雨ニモ負ケル、風ニモマケル、
雪にも夏の暑さにも負ける。
そんな夏バテしたおっさんにも八ヶ岳は優しい。
さて、1日2個のスーパーカップ(バニラ)が日課の自分がやって来たのは蓼科山。
前回の南八ヶ岳縦走で「もう八ヶ岳はお腹いっぱい!」と言い放ったばかりだと言うのに、さっそくの朝令暮改。
北アルプスには行きたいけど、長い距離は歩きたくないからね。
でも低山だと暑いし、ラクして涼みたい。
あ、それと無性にカレーが食べたい気分。
そんなわがままハイカーの欲望を満たす山って、日本中見渡しても八ヶ岳しかないんだよね。
そんな魅力あふれる八ヶ岳の蓼科山にえっちらおっちらやって来ました。
蓼科山頂ヒュッテの名物カレーを喰らうために山頂を目指すという食いしん坊プランです。
世の中にあまたいるカレー好きの中でもかなり高い位置にいると自負している。レベルも食い意地も標高も。
「日本イチのカレーオヤジに、俺はなる!」
そんなよく分からないことを息巻いて、のんびり自宅を出発して目指すは「すすらん峠園地駐車場」。
これまで蓼科山登山では大河原峠からと七合目登山口から登ったことがあったので、今回のすずらん峠は初めて。
ちなみにこの翌日も神保町へカレーを食べに出かけるという、まさにカレーまみれとなった猛暑の週末。
とても幸せです。
でもちょっと散財しちゃったから節約しないと(汗)
東にカレーの名店あれば行って食べ尽くし、
西にカレーうどんの名店あればこれまた完食し、
みんなにでくのぼうと呼ばれるカレー好き、そういう者にあたしはなりたい。
標準コースタイム
■2024年8月3日 ※カッコ内は標準コースタイム
すずらん峠園地駐車場⇒(160分)⇒蓼科山山頂⇒(25分)⇒蓼科山荘⇒(70分)⇒天祥寺平(90分)⇒竜源橋登山口⇒(20分)⇒すずらん峠園地駐車場
コースタイム:6時間05分
距離:8.7㎞、累積登り:896m
蓼科山登山(すずらん峠~竜源橋)
すずらん峠園地駐車場から登山スタート
ここは「すずらん峠園地駐車場」。
「七合目登山口からラクして登りたい!」という誘惑と、
「せっかくだし登ったことのないルートを歩いてみたい」
という気持ちの狭間でぐらぐら悩みながらすずらん峠にやって来たよ。
ここの駐車場にはトイレと手洗い場がしっかり完備されてるけど、飲み水は汲めないのでその点だけ気をつけねば。
駐車場のすぐ隣にあるバス停「蓼科山登山口」の前から登山開始。
ちなみにこの道路は美ヶ原まで続くビーナスラインで、夏は浮かれたドライブ客がびゅんびゅん飛ばしててきょわい。
蓼科山の名を冠する登山口なだけに、本来ここが王道ルートのはずだけど、圧倒的に七合目登山口から登る人の方が多いのは当たり前の話。
自分だって3回目の蓼科山でようやく初めて登るわけだからね。
さーて、行きまひょ。
まずは明るくて開放的なトレイルで幕を開ける蓼科山。
ふむふむ、まるで男体山の1号目~2合目みたいな感じ。
一年で一番暑いこの8月1週目に、これまでどこに登ってたか振り返ってみると、
去年は男体山(猛暑)
一昨年は赤城山(猛暑)
よりによって北アルプスとかの高山ではなくて、ぜんぶくっそ暑い山を選んでた(笑)
赤城山は群馬名物の「焼きもろこし」がどうしても食べたくなって、無理して真夏に登ったという食いしん坊プランです。
成長しないのがウリ。
ここからリアル男体山
ここからぐぐっと登っていく。
なんだこれは。
まるで男体山じゃないか。
標高2.110mもあるというのに、ぜんぜん涼しくならないのは一体どういうこと?
