【北アルプス】薬師岳(前編) 貴婦人に長年の片思いをぶつけろ 間違いなくあそこがピークよ!編

【北アルプス】薬師岳(前編) 貴婦人に長年の片思いをぶつけろ 間違いなくあそこがピークよ!編

北アルプスの薬師岳、またの名を「北アルプスの貴婦人」に長年の片思いをぶつけてきました。

 

上の写真は2019年8月に雲の平を歩いた時に撮った薬師岳の写真です。

この時は2泊3日という強行スケジュールで雲の平を周回したんだけど、今思い返してみると、もっとゆっくり楽しめば良かったなぁという思いと、ずーっと晴れてくれた奇跡みたいな3日間だったという充足感。

慌ただしかったけど、北アルプスを縦走することの楽しみをギュッと詰め込んだプランだったわけです。

 

でも唯一の心残りが、薬師岳をパスしたこと。

スケジュール的にも体力的にもどうしても無理だったんです。

 

そして次こそは薬師岳に登るぞ!と企画したのが2022年の五色ヶ原〜薬師岳縦走。

しかし残念ながら迫りくる台風のため断念(泣)

 

まあそんなわけで、薬師岳登頂はずーっと悲願だったわけです。

 

 

今回はなんとしても山頂に立つ!

晴れてくれたなら儲けもんだけど、たとえガスっても山頂には立ちたい!

そうなるとルートは一択。

折立からのピストン!

天気予報を何度も確認して、鼻息荒めに登ってきました。

 

折立キャンプ場までの有料道路は20時〜6時は通行禁止でゲートが閉まっているため要注意です。

※折立キャンプ場へは19:20までにゲートを通過しておく必要があります。

今回は土曜の17時頃にゲートを通過して、その日の夕方に下山された方々の空きスペースに滑り込ませることに成功。

 

 

標準コースタイム

■2025年8月17日 ※カッコ内は標準コースタイム

折立キャンプ場⇒(225分)⇒太郎平小屋⇒(20分)⇒薬師峠キャンプ場⇒(80分)⇒薬師岳山荘⇒(55分)⇒薬師岳⇒(125分)⇒太郎平小屋⇒(180分)⇒折立キャンプ場

コースタイム:11時間25分
距離:20.6㎞、累積登り:1,820m

 

真夏の薬師岳登山

折立キャンプ場から登山開始

 

今年は熊が多いと盛んにニュースになっているけど、登山口がある折立キャンプ場もかなり前から熊が多く目撃される場所として有名。

 

 

17時頃にゲートを通過して有峰林道を走ってると、ご多聞にもれず熊がいたのでYouTubeにアップしてみました。

夢中になって何かを食べている熊。アリかな?

とにかくアブやハエがたくさんたかってても意に介さず夢中になって食べる姿にケモノの本質を見た。

あんなバケモノに人間がかなうはずがないよ。

 

そんなわけで折立キャンプ場で車中泊し、その翌朝です。

ここ折立キャンプ場は熊対策のためキャンプ禁止とホームページにも書いてあったけど、電気柵に囲われたキャンプ場内には熊なんぞ物ともしないツワモノ達のテントが5張ほど張られてたよ。

 

電気柵なんて熊にはまったく意味ないと思うんだけど。。

 

 

4:30

てなわけで、ほんとは夜の内から歩きたかったけど、熊対策で少し明るくなってから歩き始めます。

ヒヨりまくりです。

 

熊が潜んでるかもしれない森に先頭で飛び込むのはさすがに心細い。

白々しく靴ひもを結び直したりしてお爺さんを先に行かすも「私は遅いのでどーぞどーぞ」と先を譲られ、気付けばはるか後方に。

うまくはいかないもんだな。

 

荷が重いけど、北アルプスの貴婦人に一番乗りしてやるか。

朝の涼しい時間帯になるべく標高を稼いでおきたいしね。

 

 

朝早くに月を見上げながら歩くのも登山ならでは。

 

 

朝イチだというのに意外と雲が多い。

日が昇るとガスっちゃうかもしれない。

 

有峰林道のゲートから折立キャンプ場までは車で約40分ほどかかります。

6時に通過できたとして、7時に歩き始めたとしても、その頃にはここはサウナ地獄になっていることでしょう。

今回みたいな段取りがベストなんだろうな。

 

新しいアラレちゃんに刷新されてたよ。

 

屋久島の縄文杉にも負けてなさそうな大木があったり。

屋久島はどこかのタイミングで行かなきゃなと思い続けてもう10年ぐらい経つ(笑)

 

ここでようやく見えた貴婦人が途方もなく遠くて爆死。

涼しい時間に歩けたとは言え、これだけ離れてるとさすがにビビる。

 

 

朝日が差す。

 

 

少しずつ樹林の背丈が低くなってくる。

 

歩き始めは半袖でぶるぶる震えながら出発したのに、すでに汗だくです。

ゴリラに近い人種の私は、夏でも長袖を羽織っちゃう様な繊細な男にちょっと憧れる。

 

