雁坂峠 登山 トイレを貫け!笹原広がる日本三大峠は富士山の絶景と便所国道

雁坂峠 登山 トイレを貫け!笹原広がる日本三大峠は富士山の絶景と便所国道

便所の中を国道が走る。

あーに言ってるだ?気でもおかしくなったんかえ?そう、俺だって最初は何を言ってるのか理解できなかったよ。

 

通称、便所国道

 

そんなジラレヘン事実を知って、興味を覚えたのはもう5年も前のこと。

まあ現役の国道ではなく、旧道となってしまった旧国道140号線の話なんだけどね。

その旧国道140号線が雁坂小屋のトイレを貫いてるという摩訶不思議な事態は、実は超有名な登山あるあるなのであーる。

旧国道140号線は、雁坂トンネルができてからは旧道になってしまったけど、かつては埼玉県秩父市から山梨県へと抜ける交通の要だった。

標高2,000mの雁坂峠を超えなくてはならなかった雁坂みちにおいて、その最大の難所が雁坂小屋のトイレを貫くという、正真正銘の失禁ポイントだ!

もう歩けない!もう無理!と、お腹が緩くてお悩みの人にとって、ここはオアシスだったに違いない(勝手な想像)。

 

という訳で、今回の舞台は日本3大峠の雁坂峠

以前、塩山駅から甲武信ヶ岳登山へと向かう山梨交通バスで、テント泊装備の乗客が「雁坂で下ろしてください」とタクシー的な注文をした事に驚き、運ちゃんも「ハイ〜」と軽く受け答えする光景に「ええー!」とぶったまげた。自由乗降区間というのがあるらしい。その時からずっと気になっていた雁坂峠なのだ。

で、なに?日本3大峠って?

という方のために、他がどこかと言うと、南アルプス塩見岳の三伏峠、北アルプス針ノ木岳の針ノ木峠、北九州出身のバイキング小峠。

一泊して甲武信ヶ岳と一緒に登れたら山の夜を満喫できて良かったんだけど、日帰りでも十分楽しめる距離、標高差だったよ。

 

歩いたコースは、雁坂トンネル前の駐車場を起点に、雁坂峠→雁坂嶺→雁坂小屋→駐車場に戻ってくるルート。

 

昔の人は大きな荷物を抱えてここを越えたんだね、えらいこっちゃ。

雁坂嶺は山梨百名山、関東百名山、標高は2,289m。

さあ12月に入った。空気が澄んで絶景が待っている。

いざっ

 

ルートとコースタイム

■2020年12月6日 ※カッコ内は標準コースタイム。

雁坂トンネル前駐車場⇒(160分)⇒雁坂峠⇒(45分)⇒雁坂嶺⇒(35分)⇒雁坂峠⇒(15分)⇒雁坂小屋⇒(20分)⇒雁坂峠⇒(130分)⇒雁坂トンネル前駐車場

コースタイム:6時間45分

総距離 15.6km
累積標高上り 1,570m

雁坂峠登山 本編

雁坂トンネル料金所前から登山スタート

道の駅みとみから見えるのは甲武信ヶ岳。日本百名山であり、千曲川や荒川の源頭の山として知られる山。

1泊2日すれば、ここ道の駅を起点に甲武信ヶ岳〜雁坂峠を縦走することもできるんだけど、今回は日帰りで雁坂峠だけに行って戻ってくるプラン。そんな訳で、ここより更に登山口に近い駐車場へ移動する。

 

雁坂トンネルの料金所の手前、道の駅みとみ側に登山口駐車場が雁坂峠へは最短の起点となる。

ここのトイレには料金所で働く方々のご厚意か、小さなストーブが備えつけられているというVIP待遇さ。

道の駅からスタートする人もいるけど、ここの駐車場からが最も近いアクセスとなる。

 

料金所からアクセル全開で飛び出してくる車に気をつけながら反対側へと渡る。

車もまさかこんなところで道路を横断する輩がいるとは思わないもんね。

 

雁坂峠の登山道はこのゲートの先にある。

横からスルッと抜けて登山開始だ!

 

長い長い林道歩き

登山開始と思いきや、そこは長い林道の始まりだった。。

林道で始まる登山ってよくあるけど、新穂高温泉から双六岳へ向かう最初の林道歩きに比べたら大したことない。ほんのちょっとの辛抱さ、すぐ終わる。

 

しかし予想に反してなかなか終わらない林道。。

いやいや、新穂高温泉に比べればこんなん序の口だ!と、まだ言ってる。

この時はまだ元気だった。

 

遠くに見える山、あれは雁坂嶺だろうか?

