この村には、60歳になった年寄りを山に捨ててこなくてはならない恐ろしいしきたりがある。
60歳になった母を山に捨てるのが不憫でならなかった男は、何日も何日も思い悩んたが、もうこれ以上、村人たちの目から隠せないと覚悟した。
泣く泣く母親をおぶり、薄暗くなった山道を歩く。
おっかあ、ごめん。
泣いて謝る息子に、母は、
「帰りは暗くなるから、ところどころ木の枝を折っといたよ。それを目印に迷わず帰るんだよ」と、
こんな時でも息子の心配をしたのだった。
こんな優しいおっかあをとても山になんて捨てらんねぇ!オラにはできねぇ!と、
山から母をおぶって帰り、床下に大きな穴を掘って住まわせた。
しばらく経ったある日のこと、殿様がなぞなぞを出した。それを解いた者には褒美を取らすと村にも御触れが届いた。
「山頂に着いたら誰もがすることってな~に?」
そりゃ決まってんべ、のんびり握り飯食うだよ。
いやいや、縦走するべよ。
オラはゴリラ化して吠えるだなぁ。
その難問を解けた者はいなかった。
息子が家に帰って母にたずねてみると、「そったらこと簡単なことでねぇか」。
息子は母の言った通りのことを殿様宛の文にしたため、届けた。
お見ごと!!正解。
答えは、「下山」。
褒美を取らせるべく、息子を城に呼んだ殿様は上機嫌だ。そして、息子は恐る恐るこう切り出した。
「実は、年老いた母に答えを聞きました。山に人を捨ててきてはいけない。下山が答えなのですから。」
矛盾に気付いた殿様は自らを恥じ、悪しきしきたりを正すことを約束したのだった。
そんなわけで、今回は福島県の会津駒ヶ岳に登ってきたでごわす。
ひゃっはー!国宝級にきれいな景色!
いやいや、違う。あたしゃね、会津駒ヶ岳に無雪期にこそ登りたいのよ。
そげん言い続けて約5年。今度こそ念願が叶うはずだったのに…、
何を間違えたか、白く冷たい雪なるものが降り続けているじゃあ~あーりませんか。
10月末。たしかにこの季節って予期せぬ雪に遭遇して、震えながら下山することがある。
ムズいぜー。
この山の見どころは、なんと言っても山頂に広がる草原と池塘。
前に登りに来た時は残雪期。池塘は5m以上積もった雪の下。
今度こそは、今度こそは!
まだ雪は降り始めたばかりだし、池塘は大丈夫、見られるっしょ!と、登頂してきた。
その結果やいかに。。。
登山口付近の紅葉はちょうど見頃!
会津駒ヶ岳は福島県檜枝岐村にある標高2,133m、日本百名山、花の百名山。
ルートとコースタイム
■2022年10月30日 ※カッコ内は標準コースタイム
滝沢登山口⇒(180分)⇒駒の小屋⇒(15分)⇒山頂⇒(15分)⇒駒の小屋⇒(140分)⇒滝沢登山口
コースタイム:5時間50分(休憩含まず)
総距離 9.4キロ
累積標高上り 1,135m
会津駒ヶ岳紅葉登山 本編
滝沢登山口から紅葉のブナ林へ
東北の紅葉シーズンも終わりかけ。
ラスト紅葉を楽しもうと、多くの駆け込みハイカー達によって駐車場は満車。
路肩にもズラりと車が並んでいる。
いつもは登り始めるまでの序章が長い当ブログだけど、こちらが会津駒ヶ岳の登山口。
会津駒ヶ岳は2回目だから登山口は覚えてたけど、この階段を上がった先は全部雪に覆われてて直登できたから、実質、初めて登る山みたいな感覚。
楽しみですたい。
山頂までは5.3km。
