
さて、秋の双子池の後編です。
前編では大河原峠を出発し北横岳に登頂しましたが、後編では大岳を縦走し、いよいよメインイベントの紅葉の双子池へ。
ただその前の大岳がね、初めて登るピークだったから楽しみにしてたんだけど、これがなかなかの難コースで…。
濡れた岩場とハードなコースに、久しぶりに登山をやめたくなったけど、双子池でしっかり充電できたおっさんの記録です。
前編はこちらからご覧ください。
大岳の山頂
ゴゼンタチバナの実。
シラタマノキ。
これが大岳への最後の登りだ。
この記念すべき初登頂を目前に雨が降り出す。
完全にツキにも見放され、濡れた岩場で手袋もぐっちょりだし、やれやれだよ。
もさくは木を切る〜♫へいへいほ〜
そして大岳の山頂に着いてみれば、リアルな暗中模索状態。
ああ…、完全なるホワイトも作。
修羅場
すかさず下山するでなもし。
も作〜も作〜♫
登山の魅力っていったい何さ?という光景に涙が止まりませんよ。
しかし、
本当の涙はこれから流すことになるのです。
ずーっとこんなところを歩いていきます。
今書いてても何度も転んで痛かったことしか思い出せない。ガチ苦行の始まり。
濡れた岩場の下りはまだまだ続く。
このルートを下りで歩くのは難易度が高いということを思い知らされてます。ほとばしる後悔。
そしてどうにもこうにも足が届かず難儀したポイントがここ。
ホールドできるところにしがみつき、反対側の岩に片足を突っ張りながら進んでどうにかクリアしたけど、背が低い人はどうやってクリアするんだろう。。
突破できたからと言って、
油断してはいけない。
着地でこの板に乗った瞬間、ツルッと滑り、空中に投げ出された時にはもう不可抗力。
見事に激しく体を打ちつけて、あたしは男泣きしたよ。
西武時代の清原が、日本シリーズの巨人戦で勝利を目前に泣き出すというシーンさながらの涙。
清原に駆け寄った辻は「勝ってから泣け!」と厳しく伝えたそうだが、まさにその時の自分と辻はかぶる。
「泣くのは双子池ヒュッテに着いてからにしろ!」
静かな森で、おっさんは辻と重ねてそう自分に言い聞かせたのだった。
シーン。。静かだ。
ここじゃ怪我しても誰も助けに来てくれないだろう。
ところどころ岩が見える通り、樹林の中もずーっと岩場なのだ。
絶対に負けられない戦いはまだまだ続く。
もしも物を岩の隙間に落としたら最後、2度と取り戻せない。
蓼科山の山頂をもっといやらしくした岩場が続くと思ってくれて良いかな。
天狗の露地というポイントに着いた。
ここは広くて休憩にちょうど良いところだけど、こんな天気で休めば低体温症の危険にさらされること間違いなし。
リーマンにとって貴重な週末の休みに、休むことすら許されない、それが秋の八ヶ岳。
間一髪だった。
よーく見てみてほしい、1本のクモの巣行く手を阻み危うく被弾するところだった。どんだけハイカー少ないねん。
一瞬でも油断したら負け。
キノコを撮ったり、無理にでも癒されるものや満足感を得られるものを探さなきゃ。
もうやってられまへん。
疲れ切った頃、ようやく土がでてきて心底ほっとした。
土だ、土だー!と、砂漠で水場を見つけたアラビア人の様に歓喜する中年日本人。
生まれて初めて土の偉大さを感じ、土に感謝した。
甲子園の土を持ち帰る高校生みたいに、ここの土を持ち帰りたくは、ならない。なるわけない。
きっとだれかションベンしてるだろうし。
このだれかションベンしてるかもしれない土に光が指しただけで嬉しくてね、きゃっきゃっ言いながら何枚か写真撮っちゃうもんね。
今思えば森林限界で雨に降られ、樹林に突入した途端に晴れるなんて、逆にどんだけツイてないんだって話なのだ。
この時は思考がバカになってたので、浮かれてました。
しかしくどい様だが油断してはいけない。
浮かれた角には不幸あり。
この木の根地獄で再びツルっと足を滑らせ激しくあばらを殴打。
もうほんとやだ(泣)
それでもせっかくの八ヶ岳なのだ。楽しまないと。
殴打した痛みが和らぐのを待ってる間も、苔の美しさを記録しなきゃ。
紅葉の双子池
ああアムロ、刻(とき)が見える。
やっと、やっと双子池が目の前に。
まるで奇跡を見るみたいだ。
正面の双子山も晴れてきた。
岩場で苦労した時間はちょうど晴れ待ちの時間稼ぎだったのだ、が〜はっはっ。ぜんぶ計算よ。
でももう浮かれないぞ。
このハシゴも見た目はやばそうだけどしっかりしてることを確認して降りる。
おいおい、まだ岩がでてくるのか。
先代の双子池ヒュッテのご主人がこのルートは難しいよとおっしゃっていたそうです。
次歩くことがあったとしても、登りで利用します。
双子池ヒュッテに着いたよ。
ほんと、よく大怪我せずに戻ってこれた。
双子池の雄池です。。
うん?さっき晴れてきたはずなのに、
自分が来るなりガスが垂れ込むとはどういうことですか。
どーせ。
いや、亀甲池みたいに枯れてないだけ、まだマシか。。
高望みをしてはいけない。今日の俺は謙虚にだ!
