【北アルプス】烏帽子岳 ブナ立尾根からトンガリ山へ! 暇つぶしに耐えかねた裏銀座縦走登山1日目

【北アルプス】烏帽子岳 ブナ立尾根からトンガリ山へ! 暇つぶしに耐えかねた裏銀座縦走登山1日目

コロナによる巣ごもり需要もあって、一気に普及したeスポーツ。

「高校eスポーツ夏の祭典!全国3,000チームの頂点を競う!!」とか、あたかも甲子園的盛り上がり。

ゲーミングヘッドホンをセットし、ゲーミングチェアに身を沈め、バーチャルな世界で切磋琢磨しながらスキルを磨く。

彼らの夢はプロゲーマー。

 

「ただのゲーマーだろ?昔からおったやん、高橋名人とか。」

 

eスポーツのことが理解できなくて、つい鼻で笑ってしまいそうな世代の方々、考えを改めましょう。

学生の頃の自分なんて、他人に話せない恥ずかしいことばかりだ。存在自体が羞恥。プレミアム羞恥。数々の失態を重ね、いろんな人に許されて生きている。みんなそうでしょ?1mmだって立派な人間じゃないよ。

だから、生き甲斐を見つけ、燃えている彼らの青春を馬鹿にしてはいけない。

それに、心血を注げる何かを見つけられるって幸せなことだよ、本当に。犯罪さえ起こさなければ文句言われる筋合いないよ。

あちきもね、もうヘトヘトに疲れて、山に来たことを後悔しちゃう時なんか、心底思う。

 

「俺も!俺も明日からe登山やる!!」

 

流れる汗を不快に感じることもない、虫もいない。

エアコンが効いた部屋で、水の残量を心配する必要だってない。

サイコーやん!

 

 

どんなことでも一歩一歩の積み上げだ。

小さな一歩でも前に進んだ分だけ目的地へと近づく。

そんな当たり前のことを、他の何より真実味を持って教えてくれるのが、登山だと思う。

 

目の前に広がる稜線と山々の景色を見ていると、猛烈な達成感が襲ってくる。写真で見る風景を何倍も上回るスケールと野性味。

来て良かった。重い荷物を担ぎ上げてきた苦労も報われる。

下から吹き上げる風は、エアコンの効いた部屋では味わえない。

 

うーん、やっぱe登山じゃなーんも伝わらない!

 

さあ、今年の夏もドキドキしにアルプスを歩こうぜぃ!

 

 

正面に見えるのは野口五郎岳。その向こうには、秘境と呼ばれる黒部川源頭のエリアが広がっている。

 

360度、山しか見えない風景。まさに北アルプスの最深部だ。

 

稜線を突風が吹き抜ける。鼻水が真横へと伸びる。

すごく伸びる。

 

真夏なのに、寒くて寒くて山小屋に避難する。

3,000mの環境は厳しい。

 

ガスが晴れていき、劇的に浮かび上がる槍のシルエット。

槍から穂高へと続く山脈は、煽動的で畏怖の念を抱く光景。

日本国内でこれに勝る情景はないと思う。

 

 

一歩進むほどに迫力を増す槍ヶ岳。

やはり、登山者にとって槍ヶ岳は特別だ。

 

やっぱ、e登山では満足できないわー。やっぱ。

 

 

ただ、迫ってくるのは、槍ヶ岳だけではなかったのだよ。。

 

刻一刻と迫りくる台風に、右往左往したおっさんの裏銀座珍道中。

 

その一日目、烏帽子岳編どえす。

 

 

裏銀座ルートは、高瀬ダムから日本三大急登のブナ立尾根を登り、烏帽子岳〜野口五郎岳〜水晶小屋〜鷲羽岳〜三俣蓮華岳〜双六岳〜槍ヶ岳〜上高地までを結ぶ、全長約50キロ、累積標高は上り約5,000mの縦走路。

山と溪谷には4泊5日で書かれてたけど、実際には3泊4日で歩かれることが多いルート。

 

いざ、スターティン。

 

ルートとコースタイム

■2022年8月11日 ※カッコ内は標準コースタイム

高瀬ダム⇒(50分)⇒高瀬ダム登山口⇒(205分)⇒烏帽子小屋⇒(20分)⇒前烏帽子岳⇒(25分)⇒烏帽子岳⇒(45分)⇒烏帽子小屋

コースタイム:5時間45分(休憩含まず)