まあまあの距離だね。往復10.6km。中門岳にも立ち寄るから全体で15kmほどになるはず。
登山開始とともに始まる紅葉フェス。
ちと曇っててコントラストが弱いけど、色づきは完璧。
いきなりだけど、写真撮りまくりで足が進まない。
しかも晴れた。
やっぱ青空に紅葉は映えるわーバイエルンやわー。
序盤から見せ場がやって来てコーフン気味。
何もかもが真っ黄色で、もはやどこがトレイルなのか分からない。
ラップやセロハンテープの切れ目が分からないのと同じ。
いや、ぜんぜん違う。
特にラップは島流しに値する事案だ。
会津駒ヶ岳にして良かったでごわす。
無雪期の会津駒ヶ岳に登るという念願がやっと叶った。
この時はまさか山頂が雪に覆われているなんて、知る由もなかったんだけど…。
やっぱ秋だなやー。だなやだなやー。
新緑や花の時期もいいけど、短い秋を楽しまないと登山してる意味ないわー!ぐわーはっはっはっ。
ぐらいのことは言ってたと思う。
完全にウカれゴリラだった。
相変わらず、似たような写真ばかり撮り続けている。
広大なブナ林にカエデが混ざる、美しい福島の森。
すぐ隣が尾瀬という日本を代表する大自然を感じられるエリアなだけに山深さはレベチ。
カエデが燃える。山が燃えてるみたいでごわす。
太陽も元気。
めっちゃ元気。
今日も晴れ男ぶりをいかんなく発揮。
ますます手がつけられない浮かれゴリラ。お前が晴れさせたわけではあるまいに。
うんこにならない(言葉にならない風に)。
ただでさえ陳腐なコメントにも拍車がかかる。
この後でどうなるかも知らずに。
ゆっくり標高をあげていくと、紅葉は落葉へと変わる。
山頂まで2.9km。
だいたい半分ぐらい来た。
ここで軽く栄養補給。
行動食はいつも通りおにぎりだけど、具材はかき揚げという高カロリーをチョイス。
今日もあたかも観光客の様な軽装でやって来たけど、そろそろ寒さの限界だとバツサインを送っている。
ワールドカップに触発され、選手交代を要求するかの様な仕草がダサい。
ところで、熊笹に積もる白いものは夢か幻か。
まさかの秋から冬へ
熊笹の上に積もっていようが、トレイルを覆うような雪ではない。
ふんっ。取るに足らぬわ。これしきの雪でこのゴリラの進軍は止められぬわーと、ここら辺まではまだ強気。
遠くの山々までよく見える。天気は良い。
レインウエアを上から羽織れば寒さには耐えられる。ちなみにフリースも持ってきてるから、なんだかんだで準備は万端。
あれ?
そう言った途端、
ガスに包まれる。
そして降り出した細かい雪。降った雪が簡単に積もっていく。
登山口で3℃だったんたから、今は間違いなく氷点下だよ。
山頂まで1.2km。寒ぃ。。
美しい景色は続く。
「とんだ天気になっちまったな!」という言葉は封印する。
こうなったら、これを楽しんでやる。
逆境をチャンスに変える男。情熱大陸風に言ってみた。
目当てにしていた池塘は雪には埋まっていなかったものの、期待していた青空を映し出すものではなかった。
しかもなんだ、このどす黒さは。
試しにトレッキングポールで触れてみれば、池塘らしからぬカツっという音。
ふむふむ。
こんなカチコチに凍りついた池塘が見られるなんて、それこそ超貴重なんだ。
こんなことで残念がっちゃいけない。楽しまなきゃ。
だいぶ雪がえらいことになってきたけど、諦めない。山頂は諦めないぞー!!
