5月18日、長野県の高妻山(たかつまやま)に登ってきました。
ご覧の通り見た目にも秀麗な山で、さすが戸隠連峰の最高峰だけあるなと思わせるだけの存在感のある山です。
以前、3月の飯縄山に登った際ひときわ目立つ高妻山が印象的で、その頃からいつか登ってみたいとずっと思ってました。山頂からの眺めも素晴らしく、北信五岳や北アルプスの大パノラマが広がり爽快です。
ちなみにその時飯縄山から見えた高妻山がこちらです。
天を衝いてそびえる高妻山。今になってよーく見てみると高妻山の手前にしっかり五地蔵山があることも確認できます。
登ってる間はこの五地蔵山の影に隠れて高妻山の姿は見ることができません。が、五地蔵山を越えてやっと現れる高妻山が綺麗すぎるのなんのって、感動すること間違いなしです!
まあそこからの道のりがすんごく大変ではあるのですが・・。
登山口は戸隠キャンプ場の奥にある戸隠牧場からスタート。残雪が多く残る5月末までルートは弥勒新道(みろくしんどう)のピストン一択です。
残雪期の一不動経由のルートは危険で、登山口周辺には弥勒新道を推奨する貼り紙がたくさんあって注意喚起されてました。
高妻山(残雪期)のポイント
①北信五岳と北アルプスの大パノラマ。
②アップダウンが多くタフなルート。
③山頂直下の急登は滑落注意。残雪期はピッケル、アイゼン必須。
冒頭にも書きましたが、眺めは抜群!高妻山の姿形に登頂意欲が掻き立てられること間違いありません!
ただアップダウンが多く、五地蔵山を越えた後も小ピークを2つ越えてやっと本峰への取付きとなり、コースタイムが長く相当タフです。
また、山頂直下に猛烈な急坂が待ち構えてます。そこではピッケル、前爪付きアイゼンが必須です。
この日天気は良かったのですが、ハードな登山ルート故か登山客は大変少なく、百名山らしからぬ静かな登山となりました。
ちなみに信州 山のグレーディングで難易度は「D」。しかも補足で「当該ルートは体力度「4」(1泊以上が適当)ですが、ルート中に宿泊できる小屋やテント場がないため登山者によっては日没までに下山できなくなる恐れがあります」
だって!! (T_T)
準備万端で臨んでください!
高妻山は長野県長野市と新潟県妙高市にまたがる日本百名山、標高2,353m。別名「戸隠富士」と呼ばれてます。
がっぷり四つで挑む、ハードな登山の幕開けです。
いざっ
アクセス
戸隠キャンプ場前登山者無料駐車場
・住所:長野県長野市戸隠3694
・TEL:026-254-3581
ルートとコースタイム
■2019年5月18日
戸隠キャンプ場登山者駐車場⇒(20分)⇒戸隠牧場⇒(135分)⇒五地蔵山⇒(120分)⇒高妻山⇒(90分)⇒五地蔵山⇒(85分)⇒戸隠牧場⇒(20分)⇒戸隠キャンプ場登山者駐車場
標準コースタイム:7時間50分
■活動距離13キロ
■単純標高差1,200m
■累積標高上り1,550m
高妻山登山 本編
戸隠キャンプ場から登山口へ どぼん編
戸隠キャンプ場前の登山者無料駐車場にやって来ました。
50台以上は止められそうな広い駐車場ですが、まだ残雪多めのこの時期にただでさえコースタイムが長い山に登ろうなんて輩は少なく、がらがらです。
高妻山登山口のある戸隠牧場は戸隠キャンプ場の奥にあるため、そこまで徒歩で移動します。
水芭蕉でも見に巻機山も良さそうだなと思ってましたが、キャンプ場内にたくさん咲いてたのでまんまと目的達成。
イギリス人のエミリーウェストンさんという方が外国人女性として初めて戸隠山と高妻山に登られたそうです。
姓がウェストン。イギリス人。ふむ。
登山をしていれば一度ぐらい聞いたことあると思いますが、ジャパンアルプスを世界に紹介したウォルターウェストンさんの奥さんです。夫婦揃ってどないなってんねん。
キャンプ場内は登山口に向けて標識も多いので分かりやすい。ここで登山届を提出します。
こんな貼り紙もちょいちょい見かけました。
弥勒新道(みろくしんどう)を推奨!との事です。
事前情報通りですが、大洞沢は雪が多く鎖の設置がまだできておらず、更に沢の上の雪は踏み抜く可能性があって大変危険との事です。
とは言え、弥勒新道も雪が多いから10本以上のアイゼンとピッケルは必要です。
ふぅ~牧場色でてるぅ〜
五地蔵桜を通過。いくら長野の桜の開花が遅いとは言え、さすがに5月中旬ともなると麓の桜は散ってしまってます。
「ひゃ~しみてきちゃったよ・・。」
尿漏れじゃないよ!!
