北アルプスで一番静かな山と言われる大滝山の後編です。
静かな理由は、山の魅力がいまいちという訳ではなく、単純にすぐ隣には超有名な蝶ヶ岳〜常念岳があるから。
言ってみれば灯台下暗し。
おかげで北アルプスとは思えないほどひっそりし、駐車場争いとは無縁というステキなところなんだわ。
しかも、眺めは一級品。
The 穴場です。
さてさて、前編では冷沢登山口から稜線まで必死に登りました。
稜線からは見事な青空の下、穂高〜槍ヶ岳の大パノラマ。
パワハラで傷ついたおっさんの精神が徐々に癒されていくぅ〜。
こんな良いところがあったなんてね。
前置きが長くなりましたが、後編です。
前編はこちらからご覧ください↓↓↓
大滝山北峰からの絶景
蝶ヶ岳と大滝山の分岐から、大滝山の山頂までは約10分の距離。
もう目の前だ。
東側(左)は濃いガスリー。
西側(右)は晴天。
ちょうどこの大滝山がガスリーをせき止める形となって、西側の奥穂方面は快晴なのだ。
着きました。
大滝山北峰です。標高は2,616m。
大滝山には南峰もあるけど、標高が高くキャンプ指定地にもなっているのがこちらの北峰。
テントから顔を出せばこの眺めが広がるんだから、なんとも贅沢な立地なのだ。
大滝山荘のコーラ
北峰と南峰の間に大滝山荘があるよ。
今日(8月31日)で小屋締めらしいけど、まだコーラが残ってるか聞いてみよう。
バッジ売り場には「静けさなら北アルプス随一」のうたい文句。
すれ違うハイカーの圧倒的な少なさに心細かったけど、静かな山っていいね。
小屋番さんがシャイだけど面白い方で、
「買ってくれって言ってるんじゃないですよ、手ぬぐいなんかもあります」
と見せてくれて、
さらにかぶせて
「買ってくれなんて言ってませんからね…」
と紹介してくるのがなんとも面白かったな。
申し訳ないけど、買いませんでした😆
コーラってまだ売ってますか?
「ええ、ありますよ、ラスト一本です」
おおー!よかった。
「でもすみません、500円かかっちゃいます」
そりゃそうですよ(笑)ところで今日は小屋閉めですよね?
「いえいえ、宿泊は終了ですけどね、僕はまだいるんで、売店だけはまだ続けます」
そうなんですか、売店はいつまで続ける予定なんですか?
「いや、自分がいる限りは…。いや、でも明日と明後日は山を下りちゃうから一時的に閉めちゃうけど…うーん、いつまでかなぁ。。」
と、未定のご様子。
まあよく分かりませんが、ラスイチのコーラがゲットできてラッキーだったよ。
この案内を見て、「ああ、たしかに!」と。
徳本峠(とくごうとうげ)に繋がっててもおかしくないことに今さら気付く。
こうやって位置関係がいまいち繋がらないのは紙の地図からスマホに変えた影響だね。
以前は紙の地図を広げて、全体を俯瞰してどこまで歩けるかなぁなんて眺めたり、歩くつもりの無い山を見て情報を得たり、今はそういう機会が無くなったよ。
大滝山小屋のすぐ近くには池があります。
なんかいるぞ。
食べ物ではありません。サンショウウオです。
黒部ダムの建設では飢えた作業員達が池塘にいたカエルを一匹残らず食い尽くしたそうです。
寒さと飢え、事故れば即死という凄絶さ、殉職者171名。
やれと命じる方も、自分なんかには想像もできない相当な覚悟があったんだろうな。
サンショウウオがうようよいる。
一度広島か岡山にオオサンショウウオを見に行ってみたい。
大滝山南峰へ
南峰が見えてきた。
稜線のくせに樹林帯なのも大滝山の特徴かな。
南峰は小屋から10分ほどの距離だよ。
相変わらず東側の景色はもくもくワールド。
ぎりぎりのスレスレで晴れてくれた感じ。
南峰に到着。
うーん、景色も北峰の方が断然良い。
南峰の標高は2614mで北峰より2mだけ低く、テン場指定地にはなってない。
人恋しいのか、キアゲハかザックに止まったり、へたり込んで動けない自分の周りをパタパタと飛び回る。
静かな山もたまに来るから良いだけで、長くいればアゲハでさえ人恋しくなるらしい。
眺望を求めて北峰でバンザイ
昼飯にするなら景色の良い北峰だなぁと、えっちら戻ります。
南峰での滞在時間10秒😆
リンドウを見ると夏の終わりを実感する。
それにしたって、他にも何輪か咲いてたのに、よりによってなぜこのしおれた1輪を撮ったんだろう。
そして再び北峰に戻ってきたよ。
すかさずそこが貸し切り状態であることを確認するとそれまで超絶クールだった漢に変化が。。
どうやら開放感という着火剤が、本来浮かれ野郎であるあたしの導火線に引火した模様。
ばんざーい!
