【北アルプス】大日三山 紅葉ドドンパ!スピリチュアルな冒険第2部(雷鳥沢テント泊)

【北アルプス】大日三山 紅葉ドドンパ!スピリチュアルな冒険第2部(雷鳥沢テント泊)

迷い迷わされてカーニバル的大絶景!!

標高3,000mに近い立山では9月中旬ですっかり紅葉が始まり、吹き抜ける風も涼しい。

完璧な条件じゃないかぁ!!俺は人間をやめるぞジョジョーー!!!

という訳で、霊山を巡るスピリチュアルな冒険は第1部の白山編に続き、いよいよ第2部に突入。大日三山と柱の男編だ!!

 

目の前にそびえるのは奥大日岳か、はたまたカーズか(ジョジョを知らない人は出直してきな!)

 

登山を始めて早10年。ジジイになってから来ようと、ずーっと後回しにしてた立山にとうとうやって来てしまった。気付けばクソジジイになっていた、という訳では決してない。

最近、身の回りで事故が頻発している。

そう、目的は日本三霊山で厄払い、つまり「お祓い」だ!

 

厄除けマーン!お祓いしておくれー!

 

途中でお祓いのことなんぞ忘れ、素晴らしい景色の波状攻撃に何度も失神した。

どこを切り取っても絵になる風景。高い交通費を投げうってもハイカーが室堂に押し寄せる理由がやっと分かったYO!

立山には大きく3つの山岳エリアがある。立山三山、剣岳、そして今回登った大日三山エリア。

立山と剣岳は百名山だけあって有名だけど、立山をまだ訪れたことのない人にとって大日三山っていまいちピンとこないと思う。実際、自分がそうだったし(笑)。

今回はそんな大日三山にシビれてきたから、これで理解しておくれ。

という訳で、前回の白山に続く霊山行脚の続きだ。

 

大日三山は奥大日岳、中大日岳、大日岳。最高峰は奥大日岳の2,611mで日本二百名山、花の百名山。

ジジイでも登れる山になんて興味ないぜー!と舐めてた立山に泣かされた。2日間で30キロ、累積標高上りは2,700mオーバー。ジジイになってから来てたら確実に死んでたわ。。

一泊二日の雷鳥沢テント泊で初日は大日三山2日目は立山三山を登るという三山ずくしで散々な目にあったスピリチュアルな旅。

 

ルートとコースタイム

■2021年9月19日 ※カッコ内は標準コースタイム

室堂⇒(50分)⇒雷鳥沢野営場⇒(110分)⇒奥大日岳⇒(85分)⇒大日小屋⇒(20分)⇒大日岳⇒(15分)⇒大日小屋⇒(95分)⇒奥大日岳⇒(100分)⇒雷鳥沢野営場

コースタイム:7時間55分(休憩含まず)

総距離 14.4キロ
累積標高上り 1,180m

霊山第2部 大日三山~登り返しミ・アモーレ編~

扇沢から室堂へ

ここは長野県、扇沢にやってきた。

さすが紅葉シーズン。しかもシルバーウィーク前半戦ということもあって大賑わいだ。

朝の5時半で既に有料駐車場でさえほぼ満車。

こんな扇沢、初めて見た。

 

立山に登るにはまずあの長蛇の列に並んで、室堂行きのチケットを買う必要がある。建物の裏までずーっと続く長蛇の列。2021シーズンのオリックスの快進撃と同じぐらいジラレヘン光景だ。

ちなみに2021シーズンのホークスの貧打ぶりには涙が止まらないが、挙句の果てオリックスの四番バッター吉田正尚にデッドボールで骨折させ、優勝争いの邪魔を演じるなんて今年のホークスはいつもと違った。その中でも松田の300号ホームランは嬉しかったけどね。

いかんいかん、つい熱くなってしまったが野球のルール知らんかった。

ボロが出るから登山の話に戻すよ。

 

実はWebチケットを事前に買ってたから並ばずに発券できちゃったんだよねー。

1年前の上高地行きのバス待ちに懲りて、こういう前売り的な情報は早くから探してたのが功を奏した。

WEBチケットで始発の6時半のバスを予約してたし(帰りは時間指定無し)、まずは第一関門を楽々クリア。

のはずだったのだが、、

毎度のしくじり野郎マクガイバーな自分はチケット発行に必要な電話番号を忘れ、何度入力してもはじかれる。スマホ2台、会社?自宅?実家の番号か?

