1月4日、マグロを追いかけてばかりの正月番組がつまらな過ぎて、九州の佐賀県と長崎県の県境にある多良岳(たらだけ)と経ヶ岳を縦走してきました。
多良岳はオオキツネノカミソリが見頃を迎える8月に訪れる予定でしたが、今回はたまたま佐賀県の有田に用事があったのでそのついでに立ち寄ってきました。
「多良」。良いことが多い一年でありますように!となんとも縁起が良さそうな山の名前にも惹かれ、新年一発目にふさわしい登山になりそう!
軽いトレッキング気分でのんびり歩きたかったのですが、18時までに福岡に戻らないといけない時限爆弾付き登山。多良岳山頂で「こりゃ間に合わん!」といつもの弾丸登山へと突入し、経ヶ岳への縦走では脇目も振らず山頂を目指し、下山は登山口に雪崩れ込んだ。
ふむぅ。今年も波乱万丈な一年になるな、こりゃ。
という訳で、多良岳と経ヶ岳縦走のポイントです。
多良岳、経ヶ岳登山のポイント
①九州百名山の2座縦走が可能
②縦走する場合の登山口は黒木か中山キャンプ場が便利
③8月はオオキツネノカミソリの群生
黒木を起点にした場合、五家原岳も入れて九州百名山の3座縦走だって可能です。体力が有り余ってて欲張りでわんぱくな人にはお薦めです。
自分は2座縦走しただけで満腹中枢やられました。3座なんてとんでもないです。
2座縦走する場合の登山口は黒木と中山キャンプ場の二者択一です。今回は駐車場の広さやトイレ事情、アクセスのしやすさを考慮して黒木にしました。
こちらが経ヶ岳。なんともユニークな山容で、個人的には圧倒的に多良岳よりこっちの方に登頂意欲を掻き立てられました。
多良岳は標高996mの九州百名山、日本三百名山。経ヶ岳は標高1,076mで佐賀県最高峰、多良山系最高峰の山、九州百名山です。
いざっ
ルートとコースタイム
■2020年1月4日 ※カッコ内は標準コースタイム
黒木駐車場⇒(25分)⇒登山口⇒(70分)⇒金泉寺⇒(15分)⇒多良岳山頂⇒(15分)⇒金泉寺⇒(50分)⇒中山峠⇒(40分)⇒経ヶ嶽⇒(45分)⇒舞岳⇒(75分)⇒黒木駐車場
標準コースタイム:6時間35分(休憩含まず)
総距離 10.2キロ
単純標高差 732m
累積標高上り 1,258m
多良岳登山 本編
黒木の駐車場へ
黒木バス停に向けて車を走らせると目の前に立ちはだかる多良岳のお出迎え。
こうやって登る前からこれから登る山が見えるのって気分が高まってなかなか良いね。
黒木には駐車場が4ヶ所ある。最初、写真左上の30台止められる駐車場に寄ってみたものの1台も止まってなかったので、より登山口に近い右下の10台の駐車場に移動。
普段はすぐ一杯になるみたいだけど冬だし空いてるのかも。
ここを右に曲がってしまうと五家原岳の登山口方面に行ってしまう。というか山頂まで車で行けちゃう。
ここは左へまっすぐ進む。
ホントこの先駐車場あんの?とちょっと不安になりながら進むとちゃんとあったよ。
ここは水洗トイレ完備。
ラッキーなことに1台だけ空いてたのでササッと滑り込ませレッツスターティンっ!
黒木からまずは金泉寺へ
早速ゲートが出てきた。
左へ行けば経ヶ岳、このゲートを真っ直ぐ行けば多良岳ね。まずは多良岳方面で金泉寺へ向かう。
実はこの時点で先に経ヶ岳から登るか多良岳から登るかで迷ってた。
でもタイムオーバーして主峰の多良岳に登れなかったら後で悔やむなと思い、やっぱり多良岳から登ろう!と今ここで決めるという即席感。
この無計画な感じ、、若干不安!