これから目指す峠が見えてもつまらない林道のせいで既にハイパーげんなり状態だ。もはや生きた心地がしない。

 

やっとトレイル

やっとトレイルの入り口に着いた時には既に9ラウンドを戦い抜いたボクサーの様だぜ…。

まあ、事前情報無しで林道を歩いたから長く感じたってのが悪さしてるんだけどね。

やはり新穂高温泉の方が遥かに長い。

 

いきなり難所がでてきた。ちゃんとロープが張られてるし、見た目ほど難しくはないポイントだけど、突然の急斜面のトラバース&沢の渡渉というダブルおめでたの衝撃。

もはや何を言ってるか意味不明だが、ともかく落ちたら50m以上は滑落するから気をつけるべし。

ここの沢が凍ってなくて良かったよ。

 

冬枯れした木々。

雁坂小屋ももう小屋締めしたし、軽く雪も降ったし、本格的な冬の到来までは秒読み。

日陰ばかりで寒いよ。

 

そんな冷え込んだ山奥の谷に差し掛かる。流れなあるところはまだ凍結してないけど、水たまりはガチガチに凍ってた。

ひたすら続く日陰ハイクが辛くなってきた。

 

沢の渡渉がたしか3回あったかな。なんにしてももう寒いからドボンしたら完全アウト。

 

渡渉して軽く登って沢沿いを横移動。

林道からとにかくしばらくは横移動しながら、なだらかな日陰漫遊ロードだ。

 

おっ!見えた。

寒さに震え嗚咽を抑えられなってきた頃に現れる、サンシャイン池崎ぽかぽか天国への入り口だ。

あぁ、俺もあっち側に行ける。いよいよマーレ人になれるんだ。壁の向こう側にある日向へと開放されるこの瞬間、きっと自分は無垢の巨人のヤバい笑みを浮かべてたはずだ。

 

日向の人になれた事に感謝し、ミニどらやきをいただくとするぜ!

と、食べようとしたこの瞬間、うっかり下に落としたミニドラは、あたかもタイヤの様に物凄いスピードで転がり、転がり、転がり落ちていったではないか。

しかもどらやき色の枯葉に紛れ、雪原で白ウサギを探すほどの難易度ときたもんだ。結局、探しようが無く、小動物たちへの餌付けとなってしまう結果に。

改めて、形が丸いものは要注意だ。

 

明るい登山道と笹原稜線

ミニドラを失ったショックは多少引きずってはいるが、それでもやはり日向を歩けるのは幸せなことだと、感謝の気持ちに支配されている。

自分の様な野生動物への餌付け禁止令を守れない人間に対しても、太陽の日差しは平等に優しいのだ。

そう思うと泣けてくる。

ぽかぽかだなぁ〜と太陽に感謝し涙したのも束の間、途端に暑くなってきた。一瞬で背中は汗ばみ、早くもチャックは胸どころか腹まで全開だ。さっきまでの日陰がちょっと恋しいぜと、まさかの太陽全否定説を披露。

おかげでムレムレだぜと、速攻、上着脱ぎ脱ぎタイムに突入だ。

 

ここが最後の渡渉。と言ってもここまで来ちゃえば源流域だから沢はかなり細い。

 

熊笹がでてきて、勝手にイメージしてた峠道へと近づいてきたことを感じる。

冬枯れて青空がすけすけになった森を、雁坂峠に向けて登っていけば、次に奥秩父といって真っ先にイメージする日本の象徴、巨大な富士山が姿を見せる。

 

見えた!

奥秩父に来て、この景色を期待しない登山客はいない。

 

全てが奥秩父らしさに溢れた景色。

これが東京から日帰り圏内で来れちゃう距離にあるんだからね、つくづく東京近郊は山岳天国だと思う。

東京からアクセスが良いエリアと言って真っ先に上がるエリアは、まず間違いなく高尾だと思う。そして次に丹沢か奥多摩だろうか。自分は群馬や日光方面ばかり登ってるから、実は丹沢は未踏の山が多いんだよね。

そんな丹沢で、前々から狙ってるのが不老山という山。標高も低いし、ハイキングみたいな山だけど、ここにはとある理由があって早く訪れたいと思ってるんだよね。少なくとも春までには登る。乞うご期待だべぇー。

