【九重】くたみ分かれの四千本桜と立中山登山 趣深い山桜とクリアな青空

【九重】くたみ分かれの四千本桜と立中山登山 趣深い山桜とクリアな青空

この世に邪悪がはびこるとき、必ずや現れるといわれる希望の戦士、肥満聖闘士(デブセイント)。

 

世界中に散らばる88名の選ばれしデブセイントの頂点を極める最強のデブが、12名のゴールドデブセイントと呼ばれる。

鬼滅の刃で言うところの「柱」みたいなものだ。

 

彼らが守る聖域十二宮は、なんとここ大分県の九重山に集結しているということはあまり知られていない。

 

その聖域十二宮とは、中岳、天狗、稲星、星生、白口、北大船、大船、平治、三俣、黒岳、涌蓋、そして久住。

つっぱりが得意な平治、寄り切りがうまい久住、などなど、その磨き抜かれた得意技で朽網岐れ(くたみ分かれ)にいるアテナ様を守るのが彼らの使命なのだ。

 

しかしこのアテナ様、実は教皇の謀反によって大好きなカントリーマアムに毒を盛られ、眠りから覚めないでいると聞く。

 

ゴールドデブセイント達はそんなことにも気付かず、のうのうと教皇が下す命に従うのみ。

 

これはどげんかせんといかん。

 

この危機に、最近干し芋の旨さに目覚めたという一人のブロンズデブセイントが立ち上がった。

その名は、メガ盛り星矢。

 

一刻も早くアテナ様を目覚めさせ、教皇によるダイエット政治から世界を救わねばならない。

 

しかし、くたみ分かれへはこの最強のゴールドデブセイント達を打ち負かさなくてはたどり着くことができないという。

 

お腹がでて、和式便所では捕まるところがなければ後ろにゴロンと転がってしまう今の自分に、とてもこんな高い山は登れない。

 

 

そこで考えた。

九重の表玄関である長者原や牧ノ戸峠は避け、裏側の一番水からこっそりくたみ分かれを落とすという作戦だ。

うむ、身の丈に合ったプランだ。

 

よし、行け!メガ盛り星矢!

 

さて、そんなわけで大分県の九重山(くじゅうさん)にやってきた。

 

素晴らしい景色、最高の天気、くたみ分かれの四千本の山桜は見事に満開。

 

アテナ様も目覚めればうっとりしてしまうはずだ。

 

 

花見のついでに未踏の立中山(たっちゅうさん)にもドスンドスン登ってしまおうという、この時期定番のルートで歩きたいと思う。

 

曇り空じゃないってサイコーなのねん〜♫

立中山は九重のちょうど真ん中に位置する山で標高は1,464m。

 

ルートとコースタイム

■2023年4月9日 ※カッコ内は標準コースタイム

一番水登山口(レゾネイトクラブくじゅう登山口)⇒(40分)⇒くたみ分かれ⇒(90分)⇒鉾立峠⇒(20分)⇒立中山⇒(15分)⇒鉾立峠⇒(60分)⇒くたみ分かれ⇒(30分)⇒一番水登山口(レゾネイトクラブくじゅう登山口)

コースタイム:4時間15分(休憩含まず)

総距離 7.8キロ
累積標高上り 680m

くたみ分かれ山桜登山 本編

一番水から登山開始

一番水登山口の駐車場は見事に満車。

どうやら本来の駐車場は工事中のためここは臨時駐車場らしい。後で知ったけど。

だから、一見空いてそうなところにはガレキがあって車の腹をこすってしまわない様に気をつけねばならない。

そう言ったそばから、買ったばかりの新車の腹を軽くこすってしまい、神輿の上に鎮座しながら球場に登場する藤本監督級に無表情になった。

 

「一番水」っていうネーミングいいね。

九重の山々とこの看板の光景は以前から一度は見ておきたかったんだよね。

すぐ近くにある南登山口キャンプ場まで来たことあったけど、キャンプってどうしてもくつろいだら動きたくなくなるんだよね。

 

橋を渡っていざ、くたみ分かれへ。

このときは駐車場から舗装路だけでくたみ分かれまで歩けることを知らなかった。

 

まあトレイルのほうが足に優しいからいいね、と言い訳しながら無駄なアップダウンにデブセイントはすかさず汗まみれ。

この先、代わり映えしない森の中を1キロほど歩くから端折るよ。

 