総距離 7.7キロ
累積標高上り 1,610m

北アルプス裏銀座登山 烏帽子岳編

毎日アルペン号で七倉へ

ここは東京の東西線竹橋駅。

今回は初めて毎日アルペン号を利用するとあって、あたかも初デート気分でドキドキしながらやって来た。

爽やかさがウリの自分は、新宿からさわやか信州号を利用することが多いんだけど、今回は集合場所やコンビニが近くにあるのかなど、不安でいっぱいだ。

毎日アルペンちゃんは時間に厳しい。待たせてはいけない。

ホームに降り立ってみると、デカザックを背負ったハイカーがちらほらいたから、さっそく尾行開始。

 

毎日新聞社は駅と直結してるから助かったと思いきや、尾行した人たちがトイレに行ったり、地下を行く人と1階に上がる人とかで散り散りとなり、まさかのまかれるという事態。

でも、天吊の標識が何度も出てきて、西へ西へ進むと1階の集合場所に着いたよ。

 

はーい、今から案内を始めまーす!と係の人による案内が始まった。

「まずプレミアムの方から受け付け始めまーす!」

ああ、俺が予約したかったプレミアムだ。

プレミアムに並ぶ面々の勝ち誇った顔。羨ますぃー。

予約したのは決行2日前。そりゃ時既に遅しで、スタンダードでも空いてただけラッキーと思わなくてはいけない。

 

スタンダードの座席の狭さを心配してたけど、ご覧の通り、小学生の修学旅行で使う座席サイズと変わらず、男には極めて窮屈。

アンガールズ山根ぐらいなら大丈夫だろうけど、デブゴリラには極小だ。

座席は指定されてて、自分は一番後ろの窓側。

座席表を見ると、5人掛けシートの真ん中が空いてたから、隣の人が真ん中寄りに座ってくれたらなんとか眠れるかもしれないなぁ。

ああ、隣の人が山根だったらいいなぁ。

できれば、山根ぐらい細身の女性だったら小さくていいのになぁ。

田中だとうるさそうで嫌だなぁ。

 

そんなことを思っていたのがいけなかったのか、神様のスペシャルチョイスでラグビー選手みたいなお兄さんがやって来て、ドカッと着座。まんまと希望は打ち砕かれた。

 

しかし、どんなに狭かろうが寝るしかないのだ。眠れるかな?なんて心配してはいけない。寝るのだ。

アイマスク装着。ネックピロー、耳栓も準備した。

バスは竹橋を出発して、途中新宿でも客を拾って、中央道談合坂パーキングで休憩を取る行程で進む。

 

そして、デブゴリラは竹橋を出た瞬間、眠りに落ちた。

 

ラグビー体型のお兄さんの野太い腕が、たまに猛烈な重量で乗ってくるが、そんなのに負けないぞ。こちとらゴリラだ。

新宿、談合坂でも、その都度目が覚めたけど、たぶん3時間は眠れた。

さすがケモノ。

上出来じゃ!

 

七倉からタクシーで高瀬ダムへ

3:40。

毎日アルペンちゃんに揺られ、4時間半のラガーマンとの添い寝もやっと終わった。

こんなに山根が恋しかったのは初めてだ。。

山根ぇ〜山根ぇ〜と、軽く錯乱した状態で、七倉山荘の前でバスを下り、眠気まなこのまま、とりあえず高瀬ダムまでのタクシー待ちに並ぶ。

高瀬ダムまでの距離はたかだか6キロだから、タクシーを使わずに歩き始めちゃう人も結構いる。

ふむふむ、よぉーやるわ。朕は輿で向かうぞよ。

とてもブナ立尾根を登る前に6キロも余分に歩く気になんぞなれないと、最初から決めていた。

絶対に輿(タクシー)!

あらゆる節約を敢行してきた自分だが、これまでにない強い意志を持って、そそくさと順番待ちの列にザックを置いた。5番目に並べたのだからなかなか優秀。

こういうところでケチったりはしない。

ちなみに、タクシー乗り場には4〜5人が掛けられるベンチがあるから、早く並べた人はベンチをゲットできる。

まあみんな睡眠不足だから、草の上や小屋付近のアスファルトで寝てたけど。

 

タクシー乗り場や七倉山荘には、「ブナ立尾根の水場は利用できません!」という張り紙がされていた。

この水場を当てにしてたから、いきなり路頭に迷う。

水場を求めてうろつく。七倉山荘の横に蛇口があったから、ひねってみたけど水は出ない。なんだこれは、ドッキリか?