まあいい。
双子池ヒュッテではベトナムフェアというイベントを開催しているらしいじゃないか。
これだけ北八ヶ岳に足繁く通っている自分がこのイベントに参加しないわけにはいかないのだ。
それに今回はいつになく転びまくった。
そんな自分へのご褒美もしてあげなきゃ。
荷をおろして、さーて、ゆっくり休むぜ。
なんということだ。。
イベント、すでに終わっているじゃないか。
とことんツキに見放され、あたしは周囲の目もはばからずメニュー表の前でダッフンダを炸裂させた。
初めてだ、己の中から自然とだっふんだが湧き出てくるなんて。
あ、そうそう。くれぐれも双子池ヒュッテの名誉のために書いておくけど、レギュラーメニューのカレーとロースト鴨丼は超絶美味そうで魅力的です!
こっちのお好みトーストも捨てがたい。
まあ結局、いつものボンビーの性がむくむく出てきてしまい、今回も購入は控えましたが、いつかテント泊で来た時にでもゆっくり頂こうと思っちょります。
雌池にやって来ました。
あんまり期待してなかったけど、雄池より雌池の方が良さそう!
ここまでの登山で山の魅力を完全に見失っていたけど、ようやく本来の楽しみを取り戻した。
樹林の隙間からのぞく雌池と紅葉のなんと綺麗なこと。
素晴らしい。
雌池の方が紅葉ははるかに良い。
そしてこんなことを思う。
最初から双子池だけで良かったじゃん、て。
いやいや、大岳に寄ってなかったらこんなに晴れなかったか。
それにしてもこんな激しい時間稼ぎは初めてだ。
魚が泳いでるのが見える。
本日の最大の目的だった水面に映る紅葉もばっちりこの目に焼き付けた。
日差しはちょっと弱いけど、それでもこれほどの紅葉が見られるんだから、白駒池にもぜんぜん負けてないと思うんだけどね。
紅葉を見上げてごらん、つまずくから。
大迫力にすっ転んだ。
その激しさに、前から歩いてきたマダムもとてもびっくりしている。
彼は思う。
こんなにすっ転んだ週末は人生で初めてだ。
人生初、そう思えたらゴールデンな週末に感じられる。
ただ痛いだけで済ませないぞ。
体中が痛いけど双子山に登って大河原峠へと戻ります。
有難う、双子池。
晴天の双子山
いつものことだけど、双子山への登りなんて大した事ないと思うんだけど、途中で後悔するんだよね。
大河原峠からならあっという間に山頂に着くんだけど、双子池からだと意外と登るわけよ。
カラマツの紅葉もまだ五分といったところ。
今年のアルプスは10年に一度の紅葉って言われている。
たしかに岩稜と紅葉という構図は絵になるけど、新潟と福島の画角いっぱいに広がる紅葉を見てからというものの、アルプスの紅葉にはあまり惹かれない。それに新潟、福島って混まないんだよね。
今年もなんとか秋の新潟に行きたいと思ってる。
熊がたくさんいるけど。
もう少しで山頂の稜線。
これこれ。
双子山と言えばこの素晴らしい稜線。
やっぱり登山って青空じゃなきゃね。
途端に日差しがきつくて今日初の帽子をかぶる。
この山にテントが張れたら最高なんだけどなーと、いつも思う。
極上の稜線をしばらく歩くと標柱が出てくる。
八ヶ岳と言えば赤岳ばかりに目が行きがちだけど、自分みたいな体力無し男には双子山がお似合いなのだ。
今日の蓼科山は1日中晴れている。
蓼科山にはこれまで5回ほど登ってるけど、デフォルトで暴風雨というイメージしかない。
違う山から見る蓼科山はいつも晴れてるというのに。。
ふうさんに紅葉を持たせてみたよ。
ホークスの優勝パレード行くぜぃ!
双子山から見える北横岳。
転んだ腕と足とおケツが痛い。最初に大岳に登ってから北横岳へ向かえば良かった。。
ガスに包まれた大河原峠に到着。
今ここにやって来た人は、まさか双子山の山頂が晴れてるなんて思わないだろうな。
おしまい
今年のアルプスは10年に一度の紅葉とかでずいぶん騒がれてるけど、とても行く気にならない。
沢渡での上高地行きバス待ちの行列、それに涸沢のテン場争い、考えただけでうんざり。
あれに参戦するほど若くない!
と言う方は、ぜひ双子池癒プランを検討ください。
でも残念ながらこのブログをアップする頃には紅葉は終わってますが…。
長かった夏がやっと終わり、短い秋もあっという間に過ぎて、いきなり冬が来るよ。
怖い。
年々、寒さに弱くなっていく気がする。
ではでは