林道を歩いてると、左にひょっこり何かのピークが見えた。あれは多良岳かな?と山座同定しながら進む。
多良山系は似たようなピークが多くてさっぱり分からんのよ。。
ゲートを過ぎて登山口まで20分近く林道を歩く。駐車場からすぐ登山が始まるもんだと思ってたから軽く面食らってる。
面食らうのは下調べに手を抜いたからなんだけどね。
猿田彦大神の碑がでてくれば登山口と目と鼻の先。
猿田彦ってコーヒーのブランドじゃなかったのね。
八丁谷に到着。
ここから多良岳まで2.5キロ。ふむ、大した距離ではないね。
多良山系の野鳥の紹介。キセキレイは駐車場にいるのをこの日初めて見た。町中でよく見かけるハクセキレイを黄色くした鳥でなかなか違和感あった。
原生林がきれいな山だと聞いてたけど最初はやはり杉林で幕開け。それでも木漏れ日が気持ち良いので苦にはならない。
真冬なのに、新緑みたいだな。
本来なら多良岳はこの時期、霧氷が見られるって聞いてたのに。
今年の暖冬と雪不足はひどく、全国各地で雪不足。雪が積もらないと春以降は水不足になってしまうし、夏に水場で給水できなかったら大変だよな、と心配になる。
尚も真っ直ぐに伸びた杉林が続く。
原生林の山って聞いてたんですけど。。
樹林の隙間からたまに見える山。あそこまでまだまだ登らないといけないのね。左のたんこぶみたいなのが経ヶ岳。
黒木渓谷沿いのルートだからたまにでてくる滝を見ながら登っていく。
大村湾へと注ぐ郡川の水源。
多良山系では郡岳という山もなかなか面白そうでちょっと気になる。福岡や熊本、大分にもまだまだ登ってみたい山は多いけど焦らず一つ一つ大事に登りたいと思ってるから、登るのはもう少し先になるかな。ちなみに日本百名山の開聞岳は麓の温泉まで行っておきながらまだ登ったことがない。
靴底がつるっつるの古いブーツでやって来たから苔むした岩がごろごろするこの辺りは激滑りで、腰引けてビビりまくり。
そろそろブーツ買い換えないと。それにポールも用意しとかないと。出費を考えるとため息しかでない。子供のお年玉減らせばよかった(笑)
水場がでてきたよ。
喉は乾いてなかったから一回通り過ぎたんだけど、折角だからその山の味を楽しまなきゃ損だなと思えて引き返した。
ご親切に柄杓も置いてくれてたしね。
さっきから全然、誰ともすれ違わない。
周囲の喧騒から遠ざかると、山の中でぽつんと一人きりの多良岳を思う存分満喫できているという気分に浸れる。
黙々と登ってると、いろんな山に登れるという事はなんと贅沢なことかと今更ながら思えてくるのでした。
焼き窯でもあるのだろうか?
生地が薄くシンプルにトマトソースで味付けされたピザがたまーに食べたくなる。テリヤキチキンとかマヨネーズ系のではなく。
それ一つ下さい。
暖冬だけど日影になるとしんと冷えて冬の匂いがする。
本当は8月に登ろうと思っていた理由はこれ!
ここ多良岳は井原山と並んでオオキツネノカミソリの群生が見られる山として有名。
井原山ほどでの規模ではないみたいだけど前々から狙ってたんだよね。
きっとここにぶわーっと群生が広がるんだろうな。
イメージイメージ。
金泉寺まで残り0.5キロ。
ここまでは緩斜面をのんびり歩いてきたから疲労感は全くなし。
そもそも多良岳の下調べがあまりできていなかったから、この先にある金泉寺のことをちょっとした祠ぐらいにしか思ってなかった。
ここにだけ少しだけ竹藪があって、そこから漏れる光を頬に感じながら歩く。気持ち良いというか、もはや暑ぃ。
金泉寺と山小屋
何これ!トイレでてきた!炊事場というか水場もある!
多良岳には金泉寺山小屋があったのか!知らなかった…。
そんな事も下調べしてなかったのかと我ながら呆れた。。
中に入ってみると管理人さんらしき方がいて、いろいろ教えて下さったのですが、土日祝日は管理人が常駐で年末年始も大概いるよ、とのこと。すげっ。
小屋にはヤマネの写真が飾られてたので1枚パチリ。
中の様子を撮りたかったけど、10人以上がくつろいでたから映らないように撮影するのが難しくやめといた。邪魔しちゃいけないしね。
中は綺麗にされてて居心地良さそうだったよ。
山バッヂではないけれど、こんな物も販売されてた。
収集癖があまりない自分にとって、日用で使えない様な記念品には興味は湧かないけど、どうせならバッチとかよりこういう物の方がいいかなと思った。買わなかったけど。。
ちなみにテント泊もできるみたいで幕営地は境内(笑)
テン場が境内ってのがなかなか斬新。
幕営料は500円。
小屋の隣がこちら、金泉寺。
山の中にある寺にしてはすごい立派!