関門その1。なかなかの水量で流れてます。ここでまんまとドボンしました。登山口に到達することすら難しいとは、さすが高妻山、やります。
ゴアテックスで防水加工されたブーツも意味をなさないドボンぶりで、中までじと~と滲みてくるのがすんげぇ気持ち悪い。。
やっと入り口に着きました。
登山口に着く前から散々でしたが、ここまで戸隠山の景色が良かったのは救い。
さあ、登りまっせ!
と思いきや、関門その2。
2回目の渡渉ポイントです。
既に靴下まで滲みている現実からは逃れられないのですが、今更ながら超慎重に渡りました。
うぅ~熊か。。
今回は登山客が少ない山なのでちょっと心配です。
やっと登山開始
登り始めるまでが長すぎるんじゃ・・。やっと本番開始。
やっぱ新緑が気持ち良いっ!
ムラサキヤシオです。あまり見たことないかも。
登山道の脇に色鮮やかに咲いてました。
樹林の隙間から姿が見える五地蔵山。まずはあいつを登らないと高妻山は拝めません。
あそこまで行くだけでも簡単なことじゃないんです。
大きなブナがでてきました。
ここにいるブナ仙人さんは、職場の後輩の仕事の遅さに苛々してしまう未熟者のためしばらく修行するとのことです。
さっ、先を急ぎましょう。
イワカガミが咲いてました。
五地蔵山まではごく普通のトレイルなのでサクサク進みます。
ブログも淡々と書いてます。
新緑と花の咲く尾根道はとても歩きやすく整備されてます。
すごい、標高を上げるとまだ桜が咲いてる。
信州の山までやってきた甲斐あったってもんよ。
急登になるとロープが出てきました。
危険箇所はありませんが、登りが少しでもラクになるならばと使わせていただく。なにせ先は長い。なにせ体重増。なにせ靴下びちょびちょ。
雪も少しずつでてきました。
もうぐずぐずなので、踏み抜きにビビりながら慎重に進みます。踏み抜くと這い上がるのにとんでもなく疲れるからね。
五地蔵山もだいぶ近づいてきました。
樹林の背も低くなり景色が良くなると同時に、吹き上げる風が感じられる様になります。
残雪期だけど長袖で歩いてると汗ばむぐらいで、シャツを胸の辺りまでめくって直接風を浴びる。生き返るわー。お腹の弱い子は真似しちゃだめよん。
右を向けば妙高山と火打山。
やはりあっちは雪が多い。火打山の稜線を歩いてると右側にビッグサンダーマウンテンにしか見えない岩場がここからでも見ても分かりました。
一度でも登ったことのある方はビッグサンダーマウンテンって言って分かってもらえると思う。
五地蔵山の山頂が近づいてきてからの急登が雪混じりで、熊笹につかまりながら必死に登ったりなかなかしんどい。
ここまで簡単に書いたけど牧場から五地蔵山まではコースタイムで135分。
割と長いがな。
着いたー!と思ったここは「六弥勒(ろくみろく)」というポイント。
五地蔵山の山頂に着いたとばかり思ってましたが、正確にはちょっと高妻山よりのポイントで山頂ではありません。
6合目ってことみたいです。
一不動の避難小屋から始まってニ釈迦、三文珠と続き五地蔵山、そしてここ六弥勒を通って高妻山で十阿弥陀、その更に奥の乙妻山まで続き最後は十三虚空蔵。
修験の道らしいポイントが続きます。なんにしても何合目かの目安にして問題なし。
で、六弥勒まで来るとやっと全貌が見える高妻山。
アルプスみたいに横に長い壁の様な峰々ではなく、こうした綺麗な独立峰を見るとやっぱり登頂意欲は掻き立てられる。
五地蔵山から救世主へ
さあ、高妻山に向けて進みまっせ!
