「焦るんじゃない。俺は腹が減っているだけなんだ」
あたしは今、最上級の山小屋ランチを楽しむべく限界まで腹を空かせ山から下りてきたところなのです。
なんでもいいからなんか食わせろとか、そんな風に焦っちゃいけない。
狙いを定めた店めがけて、脇目も振らず突進する。
腹が減る前におやつを食べ始めてしまういつもの自分とは違うのだ。
意識が遠のきそうになるほどの空腹に耐え、至高の白駒荘のランチを堪能するというのが本日の神ミッション。
白駒荘のランチ、念願だったのです。
どんなにブサイクなおっさんでも美味いもんは食いたい。
しかも下戸なもんだから飲むことより人一倍食べることに興味があるんです、じしっ。
山旅とグルメを両立させるとなれば、そりゃ八ヶ岳の右に出る山域はない。
白駒荘のランチに向けてレッツらゴーの助なのだ!
今回は白駒池を起点にニュウと中山に登って高見石小屋経由で白駒池に戻ってくる北八ヶ岳定番の周回コースです。
標準コースタイム
■2025年7月6日 ※カッコ内は標準コースタイム
白駒池登山口⇒(15分)⇒青苔荘⇒(80分)⇒ニュウ⇒(45分)⇒中山峠⇒(15分)⇒中山⇒(65分)⇒高見石小屋⇒(30分)⇒白駒荘⇒(15分)⇒白駒池登山口
コースタイム:4時間30分
距離:7.9㎞、累積登り:520m
白駒池~にゅう周回登山
白駒池登山口から登山開始
白駒池の駐車場は有料で600円。
少し離れたところに無料駐車場もあるよ、20分ほど余計に歩くけど。
今回は満車だったのでこっちまでやって来ました。
さすが有料駐車場、きれいなトイレも完備されてます。
トイレは50円ってありますが、うんこもおしっこも同じ料金設定です。
さあここから登山開始なのだ。
慎重に歩いても滑ってコケる、それが朝の木道。
これまで何度も痛い目にあってるから木道でこそトレッキングポールは必須アイテム。
登山でポールなんて使わねぇよという一部の脳筋さんも北八ヶ岳と尾瀬では必須だと覚えておいてほしい。
差し込む日差しが苔むす森をきれいに見せるわけですが、実のところすでに腹が減ってて本当に歩けるのか不安で仕方ない。
駐車場でおにぎり一個食べておきたかったけど、ここまでの道中は途中にコンビニが無くてね、行動中のおにぎりすらゼロ。
ハイチュウはたくさんあるからそれで凌ぐしかない。
青苔荘経由で白駒池へ
山登りではこういった後悔をしないように「コンビニは見かけたタイミングで入る」を心がけてたんだけど、目当てにしてたローソンがまさかの7時開店というそんなバナナ。
私は働き方改革の被害者なのです。
なんやかんや青苔荘(せいたいそう)に来るのは初めて。
「あおのりそう」と読むものと思ってたし。
青苔荘のテン場はなんと板の間という至れり尽くせりっぷり。
北八ヶ岳の森はエリアによってこんな風にネーミングされてるみたいです。
代表的な苔の紹介もしてくれてて、ここでは「ムツデチョウチンゴケ」の写真付き。
波立たない白駒池が青空を映し、あたかも天地逆転したかと錯覚させる光景。
湖畔沿いを歩いていきます。
そしてニュウ方面へ。
もうすでに空腹なもんでね、シャリバテが心配だけどとりあえず進め。
いざとなればハイチュウがある。
ニュー中山
もののけの森はとても美しいんだけと、足元はドロドロで下ばかり向いて歩くことになるため実のところ景色はまったく楽しめない。
だがしかし!!
このつまらないブログを見て山に興味を持ってくれるごく一握りの貴重な方々のために、足の置き場を恐る恐る探りつつ、爽やかハイキング風に見せなくてはならんのだ!