くたみ分かれの山桜

そして山桜が突然始まる。ほんと突然。

この幕開けがくたみ分かれに着いたことを知らせてくれる。

 

しかし、桜ばかり見上げて豪雨災害の爪痕に落ちたら大怪我すること間違いなし。

 

「くたみ分かれ」の山桜と青空が巡ってくるタイミングを何年待ったことか。

まあほんと5年は待っただよ。

しかも前日まで季節外れの寒気がやって来てそれほど暑くないし、大気はクリア。

PMや黄砂、春霞が無いという九州では信じられない幸運に恵まれたにも関わらず、新車の腹をこすったショックはまだ拭えない。

 

今日はここ、くたみ分かれまでは家族同伴。

くたみ分かれまでは一切登りはないと伝えてたから、登り坂が出てきた時に「コロスヨ」という切れ味鋭いジョークもいただいたけど、ナイル印のスナックですっかりご満悦のご様子だ。

妻は先に車に戻るため、ここから立中山までは一人旅。

 

ほいだば、立中山へ出発。

下山してここに戻ってきたらゆっくり撮影タイムにしようと思いつつも、ついシャッターを押し続けてしまう。

まあ気楽に行こう。

 

しかし、くたみ分かれの山桜の群生規模の広さには驚かされる。

ソメイヨシノは栽培品種だからきれいなのは当たり前なんだけど、何年も山に登り山桜を見る機会が増えてくると、素朴な趣のある山桜の良さが分かってくる。

女性が言う「普通の人がいいのに」に似たものが山桜だと思って差し障りはないだろう。普通の人ほど見つからないのと同じように、山桜だってそう簡単には見つけられない。

簡単に普通の人が見つかると思ってはいけないのだ。

そんな貴重な(?)普通の人が四千本(ほんとに四千本?)も自生してるって、こんなところ全国探したってないよ。

 

原生林の森と佐渡窪

くたみ分かれを抜けると途端に山桜が一本もなくなる。

鉾立峠までは2.4km。

そして鉾立峠から立中山まではコースタイム20分ほどの距離だから、ここから山頂まで3kmぐらいだろうか。

 

最初は舗装路。

ちなみにこの舗装路を逆に下っていくと元いた駐車場に帰ることができる。

 

そしてトレイルへ。

桜の森を抜ければ原生林の新緑が待ってるなんて、さすが九重。

更にその先には佐渡窪、山頂からの絶景という見どころが控えている。

ハイカーを喜ばせるのがお上手な山だこと。

 

しかし、浮かれてるとそこら中にある豪雨災害の爪痕に落ちる。

ここら辺りは災害直後は入山禁止になったはず。よくここまで整備してくれたよ、感謝。

 

今年の梅雨は線状降水帯が発生しないといいけどね。

やはり神頼みしておきますか。

お金が貯まりますよーに。

 

おお、佐渡窪が見えてきた。

 

この窪地は雨が降ると池になってしまい木道も水没してしまうらしく、しっかり迂回路も用意されている。

普段はこんな感じで若干潤いを保ちつつ、水は干上がっている。この泥でパックすれば永遠に美肌が約束されるという九重の都市伝説。

最後のはなんの意味もない嘘です。

 

佐渡窪がこれまた爽快。

真夏のカンカン照りの日だったら地獄だけど、なんせ今日は季節外れの寒気の影響で涼しい。

その最高の気候に恵まれておきながら、家族を車に待たせてるため、くたみ分かれからはYAMAPのペースで200%オーバー。

デブセイントが「メガ盛り流星拳」を繰り出すかの如く汗をほとばせる姿が我ながらカッコいい。

 

左に見えてきた大きなピークは白口岳。

九重の17サミッツの一座であり、聖域十二宮の一つ。さすがに貫禄がある。

もちろん、寄るもんか。

 

土石流で埋まってしまった標識。

 

アセビは満開。

 

佐渡窪の湿地帯がガレ場へと変わった。

しかし相変わらず開放的なトレイルだ。標高はそれほど高くないというのに、この爽快感はなんだろう。

うんこを出し切った後みたいだ。

 

ここは八ヶ岳か?と錯覚してしまうほどトレイルの整備は完璧。

立中山は初心者向けで紹介されてるたけに危険箇所はどこにもない。

 

鉾立峠から立中山

鉾立峠か?