と気合い入れた筈が下る。
五地蔵山の登りで既に虫の息となった自分に対して容赦のないアップダウンが襲いかかる。
左を向けば戸隠山。
高妻山と戸隠山を1日で縦走してしまう人がいますが、クレイジーなのでやめておきます。欲張る登山はたまにはいいけど、きっと今やっても楽しめない。
そしてアルプスの眺め。
白馬三山〜不帰キレット〜唐松岳〜五龍岳。
五龍岳は未だ登ったことがないのが不思議なぐらい貫禄ある山です。ここからでもひときわ目立つ山ですが、それに比べ唐松岳って人気はあるけど不帰キレットの延長にあるちょっとしたピークって感じで、ここからだと全然どれか分かりません。
パッと見で何て山か全て分かってしまう人がいますが、この中で自分がすぐ分かったのは登ったことのない五龍岳ってのがなんとも情けない。
それに比べて実に分かりやすい姿を見せてくれるのがこの高妻山。ほんと素晴らしい山です。
しかしその前に、目の前の小ピークを越えていかないといけない現実が重くのしかかり、虫の息の自分に追い打ちの踏み抜き連発。
雪渓の踏み跡で登山客がいかに少ないかが分かります。今日は1人か、2人か。
自分よりわずか10分ほど早く登り始めた赤いシェルを着た男性と五地蔵山の手前ですれ違ったけど
「えぇ!!もう高妻山に登ってきたんですか!!」と聞くと
「ええ」
と涼しく返してきたけど、足跡見る限りありゃ嘘だね(ニヤリ)。
小ピークを登り切ると「七薬師」。
このアップダウンこそ高妻山の醍醐味!高妻山の心意気じゃー!!
という気合いに反して次のポイントで絶対に休むと心に誓ってゼーゼー登る。
そして再び下る。
ふんっ、なかなかパンクな山です。
再び現れる小ピークに辟易するのを通り越して吐き気すら感じる。
1週間前の槍ヶ岳登山の疲労が抜け切らず、体がまだ重いっていうのと、体重増のリアルな重量加算で押し潰されそうです。
このアップダウンが最後であって欲しい。と再び小ピークを上る。
九勢至(きゅうせいし)に着きました。
勢い余って救世主ポーズでマトリクスをキメる。
すみません、分からない人は置いていきます。
マトリクスをキメたことにより無駄に疲れるという気合いの空回りに呆れ、小休憩の後、再び下る。
ほんと、Mrsウェストンさんよく登ったよ。
流石に雪庇は解けて無くなってますが、雪庇の名残で豪雪っぷりがよく分かります。
急登の果てのニセピーク
さあ、いよいよパンクな山もラストステージだぜっ!!ひゃっほーするよっ!
見た目は大したこと無さそうだけど滑落すると止まらない猛烈な急登はここから始まる。九勢至でアイゼンを装着してピッケル片手に準備万端で登ります。
左を向けばすごい斜面を雪解け水が滝となって流れてました。
もう自分もフォールしたい。なんつって。
天気は午後から下り坂だけど山頂に着くまではもってくれそうです。
こんなにアップダウンが連発する山で、山頂に着いた時にガスったら立ち直れません。
ゼーゼーですよ。
前から1人、下山してくる方がいて後ろ向きで前爪を刺しながらゆっくり下りてました。それぐらいの急坂です。
急登って一気に標高を稼げるけどすっげーしんどい!
追い討ちをかける様に更に角度を増す急坂。
ピッケルは必須です。
ちなみにピッケルって湾曲した高価でカッコ良いタイプの物を使ってる人を頻繁に見かけますが、自分はご覧の通りさかいやスポーツで50%オフの破格値で売られてたペツルのストレートタイプ。お店のスタッフから不自由することはないですよとアドバイスをもらって購入しました。
ストック代わりとしても使いやすいので、普通に使うならこれで十分。クライマーの山野井泰史さんがK2に登頂した時に使ってたのだって自分と同じストレートタイプだし、もしピッケル選びで悩んでるボンビーがいたら参考にして下さいな。無理して高価なの買う必要なんてないぞ!
ちなみに職場の某大学山岳部卒のベテランのおじいさんはウッドを使ってて「昔はこれしかなかったし重てぇんだよ。だからもう雪はやんねえ」とボヤいてた。渋いけど重いのは嫌だな。。
話は急登に戻しますっ!猛烈な急登っ!!
ステップができてるので一応さくさく歩けてるけど後ろにひっくり返って右手側の谷へ滑ってしまったらジ・エンドです。
横を向いてカメラを水平にして撮りました。かなり急なのが分かってもらえますか?
45度ぐらいあると思います。
ヤマレコでこの急登で滑って200mぐらい滑落して撤退、っていうレコ読んだけどほんとそうなりかねない。
急登を登りきればあとは夏道。
アイゼンとピッケルをデポして登りきってしまえば山頂だよ!
頑張れっ!
と思ったらよくある「山頂は更に奥だった」パターン!
なんとなくそんな気はしてたんだけど、口に出したらほんとそうなりそうで黙ってたけど、意味なかったわ。
しかし、山頂はいよいよ目の前!
気を取り直して行くぜ!ゴールが見えれば気持ち的には余裕です。
ところが山頂だと思った場所に着いてみると、まさかの「まだ山頂は先なのよ馬鹿にしないでよ」パターン。くそっ!
高妻山、アナーキー過ぎ!
