熊本県の阿蘇山(あそさん)にやって来ました。
子供と「登山に付き合うなら中古のゲームソフト買ってあげてもいいよ」とケチくさい取り引きが成立し次男坊と男2人でアタックしてきました。
阿蘇山は”火の国”熊本が誇る国内随一の活火山です。阿蘇名物の巨大カルデラが形成されることになる過去4度の大噴火では、火砕流が九州地方の半分を覆ったというんだから驚きです。中でも9万年前の噴火は特大で、その火山灰は今でも北海道で10㎝も堆積して残ってるそうです。
火山活動は現在も活発で、たまに噴火しては入山規制を繰り返す困ったヤツです。今年(2018年)、3年半ぶりにやっと入山規制が解除され、久しくこの日を待ち望んでいた登山客で賑わってました。
それでは早速ですが、簡単に阿蘇山登山のポイントを紹介します。
阿蘇山登山(砂千里ヶ浜ルート)のポイント
①子供からベテランまで幅広く楽しめるルート。
②圧倒的なスケールと変化に富む景色。
③中岳山頂から眼下に見下ろす火口群の眺め。
阿蘇山の良さはなんと言っても噴煙立ち上る火口を間近に見ながら登山ができることに尽きると思います。
八ヶ岳の硫黄岳より遥かに大きいスケールの爆裂火口、那須岳以上に荒涼とした大地。ここほど圧倒的な自然を感じられる場所はなかなかないと思います。
標高差はわずか約500m。距離も約10キロ程度しかないルートのため、小学生でも阿蘇山の魅力を味わえるのが嬉しいところです。
そんな荒々しさを見せる一方で、周囲には草千里ヶ浜や烏帽子岳など、草原が広がる爽快な世界を楽しめます。
何度か来てる阿蘇ですが、改めてその素晴らしさを堪能する旅となりました。
阿蘇山の最高峰は高岳の1.592m。日本百名山、九州百名山、巨大カルデラを形成していることで有名です(国内2位)。中岳、高岳、根子岳、杵島岳、烏帽子岳を阿蘇五岳(あそごがく)と呼ばれます。
この荒涼とした大地で、次男坊と契りを交わす男旅の幕開けです。
いざっ
■周辺地図
・砂千里ヶ浜ルート登山口の阿蘇ロープウェイへのアクセスは、こちら
・草千里ヶ浜から道なりで阿蘇山方面へ進んだところが阿蘇ロープウェイ乗り場です。
■ルートとコースタイム
■2018年9月23日 ※()カッコ内は標準コースタイム
中岳ロープウェイ無料駐車場⇒(30分)⇒砂千里ヶ浜入口⇒(100分)⇒中岳山頂⇒ (30分) ⇒高岳山頂⇒(30分)⇒中岳山頂⇒(75分)⇒砂千里ヶ浜入口⇒(30分)⇒中岳ロープウェイ無料駐車場
標準コースタイム:4時間55分
■登山開始
登山口のある砂千里ヶ浜(すなせんりがはま)に向けて車を走らせます。
目の前に見えるのは阿蘇五岳(あそごがく)の杵島岳(きしまだけ)。標高はたったの1,326mしかない山だけどなんとも登頂意欲を掻き立てる形をしています。
こちらが草千里ヶ浜(くさせんりがはま)。阿蘇の観光スポットとしては外せない名所です。
正面に見える山は阿蘇五岳の烏帽子岳(えぼしだけ)。
この爽快な景色を見てると早いとこ阿蘇周辺の山巡りもやりたくなってきます。
ロープウェイ乗り場の駐車場に着きました。
が、無料駐車場は既に満車。
ほとんどが登山客の車ですが、ロープウェイ乗り場の売店やトイレを目的に停めてる人も中にはいるので、しばらく待って運が良ければ空くかもしれません。
ここに停められなかったらすぐ隣に有料駐車場400円もあるので、今回は無理だと諦め様としたその時、たまたま一台出庫する車があってタイミング良く停めることができました。超ラッキーです。
この先、ロープウェイが復旧する予定は今のところないそうです。
山頂駅まで車でも上がることができますからね、バスが走ってればそれで充分だと思います。