ここまでなら関係者は車で上がってこれるのかもしれないな。。
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
最近、除夜の鐘がうるさいと色んな地域でクレームになってると聞いてびっくりしたけど、観光客に自由に何発も打たせてるところなら問題になってもおかしくないなと。なんにしてもクレームするかねぇ。。
めんどくせっ。
霊峰多良岳の山頂へ
再び登山開始。
金泉寺からは登山客が一気に増えて賑わってきた。駐車場に車が多かったんだからそりゃそうだよね。
そしてここから霊峰らしく石像が増えてきた。
ここら辺からちょっとタイムリミットに焦り始めた。
登り始めたのが11:30。16時までに下山する場合4時間半で下山まで完了しとかないといけないのか。こりゃ相当厳しいぞ。。と何を今更って感じで焦り始めた。。
もしかしたら経ヶ岳への縦走は無理かもしれない。ここら辺から少しペースアップ。
多良岳山頂へのルートは十六羅漢経由の最短ルートと六地蔵を巡るルートの二方向に分かれてる。今回は正面ルートの十六羅漢前を通るルートで登るよ。時間もないしね。
がるるるるる。
さって鳥居くぐるぜ。
時間がないとか言っておきながらザックから獅子舞を取り出してアングルを変えたり撮り直したりでここで10分は軽く遊び完全にアウト。
下駄がお供えされたここが「役の行者座像」。
奈良時代に一本歯の下駄を履いて全国を練り歩いた修験者で、その脚力にあやかろうと怪我した人が治癒を祈願し、完治したらそのお礼に一本歯の下駄を供えてるんだそうです。
怪我しててもまずここまでやって来ないといけないのがなかなかハードル高めです。
そしてこれが大日如来梵字。
石段をガツガツ登る。急ぎ始めた途端太ももの筋肉がしんどかったけど時間的にもう休むことは許されない。
十六羅漢のコーナーかな?石仏がちらほらと出てくる。
さっ、山頂が見えてきた。
我ながら今年も晴れ男健在だな!
(去年、晴れ予報なのに雨に見舞われ寒さに震えた平標山のことは忘れた)
山頂は多良嶽神社の上宮があって、歴史を感じさせる。
すぐ隣に見えるのが前岳。なんかこっちより標高が高そうに見える。気のせいかな。
ちなみに三等三角点は前岳にありますが、眺望は悪いみたいです。
あれが経ヶ岳。
うーん、いつもなら余裕の距離なんだけどなんせ時間が。。強がりじゃないよ!
とにかくもう少しペース上げて行ってみよう。無理そうなら途中で中山峠から黒木に下山すればいいんだし。
これから歩く縦走路。
西岳とか小ピークが続いてるけど縦走路は全部巻いていく様にルートが作られてるからご安心を。
山頂から有明海を見て気合注入。経ヶ岳へ出発じゃい!
時間がないとか言っておきながらザックから再び獅子舞と鏡餅を取り出して撮影会。
ほら、行くよ!
折角なので多良岳の隣の国見岳にも寄ってみました。
だから早く行くよっ!!
テレビの電波塔が林立する五家原岳方面。山頂まで車でアクセスできる山です。
はいはい。
さって向かうぜ経ヶ嶽。
はいはいはいはい。
経ヶ嶽へ向けてハイペースで縦走
鳥居から経ヶ岳方面への縦走路が伸びてるはずなんだけど踏み跡を探せなかったから諦めて一旦金泉寺まで戻ってきたよ。
ちょっと無駄に歩いてしまった感じだけど仕方ない。ここから縦走開始。
そんな訳で現在13:50。やべぇ。
金泉寺まで下ってしまったから縦走路に出るためには再び登らなくちゃなんない。
再び苔むした岩の激滑りポイントに突入。ちっ、クソブーツが死ぬほど滑るぜ。まったく、この山み…みずみずしいぜっ!
瑞々しい森の中を良い年したおっさんが1人、手をついてハイハイで進む姿が我ながら情けない。本日はアテントはいておもらしOKスタイルです。
中山峠に到着。ふー、走っちゃいないけどゼーゼーだす。。
今何時じゃい!14:25!金泉寺から30分近くかかったか。。
ちなみにここ中山峠から黒木へも中山キャンプ場へも戻ることができます。
くぅ~。意外としんどい登りが続く。
低山だと思ってバカにすると痛い目に合うよ。もう痛い目にあいまくりだけど。
痛い痛い、痛い目合いまくりー!
ふうっと大きくを吐いて10秒静止して息を整え、再び急登にチャレンジ。暑い!冬なのに蒸し暑い!
ここまでの頑張りもここさえ登り切れば報われる。そう思って踏ん張る。
しかしまだ終わらぬ急坂。
最後の最後にえげつない登り坂が続く。かなり疲れたけど最後に怪我する訳にはいかないから辛抱強く丁寧に登っていく。この山が1,000mちょっとの山だなんて信じられない。
あ、見えた。
最初に言っておくけど、経ヶ岳は多良岳の山頂とは全然違い広い風景が待ってるよ!