そんなはずでは!しかし何度入力したところで無情にもはじかれる。

それまで誰も並んでなかったWEBチケット売り場も、自分のせいでみるみる人が並んでいく。後ろから舌打ちが聞こえてきそうだ。

これ以上迷惑をかける訳にはいかない。こりゃアカーン!と列から外れ、係の方にヘルプー!と事情を説明したところ、地獄の長蛇の列の先頭に割り込ませてもらってすぐ発券してくれた。

後日、電話番号は昔のスマホの番号で登録してたというスペクタクルなちょんぼが判明。

番号ポータビリティの運用がスタートする前の番号を言うなんて、、自分のしくじりも年季入ってきたな。

 

ほーれ、これが室堂までのプラチナチケットだ。

往復でなんと9,470円!(泣)

厄除けにはこんなにも金がかかるものなのか。めまいがした。

2回も室堂に行けばシュラフが買えちゃうじゃないか…

 

バス待ちの列に並んでると、名物販売員の中里さんが登場。

待ち時間でも楽しくさせてくれる。新喜劇的なお約束の弁当販売トークは期待通りだった。荷物になるから買わなかったけど、帰りに売ってたら買おっと。

初めて訪れた室堂アルペンルートだけど、中里さんの存在だけは知ってた。

 

予約していた6時半の始発バスに乗り込む。立つ人もいるから空いてるバスにさっさと乗り込むべし!

以前まではトロリーバスだったが今は電動バスだ。

 

バスに20分ほど揺られ、降り立った時の冷え込みに坑道作業の困難さをわずかでも感じることができる。

実は映画「黒部の太陽」を見たことがある。子供の頃、親がレンタルで借りてきたのを一緒に見たのだ。実際に見たことがある人って意外と少ないと思うけど、主演の石原裕次郎の開通したときの喜びを爆発させる演技は今でも強烈に覚えている。

さあ、ここは寒すぎる。あの光の向こうへ行こうじゃあーりませんかー。

 

ミ・アモーレの世界へよーこそ!

道楽ハイカー達が一斉に歓声を上げる。何を歌ってるかさっぱり聞こえない中森明菜とは異なる大歓声だ。

こんな晴天の下で飲めるビール最高だぜー!と今から感激してるんだろう。

完璧な青空を見上げ、下戸の自分だってテンションアゲアゲだ。

 

初めて見る黒部ダムの高さに足がすくみっぱなしだ。地元の瑞梅寺ダムとはえらい違いだ。

高いところがほんと嫌いだけど、これは覗き込まずにはいられない。

 

バスのお次はケーブルカーで移動。

聞いてた通りの乗り換えラッシュが続く。直線距離は短いのに乗り換えばかりでなかなか近づかない都内の交通事情みたいだ。

しかもテント泊装備のデカザックの担いで下ろして、また担いでの繰り返しに早々にゲンナリしてきた。

ケーブルカーは座席は少ないから当然立ったけど、ザックの置き場に困らない立ちの方が都合がよろしい。

 

お次はロープウェイに乗り換え。

扇沢でバスに乗り込んだ時の意気揚々とした気持ちはとっくに夜明けのラナウェイして、長州力による掟破りの逆サソリに苦悶の表情を浮かべる藤波ばりの乗り換えだ。

この試練の先に厄除けが待っている。そう思って再びデカザックを下ろしては背負うを繰り返す。

往復9,470円は伊達じゃない。

 

雪崩が多い場所だから途中に支柱がないことで有名なロープウェイ。

でも並行してる送電線には支柱たくさんあるんだなーと思って見てた。そんなウリを台無しにする点ばかり気付いてしまう、なんてつまらない男だ。

 

ロープウェイのお次はバス移動。

ほんとは座れたはずなのに、列を無視したお兄さんに割り込みを食らい、自分だけが立つという幸先の悪さ。

まあいい。これぐらいのこと長く生きてればザラだ。割り込み食らった分、何か良いことが起きてくれると思うしかない。

しかし、お兄さんはこの後自分のテントのすぐ隣に張り、夜中に爆音のビニール音によって自分の眠りにまで割り込みをかまし、泣かされることになる。

 

やっと着いた…。

それまで憧れだった室堂に着いたと言うのに、出てきた感想はそれだけだった。

販売員がやけにテンション高めに客を呼び込んでるが、集客はイマイチだ。そりゃ着くなりわざわざ荷物を増やす人はおらんよ。

黒部ダムで見上げた立山の壮観な景色を期待したけど売店ラッシュで幕を開ける。

 

ふぅ…。階段で屋上まで上がるのか。

乗り換えが終わり、やっと外の空気が吸えると思いきや、まるでデパ地下にいる気分だ。

2階がレストランで更にその上が地上というそれまで思い描いていた室堂とのギャップに、なぜこぞってハイカーが立山に集まるのかさっぱり理解できないでいた。

 

晴天の室堂から紅葉の雷鳥沢へ

完全理解!!