子供をトイレに行っといれ、と促してその間に登山の準備を済ませておきます。
「ほじるぜよ」
幼少期は鼻くそをほじらせて右に出る者なしとその名を馳せた父と、現役の鼻くそフードファイターの息子との最強タッグ。
「いいかジナンボーよ。鼻くそは主食じゃねぇ!」
「今回は鼻くそを卒業する男旅だ!」
山口百恵が最後のステージでマイクをそっと置いて立ち去ったのと同じ様に、俺たちは山頂に鼻くそを付けてそっと卒業する。それが今回の最大のミッションです。
「鼻くそという支配からの卒業」。
ちょっと尾崎豊風に言ってみました。
ともかく今回はそんな名実ともにクソ企画です。
「心してかかれ!」
。。。。
「はいはい」
クールなジナンボーらしい素っ気ない返事。
よし、ぼちぼち行きまひょか。
9:20
しかし完璧な晴れを狙ってやってきたはずが、まさかの曇り空。
雨にならなかっただけラッキーだったと思うべきか。。
若干、意気消沈気味です。
しばらくはロープウェイ山頂駅へ続く有料道路に沿って舗装された歩道を歩きます。
「ゲホッ、ゲホッ!!くるしい!」
ちょうど風下にいたので火口からのガスをまともに吸ってしまいました。
「くそっ、卒業への試練ってやつか!」
周りで咳き込んでる人はいませんでしたが、喘息持ちの我々は咳き込んで出だしからゼーゼーです。
9:45
駐車場から20分ほどでやっと砂千里ヶ浜の登山口に着きました。
いきなり休憩を余儀なくされ、ここから再スタート。
ここが登山口だから本当はここからが登山開始なんだよ、なんてことを言えば子供がやる気を無くすだけなので、ここはあくまで通過点で山頂はすぐそこだ!と適切な嘘をつく。
説明書き読んでビビりました。
なんとこの狭いエリアに7つもの火口がひしめきあってます!
どこで爆発するかが生死の境目。まったく恐ろしいです。
砂千里ヶ浜の遊歩道を歩いてると日が差してきました。
この調子でどんどん晴れてくれたら言うことないのですが、首の後ろが真っ赤に日焼けして下山後激しく後悔しました。
右へ右へ伸びる遊歩道からそれて、途中から砂千里ヶ浜の上を歩いてショートカットします。
律儀に遊歩道を歩く人が多くて、本当に突っ切っていいのかな?と不安になりましたが、ここはショートカットOKです。
意外と砂がしまってて歩きやすく、靴の中に砂が入ることもなかったです。
火砕流が作り出した死の世界の真ん中を歩く体験なんてなかなかできません。
奥には中岳の山頂が見えます。
砂千里ヶ浜の終点が見えてきました。ここから急斜面を登って一気に稜線に這い出ます。今回のルートで一番登山らしいポイントです。
そんなポイントを前に栄養補給。
「バテてきたろ?大阿蘇牛乳キャラメル食べる?」
と聞いてもシカトされる。
「おーい」
「いらん。ラムネでいい。」
無視するからしつこく聞いてると、やっと素っ気ない返事を返してきたジナンボー。
出だしに咳き込んだダメージが残ってるのか、今日は足取りが重そうです。
すすきが日に照らされてきらきら輝いて綺麗でした。
ここはなかなかの急坂でドバっと汗が噴き出してきます。9月後半とは言え九州はまだまだ夏です。
「ほれ、これやろ。疲れたろ?」
満を持して準備してきた大阿蘇牛乳キャラメルを頑固に断り、2つ目のラムネを開けて食べだすジナンボー。
そんなラムネばかり食べてよく口の中パサパサにならないな。
ここの急坂で標高を約300mほど一気に稼ぐため休み休み上がっていきます。
東京タワー約1本分登ると考えたら大変なことです。
そんな苦しい登りでも踏ん張るべき目的があります。
「ほじるぜよ」
そうです。”鼻くそという支配からの卒業”という大義名分を背負ってるわけです。踏ん張るばい!