 

イワショウブ。

 

 

冬になるとあのポールがすっぽり埋まっちゃうぐらい雪が積もるなんて、すごいよなぁ〜と、何枚か写真を撮っていると、側にいたおじさんが訝しげに自分のことを見てることに気付いた。

何だろう?と思っていると、ポールの下の樹林の中から奥さんが現れました。

お花摘みされてたのね。

自分の勘の鈍さが恨めしいですm(_ _)m

 

 

もうリンドウが咲いてるなんて驚きだよ。

お盆を過ぎたら涼しさを感じるかつての日本の秋はどこかいなくなってしまったというのに、こんな風に分かりやすく見つけられるんだなと。

この日は8月17日。

東京は35℃の猛暑です。

 

コケモモ。

 

 

正面から朝日が顔を出す。

このタイミングで樹林帯サウナを突破できたのはほんと良かった。作戦勝ち。

 

 

この延々と続く木道が足に与えるダメージが下山で効いてくるんだよ。

ここでは決して急いではいけません。

 

 

振り返れば有峰湖。

何度も天気予報を確認して決めた今日の登山。

完璧すぎる晴れと山の静寂がなんとも心地よい。

 

清々しい朝になったな。

耳を澄まして腹の声を聞けば「そろそろ腹減った」とざわついてることに気付く。

熊を恐れるあまり、ここまでほぼノンストップで歩き続けている。

 

整備されたルートは変わり映えしないけど青空が気持ち良いから何度もファインダーを覗いてしまう。

やはり自分はファインダー越しの風景が好きだ。

 

五光岩ベンチに到着。

ここまで来ちゃえば太郎平小屋まで残り2キロという近さ。

 

 

シャリバテになり易い自分としては腹が減る前に食べるということを徹底している。

今日はちょっと休憩が遅かったなと思いつつ、北陸名物のます寿司でエナジーチャージ。

 

登山は旅の延長だと思ってる自分にとって、こういう現地の名物を用意することはマストなのです。

 

 

太郎平小屋までの2キロの道のりを楽しみましょう。

太郎平小屋に着けば登りの行程の半分を超える。

全体で言えば4分の1だけど、下りはなんとかなると思いたい。

 

 

ふえっ!!北ノ俣岳にガスがぁー!!

ガスの野郎、思ったより早く来やがった!

 

 

うーん、ガスのおかげで光芒がきれい。

とか悠長なことを言ってる場合ではない。

とうとう美しい貴婦人がガスというベールに包まれてしまった。

 

しかしブサ男な自分にできることは、貴婦人のご機嫌がこれ以上悪化する前に少しでも早くお近づきになるチャンスを狙うだけ。

イケメンがやらないことを愚直にやるのがゴリラの生き方。

 

 

たかが木道だけど、実に絵になるから写真を撮るフリをしつつ息を整えて前進あるのみだ。

今回の日帰り登山では400枚ぐらい撮ったかな。

 

 

ヤマハハコ。

 

 

太郎平まで0.5km。

もはやゴールしたも同然。

 

さあ、ここいらで薬師岳を見てみよう。

ひ、ひどいじゃないか。

目も当てられない。

 

きっと今山頂にいる輩どもが貴婦人にちょっかいでも出したのだろう。

 

なぜなら周りの景色はこんなだよ。

完全に貴婦人だけがぷんぷんオコオコモードじゃないか。

 

レディーの扱いを知らない輩ども、クソがっ!

 

そう吐き捨てておきながら、自分も実のところ女心の読めないモテ期ゼロのおっさんということを忘れてはいけない。

これからますます貴婦人を怒らせてしまうかもしれないのだ。

 

太郎平小屋が見えた。

 

チングルマの綿毛。

略してチ〇毛。

爽やかな高原の朝なのに、どうもスミマセン。

 

 

ちなみに余談ですが、東北楽天イーグルスのロゴが最初カタカナの「モ」ですか?

と思ってたけど違いました。

「毛」でした。

毛じゃねぇよ!と怒られてしまいそうだけど、もうあたしには毛にしか見えません。

 

 

話を戻します(汗)

少しずつ草紅葉が始まっている。

 

 

小屋まであと50m。

おじさんになるといつも体のどこかが痛いもんだけど、前日車中泊してるというのにこんな調子が良いのは珍しい。

 

太郎平小屋からはガスガスの薬師岳

宿泊客が出発した後の小屋はとても静か。

 

そして太郎平小屋前からは貴婦人が丸見えなのである。

それがこちら。

 

はい、どぼぼーん。

 

ベンチで荷を整理するハイカー達からも覇気が全く感じられない。

ガスはハイカーをだめにする。

 

 

立ち止まっていると涼しい。

太郎兵衛平(たろべえだいら)って2330mもあるのね。貴婦人が2,926mだから単純標高差だとあとわずか600m。

頑張れる気がする!