すごい!こりはパラダイス…銀河…ですかえ?

こりゃハイカー集まるわ。すんげー景色だ!

 

感動に震えてる場合じゃない。シルバーウィークのテン場は激しく混む。

とりあえず立山玉殿の湧水で水分補給だけして、さっさと雷鳥沢に行かねば!

 

「立山」の石碑の前で記念撮影をしたかったが、あの長蛇の列を前にたじろいだ。

まあ、こうなるわな。帰りに撮ればいいやとここは諦めた(判断に要した時間0.1秒)。

ちなみに背景に見えるのは立山三山の一座、浄土山だ。

 

雷鳥沢まで石畳のトレイルが続く。右に見える山並みは立山の主峰雄山だ。

3,000m峰の圧倒的な景色に鼻汁が止まらない。

 

左側には今日登る予定の奥大日岳が見えてきた。

草紅葉もいい感じ。

 

乗り換えによって精神はボロボロにやられたけど、体力的には元気だ。初めての立山の景色に感動しまくってて全然気付かなかったけど、帰りはこの長い長い石畳の果てに死兆星を見た。

 

分かりやすく山名を書いてみた。

立山とみくりが池が美しかった。

立山とは雄山、大汝山、富士ノ折立の総称。

その立山と別山、浄土山を加えたのが本当の立山三山。

「本当の」と付けたのは、雄山、大汝山、富士ノ折立で立山三山だと言い張る頑固な方もいらっしゃるので。

まあ本人の達成感が一番大事だと思うから、この際どっちでもいいんだけど、正しくは違うのよん。

 

絶景続きで脳内麻痺を起こしてたから、この時はこんなアップダウンは全く苦にしなかった。

くどいけど帰りは死んだ。

 

雷鳥沢のテント場が見えてきた!

もったいない結構下るなー(帰りは登る)

しかし始発のバスに乗れた甲斐あって、テン場はまだまだ空いてる!

 

ほぼ全額を楽天ポイントでゲットしたニーモの軽量テントをさっさと張り終えた。ありがとう楽天カードマン。

ローカスギアのクフとずいぶん悩んだけど、クフならファイントラックのツエルトで十分だし、そんなことより重くてかさばる年季の入ったモンベルステラリッジテントの買い替えを優先させて、ダブルウォールにこだわった。

またモンベルでも良かったんだけど、ニーモは軽いのに、長辺が長くて横になっても足がつかないのが決めたポイント。

軽量化するためにめんどくさい仕掛けがいくつかあって設置に手間取るけど、慣れてしまえばなんちゃない。結果的に大正解だった。

 

さて、大日三山はそれなりにコースタイムが長いから、とっとと出発だ!

 

それにしてもなんと素晴らしいテント場だ。これでテントの盗難事件が無ければ非の打ち所がないのに残念だね。

先日登った白山こそがこの世の極楽浄土だと思ったが、数週間で訂正するという朝令暮改を発動する!

 

大日三山 厄除け登山開始

テン場を突き抜ける。このテン場の雰囲気の良さで分かる通り、登山なんぞせずにキャンプだけを楽しみに来る人も多いらしい。納得だ。

 

雷鳥沢テント場にあるテント受付所とトイレ。

ここのトイレは水洗。ずーっと水が流れ続けてるから臭いはないし、洗い場にはなんと石鹸が備え付けられてる。

もう山登りはいい。キャンプだけを楽しもう。

楽な方に流されるのはとても簡単だ。こんな天国にいるんだし流されるのもいいじゃないか。きっと楽しいよ。

歩きながらしばらくそんな葛藤をしてたのを白状する。

 

スペースはまだまだスカスカだ。

シルバーウィークだからって警戒し過ぎたなと思った。大日三山を終えて戻ってきたら軽く3倍は増えてたけど。

つか、いい加減出発しろ!

 

テン場の横を流れる清流を渡る。

高所恐怖症なだけに、この高さでもう無理。すくみまくりだ。今回の登山で最大の難所と言っても過言ではないと本気で思った。

どうでもいいが、この橋を渡ってからがやっと登山開始。

どんだけ尺を使うんだか。既に書き疲れたぜぃ。

 

そんな難所を過ぎれば、早速、秋色に色づいた厄除けタイムの始まりだ。

メジャー級の立山を前に大日三山はマイナー感を出してはいるが、歩き始めからこんな絶景でギャップ萌えを見せつけてくるあたり、あざと女子の抜かり無さに似た計算高さ。

嫌いじゃない!

 

右を向けばチングルマの綿毛がたなびく大パノラマ。それに別山から真砂岳への稜線の美しさよ。

うーん、あざと過ぎっ!