 

峠が見えてきた。本来であれば「稜線が見えてきた!」と言いたいところだが、今回はあえて「峠」と言わせてもらおう。そんな、いい歳して軽く粋がってしまっている自分がいるが、それもこれも雁坂がその気にさせするのが悪いんだぽーん。

 

これよ、これ。今にもひょっこり鹿が顔を覗かせそうな景色。奥多摩と山脈が繋がってるから熊もどこかにはいるんだろうけど、ここら辺は笠取小屋のご主人が餌付けしてるからか、鹿がとにかく多いエリア。

今もこっちが気付いてないだけで、どこかからじーっと見られてるはず。

 

しかしバテた。バテてきた頃にやっと雁坂峠に到着。

運動不足だし林道長かったし、前回は桜山公園を歩いただけだったから足の筋肉疲労がマジでやばい。体力レベルは軽く爺。

 

日本3大峠。埼玉県の標柱が立ってるあたり、埼玉と山梨の県境にあるけど埼玉県が陣取り合戦に勝った模様。

大人げないぞ、埼玉県!

 

現在地を確認。この地図で下から伸びる赤い線を必死の形相で登ってきたよ。

これからとりあえず雁坂嶺に登ってお昼を食べて、再びここに戻ってきたら雁坂小屋に寄って、再びここに戻ってくるという雁坂峠ばかり経由する意味不明な行動をとるのであーる。

バテてるならよぜばいいのにプランだ。

 

さすが日本3大峠というだけあって、説明書きもきちんとしてる。

雁が大群で越える峠というのが「雁坂」の由来で、「秩父往還」の道として主に交易で使われた商業道路だったとのこと。ヤマトタケルも蝦夷の地平定でここを通ったそうだ。タケルったらもぉ~やんちゃすぎっ!

昔人が征伐で使った道、商業を目的に歩いた踏み跡を無気力に歩かせてもらいますぜ。

 

縞枯れと雁坂嶺

さて、雁坂嶺へ行ってみるよん。ちなみに、かりさかれいと読む。大菩薩嶺と言い、みねと書いてれいと読ませるのがここら辺の一般常識の様だ。

 

すぐ近くの大菩薩峠と雰囲気は似てる。爽快な峠道だ。

 

素晴らしい眺めにヤマトタケルもここでいっぷくしたに違いない。その頃からなんら変わらない景色だ。

 

折り重なる奥秩父の山々の奥に、わずかだが白い山脈が見えてきた。南アルプスだ。

 

足元には雪がうっすら積もってるけどまだチェーンアイゼンを出すほどではない。

 

雁坂峠から雁坂嶺まではコースタイム40分。雁坂峠までで既にバテてんのに、そこから標高差200mほど登るなんて、もはやパワハラですよー!

 

しかし、ここから始まる独特な景色があるから是非足を伸ばしてもらいたい。

それがここ。

 

圧巻の縞枯れの広がる光景。

ここまでの縞枯れはなかなか見たことない。大峰山以上かもしれない。

縞枯現象は森の更新作用だと聞いたけど、発生原因はいろいろあるみたいね。

 

雁坂嶺の山頂は埼玉県と山梨県

雁坂嶺に到着。

山梨百名山ね。何度も言うけど、バテたよ、ほんと。

 

半額のシフォンケーキ、うまイマダー!

景色は後で楽しむスタイル。

とにかく空腹だったんだよね。雁坂峠に着いた時点で空腹ではなかったんだけど、途中で、あれれ少しお腹空いてきたなぁ〜って思ってからが早かった。一瞬で空腹マックスに到達し、雁坂嶺までがとにかく長かった。

カレーメシとソーセージドッグを置き去りにしてシフォンケーキから食べた。カレーメシの5分が待てなかった。

 

ちょっと空腹が満たされたから辺りを見渡すと、富士山の山頂にちょっとだけ雲がかかっちまったい!

シフォンケーキ食べてる場合じゃなかったか…

 

破風山〜甲武信ヶ岳への縦走路。

通常は1泊2日のコースだけど、元気な人なら日帰りで歩いちゃうコース。

日帰りなら今回歩いた雁坂嶺まででやめといた方が楽しめると思うよ。のんびり歩けるし。

山の夜を楽しみたい自分としては、1泊2日で甲武信ヶ岳から雁坂を周回するルートが俄然オススメしたいところだけどね。

 

左が山梨県の標柱。右が埼玉県の標柱。

自分が立つ真ん中がまさに県境であり、中部地方と関東地方の境だ。

 

 

「コロナが落ち着くまでは不要不急の県またぎは自粛ぅー!」

 

 

「アホや・・」

 

見せ物じゃないぞ!