キン肉マン世代だからこその屁の突っ張り。
懐かしい、駒の小屋だ。前はここに一泊させてもらったんだけど、小屋番さんが常連さんと飲んでばかりであまり良い記憶がない。人気の小屋らしいけどね。
中はどんな感じたったけ?と、立ち寄ってみたけど、中で休もうものなら二度と動けなくなるかもしれないからさっさと先を行くことにした。
当然、こんなところでお昼にしてる人はいない。
秋から冬へ。
一つの山で季節をまたいで楽しめるなんて、こんな贅沢なことはない(T_T)
木道はこんな滑り止めがついてるからアイゼンなしでも歩ける。ありがたや〜。
意地でも山頂へ
から元気。
ズボンはなんと山と道のUltraLightパンツで激寒。靴はアルトラのトレランシューズで激滑り。
さっきフリースも持ってきて準備万端とか言ったけど、下半身はもはや裸。
一足早い冬の寒さを楽しむんだ。
木に当たると落ちてきた雪が首に当たり、猛烈に冬気分が味わえる。
この震え。温暖化の問題を吹き飛ばすリアルな寒さが嬉しいじゃないの。
木道の滑り止めも完全に雪に埋まり、何の役にも立たない。
トレランシューズはゴムが柔らかいから雪に刺さらない。氷の上を歩いてる感覚。
楽しまなきゃ。
雪だるまがラクに作れるレベルに積もった。
もっと楽しまなきゃ。
さあ、山頂だ。笑え。
痛い。痛すぎるじゃないか。
無雪期の会津駒ヶ岳に登るというのがどれだけ難しいかがよく分かった。
一目散にゲッザーン
一目散に下山開始。
長居は無用だ。この天気なら中門岳に向かう必要なし!
すたこらさっさー。
タラちゃんみたいにすたこら歩くイメージで下りていくが、実際にはトレッキングポールで体を支えながら鬼の形相。
ぜぇーぜぇー言いながら、小屋まで戻ってきた。
ここまで一度も滑っていないのが奇跡。
ガスに包まれているがイメージが大切だ。壮大な草原風景を思い浮かべろ。
自分が試されている様で、実に楽しい。
一足早い冬の大絶景
少しでもガスが晴れると、強がりではなく、本当にきれいだ。
一足早く冬を楽しむことができたし、これはまあアリなのかな。
雲の切れ間から一部にだけ日が差して、流れる雲の動きに合わせて日向が動いていく。
こんな天気になったけど、次から次へとハイカーが上がってくる。
駐車場で隣りに停めてたおじさんとすっかり冬になっちゃったねーと挨拶を交わす。それでもピークを目指すあたり、あなたも立派な山ヤロウだよ。
ガスの層を抜けると頭上にお日様が輝きだす。
突然襲ってきたポカポカタイム。
すると、こうなる。
雪より厄介なトレイルの出来上がり。
山の斜面に日が当たると、すっかり落葉し冬に向けて準備万端なブナ林。
振り返れば、山頂方面は今にも晴れそうな雰囲気。
うーん、山頂に戻ろうか?
いやいや、それでガスったらやるせない。
今回は秋と冬を同時に楽しめたと思って、早く下山して、福島名物「裁ち蕎麦」を食べようと決めた。
ちょうど新そばのシーズンだしね。
この写真におさまった山々の中に、熊は何頭いるんだろう。
YouTubeで見た二子山の熊が衝撃過ぎた。
あんな目にあったら、自分は二度と登山はしないだろうな。
鳥の糞に混ざってるやつ見っけ。
再び紅葉の森へ
冬から秋に戻ってきたYo!
静かだ。立ち止まるとシジュウカラが飛び交いながらさえずっている。
冬に向けて鳥もどんどん下へ下へ、里に近づいてきている。
紅葉のカミサマへ、
紅葉と雪景色の一挙両得を感謝しもぉす。
真っ黄色の世界。
予期せぬ雪に焦った後に、この想像を超えてくる紅葉。これが自分が秋山に求めるらしさだ。
フレーム効果ってやつを意識して一枚。
ちなみに、今年歩いた山でブログに書かなかったのが2座あって、その内1つは上州武尊山。この山も冬山しか歩いたことがなかったから、夏道で歩いてみたい山の筆頭だったんだけど、濃厚なガスに包まれてボツにした。
ヤマトタケル像とご対面できたのは良かったんだけど、晴れてくれないと、やはり書くモチベーションが上がらないよ。
脳内でクラッシュしちゃいそうな猛烈な紅葉。
さすが、国内随一の紅葉エリア。
カエデを拾ってなにかに使えないか、しばらく思案。
ぽいっ。
無いね。
真っ赤に色付いたカエデ。
こっちはこれから紅葉になろうとするカエデ。
イケイケなハイカー3人組が紅葉なんぞより、とにかくたくさん歩きに来たんじゃい!と言わんばかりにぶち抜いていった。
もったいないけど、山の楽しみ方は人それぞれ。
うーん、でももったいない。
今日も安全登山あざーっす。
圧倒的な紅葉のお陰で満腹になったよ。
いや、満腹は嘘です。
前回の会津駒ヶ岳で食べ損ねたそば屋の「まる家」さんへ行くのは最初から決めていたプラン。
急いで移動しよう。
待ちに待った新そば
はい、どぼぼーーん。
「まる家」はまさかの完売御礼。本日は早々に店じまいしましたとのこと。
泣けるわー。
新そばの季節。そう簡単には諦める訳にはいかない。
周囲を散策すれば、新そばののぼりと秘湯を守る会の提灯を発見。一挙両得だ。
喜び勇んで店内に入ってみると、食事は宿泊客のみ、風呂もコロナのため日帰り入浴はしていないとのこと。
のぼりしまえ!