蛇口は2つあって、1つは出なかったけど、奥にあったもう1つの方をひねってみるとまんまと水が出た。

戸惑ったけど、なんとか無事に水をゲットすることができて良かった。

 

右奥がトイレ。左は登山届けを提出するところ。

トイレの水は飲めませんと張り紙がされてたから、やはり七倉山荘で水を汲めて良かった。

 

高瀬ダムまで歩く人はこの長い長いトンネルを歩いていくことになる。

ちなみに写真を撮ったのは4時半頃で、少し明るくなってきてるけど、バスを降りた時間はひたすら闇だった。

寝起きで闇の中を延々と歩く気にはとてもなれない。

歩いたところで、高瀬ダムにはほぼ同じタイミングで到着するというのにね…。

 

タクシー待ちしてるところにあった、立派だけどなんとも分かりにくい地図。

これを眺めている内に、トンネルの通行規制が解除される5時半が近づいてきた。

徐々にタクシーが集まりだして、まず最初は七倉山荘に宿泊したお客さん達を乗せて、次にタクシーの順番待ちをしてる人を乗せていく。

もちろん相乗り。

一人の方はいませんかー?と、タクシーの運転手が調整してくれる。

 

輿で(タクシーで)この高瀬ダムの上へと九十九折の道路を走っていくと、歩かなくてほんと良かったと何度も思った。

しかも、ここよりはるか手前で歩くという選択をしたハイカーたちをことごとく抜いてしまったのがとにかく不憫だったのぉ。。くっくっくっ。

 

高瀬ダムで輿から降りて、前方のトンネルに向かって歩き始める。

ちなみに自分は8人乗りのジャンボタクシーに乗ったから、一人たったの450円で済んだよ。

初乗り料金以下で移動できちゃった。うふふっ。

くどいけど、タクシーに乗らない手はない。

 

コバルトブルーの高瀬ダムを見ていると、まさかの雨が降ってきた。

ひえーと急いでトンネルへ移動。

 

 

よく揺れる吊り橋を渡る。

高所恐怖症の自分はこういうのが大の苦手で、楽しそうに記念撮影する方々を尻目に必死の形相で渡る。

この写真を撮るのも、どんだけ腰が引いてたか分からない。

ダサい男の極みだ。ふっ。

 

利用禁止の濁沢キャンプ場までやって来れば、高瀬ダム登山口はもうすぐ。

雨は降り続けてたけど小雨だし、むしろ涼しくて有り難かった。恵みの雨だなーなんて思いながら、高瀬ダムから登山口までの約50分の道のりをえっちらおっちら歩いてきた。

意外と距離あるんだよね。

 

高瀬ダム登山口から始まる裏銀座縦走

ブログを書いている本来の目的を危うく忘れるところだったが、ここからようやく登山開始。

登山口に着くまでに何文字書いてんだか、もう指が痛い(スマホで書いている)。

 

注意書きの「要体力!この先水場なし」というのが、いよいよだなと感じさせる。

ちなみに、ほんと今更だけど、七倉山荘の前には自販機もあったので、万が一蛇口の水が出なくても購入は可能だよ。

 

北アルプス裏銀座登山口。

さあ、長い縦走の始まりだ。つか、タクシー降りてからここまでの道のりでそれなりに疲れた。

自分は体力無いんだ、謙虚に行くぞ。

心してかかるでゴザル。

 

いきなり階段の急登でスタートしたはずなのに、これはどういうことだ。

なだらかな写真しか残っていないじゃないか!

そうだ、階段を見上げて辟易して、いきなり写真を撮る余裕を失ったんだった。

 

ブナ立尾根の登山口が12でスタートして、いきなり最初の11までがとにかく急で、めちゃ遠くに感じられた。

ちょっと盛ってるかもだけど、岩壁に工事現場にあるアルミ製の足場用階段が設置されてて、それを延々登っていく感じだった。

 

勘違いさせてしまうかもしれない。

11から先も急登が続くんだけど、写真を撮る余裕なんぞなく、あたかもこんな平坦な写真ばかりになってしもた。。

実は楽だったんじゃない?と疑われてしまいそうだが、等高線がびっしり並ぶ地図を見てもらえば一目瞭然なのだ。

わずか3〜4キロの距離で1,300mほどの標高差を上り詰めるというなかなかの荒行。

歩きながら、何が楽しくて山なんて登ってるんだと何度後悔したことか。

 

ソバナ。

 

うそ、まだ9?