周りのハイカーは爽快そうにしている中で、デブセイントの持ち味をいかんなく発揮して誰よりも汗だく。

 

真新しい標柱の鉾立峠に到着。

 

白口岳。

無理無理無理無理無理無理。

 

立中山。ふむ、OK。

山全体が灰色に見えるのは、ぜんぶミヤマキリシマかな。2020年の山火事で1,600本のミヤマキリシマが燃えてしまったそうで、本来ならここも花の名山だったんだろうけど、復活には10年以上かかるらしい。

ガスバーナーの火が燃え移ったそうだから気を付けねば。

 

一歩踏み出せばミヤマキリシマ。

この先も山火事の目立った爪痕はなかったな。復活したのかも。

 

火事だけではなく、一年前は虫の被害でハズレ年って言われたし、育成で獲得した千賀がメジャーリーガーになっちゃうぐらいの大当たりにめぐり合ってみたい。

 

おっ、山頂かな。

 

違った。

山頂はまだ向こう。

しかし青空が気持ちいい。疲れたけど山頂までこのペースで登り切ってやる。

 

山頂からのパノラマビュー

ボエ〜疲れたぁぁ。

標高1,464mの立中山の山頂の背景に見えるのは聖域十二宮の大船山。秋の紅葉シーズンになると九重の中で一番賑わう山。

さて、ここ立中山にいるハイカーは全部で20人ぐらいかな。みんなのんびりお昼にしている。

 

一番左が白口岳と、真ん中の奥に中岳、天狗ヶ城。

 

下を覗いてみればすっかり野焼きも終わった坊がつるが広がる。

法華院山荘は微妙だけど見えない。

 

三俣山は九重の中でもメジャーな一座だけど、実はこれまで登る気概がなくて未踏の地。このまま残しといてもいいかも。

ちなみに立中山山頂の木々はぜんぶミヤマキリシマ。山火事の被害はやはりそれほどひどくなさそう。

 

久しぶりのパノラマ撮影。左から白口岳、中岳、天狗、三俣山。

立中山は九重山の真ん中に位置するから360度の大パノラマだし、大気もめちゃくちゃクリア。

 

ミヤマキリシマで定番の平治岳。

山をピンクに染め上げるという魔力で日本中のハイカーを腑抜けにする魔の山。

そういう自分も腑抜け魂に火が着いて、何度も足繁く通っては、満面のキモい笑みでへへへ・・と帰ってくるという恐怖の山。

本当の当たり年で青空に当たったらそれこそ命はないと思っといた方がよい。

 

そして遠くに傾山、祖母山。

さすがに遠くの方は霞んじゃってるけど、この時期にしてはマシ。マシマシ全部乗せの次郎系風景。

 

冬の間は曇ってばかりで頭を抱える福岡県人だから、しつこいけどこの青空に誰よりも浮かれた。

新車の腹をこすったショックもすっかり忘れることができたよ、有難う大分県。おでんにも柚子胡椒を付ける県民性が大好きだ。

他のハイカーが写真に入り込まないように撮るのが不可能なぐらい賑わってた。

 

ゲッザーン開始

さーって楽しんだ、下山しよう。

家族を待たせている。残念だが自分にはのんびりする時間はないのだ。

 

ハイカーが多い長者原や牧ノ戸峠からのルートと違って、もっと里山っぽさを予想してたけど、どこまでも整備が行き届いててガンガン飛ばせる。

カメラバッグがバンバン膀胱を叩くから走れないけど、それなりのハイペース。

 

佐渡窪を通過。

ここは木道から外れて歩くのもOKだと思う。特に禁止の看板は見当たらなかったし、植生への影響もなさそう。

実際に横切ったりお昼にしてるハイカーも何人かいたしね。

 

佐渡窪からは登り返し。

この登り返しが最後の上りだ。

 

黒い山肌の九重に新緑の季節が近づいてる。

自分は登山というより、ハイキングに来てる感覚だから、花を見たり新緑を楽しもうじゃないかという心意気。緩くいこうじゃないか。

 

バイケイソウも準備を始めている。

開花まであと1ヶ月ぐらいかな。

 

ヒトリシズカと思いきやハルトラノオ。たぶん。

 

山桜を見る時間を確保すべくかっ飛ばして下りてきた。

くたみ分かれはもう目の前田マエダ。

 

再びくたみ分かれの山桜

ナイスでし!