くそっ。
13:40
仕方ない。とにかく温泉だけでも入っておこうと、定番の駒の湯に行けば、14時から清掃時間のため13時半で受付は締め切りましたとのこと。
うぐぐっ。。
そう言えば、道の駅に温泉施設があるさと、アルザ尾瀬の郷にやって来た。
温泉の前に、隣りにある食事処で腹ごしらえすることにした。
しかも、本日が今年最後の営業ということで、ぎりぎりセーフ。
ぎりぎりセーフやーんと思いきや、ほとんどが販売終了やーん。
最終日だからね、仕方ない…うぐっ。
新そばを食べに来たのに、よりによってうどんしか残っていないなんて。
松木安太郎風に言えば、下向いてても仕方ないからね!もうね、こうなったらあるものを食べるしかないんだから、前向いて食べて勝ち点3取りに行こう!
と言った感じかな。
山人きのこけんちんうどん、疲れた体にしみたよ。。
温泉から上がって、さっき食べたお店の反対側にも他の食事処があることを発見。
するといきなり目に飛び込んできた「新そば」の文字。
うそやーん。
食券に、檜枝岐名物「裁ち蕎麦」がぁ!!!
ぐあぁぁぁああああ〜!!
言葉にならないおっさんの雄叫びが檜枝岐村に響く。
新そばがぁぁぁああー、食べたかったんだぁぁああおんどりゃがるるるるるー!!
でも泣かない。おっさんだもん。
池塘が凍ってても、雪に降られても、蕎麦が食べれなくても、おっさんはそんなことでは泣かない。
しかし、こんな自分にも一筋の光明が。
それがこちら。直売所。
帰り道、何気なく立ち寄る直売所にこそ、下山後の楽しみが待っているのだ。
アッポー!!
秋ならアッポーに間違いなし!ご主人が薦めてくれた昂林(こうりん)をチョイス。
コーリン!降臨!フォーリン昂林♪
普段から果物はそんな食べる方ではないけど、試しに買ってみたらバリ美味かった。
新そばは食べれなかったけど、りんごで精神もお腹も整った旅となった。
振り返って
全国には姥捨山(うばすてやま)があったり、福島のいわきでは地獄沢に年寄りを捨てていたという話があったり。
昔は凶作の年に口減らしのために、年寄りを捨てていたという話はたくさんあるけど、個人的には日本人がそんなことするとはとても思えないし、肝試しのための作り話であることを願いたいところだよ。
しかし、昔は教育も普及していなかっただろうから、あり得ない話ではないのかも。。
草紅葉と池塘の風景に満足してー、下山したら裁ち蕎麦食べてー、トータルで会津を楽しもうと企画したんだけど、そううまくはいかない。
計画通りに行かないのも旅の良さだから、またここに来なきゃいけない理由ができたと思う。松木安太郎風に言えば、頭切り替えてネ!勝ち点3取りにまた来ましょう!頑張れニッポン!
(ワールドカップのコスタリカ戦に負けた翌日に書いてる)
ちなみに、下山後、久しぶりに風邪をひきました。
ではでは