3泊4日の荷物がかなり応えるけど、それも稜線に出るまでの辛抱だ。

ちなみに予定としては、初日は烏帽子小屋でテント。2日目は三俣蓮華小屋でテント。3日目は徳沢テント。4日目の朝に上高地バスターミナルという感じ。

3日目を徳沢にするか小梨平にするかは、当日決めればいいんじゃね?って考え。

 

この9のポイントは「ごんだ落とし」というポイントで、ブナ立尾根の唯一の見どころ。

あとはひたすら代わり映えしない樹林帯が続く。

圧倒的に見どころが少なく、ブログで魅力を伝えるのがスペシャル難しい。

 

更に容赦ない登りが続く。事実、この写真の様になだらかなところも出てくるけど、緩急織り交ぜた波状攻撃を仕掛けてくると思って欲しい。

そして、自分は既に疲れてしまい、カメラを出すのさえ億劫になってきたのがここら辺から。

写真の枚数が極端に減っていった。。

 

とにかく頑張って半分の6まで行こう。

そしたら休憩にする。

なんの代わり映えもしない森の中を、おっさんがひたすら汗を噴き出しながら進む光景を撮ったってキモいだけだ。

この先も自撮り一切無しのガチンコ勝負で綴っていく予定。

 

大きな木の根を滑らないようにまたいで越えていく。

こういうまたぐとか、飛び降りるとか、かがむとか、テント泊装備だといちいちしんどい。

 

7まで来た。

7回の攻撃はHAWKSなら風船を飛ばすタイミングだけど、12から逆で数えてるし、しかも0もカウントするから全部で13回の攻撃まであるとして、7×13÷9だと…、

もうええわ!!

 

あと1つ、あと1つ進んだら休む。

しんどい登山こそ、こまめに休憩を取るべきという基本を疎かにしてしまっていたことに気付く。

確実に後半に効いてくる。

マラソンと一緒だ。後半に足を残せるかどうかで完走が決まる。

ええ、後半はぐだぐだになりましたよ。

 

登り始めから9番ぐらいまでが急登で、それ以降は少しずつ斜度は落ち着いてくる感じだけど、2番まではひたすら登らせる。

さっきからしんどいことばかり言って、山登りの楽しさを1ミリも伝えられないが、ここまではさっぱり楽しくないのだから仕方ない。

その分、稜線に出た時の喜びが何倍にも感じられるのは、山ヤロウなら分かってもらえると思う。

 

ブナ立尾根の洗礼を受けて果てる

着いた…。

しかも、小さく「中休み」と書かれている。

ほいじゃ、お言葉に甘えまして、ザックを下ろして食料補給シマショーネー(沖縄風に)。

 

センジュガンピ。

日光中禅寺湖の千手堂の近くで見つかったのがその名の由来らしい。

ガンピってなんだ?

 

振り返れば唐沢岳。唐沢岳の稜線を辿って右奥にあるのは、なんとも恐ろしい名前の餓鬼岳。

餓鬼岳もブナ立尾根に負けないぐらい急な登りの山だと聞く。いつか登ってみたい山の1つだけど、自分にも歩けるか不安だ。

あの唐沢岳を見ながら、これからの自分がどれぐらいの標高で喘いでいるのか、目安にしたい。

 

気を取り直して行くか。

いつになくやる気を見せているのは、烏帽子小屋のテン場の少なさを心配してのこと。

約20張と聞いている。詰めて張ったとしてもせいぜい30張が限界だろう。

表銀座に比べたら裏銀座を歩くハイカーは圧倒的に少ないと聞くけど、烏帽子小屋の次にあるテン場は三俣山荘まで無いため、一泊目はほぼ100%烏帽子小屋でテントを張ることになる。

更に、烏帽子岳と船窪岳の周回コースを歩く人もいる。

今のところテント泊装備の中では自分が先頭を歩いてるはずだから、まず心配はいらないけどね。

 

テングダケ。

 

もう疲れた。体力の減りと貯金の減りの速さが恐ろしい。

そしてここから番号が出てくる度に、休憩を取っていくことになる。

 

テント泊装備の人たちにも抜かれる。

結局こうなるんだよ。ここから前半に休憩を取らなかったツケを払い続けることになるんだ。

結局、まいどまいどの後悔日誌、スタート。

 

見通しのきかない樹林帯なのに、三角点がでてきた。

 

つか、三角点と書された標柱を見たのは初めて。

当然ここでもへたり込んで仰向けになって派手に休む。

もう帰りたい。

 

そして歩み進めること4番。

まだ昇天はしていないが、座ったらしばらく動けなかった。

ネットでブナ立尾根のことを調べてみると、これが3大急登?とか、急登を楽しむつもりで歩けばあっという間に小屋に着いちゃうよとか、余裕ぶっこいたコメントの多さにビビる。一体このどこに楽しむポイントを見出したのかもっと詳しく教えてほしい。

超人たちの言うことを真に受けてはならぬぞ。

 

樹林の隙間から高瀬ダムが見えたけど、まだそれほど標高を稼げてなくて愕然とした。

 

トレイン・トレイン走っていけー

トレイン・トレインどこまでもー

栄光に向かって走る〜あの列車に乗っていこう〜

ブツブツと、懐かしいブルーハーツの名曲を口ずさみながら、襲いかかる睡魔に負けてしまいそうな自分を励ます。

 

ああ、栄光の稜線が見えてきた。

やっと、少しだけ安堵した。

森林限界までもうすぐだ。もう少しで楽になれる。

まずテントを張って死んだように寝てやるんだ。烏帽子岳の登頂なんぞ後回しだ。

もう少しの辛抱、頑張れ!