(「あざとい」を使ってみたいだけ)

しかし、本当にこの時点で高い交通費の元を取ったと確信した。

 

一年で一番良い時期だしね。

本当なら二泊三日で室堂〜池ノ平〜内蔵助平〜黒部ダムという裏剱を歩くつもりだったんだけど、台風が直撃した関係で一泊二日の立山登山に変更を余儀なくされた。でも結果オーライ。

裏剱に行けなかったのは残念だったけど、ベリーベストな選択ができたと思う。

 

先は長い。かと言って急いで登るのはもったいない。

お祓い登山に来たのであって、修行しに来たのではないのだ。ちんたら歩くに限る。

2回言う、修行しに来たのではないのだ。

 

大日三山を雷鳥沢からピストンする人はあまりいない。

少なくとも今回の2週間前後のヤマレコやYAMAPをチェックした限りではそんな人いなかった。

ほとんどの人が奥大日岳のピストンか、称和滝へ下山するルートを選択している。

三山の縦走ピストンってことは、計5座のピークを踏むことになるわけだし、しかも最高峰が奥大日岳だから戻りはえげつない登り返しが待ち受けてる訳で、あまり効率的なルートではないのは確か。

 

あんナー、あたしナー、ほんまにナー、ひがしまるのうどんスープ好きやんかー。

藤原紀香の関西弁ばりに不自然なゆっくりペースで進まないと必然的にバテるって訳よ。

 

それにしてもトレラン風に軽装で楽しむ人ってここ5年で一気に増えたよなー。下山中ところどころ走ったりして、見るからに厄払いとは縁がなさそうなキャピキャピ感で軽やかだ。

しかも、軽装だから大日三山縦走でもするのかと思えばそうではない。雷鳥沢から奥大日岳のピストンで済ませちゃうライトなスケジュールで済ますあたり、実にスマートだ。

くどいが、自分は決して修行しにきた訳ではない。

 

振り返る室堂。左奥にそびえる山は浄土山だ。

一年を通じてこんな当たりの登山って2、3回あるかどうか。

雷鳥沢でキャンプだけを楽しまれる方々の世界に自分も流されかかったが、それぜったい損してるからッ!と今なら言える。

 

大日三山って、今回立山に来ることになって初めて知ったけど、岩ばかりの立山に比べて草原が続いててめちゃくちゃ気持ちいい。浅はかな男はすっかりあざと女子にメロメロだ。

右奥に見えてきたピークが奥大日岳。

 

眼下に流れる川はテン場の横を流れてた称和川。他の支流と合流して水量が増している。

海に向かって延々と流れていく。

 

遠くに見えるのは、前回登った白山。

さすが2,700mもあるだけに雲海から突き出た存在。

白山、立山と霊山続きだが、霊山のラスボス富士山には登らない。もう時期的に遅いってのもあるけど、紅葉も楽しめないし、それこそ修行でしかない山だからね。もうそういう登山は卒業したのだ。

 

あちらは通好みの毛勝三山。

いつか行ってみたい。いつかね。

 

ゲラっゲラっゲラっ、デザイア的絶景!

中森明菜は声が小さ過ぎて何を歌ってるか聞こえないが、この曲だけは最初かららしくないハイテンションで始まり、中森明菜もそれまで見せたことのないノリノリダンスをかます。

どうしたというのだ、中森明菜。本田美奈子にでも触発されたか?

しかし、そんな周囲の心配をよそに、Aメロが始まった途端低姿勢で微動だにせず、真っ逆さまに声のボリュームを下げいつも通り何やらボソボソと喋っている。Aメロを口ずさんでいるのか、ただの独り言なのか、さっぱり分からない。

そんな意味不明な展開が繰り広げられるデザイアだが、嫌いじゃない!

何の話だ、こりは。

 

話を戻そう。

振り返れば霊峰立山。勝手にきれいな山をイメージしてたけど、いかり肩で実に無骨。

穂高岳や槍ヶ岳とは一味違う、存在感のある山だ。

 

秋の代表格、リンドウは満開だ。

ホームセンターで1ポット280円で売られてた。

金になるぞって意味じゃなくてその逆。盗掘ハンター達よ、たったそれっぽっちの金で大事な自然を採取するんじゃないよ!