わずかな風も通さない鉄壁な樹林帯に恐怖を感じる。
山頂でカレーを食べるつもりで、駐車場では普通サイズのおにぎりをたった1個だけに抑えたもんだから早速シャリバテになった。
そんなわけでここで大きなおにぎりを1個補給。
結局、普通サイズのおにぎりとでっかいおにぎりで、いつも以上に食ってるといううっかりデブ。
少し風が抜けるところがでてきて、やっと一息つけた感じ。
アミノバイタルとかマグオンみたいなエナジージェルを行動食にする人もいるけど、自分はやっぱり白飯に勝るものはないと思うわけです。
もぐもぐ。
少し元気になったから再び歩き始めたけど、すでに暑さにもやられてて、マインド的には撤退したい。
新潟や東北の山なら森林限界だけど、ご覧の通り八ヶ岳ではまだまだ森が深すぎて呼吸困難になりそう。
ゾンビ的な足取りでも歩き続ければ進むもんで、幸徳平というポイントに到着。
カレーという目的が無ければ確実に帰っている。
休憩もとっていいですか?
ごめんね、元気な中学生には分からないよ。
それにしてもハイカーの少ないコースだよ。
蓼科山登山口という蓼科山を冠するルートであるのに、なんとも寂しい。
蓼科山登山と言えば、完全に七合目登山口からのインスタント登山が定着してしまったからだと思うけど、いまの自分が誰よりも七合目から登ればよかったと後悔してるのは間違いない。
いつものパティーン
あれ。
あれれ。
さっきまでの青空、どこ行った?
道をそれて、土砂崩れを起こしたところを見学できたりする。
そして再び男体山ロードをひーひー登る。
同じ独立峰の火山だから似てるのは当たり前なんだろうけど、ここまでそっくりなのかと驚くよ。
アキノキリンソウ。
もしガスが晴れて、眼下に中禅寺湖が広がる様ならそこは男体山。
立ち枯れた木々がでてきたら、なんとなく山頂が近付いたのかなという気がする。
テント泊装備でもないのに、10歩進んでは休むのを繰り返す。
果たして、これ以上頑張る意味はあるのだろうか。
カレー王に俺はなる!
とか言ってたなぁ、オレ…。アホやん。
休みながら花に群がるクマバチを観察。
なんで一つの花をゆっくり味わうことなく忙しそうに動き回るんだろう。
ここからリアル蓼科山
そしてようやくここが男体山ではなく蓼科山だったことを実感させてくれる景色になった。
言っておくが、自分は蓼科山と縁が無い。
これまで七合目登山口と大弛峠から計2回登っているけど、晴れてくれたことなんて一度もない。
だからこれが自分の知っている通常の蓼科山の風景なのである。
悔しくなんかない。
奥に蓼科山頂ヒュッテが見えてきた。
だって、今日の目的はカレーなのだから。
目まぐるしいガスの動き。
だけど決して晴れることはないという事実。
ええ、これが通常運転。
こんな天気でも山頂は賑わっているのはさすが百名山。
登りではあんなに閑散としてたのに、、みんな笑う元気があるからきっと七合目からなんだろう。
なんだろう、すずらん峠から登ってきた自分が少し誇らしく思えてくる。
蓼科山頂ヒュッテのカレー
さて、小屋へ潜入します。
カレーは果たしてまだやってるのか。
小屋のご主人に「カレーありますか?」と聞くと、
「うん、ぎりぎりいける。ラストだよ」
あっぶねー!!
よかったよ、これで食べれなかったら妖怪駄々っ子が現れるところだったぜぇ。
でもセットは売り切れとのことなので、チキンカレー単品を注文。
小屋の中では真空管アンプがどーん!