 

バテて空を仰げば少しずつ樹林の密度が薄くなってきた。

青空が気持ち良いじゃないか。

登り始めはそこそこ涼しかったけど、11番に着く頃から大汗が止まらず、ここまで来た。

そしてここから強烈な日差しが襲い、更に暑くさせる。

ペースダウンを余儀なくされる。

 

下山してきた方に、烏帽子小屋のテン場の様子を聞くと、「昨日もガラガラでしたよ。今なんて誰も張ってなかったし、大丈夫てすよ」。

おお、ジーザス。

これを聞いて休憩時間は更にマシマシに増えた。

 

毎日アルペン号の受付前にファミマもあったから、そこで余分におにぎりとチョコレートを買っといた。

この急登はカロリー消費が半端ないはず。さっき食べたばかりだけど、すかさず追いおにぎりをしながらのんびり登っていく。

行動食でSOYJOYを2本持ってきてるけど、日持ちしないものから消化しなきゃ。

それに、SOYJOYよりお米の方がバテ防止になるのは明らかなのだよ。

 

YAMAPの地図で現在地を確認。

たぶんあそこに見える偽ピークみたいなのを越えれば稜線、そして小屋が出てくるはず。

小屋に着いたら炭酸で一人祝杯を上げ、ガツンと寝てやるんだ。

 

ヤマハハコの群生地。

 

巨大なブナもでてくる。

今回は珍しく3泊4日というまとまった連休を山登りに当てることができたスペシャルウィーク。

東京で仕事をしていると、家族がコロナで全滅、味覚異常者になりたくなければ福岡に帰って来てはならぬという伝令を受け、

すかさず週末の行き先を長野に変更したのだ。

子供はどうしても部活でもらってきちゃうからね、仕方ない。

長期出張中に似たような経験をしてる人ってたくさんいるんだろなぁと思う。

 

そして2。

日本三大和牛は、松阪、神戸、近江。この三大和牛とその他の高級和牛を食べ比べても味の違いなんて分からないのと一緒で、結局、日本三大急登に限らず、どこに登ってもしんどいんだよ。

剱岳の早月尾根、甲斐駒の黒戸尾根、富士山弾丸ピストンとかいろいろやったけど、ここもなかなかだよ。

最近で言えば、優しい登りと聞いていた八ヶ岳の杣添尾根で完全に昇天し、星となった。

 

あの時は体調不良もあったからだけど、大事なのはその日の体調とペースなんだとつくづく思い知らされた。ちなみに登山中はパンではなくご飯じゃないと力が出ないということも再確認できた。

 

更にちなみに、つか、脱線するけど、和牛はたった一切れのカルビを食べた瞬間胃もたれしちゃう体質なもんで、もう輸入物の真っ赤な肉しか体が受け付けないのよん。もしくは、モツ。

胃が丈夫な若い頃にもっと良い肉を食べておけばよかったと思うけど、そんなお金もなかったからねぇ。

 

そんな気持ちがある反面、

実は味覚は小学生の頃からあまり成長していない。

好きな食べ物と聞かれて真っ先に出てくるのは、卵かけご飯、カレー、磯辺揚げ、三色丼。

海原雄山の夕食に全部並べて出したら激怒されそう。

ちなみに今、最も食べてみたいのが、折尾駅名物の「かしわめし」。

駅弁ファンなら一度は聞いたことがあると思う。

福岡県人でありながら、実は未だ食べたことがないのだ。

群馬名物の登利平弁当を2回も食べているというのに…。

恥ずべきことだ。

早いとこ食べねば。

 

登利平弁当は群馬イチの絶景を求めて、浅間隠山の山頂で、浅間山を眺めながら食べた。ありゃ最高だった。

あれに対抗するには、貫山で日本三大カルストの平尾台を眺めながら食べるしかないだろう。

ブナ立尾根のおかげで、新たな山行プランが決まった。

 

そして、感動のフィナーレに突入。

ファイナル・カウントダウンだ。

アスリート気質なハイカーには分かってもらえないかもだけど、酒に弱い人が一杯のビールですぐ酔っ払ってしまうのと同じで、もう急性アルコール中毒気味。

もう本当にこれ以上は無理!っていうぐらい疲れた。

 