 

海外の山に登ったことはないけど、日本の山とは思えない爽快な景色だ。

こんな伸びやかなトレイル、なかなか見たことない。

奥大日岳への登りはまったく苦にならなかった。

 

奥大日岳に近づいてくるとそれまで隠れていた剱岳も姿を見せた。

剱岳から伸びる長大な尾根が「試練と憧れ」で有名な早月尾根。この尾根を雪の時期に登るエキスパート達なら試練と言っても許されるかもしれない。

自分もテント装備で夏に歩いたけど、もはや地獄の修練だった。間違いなく試練だったのだが、それでも試練だなんて言ったら笑われてしまうだろう。登山界はネジぶっ飛び系な濃いメンが多く、道楽ハイカーの頑張りなんて1ミリも理解してくれない。いっそエベレストにでも登らないと試練という言葉の使用許可は下りないのかもしれない。

だから、大日三山ごときで決して「試練」など使ってはならない。使った瞬間、当ブログは炎上してしまうかもしれない(前フリ)。

肉眼で早月小屋を確認しながら、そう思った。

 

奥大日岳の山頂までもう少しだ。

心が美しすぎる自分には、これ以上浄化される邪心はつゆほども残っちゃいないが、まさに心が洗われる風景だ。

 

左を見れば、室堂へと向かうバスがひっきりなしにやってくる。シルバーウィークだから臨時便も出てることだろう。

コロナ禍でも室堂は別世界だ。山小屋が多く点在し、三ツ星ホテルもある立山だけど、どこの宿も満室御礼。とにかくすごい賑わいだ。

 

稜線の向こうにこの後登る予定の中大日岳と大日岳が見えてきた。なかなかのアップダウンが待ってるじゃないか。

つーか、奥大日岳からの下りがえげつなくてどん引きだ。

 

先ばかり見てたらゴールが遠すぎて心が折れてしまう。

目の前はこんな雲上のトレイルなのだ。さあ雲の上を進もう。

 

立山でタテヤマリンドウが見られるという些細な悦。

 

奥大日岳山頂でお祓い

青空に吸い込まれていく厄除け大師。

さあ、強烈な呪縛を解き放て。まずは霊峰立山の前哨戦、奥大日岳を手中に収めようぞ。

 

池塘で泳ぐカエル直前のおたま発見。

早くカエルにならないと冬を越せないぞ。

 

さあ到着だ。青すぎる空。

お祓い目的で来たのに、こんな完璧な条件で登山を楽しめちゃったもんだから、逆に今後すべてのツキから見放されそうで怖い。

 

映画「点の記」で有名な剱岳の頂に、鼻くそ投下だ。

 

これまで後立山連峰から指をくわえて見てきた立山。

こうやって改めて立山を見てみると、爺ヶ岳から見た特徴的な四角い山って雄山のことだったんだなーとか、これでやっと繋がった。

 

奥大日岳からの激下り

さて、厄除けの旅はまだまだ始まったばかりだ。

次なる中大日岳、大日岳に向けてガツンと下る。

何度も言うが、大日三山の最高峰は奥大日岳だ。サンタナやワムゥとの戦いの前にラスボスカーズをやっつけてしまったパティーン。

カーズをやっつけた自分はこの先に待ち受けるサンタナなどは敵ではないのだ。

 

アハハハー、眼下に見える中大日岳と大日岳があんな低いー。なんでわざわざ低いところに登るんだろー、アハハハー。

復路の登り返しを考えたら、そのまま心臓が止まってしまいそうだ。

 

遠くに槍ヶ岳〜穂高、笠ヶ岳が見える。

この日、長野で大きな地震があって槍ヶ岳の北鎌尾根で撮影された落石の動画をヤフーニュースで見た。

自分のようなチキン野郎が北鎌尾根なんて行くなんてありえないけど、改めて行くもんかと思った。

 

ナナカマドの間を下っていく。

左は色づいてるけど右はまだまだ緑。日照時間で差が出たのだろうか。まだこの時はそんな自然を楽しむ余裕があった。。

 

台風が過ぎた翌日なだけに至るところにブービートラップが残されている。

防水ブーツではなく、毎度の激安でゲットしたナイキのトレランシューズだから落ちた瞬間、靴下までびっちょりだ。

 

奥大日岳から命を削るが如く、激しく標高を下げていく。

やっと大日岳と同じ標高ぐらいまで下がってきただろうか。もうこれぐらいでいいよ。もう標高下げなくていいって。何度も大日如来様にお願いした。

 

ひー!!

しかし、無情にもここからが本格的に急転直下の激下りの始まりだった。あまりの落差に脱糞してしまいそうだが、これは腹下しではなく紛れもなく激下りだ。

今回のルートで唯一の鎖場を通過しながら、大日岳まで行く必要は本当にあるのだろうか?とガチで考え始めた。

 

散々下った先に見えてきた昇り龍が如き登り返し。富士急ハイランドのド・ドンパを超える急上昇に顔面蒼白ってやつだ。

しかもよく見ればピークが3つあるじゃないか。どういうこと?中大日岳の手前にある小ピークがサンタナ、奥の2座がエシディシとワムゥということか。

まあサンタナみたいな雑魚はいい。

しかし、大日三山をピストンすることで計5座登るというのは今更ながら大誤算だ。

 

縦走路を遠くまで俯瞰してゲンナリして、そして目の前の黄葉にヒャッハーと一喜一憂する単細胞。

この脳内催眠をうまく使いながらなら、最後まで疲れずに行けるんじゃないか?