うーんでもまだ足りない。何年も待ったんだ、まだまだ足りない!

 

ほれほれほれーーー!!

と、大手を振って見上げながら歩いてたら、前方にど派手にダイブしてすっ転んだ。

なんとかカメラを守ろうと体を犠牲にしたけど、肘を強打した挙句、カメラも軽く傷つけた。

くそっ。

なんにせよ、レンズが無事でよかった。

 

めげずに撮影続行。

この葉と桜が一緒に咲く姿がたまに見るにはむしろ良いんだよね。

先に言った女性の言う「普通の人でいいんだけど」という例えは間違えだったな。

なんというかクラシックなカメラの外観を楽しむのに少し似てる。

 

まだ足りぬわ。太陽カマーン!

ちなみに今日のカメラは富士のX-E1と18-55ズームレンズで、フィルムシミュレーションはASTIA。

最近はASTIAばかり。花の時期は淡くてコントラストの高いASTIAが最高の相性。

 

どうじゃどうじゃー!

ソメイヨシノの方がきれいとか、

言うでない!言うでないぞー!!

足りぬわ足りぬわー!

 

ふー。

ではここらでお開きとしますかね。少し落ち着こう。また転ぶわ。

 

最後に、鳴子山と山桜のコラボ。

これで満腹。デブ聖闘士の戦いは幕を閉じた。

 

アテナ様?はて、なんのことだったかのぉ。

 

余はもう満腹じゃと言っておろう。

 

駐車場まではトレイルではなく草原を歩いて戻ることにした。

 

正面に見えるギザギザした山は根子岳。

 

この日はちょうど根子岳の麓で野焼きをしていたらしく、ここからも煙がよーく見えたよ。

 

舗装路もあったけど、あえて草原のど真ん中をぶち抜いて歩いて駐車場に戻る。

せっかく九重まで来たんだから、舗装路なんてぜったい歩かないぞ。

 

駐車場に到着。だいぶ台数も減った。

車の下の石を軽く除いてから車を出したら腹をこすらずに脱出することに成功して、今日1のガッツポーズを繰り出したのだった。

 

浮かれたまま一番水のすぐ近くにあるガンジーファームへ。

この陽気でさすがに観光客でごった返してた。

 

相変わらず物色するだけ物色して、何も買わずに帰ったよ。

今思えば飲むヨーグルトぐらい買って帰ってもよかったなと、いつもと同じボンビー後悔に苛まれた(笑)

 

振り返って

何度もタイミングを逃してきたくたみ分かれの山桜だったけど、何年も待てば絶景を目の当たりにできるもんで、会心の山歩きになったよ。

 

この山桜を知ったきっかけなんて、もう何年も前のことすぎて忘れちゃったけど、たぶん九州の山々を歩いているうちに、明らかに本州の山々と違って秀でたところって花の名山が揃ってるところだなぁと思って、いろいろ調べたんだと思う。たぶん。

 

カルスト、火山、草原の山、離島の山など、特徴はたくさんあるけど、押しなべて見たときにやっぱり特徴的なのは花の山だなぁというところに行き着いたんだよね。

 

それなら、四季を通じて花の山を巡ってみようと、ここ何年かはいくつかの候補を一つ一つ歩いてる。

今回はその中の一つ。

欲張らずに、晴れの日だけを狙って、ぼちぼち楽しもうってなスタイルどえす。

 

九重には今回の山桜やミヤマキリシマ以外に、8月のタデ原湿原に咲くヒゴダイも推しておきたい。

九州の花の山はいつかまとめて書こうとは思ってて、ヒゴダイはそこでしっかり紹介するつもりだけど、ほとんどが九重にばかり集中してしまうのはもったいない。

まだまだ旅が足りない。

実はまだ屋久島にも行ったことないし。

 

テント一つあれば山の旅は安く済むんだけど、屋久島だけは交通費がかさむのがちと痛い。

ちなみに何年も前からばっちりプランも立案済み。もともとジナンボーと行く計画だったけど一人旅になりそうでモチベーションがいまいち上がらないんだよね。

 

ではでは


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