笑わなきゃ。
もっと爽やかに笑うんだ。
白駒湿原にでました。
そして再びトレイルぐちょぐちょのもののけの森へ。
ちなみに森が綺麗と言ってもこの景色が延々と続けば、
わぁー!とか言えるのは最初だけで、
どうしても途中で飽きてくるわけです。
北八ヶ岳をこよなく愛する方にはほんと申し訳ないのですが、
やはり八ヶ岳全山縦走って途中からつまらなくなるよなぁ、
北八ヶ岳って日帰りハイクがベストだよなぁ、
本沢温泉のテント泊は楽しかったなぁ、
ああでも爽やかに笑わなきゃ、おっさんはそんなことを考えながら歩いてました。
むむっ。
ここはもう「にゅうの森」に突入してるそうです。
代表的なコケは「ミヤマクサゴケ」。
どんな苔かは問題ではなくて、とにかくきらきら輝く写真を撮りたい。
自分はカメラをやってなかったら山歩きには早々に飽きていたと思う。
ファインダーを覗いてはじめて、北八ヶ岳をチョイスしてほんと良かったなと思える。
案内が「ニュー中山」とラブホっぽさを狙ったとしか思えない分岐を通過。
にゅうの森が推す「みやまくさごけ」を探したいところだけど、ぬかるみ地獄の次は急登が始まりそれどころじゃないわけです。
こんなすぐ着いたわけではないんだけど、メインが白駒荘のランチなのでだいぶ端折りまして、にゅうの山頂は目の前。
そして山頂からの眺めはぎりぎりガスに覆われる直前にヘッスラでセーフ。
薄っすら北アルプスも見える。
白駒池からだいぶ歩いてきたんだな。
空腹すぎてもうこれ以上離れたら戻れないかもしれない。
あまり考えずにここまで来てしまったが、間違っても天狗岳まで歩こうなどと思っちゃいけない。
とりあえず予定通り中山経由で戻りましょう。
勝手知ったるルートだしきっと大丈夫。
コケモモの花。
高見石小屋名物のコケモモジュース、坪庭ではコケモモソフトやコケモモパン、コケモモクリームチーズ大福なんかもあったり、小さいけど八ヶ岳の顔なのだ。
実がなると分かりやすいんだけどね、花は小ぶりで探しにくいかもです。
中山へのルートはこれぞ北八ヶ岳というピースフルな苔ワールドが展開。
緩く登っているような、フラットな様な、とにかくのんびり歩きたい気分の時にもってこいの省エネコースが北八ヶ岳の魅力。
単細胞なんで、さっきまでの泥沼地獄のことはもう忘れました。
中山峠に到着。
以前歩いた時はここから黒百合ヒュッテ、天狗岳まで行って帰ってきたけど、そんなことしたら間違いなく黒百合ヒュッテでビーフシチューの誘惑に負けてしまうのだ。
今日こそは白駒荘に行くと決めている。
ぜったいに行かないぞ。
オサバグサ見っけ。
中山に向かって緩やかな登りが始まる。
分かりにくいけど、マイヅルソウ。
こんな緩い上り坂でも空腹だとこんなにもしんどいものか。
ここですかさずハイチュウを一粒お口へ投入。
山で小腹が空いた時のハイチュウもガチで空腹の時は一粒じゃ足しにならない。
すかさず2粒、3粒と止まらなくなった。
振り返れば夏の雲が今にも覆いかぶさってきそうじゃないか。
樹林帯にいるから錯覚しそうだけど、今自分は2500m近い高山を旅してるのよね。
空腹に耐え、やっとたどり着いた中山の山頂は360度シラビソに囲まれ眺望ゼロという、お仕置きみたいなところ。
まあしかし、肩を落として5分ほど歩いたら景色が開けてそこで少し救われたのです。
中山の展望所から高見石小屋へ
それがここ。
日差しは強いけど風は2500mだけあって涼しい。
ところどころまとまった白髪が生えているのは立ち枯れたシラビソ。
最近、玉置浩二の頭が白すぎてびびった。
ここまで頑張って登ってきたというのに、そんな努力をあざ笑う様にすぐ隣にもっと高い山があるんです。
そう、天狗岳です。
しかしながら天狗岳に登りゃすぐ隣の硫黄岳のほうが高くてガッカリするんです。
そして硫黄岳に登りゃ隣の横岳の方が高い。
結果、八ヶ岳は赤岳に登らなくちゃいけないんです。
言いたいことは、今日は無理して天狗岳に登る必要なんてないということです。
高見石小屋へ移動を開始すると、さきほど見えた立ち枯れたポイントを通過。
高見石小屋までの下りが長いのはこれまでの経験でよーく分かっている。
心が折れるポイントなんです。
むしゃむしゃ。
そんなわけで6粒目のハイチュウを投入。
腹が減ってるとは言え、年齢的に糖質の過剰摂取なのは間違いないのよね。
落ち着くんだ、今自分は職場から遠く離れ、滅多に来れない場所にいるんだ。