アハハー楽勝じゃねー?ダイニチ楽勝じゃねー?

 

のいちご。

 

再び始まる登りと紅葉した七福園

最低の鞍部まで下りてきた。

ここから始まるド・ドンパ。ちなみにこの翌日は立山三山を歩く予定だけど、この時はまだ「立山三山なんて楽勝じゃね?(鼻ほじほじ)」って甘く見てたから、今日の大日三山で足を使い切っちゃってもなんとかなるだろうなと思っていた。

まあ、立山三山で散々な目に遭い、お祓いに来たはずが寿命を縮める修行となってしまったのは次のお話。

 

とっととサンタナ的な小ピークはやっつけた。そして今左に見えるのが中大日岳。右奥が大日岳だ。

中大日岳と大日岳の間に大日小屋があるから少し休んでいこう。急ぐ旅じゃないからできるこのゆとり。テントに戻るだけだから、帰りの時間を気にしなくて良いのだよ。

 

この登りの先に鼻血を吹き出す絶景が待っていることを知る由もなかった。

 

完璧な庭園!七福園だ。

秋の立山でこの景色を見ずして帰るなんて、日光を見ずして結構と言うなかれだ。

大日三山に登らなくてもいいからここにだけは来るべしっ!アホみたいに下ってきた甲斐があったよ。

 

七福園を振り返ってからの立山の景色はシーザーのシャボンランチャーの如き美しさ。

日本庭園以上の日本庭園。もはや銀河。

すごいじゃないか大日三山!

 

中大日岳へと続く木道は極楽浄土へ向かうかの様な爽快なスカイトレイルだ。

もう疲れは完全に吹っ飛んだ(気にさせる)。

 

中大日岳の質素なピークに気付かなかった。

山名を記載した板って風で飛んでいかないんだろうかといつも思う。

でもこの素朴さがいい。

 

さあ、残すは大日岳だけだ。

折角だから手前に見える大日小屋に立ち寄ってみよう。

 

小屋の前のベンチで持ってきたカップラーメンを食べるか悩んだが、折角だから小屋のランチメニューを食べることにした。

ここは霊山であり楽園でもあるのだ。楽しまにゃ損だよ。

 

カレー以上、且つ、うどん以上に美味いカレーうどんだった。あまりに美味かったから思わずバイトの兄やんに「シェフを呼んでくれないか」と言いたくなった。

きっとそのバイトの兄やんが作ったんだろうけど。

カレーうどんをすすり、温かいお茶を飲む。やはりカレーうどんには冷たい水が欲しくなる。

バイトの兄やんに水はないですか?と聞くと「お茶しかなくて…ペットボトルでの購入になります」という回答には軽くズッコケたけど、その困った様子にこっちが困ったよ。変なこと言ってごめんちゃいね、お茶が有り難いよ、ほんと。

 

ランプのアルコールを入れ直すバイトくん。

小屋が一段落した時間の一コマね。

 

いよいよ最後のピーク大日岳へ

さあ食ったら最後の登りだ(本当はピストンだから最後のピークではない)。

奥大日岳からの激下りでは鬱のどん底に落とされたが、この目の前のピークは実に清冽な姿でそんな苦労を忘れさせてくれる。

 

ここでも雲上のスカイトレイル。

どこもかしこもグレートビューだ。

 

やっと着いた。標高2,591m。

大日三山を制覇した。これできっと厄の半分は取り払われたに違いない。残りの半分は明日の立山三山で完璧に祓われるはずだ。

ちなみに雷鳥沢キャンプ場の標高が2,280mだから単純標高差は約300mほどしかない。

なのにテントに戻ってみたら累積で1,400m以上も登ってたというジラレヘン結果。

 

しかし、そんなアホなプランを敢行したからこそ見られる景色がある。

これだけ歩けば剱岳と立山を1枚の写真に収めることが可能だ。APS-Cで18mm撮影だよ。

 

そして圧倒的だったのが右手前の薬師岳。

今年の五色ヶ原〜薬師岳も裏剱同様、台風の影響で流れちゃったけど、もう何年も狙ってるルートだから来年も最優先に歩きたい候補地だ。

厄に殺されてしまう前に行きたい。

 

剱岳へもペコリンぬ。

早月尾根から登った時は、登り始めは猛烈な暑さに襲われ、途中で雨に降られ、ガスガスの岩場を越えた果てにガスガスの山頂という、世界のすべてをガスにした様な登山だったけど、早月小屋に戻って見上げた虹のアーチと、達成感は今でもよく覚えている。