ちょっと腹減ってきたので大好物のセブンイレブンの”もちもちお好み焼きパン”をいただきます。
福岡市内のセブンイレブンではなかなか見つけられない”もちもちお好み焼きパン”ですが、たまたま立ち寄った熊本市内のセブンイレブンで見つけることができて即買いしました。私の大のお気に入りです。
稜線に近づくにつれ眺めも良くなってきました。
外輪山に囲まれた阿蘇山。巨大なカルデラの真ん中に立っているという事を実感できます。
のんびりペースでしたが、やっと稜線が見えてきた。もう少しだ!
稜線に這い上がりました。
しかし今日のジナンボー、バテるの早いな。やばいかも。今日は撃沈かもしれん。。
ここでも本日5回目の休憩をとりました。
すごい断崖!絶景!バカ過ぎでしょ!(誉め言葉です)
いろんな山に登ってきたけどこんな稜線歩きしたことありません。
中岳の山頂が見えてきました。
ここ最近、週末にかぎって雨が続いてたから今日みたいな登山日和はさすがに登山客が多い。
天気だけじゃなく、噴火と地震にも散々振り回されてきましたから。そんな振り回された連中で賑わってるぜ(笑)。
11:10
今回からジナンボーはお年頃ということで顔を隠すことにしました。
(ちょいと画像加工がめんどくさいです)
父「どうでもいいけど鼻くそ付けんのかえ?」
父「そっか、中岳はただの通過点だし、付けるべきは高岳だもんね」と聞くと、
次男「もうあっち(高岳)登らんでいいんやない?」とかなり疲れ切ったご様子。
そんなジナンボーの様子を気にしつつ、休み過ぎると逆に体が動かなくなるから休憩は短めにして高岳へ移動するぜよ。
中岳から高岳へはたったの670mしかないのか。これぐらいなら行けるっしょ。もうひと踏ん張り!
高岳への登りも気持ちいいルートです。
山頂直下はなかなか急なので九十九折で登っていきます。
やっと体が動くようになってきたのか、ジナンボーの足取りが急に軽くなりました。
見上げれば秋のうろこ雲と青空。朝の曇り空が嘘の様です。
頑張れー!もう少し!
これまでの登山では普通のスニーカーで登っていたジナンボーですが、今日からモンベルの登山靴てす。
ゴツゴツした火山でもこれなら靴底がしっかりしてて歩きやすいはず。
「ほじるぜよ」
標柱は目の前。
さあ卒業だ。
俺たちの卒業式だ。
では誓いののキスを。
山口百恵がマイクを置く演出からは程遠い卒業の儀式は一瞬にして終わりました。
よし、次は卒業写真だ!
11:40
悲しいことがあると開く阿蘇のブログ〜♪
人混みに流されて変わっていくあたしをー♪
あなたは時々奥までほじってー♫
ハロウィン仕様の卒業写真となりました!
ちなみに標高1,592mは「肥後の国」と知った時はよくできた話過ぎてぶったまげた。
お腹空いたし、いい加減付き合ってらんないと、悪魔の三叉槍で早くお昼作ってと催促してくるジナンボー。
ごめんごめんっ(汗)
じゃじゃーん。
今日のお昼は九州定番のごぼ天うどんとマンハッタン。ジナンボーはブレない人気のカレーヌードル。
ご飯を食べながら山頂の眺めを堪能します。
さっきいた中岳も眼下に見える。
仙酔峡ロープウェイの火口東駅が見えるのが分かりますか?