とうとう十阿弥陀。
もはやここを通り過ぎる時の自分の表情は知能を持たない無垢の巨人(進撃の巨人より)。
ニターって笑ったまま通過。おかしなテンションになってます。
やっと山頂
やっと、やっと着きましたよっ!
もじもじしたぜ!
やきもきしたぜ!の間違いね。
さあ、苦労して登ったご褒美の時間。北信の山岳美を満喫しまっせ!
右にカルデラからポコんと突き出た特長的な妙高山、その左にはなんとも綺麗な火打山があって見事な百名山コラボ。
贅沢すぎる眺めにプラス10ポイント。突然始まるポイントレース。
目の前には先程からずっと見えていた日本二百名山の戸隠山。
戸隠山を見下ろせるなんてすごい!プラス20ポイント。
戸隠山の奥には北アルプスの峰々。あっちの方はだいぶ雲が増えてきたけどギリセーフかな。
プラス5ポイント。
本日のお昼は毎度大好物のシンガポールラクサとレモンワッフル。登山の前日、当日は炭水化物/糖質祭り。
プラス2キロ。
ここまでのアップダウンを背中で表現してみました。
できる男は背中で語るって言いますからプラス20ポイント。
北信五岳の一座、黒姫山を眺めながら下山します。
北信五岳は妙高、火打、戸隠、黒姫、飯縄、斑尾。
高妻山はなんと仲間外れのためマイナス50ポイント。
斑尾を蹴落として高妻を格上げさせることはできないものか。。
ゲッザーン開始
下山してると左前方に古池が見えました。福島の一切経山の名物「魔女の瞳」ってこんな感じなのかな。
一切経山は秋に企画した事があるけど噴火警戒レベルが引き上がって登れなかった残念な山。またいつか機会を作りたいと思ってます。
デポしたピッケルとアイゼンを回収してあの激坂を下ります。
急坂を下りると、上りの時に苦しめられたアップダウンを繰り返し、五地蔵山へガツンと登り返す。
「認めたくないものだな、ピストン故の過ちというものを」
下山中に2度ヘビと遭遇しました。
写真のコイツは2匹目に出くわしたヘビで、ちょっと分かりにくいけど大きさからたぶんジムグリだと思う。無毒で臆病なヘビです。
1匹目は大きく育ったヤマカガシで、ほんと足元にいてぎりぎりまで気付かなかった。向こうが逃げてくれたから良かったけど、毒ヘビだし油断できません。
残ったポイントを篠沢教授に全部。そして全部消滅。
なんやかんやで無事に下山してきました。
予想以上に大変な登山になってしまいクタクタ。時間も遅くなったし、頑張った自分にご褒美の激甘リアルゴールドで祝杯するよ!
下山後に通りかかった戸隠神社。
猛スピードの車内から窓を開けて必死に撮った一枚。
鳥居の横で佇むお年寄りから「なにやってんだかね?」って感じでジロリと見られてしもた。
振り返って
高妻山は確かにハードな登山ではありましたが、弥勒新道はよく整備されてて危険箇所は特に無かったし、夏道でも雪道でも急登はしんどいので、時間と体力面だけケアできていれば大丈夫です。
ネガティブなことばかりつらつらと書いてしまいましたが、登ってみればさすが戸隠連峰の最高峰って思わせるだけの景色が待ってます。
見下ろす様に眺める黒姫山、北に見える妙高山と火打山の残雪をまとう姿に感動すると思います。
ところで、大抵の男が収集癖の気を持ってます。もちろん女性にもいますが。
いずれにせよこの収集癖ってのが非常に厄介なんです。
登山道具を揃えていると、ついあれもこれも欲しくなってしまうというお話。
登山を始めた頃は、なにもかもが不足してたので、機能性よりとにかく安売りされている物をくまなく探して買い揃えていきましたが、当然その中には失敗した買い物もあります。
そろそろ必要最低限の道具は揃ってきたし、そうした失敗した物の買い替えを検討するのも良いかなと思ったりします。例えばヘッデン。
で、ヘッデンを選びに行って、気付けばコッヘルやザックで悩んでたりする訳です。
そんな時は決まって「自分には余計なものに金を使う余裕なんて無い!」と強く念じて断腸の思いで断ち切るわけです。
ピッケルを何本も所有してる人の中には収集癖が理由で買い揃えた方もいると思います。ちなみによく月刊PEAKSでギア紹介!なんていう特集に出てくる人達の買い揃え方はまさにそうとしか思えない。。
自分も油断してると、つい要らぬ物を手にとって見てるから怖い。恐るべき収集癖。
「ウッドのピッケルは重てぇんだよ」とボヤく、物を大事に使える人になりたいものです。
ではでは