大変な目にあったのに、不思議ともし機会があればもう1回なら登ってもいいと思っている。

 

雲海が切れた先に北陸の海が見える。

雲平線という言葉があるのか知らないけど、水平線と重なって不思議な光景。

紛れもなく山の上からでしか見られない景色だ。

 

立山をズームしてみる。右が立山(雄山)。真ん中の低いピークが真砂岳で、左奥が別山だ。

明日、ほんとにあそこ登るのかなぁ…。おぞろじいぜ…。

しかし改めて立山の山の形はなかなか特徴的で愛嬌がある。可愛いあだ名を付けてあげたい。いかり肩岩男くんだ。

我ながらネーミングのセンスがクソ過ぎて考えるのやめた。

 

引いて見てみるとこんなに遠くて現実に戻された。

雷鳥沢キャンプ場はあの立山の麓にある。あそこまで帰るなんて、馬鹿じゃないの?

なんちゅうプランを考えたんだ。

30分ほど山頂で休んだら下山開始しますかね…。

 

ゲッザーン開始

今回のルートは終始、剣岳の眺めが圧巻だった。

往路では剱岳と立山を背にして歩くから、復路の方が景色は良い。だから大日三山は称和滝から奥大日岳に登って雷鳥沢を目指すルートが良いと思う。

 

七福園で外国人が

「wa〜o!ヮ(゚д゚)ォ!」

と言って立ち止まってた。

ほんとにワ〜オ!って言うんだな。

 

中大日岳に登り返した後は下る。

下山らしくどんどん下る。

ふむ、正しいあり方だ。

 

正しくないから!!

 

この奥大日岳への強烈な登り返し、この傾斜はまさにリアルドドンパだ。肋骨どころか体中の骨が粉々。

大日三山ごときで試練だなんて使うなとお叱りを受けそうだが、

 

こりは確実に試練だ。

 

結局、今回も修行登山になってしまった。ジョースター家の宿命なのか、はたまたピストンを選択した浅はか計画ゆえか(とーぜん浅はかさだ)。

登り返しのことはなるべく考えないようにしてきたが、容赦なくカーズとの再戦のゴングが鳴り響く。

これが厄除けという目的じゃなかったのなら、ピストンなんて手段は取らなかっただろう。

仕方ないのだ。これで厄とはおさらばだ。

だが疑問が残る。

今更だけど、ほんとにお祓いってできたのか?

実は大日岳の山頂に霊峰らしきスピリチュアルな物は見当たらなかった。お札とか。

という訳でヤマケイで調べてみると、こう書いてあった。

「奥大日岳は、霊峰立山の前衛峰として大日如来体現の聖地であった」

 

過去形かよ!!

 

まさか昔は聖地だったという説明に愕然としたが、薄々そんな気はしていた。

もはや厄除けの効果ゼロ登山になってしまったが、奥大日岳への登り返しは残念ながら巻道がない。

ジョセフとっておきの戦術「逃げるんだよぉぉぉー!!」はここでは通用しないのだ。

立山にやって来る前に何度も何度も「修行はしない」と宣誓していたが、お祓いという目的を失って残ったのは修行という恒例行事だけだ。または鍛錬と言い換えても良い。

胸を張って言ってやれ。あちきは今、奥大日岳を2回登るというハードな鍛錬を堪能しているのだ!と。

馬鹿じゃないの?

 

苦行の末たどり着いた山頂は、山と道のハーフパンツとオシャンティなシャツ、キャップとサングラスで頭から足のつま先までキメにキメまくったグループが醸し出すキャピキャピ感で満ちていた。

対して今の自分は両鼻から透明なゾンビ汁が出てる粗末な顔。

おシャンティな彼ら彼女らのユートピアに、今自分が一歩踏み出せば一瞬にして泣き叫び、阿鼻叫喚の恐山に様変わりしてしまうことだろう。

なんでだろう。なんだか人生に疲れてしまった気分だ。

あそこに立ち寄るのはやめておこう。もう悲しみを見るのはたくさんだ。

 

あとはテン場に戻るだけた。もう登らなくて良いんだ。そう思ったら早くもやり切った感で涙が止まらない。

危険箇所だって無いし、日が暮れたっていいや。

これは諦めではない、むしろ開放された気分なのだ。誰がなんと言おうと最高の気分なのだ。

何度も立ち止まり、このドラマティックな大パノラマを堪能してやるんだ。

 

さっきまで真上にあった太陽がすこい速さで西日になっていく。

 

剱岳を眺めながら、北陸の焼き鯖寿司を喰らうという贅沢を敢行しようじゃないかッ!