阿蘇には噴火前までは2本のロープウェイが走っていました。今回の登山口にあった1本ともう1本がこちら。どちらも復旧の見通しは立っていません。
遠くには阿蘇山を取り囲むように外輪山が見えます。
外輪山と阿蘇山の間には、気が遠くなる長い歳月をかけて耕したであろう田畑が広がってます。ところどころ田畑のど真ん中にこんもりと膨らんだところがありますが、たぶん古墳でしょう。
すぐ隣の東峰と天狗の舞台。
本当はあそこでお昼にしたかったけど子供が体力の限界みたいなので、あっちは仙酔峡への通行規制が解除された時にまた登りにくればいいやと今回はお預け。
さて、帰るぞ。
今回は硬派すぎる旅となりました。
やれやれだぜ。
12:30 下山します。
高岳の急坂を下って振り返る。
うろこ雲も消え見事な青空。今日来れてほんと良かった。
中岳まで戻ってくると火口はすぐ目の前。
火口のすぐ近くにロープウェイの駅が見えますが、あそこまで観光客が火口見学をしに車で上がることができます。
前を歩く学生らしき元気な集団からデカイ声で「ちわーっす!!」と体育会系な挨拶を受け、若干たじろいだわ。
左に根子岳が見えました。阿蘇五岳の一座でギザギザの稜線が特徴的で、九重からもその分かりやすい姿ですぐ見つけられます。
ジナンボーが腹痛を訴えてきたので何度めかの休憩を取る。
腹痛の波が去った隙に下り切ってしまいます。
砂千里ヶ浜まで下ってきました。ここまでくればあとはハイキングみたいなコースです。
動かんわな。。
まだまだ酷暑の九州ですが少しずつ秋らしさを見つけることができる様になってきました。
14:10
駐車場まで戻ってくると火口への有料道路料金所は大渋滞。
800円も払うなら歩けばいいのに。この時間なら無料駐車場だってガラガラです。
ジナンボーがバテバテで撃沈する恐れはありましたが、終始雄大な景色が強烈なインパクトを残す大満足の旅となりました。
阿蘇山よ。噴火しないでくれてありがとー!
というわけでやるか?最後に。
「やだね」
「ねえ、やろうよ」
「やだ」
「一回だけ。一回だけだから」
フュージョン!!!
また一つ山を制覇した我々はゴテンクソにレベルアップできました。
帰りのサービスエリアで前から食べたいと思っていたプレミアムソフトクリーム「クレミア」が販売されてました。
北海道産の生クリームをふんだんに使用してるって書いてある!
ふんだんに!!ふんだん!!
父「食べない?」
子「うーん、でもお腹こわしてるからいらない」
父「えー!そんなこと言わないでさ、一口だけでも食べない?」
子「うーん、じゃあ一口だけならいいよ」
「ふんふん」鼻息荒めに食べるジナンボー。
コーンから上をほぼ食われ「はい」と渡されました。
「ひとくちだけ」の前言は一瞬で反故にされる美味さでした!
どうでもいいですが、後ろに蟹をかぶった人が写ってますがきっと見間違いでしょうね。
振り返って
噴煙上げる阿蘇山は火の国熊本のみならず九州のシンボルです。
阿蘇へと続くいくつかある道路は、地震の影響で依然として通行規制が目立ちますが、ゆっくりゆっくり復興は進んでます。
今回やっと登ることができ、復興にご尽力されている方々に感謝感謝です。
ミヤマキリシマの名所でもあり阿蘇のバカ尾根の登山口でもある仙酔峡へは、今なお全面通行止めとなってますが(2018年9月現在)、それもきっと近い内に開通することでしょう!
さて、子供との阿蘇山登山でしたが・・
砂千里を抜けて取り付いた急斜面は鎖場やクライミングポイントこそありませんが、下りは子供大丈夫かな?と少し心配になるぐらいちょっと急。でもぜんぜん問題なかったです。
他に難所もなく全体としては初級者向けのルートなので、是非多くの登山客に来てもらい、阿蘇の復興のためにたくさんお金を使っていただければと思います!
バームクーヘンみたいだな。
下山中はこの荒廃した景色に若干見飽きてきてこんな感想しか言えなくなってました(笑)
今回は森の中に入っていく感覚が全くない登山でした。
とにかく日よけできる所がどこにもありません。阿蘇登山の最大の難点はこれです。森林効果による涼しさは微塵も得られません。
日に照らされた首の裏がちりちりと焦げていく強烈な熊本の日差し。半端ないって。
ぜったいに帽子と日焼け止めは忘れずに。あと手ぬぐいは首に巻くべし!
登ってる途中で子供が「あれ?あそこに水たまりがあるよ」と言ってたポイントで下山中休憩を取ってるとわずかに水の流れる音が聞こえました。
よくよく見てみると水たまりではなく、そこから水が湧き出て沢が流れてます。
源流らしくとても細い水の流れ。こんな樹木が一本も生えない様な火山でも普通の山と同じ一面があることに心底驚き、そして水たまりがあることによく違和感を感じたなと野生児ジナンボーの気付きの良さに感心しました(親ばかですかね?)
まあともかく阿蘇周辺は楽しそうな山が沢山あるし、このエリアには何度も遊びに来たいです。
復興にエールを。
では