大展望の経ヶ嶽山頂
経ヶ岳の山頂に到着。まず目に付くのがこの立派な標柱。
そしてこの風景。
なんという無音な世界。融通無碍に見渡せる広大な光景が待っていた。
真ん中ちょっと左寄りのピークが多良岳です。
ズルズルっ。うん?
山頂付近をハヤブサが3羽も羽ばたく景色が新鮮。
ズルズルっ。うん?さっきから静寂の中でたまに聞こえる麺をすする音は何だ?
ふぅーふぅーズルズルっ。振り返るとハイカーが1人ラーメンすすってました。全く気づかなかったわ。。
軽く挨拶を交わすと
「今山頂でこれから息子を福岡まで送ってって頼まれたもんね〜たまらんー。急がねば。ふぅーふぅーずるずるっ」
「へぇー奇遇ですね。自分も18時までに福岡に帰ってお迎えですよ」
そんな山とは関係ない会話を交わしました(笑)
大村湾方面は少し雲がでてきたけど雲の切れ間から光が差し込む風景が神秘的。ここまでの急坂から突然この異空間に放り出され感動しきっきり。
これが見納め。多良岳方面は晴れてくれて青空がより鮮明に山脈を際立たせる。
この山頂からの景色と登りごたえ。今回はタイムリミットがあったから急いじゃったけど、経ヶ岳は登りに来る価値がある山だね。
ふぅ〜ふぅ〜ズルズルっ。
まだ食ってるのか。
舞岳経由でゲッザーン
山頂を後にし、急いでたから中山峠までは戻らず、舞岳経由で黒木へと下山するルートを選択。
単純に距離が近いというのが理由だけど、地図の等高線を見ると登り返しはあるし下りもえげつない急坂だから躊躇したけど、ええーい行ってみるか!とゲッザーン開始。
舞岳に向けて登り返し。経ヶ岳の登りで足を使い果たしてるから登り返しに涙が止まらない。
そして舞岳の山頂からは眺望ゼロという悲劇。とても舞い上がる気分にはなれない舞岳。
でも舞岳から少しアップダウンを繰り返した先にあった展望所からは多良岳方面がこんなにきれいに見渡せた。
登りでこの尾根を利用した場合、最初のピューボイントがここになるだろうから感激する事間違いないと思う。
そこからは激下りに次ぐ激下り。ここを登りで歩くのは嫌だな。。
それと、このルートは踏み跡が少なく、特に落葉の時期はところどころ不明瞭な箇所もあって分かりにくかったから、ちょいと注意が必要。
登りだと踏み跡は探しやすいから間違わないと思うけど、下りはどうしてもペースが違うし見落としが心配。
例えばこんな感じ。正規ルートがどこか分かりにくいでしょ?
テープやピンクリボンもすごく少ないからヒヤヒヤ。
少し踏み跡分かりにくいなと思ったら、ちょっと下ってみてから振り返り、登りの視点で踏み跡を探して正しいルートだったかどうかを確認するのが良いと思う。
なかなか傾斜が厳しいルートだったけど、無事林道出合に到着。
林道は左へ。間違えて右に進んだらポツンと一軒家があってその先は行き止まりだった。
この時点で15:30。
高速使えば余裕、下道でもちょうど18時に到着できるぐらいの時間に下山できて一安心。もう急ぐ必要はないね。
沢でバシャバシャッと顔を洗います。真冬だっていうのにそんなことができるぐらい今年の冬は暖かい。やっぱり調子が狂うね。
駐車場近くのゲートまで戻ってきたよ。
途中から弾丸登山になってしまったけど意外と急峻な山でハードだった!
翌日から2〜3日、筋肉痛で動きがぎこちない変人になってもうた。。
まっ、新年一発目、怪我なく終えたし思いがけず良い山で良かった!
振り返って
多良岳は平安時代のはじめに弘法大師(空海)が訪れた際に建立された金泉寺や石仏の数々、山頂の上宮など真言密教との関わりと歴史深さを感じさせる山です。ちなみに日本三百名山です。
そして今回紹介できなかったのは残念でしたが、5月のツクシシャクナゲ、8月のオオキツネノカミソリは多良岳で外せない売りの1つです。ちなみにNHK版の花の百名山です。
ただ、山自体の見た目の良さと山頂からの眺望、登りごたえで言えば自分は経ヶ岳の方が多良岳より上だと思いました。
山好きな人には断然経ヶ岳を薦めるところですが、縦走するなら歴史ある多良岳を最初に登ってから経ヶ岳へ向かう今回自分が歩いた順番の方が感動すると思います。
タイムリミットに追われ急いで下山して、余裕で間に合うと思って唐津まで下道を走り、唐津から浜玉道路に乗った途端大渋滞。
結局福岡に着いてみればタイムリミットの18時を10分回ってました。
ではでは