特別な時間だと思ってしっかりカメラを構えなくてはもったいない。
ダラダラ下山し、適当にただ撮るだけの行為は愚かすぎる。
あんな、苔って2万種類あんねん。
これがムツデチョウチンゴケだそうです。
もやし的な苔まである。
八ヶ岳、奥深し。
今度はオコジョの森のエリアに突入。
ほんと、この代わり映えしない下りが長いのなんのって。オコジョぐらい出てきてくれないもんかな。
そして高見石小屋が現れた時の喜びったらないんです。
絶対に食べちゃ駄目だと思ってても、ついつい覗いてしまう売店コーナー。
さわやかな笑みを浮かべてメニューを凝視してます。
揚げパン2個だけなら食べてもいいよね?と悪魔の誘いに乗っかりそうな自分の甘さをあざ笑う注意書きがありました。
「本日全種類セットのみ」
あきらめろ、俺。ここで食べるわけにはいかないんだ。
そわなわけで一度も買ったことのない山バッジを見たり。
コケ丸に興味がある素振りをし、何も買わずに立ち去りました。
腹をすかせたまま高見石小屋の裏の岩場をよじ登る。
何気に怪我しそうで怖いんです、ここ。
よじ登って、いま延々と下ってきた中山がどーん。
高見石小屋って微妙な位置にあるんだけど、なぜかいつもここで休んでしまう。
微妙ではなく絶妙ってことなのかな。
白駒池も目の前だ。
テント泊するのにさすがに白駒池だと近すぎるという人は高見石小屋でのテントが良いかもね。
夜は小屋の方が宿泊者向けに星空観察の説明をするみたいなので、盗み聞きして一緒に楽しめそう。
左奥に蓼科山が見えるから手前の山は双子山かな?
あそこも良いテン場があるから、いつかパワハラに打ちのめされた時に良いなと思っている。
そろそろ空腹の限界が近付いてきたようだ。
引きつった愛想笑いしかできない。
爽やかさんを演じるのはそもそも無理があったのだ。
それでも写真を撮ることはやめない。
今日のカメラもX100V(えっくすひゃくご)。
たぶん冬以外はずっとこれが相棒になると思う。X-T30Ⅱを1ヶ月ほどで売ってしまった私ですが、こいつとは長い付き合いになるよ。
苔のふかふかベッドで武人くんも幸せそうです。
子どもが小さい時は「そらまめくんのベッド」という絵本を何度も読み聞かせてあげたのが懐かしい。
焦るんじゃない。俺は腹が減ってるだけなんだ。
急ぎたいけど絶対に急げない濡れた木道。
くそっ。
でもこういう人工物が現れると小屋は目の前だと知らせてくれているわけよ。
白駒荘のチーズデミハンバーグ
やっと着いたぜぇ…。。
小屋の前のテラス席は満席だから中はさぞ混んでるんだろうなと思いきや…、空いてる!
しっかり窓側の席をゲット。
小屋の中は超清潔。
女性スタッフが多いからだろう。
おっさんがどんなに集まってもこうはいかない。体臭という汚源が増えるだけなのだ。
さあ、食うぜ。
メニュー表の載せ方を見て小屋のウリはAセットのカレーだということはアホでも分かる。
だが断る!!
何年も前からここで食べるならハンバーグだと決めていたのだ。
山ノボラーはね、みんな肉が好きなんだよ。
ハンバーグ!!
チーズデミハンバーグって絶対に美味いやつだぜー!Do Dance!!
前菜、野菜、スープ、デザートまでついて大満足プレートでした!
そしてこの景色。
最&高だぜDo Dance!!
とは言え、ボンビーにランチ2500円の出費は命取り。
小屋のお土産コーナーなんぞ死んだ魚の目で素通りだ。
まさにこんな感じ。今日はやり切った感が半端ないな。
登山しててこんなに満足したのは久しぶりだ。
はい、戻ってきました。
空腹で山を歩くというのはかなりしんどかったので2度としないけどね。
振り返って
これまでも何度か歩いたことのあるコースだけど白駒荘でランチするのはお初でした。
いつも白駒荘の前を通り過ぎる時に「死ぬまでにこんなところで優雅なランチしてみたいなぁ」と思ってたんです。
あちきだって本気出せば、会社の経費じゃなくたって外食ぐらいできる!
三大牛丼チェーン店以外の店にだって入れる!
誰よりも鼻息荒めに白駒荘に乗り込んできました。
まあ…、できれば値上げ前に来たかったけど(笑)
これまで最高の山小屋ランチを求めて彷徨ってきたけど、白駒荘のランチプレート、間違いなく1位です。
チャージ料も考えれば安いもんだな。
こんな美味いもんを最高の景色の中で食べる、すごい贅沢な山旅となりました。
ではでは