あれは前烏帽子かな。

小屋までならあれを越える必要はないのだ。

テント泊で自分の前を行くのは二人だけだし、のんびりテントを張って寝る、そればかり考えていた。

 

下から吹き上げてくる風だって感じられる様になってきた。

乱れた呼吸が整うのにだいぶ時間がかかる様になってきたから、ここはもう2,500m近いのだろう。

高山病にかかりやすい体質なだけに、体の変化にも敏感だ。

そもそも和牛にも登山にも向かない体質なのだ。

 

唐沢岳と餓鬼岳。

まだ向こうのほうが高いけど、だいぶ標高は追いついてきた。

 

樹林も低くなった。

首に直射日光が当たった途端、ちりちりと焼けてくるから慌てて帽子をかぶる。

しかし、帽子を長くかぶっていると頭痛が始まるという、これまた面倒くさい体質なもんでね、こまめに樹林帯では帽子を取ったりしてる。

こう見えて、デリケートゴリラなのだ。

 

8月中旬になって、トンボも増えた。

これでもうブヨに怯えることもない、と思いきや立ち止まるとブヨはしっかりやってくる。

ちなみに自分は昔からブヨと呼んでるけど、正しくはブユと呼ぶらしい。

長年ブヨと言い続けて、今更ブユになんか変えられるはずがない。死ぬまでブヨで通す。

こんな小っこいトンボじゃもっと小さな羽虫しか食べてくれないのか。

オニヤンマよ、もっと頑張れ。

 

ちなみに、先日、福岡の井原山でオオキツネノカミソリの群生をカメラで撮ってたら巨大なアブに腕を食われた。

あの時の恐怖ったらない。

今年はアブが例年になく大発生してて、車から下りるなり大量のアブに追いかけられた。スズメバチに見間違えそうな黄色で巨大なアブ。

気を付けてはいたけど、止まった瞬間やられた。

おかげで3週間経った今でも痒くて不快感極まりない。

 

前烏帽子岳も近くなってきた。

 

お花畑を抜ければ烏帽子小屋だ。

ゴール手前は華やかなゴールテープが用意されてる、そんな感じ。

 

烏帽子小屋に到着

着いた。果てしなく遠く感じたけど、まだ朝の9時。

登山口から約3時間。テント泊装備にしてはよく頑張った!

烏帽子小屋の前のベンチで横になりたい!という欲求に駆られたけど、ここはぐっと我慢。

テン場へ。

テン場へ行かなくちゃ。

 

烏帽子小屋の前のチシマギキョウの大群生にしぱらく目を奪われた。

キキョウの紫には自分に無い高貴さが漂う

これを見れただけ、来た甲斐あったもんだ。

しかし、見とれてる場合じゃない。

テン場へ。

テン場へ行かなくちゃ。

 

裏銀座コースの経路が記載された標識に、紛れもなく裏銀座を歩きに来たんだということを実感。

あの辛かった登りも報われる。

明日からまた頑張らないとな。

そんなことより、

テン場へ。

今はテン場へ行かなくちゃ。

 

張りホーダイだぜーい!!

 

ちょうど一張りしか張れない区画を見つけて、プライベートが確保できそうな場所に張らせてもらった。

こりゃサイコー!と思ったけど、意外と自分のテント前を通過する人が多くて、言うほどプライベート感はなかったという真実。

まあいいさ。

テントが張り終わったら、小屋までテントの受付けを済ませに行こう。

 

タテヤマリンドウ。

 

烏帽子小屋のトイレは香りの玉がたくさん使われてて不快な臭いがぜんぜんしなかったよ。

この日の夜、空き缶を潰してた小屋のご主人に、トイレが快適でとても助かりましたと感謝を伝えると、

「古い小屋ですが、来てくれて有難うございます。明日、稜線は突風みたいなのが吹くだろうから気を付けてください」

とても丁寧な返答に、更に爽快な気分をもたらせてくれた。本当に有り難う。

ふむ、突風が吹くのかぁ。

 

烏帽子岳へ

あれ。ここはどこ?あちきはゴリラ?