 

では参ろう。

太郎平小屋でのんびりする時間なんぞないのだ。

太郎平の水場で500mlだけ補充して出発。

 

 

太郎平から薬師峠キャンプ場まではガツンと下る。

単純標高差600mなんて幻だ。涙を拭いてさあ下れ。

 

 

雲の中から水晶岳が姿を見せる。

 

 

黒部五郎岳も姿を見せる。

諦めたらそこでゲーム終了ですよと言わんばかりに、ここにきてゲリラ的に雲が晴れてきた。

貴婦人はこうやって焦らしながら、最後まで諦めなかったのが誰かをふるいにかけているのかもしれない。

 

 

ならば行くしかない。

雲の中へレッツラゴーの助なのだ。

 

 

途中には池塘があったりする。

楽園に来ちゃった。

 

 

だが現実は容赦なく下らせる。

薬師峠キャンプ場がはるか下に見える。

 

薬師峠キャンプ場

薬師峠キャンプ場に到着。

ピンクのテントがいいね。

 

まだ朝の7:30だから、のんびり朝を過ごしてる方もちらほらいらっしゃる。

 

そしてこの数日後、熊が次々とテントを襲い、食料をあさるという事件が起こるわけです。

こわいこわい。

 

なお、ここのテン場の受付は太郎平小屋です。

水場もあるよ。

 

ここのテン場の良いところは予約が不要な点。

今となってはそういうところは貴重なんです。

そんなわけで週末は大混雑です。

予約制ではないのも一長一短だけど、縦走してる時は天気とペースでプランが変わるからやはり予約制じゃない方が助かる。

 

お花畑と北アルプスの大絶景

当たり前だけど、下った分もしっかりオンして登る。

 

 

カラマツソウ。

 

 

沢を沿いの濡れた岩を滑らないように慎重に登っていく。

 

 

オオヒョウタンボクの実。

美味しそうだけど、有毒らしいです。

 

 

岩がゴロゴロしているところは踏み跡が残らないから、ずーっと先の方を確認しながら進むべき方向を間違えないように気を付ける。

マークが付いてるから安心です。

 

ウサギギク。

ここからお花畑に突入。

 

リンドウ。

 

日が出てないから閉じたニッコウキスゲ。

下山の時には満開だったよ。

 

 

そして広場みたいなところに出る。

ここからは北ノ俣岳が一望できるし、向こう側の雲も晴れてきたし、良い兆しだ。

 

それにしても景色がころころ変わっていく展開が登ってて飽きさせない。

 

やっぱり薬師岳、良い山だな。

 

 

ここはほんと気持ちの良いところ。

最短ルートの折立からのピストンで累計1900m登って、距離は21kmも歩くからかなり覚悟キメて来たんだけど、これだけ面白いと長くは感じない。

まあそう言っていられるのも今だけで、帰りの樹林帯では完全に燃え尽き、いつも通りの修行に突入するのですが…。。

 

薬師岳の稜線へ

そして景色が開けた。

素晴らしい稜線。山ヤロウなら登頂意欲が激しくかき立てられちゃう、そんな光景。

 

 

山頂方面はまだガスってるけど、なんとなく自分が着く頃には晴れそうな予感。

 

 

ハクサンフウロもたくさん咲いてる。

 

 

ヨツバシオガマ。

 

もうひと踏ん張りすれば稜線だ。

疲労の蓄積と高山ということでゼーハーゼーハーと激しい息遣いになってきた。

 

すかさず息を整えるために足元のハクサンフウロを撮影タイム。

おじさんでも綺麗なものは好きなのです。

 

そして顔を上げるとまさかの晴れ!

ああ、貴婦人が微笑んだ。

 

稜線まで這い上がったぞ!

薬師岳山荘はここからじゃ見えないけど、あと15分の距離だ。

 

この時点で山頂は間違いなく踏めると確信したな。

 

 

ここに来てますます晴れ渡る北アルプスちゃん。

左の黒部五郎岳もばっちり姿を現してくれた。

 

 

「前回薬師岳に登った時はガスガスだったからさ、今回はリベンジなのよー」

と、おばちゃんが話しかけてきたので、

「アレが山頂ですか?」と聞くと、

「そう!あたし前にも登ってるから間違いない、あそこがピークよ!!」

 

ああ、よかった。もう目の前だ!

 

という話のやり取りがありましてね。まんまと騙されました。

手前はピークはニセです。

 

本ピークは左奥です。

 

ちなみに薬師岳山荘は右手前に隠れてる様に建ってて、ちょっと歩いたら突然現れて驚いたよ。

 

こんな山奥にこんな立派な小屋を建てちゃうんだからすごいよ。感謝しかない。

まずこの窓が多さと1枚ずつの大きさ。台風が来ても大丈夫なのかなとか思っちゃうけど、天気が良い日は中は明るくて気持ち良いだろうな。

 

 

休みたい気持ちをぐっとこらえて先へ進む!

だって、

「あたし前にも登ってるから間違いない、あそこがピークよ!!」、

山頂は目の前だから!(騙されている)

 

ここからは後編に続きます。

 


登山カテゴリの最新記事