜を楽しみたかったんだけどね、同行者は疲れきって早々に横になってしまった。
そりゃそうだよね。
まだ18時だけど、そんなわけで自分もおやすみ~
おはようございます。
ネズミがすぐ近くを走り回る賑やかな夜。うるさくて何度か目が覚めましたが、なんだかんだで11時間近く寝てしまいました。
布団もたくさんあったし、ヒュッテ内は予想以上に暖かく、快適でした。
今日も良い天気になるよっ。
高谷池ヒュッテにデカザックをデポり、火打山に向けて尾根を上がっていくと、
どーんと、目の前に火打山!
なんときれいなピラミッド型。
さらに火打山から延びる稜線を右に辿っていくとエアーズロックの様なかっこいい岩場!
いやー、火打山、良い山です。
この殺風景さと青空、たまらんな。
本格的な冬になると、日本海側の空はほぼ毎日灰色の雲に覆われ、太平洋側の様なカラッとした青空は春まで遠のきます。よくテレビで聞く通り、日本海側の冬は厳しく、長い。
こうやって青空が広がるあたり、まだ11月なんだなと感じる。
すぐ近くに壁の様にならぶ北アルプス。
白馬から見えた上越方面の山塊は火打、妙高の頚城山塊だったんだな~と思いながら登る。
ライチョウ平に着きました。
剱岳以来のライチョウとの出会いを期待してたけど、これだけ天気がよければそりゃいないわな。
山頂に向けてずっとトレースが続いてる!!
昨日の悪夢はなんだったんだろか。嬉しくて上ばっか見ちゃうよ!
山頂の手前は急坂。
同行者は昨日のバテがまだ残ってるから足が重そう。
一晩寝て回復したと思っても、登り始めてみるといつもより息が上がるのが早くて、まだ疲れが残ってることを痛感するってのは自分も過去に何度か経験済み。いつもと勝手が違ってもどかしいんだよね。
時間はたっぷりあるからゆっくり登ろうね、と。
昨日のラッセル地獄で、先行者がどれだけ大変かってことを身を持って知ったから、ほんと感謝ですよ。
今日はラクさせてもらうわ~
あ~ラクチン過ぎて眠いぜ~
こういう登山さいこーっす
溢れそうな青い空。
毎回同じ事を言ってますが、空との境界が近づいてくるこの瞬間が、たまらなく好きです。
これだから山はやめられない。
弾ませた息を整え、同行者を待ちながらゆっくり登る。
心地よい風、到着~。貸し切りです。
昨日が撤退という結果に終わっただけに、いつも以上に気持ちよい山頂となりました。
焼山です。
煙モクモクです。
ふー、言葉になりませんね。11月13日とは思えないこの景色。
去年は雪不足だったけど今年はその心配はなさそう。期待が膨らむ。
ヘイヘイ~
定番の逆立ちじゃいっ!
おりゃっ!!
くっ。。くるちぃ
うああぁぁ・・
んじゃ、下山しますっ!
久しぶりの尻セードも楽しめたし、天狗の庭まではあっという間でした。
高谷池ヒュッテが見えました。ここで終わりではありません。
アタックザックからデカザックに持ち替えて、笹ヶ峰への下山が待ってます。
あ、そうそう。高谷池ヒュッテの冬季避難小屋がどんな感じか軽くレポしておきますね。
まず、トイレ。ご覧の通り仮設トイレが置いてありましたが、扉が開かず使えません。
基本は携帯トイレ。もし忘れたら小屋の裏のシラビソ林の中で用を足してください。
自分はシラビソ林をトイレにしました(^ω^)
外階段を使って、小屋の3Fに上がると中はこんな感じ。長靴が用意されてるのはありがたい!
清潔さが保たれてます。外からも中からも鍵がかけられる様になってます。
詰めれば10人は横になれると思う。布団は20組あるっていうし。
ここを贅沢に2人で使わせてもらいました。紐が通されてて、ハンガーや洗濯ばさみもたくさん用意されてます。
ねずみがいるのは、仕方ないですね。ただ都心にいる様なドブねずみじゃないから許してあげてくださいな。
利用料は1,000円です。出るときに忘れずに黒い筒に投函してくださいね。
ありがとよっ!
妙高に登れなかったからまた来るよ!
黒沢橋の上から、熊棚を発見しました。
熊が枝を折ってどんぐりを食べると、その折った枝をお尻の下に敷いていき、こんな棚が出来るんだそうです。
同行者も熊らしき足跡を見たって言うし、この辺りは多いんだろうね。
標高を下げると、登りの時に積もってた雪はすっかり解けてました。
11月らしい、落ち葉を踏んだ時のカサカサッという音がなんとも気持ち良い。
登山口に着きました。
駐車場には暖かな日差しの下、キャンプ場で彼氏が半袖になって遊ぶ元気なカップルがいました。
昨日の試練の登山から、燦々と光が射しつい長居をしてしまいそうなあたたかで平和な世界へ、このギャップはなんなんだべ。
笹ヶ峰から少し遠かったのですが、ここは来る価値あり、燕温泉の黄金の湯にやって来ました。
源泉掛け流しの露天風呂です。
もちろんシャワーなんかついてませんが、湯の鮮度は申し分なし。
男湯は入り口から丸見えですが、女湯は目隠しがされてるのでご安心ください〜。。
これぞ秘湯って感じで、大満足の旅となりました。
振り返って
火打山と妙高山は前々から同行者と行こうと約束していた、今年登りたかった山の1つです。
妙高山は残念ながら撤退となってしまいましたが、下山してから同行者と振り返ってみて、なるべくしてなった撤退だったなと思う。
この時期の妙高山は燕温泉からのルートが定石ルートの様です。
雪山で定石を外したら痛い目にあうという、そんな当たり前のことを学んだ登山だったと思う。
最初、14時になったら撤退を判断しようと決めてたけど、30分早めたのは同行者のファインプレー。それでも、山は逃げないんだし、冬山ではもう少し早く判断した方が良いなと感じました。
これから冬本番を迎えますが、このタイミングで失敗したのはむしろラッキーだったかも。
だから、また必ず来なきゃなって帰りの車で誓いました。
ハプニングがある旅ほど記憶に残ります。間違いなく。
きっと次回、無事に登頂出来たとしても、今回ほど鮮烈なインパクトは残らないのかも(≧∇≦)
妙高山と火打山。
この山はなにか人を寄せ付ける特別な魅力があるように感じます。それは雪景色が創り出すモノクロの世界の美しさがそうさせてるのかもしれません。
今回のレポは少し長くなりましたが、この山の美しさと、雪山の難しさと、旅の楽しさをブログを通じて伝えることができればと、欲張ってしまいました。
今年も残すところあと1ヶ月ちょい。
残念ながら当ブログは一方通行な配信でしかありませんが、多くの方に「楽しかった、役に立った、山に行ってみたくなった」と思える様な、ちょっとしたハプニングを交えつつ心に残る登山を心がけていきたいなと思ってます。
毎回、反省することばかりですけどね。
ではでは