 

テントの受付けを済ませ、寝るつもりだったのに。

ここまでの激闘のせいで横になっても頭が冴えてまだ眠れそうにない。

どうせ眠れないなら、晴れてるうちに烏帽子岳に登っておこうという訳で、えっちらおっちら歩き始めたのだ。

意外と元気なんだな。

 

左を向けば茶色の赤牛岳。その後ろに薬師岳。

さっきまで樹林まみれで泡吹いてたというのに、嘘みたいな景色だ。

登ってきたペースが早かったから、周りには誰もいないし、この景色を全部ひとり占めで楽しめるというサイコーの贅沢。

 

砂礫にはコマクサもたくさん咲いてる。

荷物も軽くなったし、稜線の風も気持ち良すぎる。

誰もいないから半ケツになって背中の腰辺りに風を当てて一気に汗を乾かす。

この絶景を眺めながら、半ケツのゴリラが思いっきり羽根を伸ばしているところを想像しておくれ。

 

遠くにコバルトブルーの高瀬ダム。

アモーレやーん。

 

迷い〜迷わされてカーニバル〜♫

半ケツのゴリラがミ・アモーレを口ずさみながら、ノリノリで前烏帽子の山頂に到着。

 

もちろんここでも貸し切り。

赤牛岳と薬師岳を眺めながら、ここでものんびり。急ぐ必要はない。

 

そして船窪岳方面の景色。奥に見える剱岳っぽい山は北アルプスのヘソと言われる針ノ木岳。

ちょうど北アルプスの真ん中にあるからヘソと言われてるけど、扇沢から日帰りで行けちゃうアクセスが良い山。山頂からの眺めの良さは随一。

 

前烏帽子まで来ると、やっと姿を見せるのがトンガリ山の烏帽子岳。

考えてみれば、裏銀座は最初の烏帽子岳から最後の槍ヶ岳までトンガリ山を繋ぐ縦走路だ。

素晴らしいトンガリっぷりの烏帽子岳は日本二百名山、標高は2,628m、後立山連峰の最南端。

 

近づいてみると、烏帽子岳のトンガリは、大きなブロックを組み合わせてできた様な造りをしている。

血管が浮き出た筋骨隆々な姿の槍ヶ岳とは全然違う。

 

うっかり道を間違えて、ずいぶん船窪岳方面まで歩いてしまい、この分岐に戻ってきた。

疲れと暑さで注意力散漫。

気が緩んでたな。

 

烏帽子岳への取り付き。

見るからに険しい山だと思いきや、裏から巻いて意外と登りやすいルートだ。

 

 

と思いきや、やはり鎖場が始まった。

 

誰もいなかったから割と簡単に登頂に成功。

鎖場で待ちが発生しないって、安全面でも良いね。

 

この標柱から更に上へと鎖が伸びてたので、上がってみると立山が一望!!

立山と浄土山、右奥は剱岳。

 

こっちは明日歩く稜線。

左が野口五郎岳、右奥は水晶岳。真ん中奥に小さくポコンと出たピークが鷲羽岳。

明日は鷲羽岳を越えて三俣山荘のテン場まで歩く予定だけど、遠いなぁー。

裏銀座はブナ立尾根も山場だけど、本当に困難なのは2日目の行程の長さかもしれない。

野口五郎岳か水晶小屋で一泊できれば、行程はかなり楽になるけど、3泊で企画するとどうしても三俣山荘までは行っておきたい。

これが表銀座に比べて圧倒的に歩くハイカーが少ない理由だと思う。

 

ほんで、こっちはさっきから紹介してるけど、左手前が赤牛岳で右奥が薬師岳。

立山と薬師岳の間にある五色ヶ原でのテント泊は長年の祈願で、今年チャンスがあれば行こうと虎視眈々と狙っているんだけど、天気には妥協したくない。

雨だったらe登山で歩く所存。

 

烏帽子岳の山頂で、靴も靴下も脱いで、岩の上で1時間ほど横になってこの景色を堪能した。

体が冷えてきたなーと思ったところで、どかどかーっとグループがやって来て賑やかになったから下山してテントで寝よっと。

 

暇つぶしの限界

予想してたけど、テントサウナ状態だったわ。。

真夏の車の中と同じ。寝たら最後、地獄に落ちるかもしれない。

早いとこ体をボディペーパーで拭いて着替えたいけど、汗だくになるの分かってるからそれもできない。

つか、眠い…。眠すぎてダントツに気持ち悪い。

 

フラフラと烏帽子小屋にやって来て、小屋前のベンチに座ってそのまま動けなくなった。

 

まだ昼の12時。

 

うんざりしてウトウトしていると、福岡からやって来たご年配の山ガールのパーティがやって来て、一気にお祭り騒ぎに。

言葉で福岡だということは一瞬で分かったし、あまりに暇だったから一緒に盛り上がりたい気持ちもあったんだけど、眠気と暑さで話し掛ける気力も無く、かと言ってどこか違うところに場所を移す気力もない。

「いやぁー、最高だったわねー!今日ほど最高の日はないわー」

と盛り上がる山ガール。分かるよ分かるよ。

きっと「この無愛想なゴリラ、早くどこかに行ってほしいわー」、きっとそう思ってるよね。分かるよ分かるよ。

でもね、こちとら睡眠不足だし疲れ果ててるんだよ。無愛想でほんとごめんなさい。。

 