まず小屋に入って目につくのはオーディオ類。
メーカー名がないなぁ。
と思ったら説明書きまて用意してくれてたよ。
株式会社江藤というスピーカーシステムだそうです。
ちょっと調べてみるとSANYO(つか、もうSANYOを知らない人もいるよなぁ)の社長が立ち上げた高級オーディオブランドで、もちろん今はもう無いんだけど、中古でも高価買取されてるという代物みたいです。
こだわりをもってるんだな。
アップライトピアノも設置されてる。毎年調律師さんが登ってメンテしてくれるんだそうだ。
ちなみにレット・イット・ビーのイントロだけは弾けるけど、最初のタッチでど素人だって分かるからぜったいに人前では弾かない。
そして良いにおいが漂う…。
きゃーー!ステキ!
素揚げっぽく焼かれた野菜が実に美味しい一品。
想像しただけで美味いって分かると思う。
お子様ランチ並みのご飯の量がおっさんには物足りなかったけど、それでも標高2.531mで本格的なカレーが楽しめちゃうのは奇跡だよ。
このために頑張ったんだからね、一口ずつ、目を閉じてキモく味わったよ。
さて、ここは月ですか?
食後に地球むき出しの姿を眺めにきたよ。
そう、後回しにしていた山頂へ移動。
カレーを食べてる間に晴れてくれないかなぁ?と少し期待したけど、何にも変わってない。
蓼科山の山頂で晴れ待ち
写真の右下ではハゲた頭をアピールするかの様に緑のシャンプーハットをかぶったおじさんのハイパフォーマンスに脱帽だ。
こんな天気でもとにかく人が多い蓼科山の山頂。
こういうときは山頂に立てたことを単純に喜ぼう。
このほんの少しの青空が限界。
人は傷ついた分だけ優しくなれるというじゃないか。
これで人間として成長できたのなら良しとしよう。
(T_T)
山頂でホルンを練習する女の子の音色を聴きながら、この岩場を慎重に下っていく。
沖縄県民みたいに指笛が吹けるようになりたくて、肘までよだれでびちょびちょになるぐらい練習したのにぜんぜん吹けません。
天祥寺原へゲッザーン
ゲッザーン開始なんだけど、ピストンではなく天祥寺平経由の周回コースですずらん峠へ戻るから、登ってきた方とは逆の蓼科山荘の方へ下る。
樹林帯の中に蓼科山荘が見える。
七合目登山口から登ってくるハイカーが多くて立ち止まってばかり。
さすが人気ルート。
意外と岩がごろごろしてて滑るから、七合目からならファミリーハイクにも適してるって太鼓判は押せないよなぁと、
自分も前を歩くチビッ子以上に自分も慎重に下っていく。
蓼科山荘は相変わらずの雨が降ってきた時は大丈夫ですか?と心配にさせるアメ横風な展示。
蓼科山荘の食事メニューもかなり充実してる。
信州牛がゴロッと入ったカレーは気になる。
ここ蓼科山荘が分岐なので、道を間違えない様に天祥寺原方面へ。
はい、そしてここからハイカーおりません。
ここは過去に一度歩いてるけど、その時も誰もいなくて熊との遭遇を心配しながら歩いた。
蓼科山は熊の生息地だから、どこかにはいる。
熊の糞は落ちてないから大丈夫だなんて安心してはいけない。
ましてや不運の申し子みたいな自分にとって熊との遭遇はさほど珍しいことではないんでね、鈴を盛大に鳴らしながら下っていく。
1UPキノコ。実のところ猛毒です。
これからの時期は山の中ではあちこちで見かけるベニテングダケ。
ここで2組のパーティと出会ったよ。下りで疲れたらしくぐったり休んでたけど、その気持ちはよくわかる。
ここの下りは意外と長いし、景色もあまり変わらないし、あたしだって泣きたくなる。
Googleレンズによると、アメリカベニイロガワリらしい。
日本の山奥なのにアメリカってほんとか?