ヤマレコで有名なバンザイおじさんを完全に意識したセクハラぎりぎりプレイ。
ええ、分かってます。おバカでごめんなさい。
ちなみに、体をひねった際の脇腹のお肉は仕様です、あしからず。
当ブログの閲覧数が伸びないのは、こういうのが原因かもしれない。
それにしたって、ここからの眺めは壮大。大キレットなんてまるで歯抜けジジイみたいだもんね。
理想を言えばこの山はテント泊を強く推したい。
累計で1600m以上登るし、歩行距離は往復で22kmも歩くから、体力のない自分は軽装の日帰りピストンが現実的ではあるんだけどね。
手前のピークは蝶ヶ岳。その背後には槍ヶ岳。
富士山と槍ヶ岳は遠くから眺めた方が良いね。肉眼だとこの100倍美しいのだから。
実のところ、北峰より蝶ヶ岳との分岐まで戻った方がもっと眺め良いんじゃね?
というわけで、分岐まで移動してお昼にしました。
ここの特等席も独り占めです。もう脱ぎませんが。
蝶ヶ岳からこっちにやってくるハイカーもいない。
フィルムシミュレーションをクラシックネガにしてみたり。
そしていつものVelvia。
現在のフィルムの値上がりは米の高騰なんか比にならないほどエグい。銀の価格がガンガン上がっているのとフィルムの需要が減って大量生産ができなくなってきたからと、理由は明白。
だからこそ、お米みたいに決まった需要があるのに高騰するのは政策失敗しかないわけで、ボンビーは到底納得いかないのであります!
古米ってどこで買えるの?
まあそれはそうと、フィルムなんて自分が子供の頃は500円ぐらいで売られてたのに、今や1本2500円(2025年)。
2024年にRICOHが時代に逆行してフィルムカメラを発売したら爆発的に売れちゃったわけだけど、もうよっぽどの富裕層でない限りフィルムなんて手が出ないわけです。
そうなると、やはりフィルムシミュレーションで遊ぶのがボンビーの理にかなっている。
それに冷静に考えれば、フィルムの価格維持が難しいのだから、とうぜん現像処理液と定着液だって近い将来、安定供給はできなくなるよ。
もしかしたらフィルムより先にそっちが無くなるかもね。
硫黄岳が近い。
しかもよーく目を凝らせば、その麓には赤い屋根の上高地のホテルも見える。
あっちに下山した方が近いんじゃね?
さーて、のんびりしたからそろそろ下山するよ。
なんつったって下山も長い距離を歩くから余裕をみておかなくちゃ。
きのこ巡りしながら下山
ヤマハハコ。
ハクサンフウロ。
ほんの少し標高を下げると再びガスリーへ突入。
トリカブト。
クリアグリーンという言葉があるのか分からないけど、こんな目が覚める美しい森を下っていく。
ウスタケは天然のコップなウスタケ。
毒キノコです。
そしてもうクリアグリーンとか言ってられないぐらいバテている。
休みたいところだけど、ガスリーから一転、迂闊に止まれば猛烈な日差しに丸焼けになる。
まさに阿鼻叫喚の下山なのだ。
やっと鍋冠山に到着。
冷沢登山口はまだまだ先。
もはや絶望。
それでも最後まで自分の足で歩かないと帰れないのが登山。
なんて非情なんだ。
もはやパワハラ。
さっきまでパワハラ上司が人事異動で干されたことに年甲斐もなく大喜びしていた自分への代償なのだ。
こんなところにマリオのスーパーキノコ発見!!
これを食べればデカくなって岩をも破壊するパワーを手に入れることができるのだ!
もしくは毒に苦しむのどっちかだ!
さっきからキノコばかり撮ってるな。
そんなわけで落ち葉も。
紅葉も少しずつ始まっている。
再びきのこ。
カバイロツルタケ、という物らしいです。
以前は茹でれば食べられるきのこと言われてたみたいだけど、現在は毒キノコとして認知されているという、とんでもない奴。
そんなのがあったら何も信用できないじゃないか。
だいぶ端折るけど、冷沢登山口に戻ってきたよ。
ここから始まる片道3.5kmの林道に備えて体力の温存なんぞできているはずもなく、完全に気力ゼロです。
遊びに来てるはずなのに、なぜか辛いとしか感じられない。
だれかー、オラに力を分けてくれ〜!!
シーン…。
野沢雅子風に叫んでみたけど、精神と時の部屋ばりに静かだ。
そんな静寂に耐えかねて、なんでもいいから音楽でも流そうとスマホを操作すると、「見上げてごらん夜の星を」がかかり、最初しんみりしたけど、途中でそれが氷川きよしバージョンだと分かってワロタわ。
軽すぎるんだわ。
駐車場に戻ってきたよ。
北アルプスとは思えないがら~んとした駐車場が大滝山の魅力。
振り返って
北アルプスで一番静かな山は伊達じゃない。
本当に静かで、下山中なんて誰一人として会わなかったよ。行程は長いのに。
大滝小屋の店番さんもシャイな感じだったけど意外と会話も弾み、楽しい時間でした。
静寂をじっくり味わいたい人にはうってつけだと思います。
駐車場争奪戦のストレスもないし、
北アルプスのくせに寛容。
せっかちじゃないと言うか、北アルプスなのに里山感が残ってる。
それでいてこの景色。
こんな山が北アルプスにはあったのか、という嬉しい発見でした。
私もそんな偉そうなこと言えるほどあれこれ登ったわけじゃないけど。
もし、次はどこに行こうかと悩んでいらっしゃる方は、こんな良い山がありますよー。
ではでは