うーうー。テントを張った場所が日陰になるまで、まだ4時間はかかる。

 

座りながら眠ろうと試みる。

そうこうしていると、小屋の前のベンチも日向になってしまい、日陰を探して彷徨うことになった。

 

テント場を散策したり、再び前烏帽子まで行ってみたり。

無駄に動き回って更に疲れた。

 

しまいには動くのをやめて、何もない登山道で、ただひたすら空の1点を見つめていると、通りすがりのハイカーから

「何かいるんですか?」と話しかけられ、

「いえ、やることが無さ過ぎて、ただ1点を見つめてるんです」

「あぁ、そうですか」(こいつ超やべぇ)

もう限界だった。何もない贅沢なんて楽しめない。

さいとうたかおのサバイバルでも、飢えの次に辛いのが、香辛料がない生活だと書いてあった。

何もないのは辛いのだ。

本ぐらい持ってくれば良かった。

 

小屋の前で、ブナ立尾根の番号ごとの見どころが記載された案内を見つけた。

つまりあれだ、9のごんだ落とししか、見どころがないということだ。

そういう意味でもガチでしんどい急登だった。

 

花が半分ほど散ったアカショウマ、かな?

 

チングルマの綿毛。

とにかく、やることがない。

さきほどの福岡パーティは小屋の炊事場で盛り上がっている。小屋泊の人は日陰を謳歌できて羨ましい。

 

ガスが晴れた燕岳から大天井岳へと続く稜線。

アップダウンが少なくてすごく歩きやすかった。

燕岳〜大天井岳までは歩いたことあるんだけど、表銀座縦走ってまだしたことないんだよね。

次はあそこかな。

 

いい年のおっさんが、イナゴを捕まえようと追いかける。

時間はたっぷりある。どこまでも追いかけてやる。

このバッタも時間を持て余したおっさんに見つかって迷惑千万。

 

そんなこんなで、やっと西日になってきた。

きっとテン場も日陰ができて過ごしやすくなったに違いない。

 

烏帽子小屋の飲み物の冷え方は、アサヒスーパードライのエクストラコールドを超える。

小屋の前でへたり込んでる時に、祝杯をあげる人達が冷た過ぎてザワつくのを見ていた。

全国の山小屋、美味いジュース選手権の初代チャンピオンに決定です。

本日4本目のジュースと水を購入。ジュースだけで二千円も使ってしまった。

 

 

やっと、夜が訪れた。

とにかく長かった。

明日は3時に起きて、4時に出発しよう。三俣山荘まで果たして歩けるかどうか。

考えたって仕方ない。

やっと眠れる。

 

 

振り返って

山ってこんなにきれいなところだよ。

登山の魅力ってこういうところだよ。

素敵な気分になれるんだよ。

そんなワクワクしちゃうブログを目指しているのに、さっぱりうまくいかない。

当ブログを読んで、山に魅力感じてくれる人や、山に行きたいと思う人はいるのだろうか。きっと皆無だ。

裏銀座2日目は野口五郎岳〜鷲羽岳、そして三俣山荘へ。

2日目こそワクワクドキドキに溢れる胸キュンな内容にするぞ!

 

自分のトレッキングポールには、「計画よし!装備よし!天候よし!」と書かれたステッカーが貼られている。

上高地の徳沢で、長野県警山岳遭難救助隊がハイカー向けに配っていたステッカーだ。

 

「計画よし!」が一番最初にくる通り、登山で最も大事なのは計画。

何泊で歩くか、食料、水分。エスケープルートと予備プラン。ふっ、自分は何を偉そうに。

今回も最初からペースを間違えて果てしなくバテたじゃないか。計画なんてあったもんじゃない。

くそっ、今晩も反省会だー!

計画的に食って食って食いまくるぞー!

 

ちなみに、トレッキングポールを伸ばす時に、必ずこのステッカーを見る様にしている。そしたら、多少なりとも気が引き締まるから。

 

さて、2日目はあまり天気が良くない。3日目もいまいち。それは最初から分かっていたこと。

だけど、それがなんと、台風の影響だったなんて知らなかった。

 

どうしよう。標高3,000mで台風の影響なんて受けたら。2,000m級の山でも風雨にさらされガチガチに震えて小屋に逃げ込んだ経験があるから、ちょっと想像できない。

 

計画あまい!装備もあまい!天候やべぇ!

 

さてさて、どうなるものか。

 

ではでは

裏銀座縦走、2日目はこちら

 

 

【北アルプス】裏銀座縦走登山2日目 ボトムの攻撃はガス山JOY!力汁で復活祭編 野口五郎岳~双六小屋


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