ここまで来ると天祥寺原まではもう少し。
八ヶ岳で最も簡単に登れる双子山があんなに高く見える。
振り返ってみると、雲が割れて青空が見え始める。
天祥寺原に到着。
ここから竜源橋登山口へと続くルートは初めて歩くからね、楽しみだな。
竜源橋へ初めて歩くルート
おお、ほんといつ熊がでてきてもおかしくない感じ。
山頂の賑やかさはまやかし。そんなもんさ。夏の女は〜って懐かしいなおい。
ふえっ!!(鼻血)
まさかこんなに晴れる?
またも俺がいなくなって晴れた。くそっくそっ!
優しくなれないぞコンチクショー
羨ましくない羨ましくない。
いま山頂にいるハイカー達なんてぜんぜん羨ましくない(ToT)
いま山頂にいる奴みんな不幸になれ!
(T_T)
蓼科山のイケずっぷりは置いといて、
日が差して森が輝き出すとたくさん写真を撮りたくなる。
やっぱりVelviaは夏のフィルムシミュレーションだよ。
目が覚めるほどキレイ。
静かな森をおじさんがルンルンで歩いていく。
マイペースで森の中を下っている間は暑くもなくなかなか快適。
白いところは水無しの沢。水がないからアブやブユもいないのって素晴らしすぎる。
ところどころ藪漕ぎ。
でもさすが八ヶ岳、こんなの中倉山の更に奥にあるオロ山に比べたら屁でもないわ。
ゴールが見えたよ。
道路はもう目の前だけど、こんなところでも熊の目撃例はあるからね、最後まで油断できないわけよ。
竜源橋からすずらん峠園地へ
竜源橋登山口にもちょっとだけ駐車スペースがあったよ。
あ、暑ぢぃ…。
アスファルトに出た瞬間、体感で10℃は上がった。
このビーナスラインをすずらん峠まで2キロぐらい歩いたかな。
ドライブで来て、南八ヶ岳の風景を前にみんな楽しそうに笑っている。
そんな横を暑さにやられ無表情な自分が通りすぎる。
ビーナスラインのここが標高1.700m。
この時点で九重山とあまり変わらないなんて一体どういうことなんだか。
ちなみにビーナスラインの最高地点は美ヶ原の標高1.920mだそうです。
高山病になりやすい自分はドライブしてるだけで頭痛が始まるかもしれない。
すずらん峠園地駐車場の前にある女乃神茶屋は営業してないっぽい。
はい、着きました。
朝10時のスタートだったけど、それでもまだそこそこ車が残ってる。
宿泊客が多いとは思えないから、きっと大きな岩がゴロゴロ転がるトレイルに手を焼いてるのかな。
振り返って
昨日集計したデータはすでに古いという忙しい日常に身をおいてると、やはり山に来たときのひと呼吸つけるリセット感は正常でいられる上でとても大事なこと。
しかもそれが、美味いカレーを食べることを目的にした登山であれば、いい歳したおっさんでさえ浮かれてしまう。
まさにカレー(加齢)に胸キュンなのだ。
今回は王道の蓼科山登山口から登ったわけだけど、これでたぶん蓼科山のルートはぜんぶ歩いたと思う。
その中でも自分がまた歩きたいと思うのは、大弛峠からのルートかな。
大弛峠から蓼科山に登って、天祥寺平へ下り、双子池に立ち寄るルートです。
そして双子池ヒュッテのロースト鴨丼や焼きチーズカレーを食べることを目的に歩くというのも、なかなか乙な遊びだなぁと。
北八ヶ岳はガチ勢からゆるキャン派まで、幅広く遊べるフィールドが用意されてるのが有り難いね。
あとこのエリアは温泉が意外と少ないというのだけが残念だったんだけど、上信越道で帰ることの多い自分は佐久南インターの近くに「穂の香乃湯」という立ち寄り湯(500円で安っ!)を見つけたのも今回の旅は大きな収穫でした。
忘れないようにしとかねばっ。
ではでは