紅葉に色づいたかのような焼き鯖の色はエイジャの赤石よ様だ。

サバの油によって全ての指がツヤツヤに輝いた。

 

焼き鯖色に色付いた雷鳥沢キャンプ場が見えてきた。

登山初心者からエキスパートまで、誰にとっても聖なる場所だ。アーメン。

登山せずに雷鳥沢でキャンプだけ楽しむ人は損してるからッ!と意見を変えたが、もとい、やはりアリだと思う。

もう疲れちった。

 

シラタマ。

 

赤く色付いたチングルマと草紅葉に西日が当たると、それは太陽系イチの絶景だ。

この光景に感動してたら、さきほどのオシャンティ軍団が駆け抜けていった。なんて軽やかなんだ。もったいないぞ。

 

こちとらもはや足が上がらず、ちょっとした段差にもつまづいて「うあっ!ほえっ!」と変なうめき声を上げながら歩くしかない。

立山は初日から俺に牙を剥いたか…。

どの雑誌でも大日三山のモデルコースは、初日は室堂から雷鳥沢までで、2日目は称和滝まで、3日目にゆっくり帰るという悠々自適の2泊コースで紹介する雑誌ばかりだ。

やはり自業自得が招いた結果なのねん。

 

ロッジ立山の温泉とたけのこの里

テン場に着くなり倒れ込んだ。

完全に燃え尽きて、今や発する声は中森明菜より小さい。

隣でテントを張っている方々から、どこの戦線から還ってきたのか?という白い視線を感じる。

試練を堪能してきましたぜ…

 

しかし、どんなに疲れててもさすが立山、癒やしの温泉があるという素晴らしいホスピタリティはさすが!

夕方になって冷え込んできたし、仙豆以上の効果が期待できるっ!

ちなみに雷鳥沢キャンプ場は無料Wi-Fiも飛んでて超便利。

You Tubeで登録チャンネルにしてるラブラドールレトリバーとパンダを視聴して癒やされたのであった。

 

温泉は、雷鳥沢キャンプ場から近くのロッジ立山連峰を利用させてもらった。

家族連れとバッティングし、湯船は子供3人による大水泳大会が繰り広げられていた。その型にはまらない泳ぎ方こそが真の自由形だぞ。

 

ロッジ立山連峰を出ると。まだ明るかった。

真っ暗だと思ってたから意外だったよ。

 

テン場に戻ってくると夕焼け直後で、この直後すぐ真っ暗になった。山の夜がやってくる。

 

山の夜はたけのこの里だと相場は決まっている。

楽しみにしてたのよん。

気圧でパンパンに膨れ上がったたけのこの里、開けるよ。

オラぁわくわくすっぞ!

 

ひ、ひーー!!!

日向のテント内は猛暑だ。そんなテントに放置されたたけのこの里は可哀想なまでにぐちょぐちょに溶け、見るも無惨な姿に成り果ててしまった。

さらに都合が悪いことに、気圧で風船みたいに膨らんだため中身が真ん中に寄り、もはやチョコ団子状態だ。

楽しみにしてたのに、頑張って歩いたのに。厄払いができなかったからか?

涙が止まらない。

悲しみに暮れ、ラブラドールレトリバーのYouTubeに癒やされ、初日の夜の帳が下りた。

 

振り返って

 

お祓いはできなかったけど、往復9,470円もかかったけど、乗り継ぎの連続でくたくたになったけど、9月下旬の立山は間違いなく来る価値はあったよ。

登り始めから最後まですっきりした青空、見渡す限りの雲海、そして紅葉も期待通り。

立山の紅葉は9月下旬〜10月上旬がピーク。

10月上旬になると雪は降らなくても一段と寒くなるから、台風シーズンで難しいけどなるべくなら9月を狙うべし!

迷い迷わされて9月にカーニバルすべし!だ!

 

シルバーウィークでテン場の大混雑を予想したけど、穂高岳山荘や涸沢、黒部五郎でどこにも張る余地がない!という激混みを経験してしまえば、まだまだ余裕だなーと思えるぐらいの混雑っぷりでちょっと安心した。

ヤマケイの説明を読んで「昔は霊山だった」という説明にはガッガリしたけど、チョコ団子になった「たけのこの里」に激しくガッカリしたけど、360度紅葉した山々に囲まれて温泉まである雷鳥沢キャンプ場は間違いなく天国だった。

明日はいよいよ本物の霊山。スピリチュアルな冒険もいよいよ第3部、立山編に突入だ。

まだまだ続く、今世紀最大のお祓いスペクタクル。

柱の男編(完)

 

【今回の使用カメラ】

富士フイルムX-T1、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS。


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