 

 

雁坂峠へと戻ってきたよ。

さてさて、私にはやり残したことがある。

というか雁坂峠に決めたそもそもの目的をこれから遂行しようという大事な場面で、既に千代の富士ばりの「体力の限界!」宣言を発出しなくてはならないほど、疲れ切った体が鉛のように重たい。

しかしぎりで大丈夫だ。イケる。

なぜならここから目的地の雁坂小屋へは左の埼玉方面へと15分ほど下って行ったところにあるのだ。

下りなら楽勝だぜー♫

重力任せにダラダラ下りるだけならヘソで茶を沸かせるわい♫

 

絵に書いたダラダラ具合で下っていく。

ひたすら15分、下る。疲れ切ってギブアップ寸前だった自分が歩けるのは下りだからだ。それを忘れてはならない。

 

いよいよ便所国道へ

おおー、ここが雁坂小屋ね!イメージしてた通り味のある小屋で好感度アップ!

 

小屋締めしたばかりだけど、避難小屋として開放してくれてる。きれいにしてあるね。

 

見上げれば見事な梁。

ずいぶんしっかりした造り。キン肉ハウスとは雲泥の差だ。キン肉ハウスを知らない人はぜひググってほしい。奇抜な家なので、注文住宅を検討してる方はぜひ参考にしてほしいデザインだ。

 

小屋の中の見学が終われば、本日最大の目的地へ行ってみよう。

 

それがここだ!このトイレを貫く通路こそが便所国道!

男の用を足す姿は国道から丸見えだ!

国道沿いだけどトイレの中だから立ちションにはならないんだよね、きっと。

いや、立ってするんだから立ちションなのか?

いや、立ちションイコール野ションではないよね。

立ちションってそもそもなんなんだ?

 

立ちション議論はひどくつまらないので、テン場チェックに移る。

景色は良いしフラットだし、日当たりも申し分ないね。ここでテント張りたい!

 

黒姫山の七ツ池シュートみたいな溝を発見。ただの沢かな。

さて、本日3度目の雁坂峠まで戻るかね。

 

小屋から雁坂峠へは登り返しでは嗚咽が止まらなかった。。雁坂峠から小屋まで15分、小屋から雁坂峠へは20分。分かっちゃいるけどしんどい。

 

こうなるわな。なんだかんだて累積すると1,600mも登ってた…。仕事が忙し過ぎて運動不足だと言うのに、よく頑張ったよ。

 

とどめの富士山とゲッザーン

さあ、これが最後の富士山だ。あばよ!

夕食後に一息ついてから食べるポテチと下山中に眺める見納めの富士山の価値は同程度で高い。

何度見ても飽きたらない。今年は冠雪してもすぐ解けちゃうのか、なかなか白くならないね。

 

沢が輝いて見える。下山はピストンだから簡単に流して書いてるが、上りの時に転がって見失ったミニドラを途中で軽く捜索したことに触れておく。結局見つからなかったんだけどね。

もう既にイタチか何かに食べられちゃったのかもね。

 

うぅ、再びあの林道を歩くのねん。

自分の汗による体臭から逃れるようにところどころ走ったし、超ハイペースで駆け下りてきた感じ。

 

あんな高いところにいたんだね。こんなすぐに下りてきちゃってさ、やっぱり日帰りはもったいないな。

 

料金所が見えた。登りで長いと感じた林道もあっという間に感じたな。

やっぱり、新穂高温泉から双六岳の方が遥かに長いわ。

 

振り返って

雁坂トンネルを通る度に、

「なんで無料化しないんだよー!」と1万回言ってきた。

「三才山トンネルだって無料化したのにー!ちっくしょー!」

と喉が痛くなるほど雄叫びを上げて地団駄を踏んできた。きっとそんな人は多いはず。

さて、そんな雁坂トンネルだけど、1998年4月に開通する前までは自動車で走ることのできない雁坂峠を越える登山道が国道140号と指定されていた。

 

雁坂トンネルの長さは6,625m。

一般国道としてはアクアラインに次いで国内2位の長さ、山岳トンネルとしては最も長いトンネルで、構想40年、着工6年でやっと開通できた歴史を持つ。

通行料は740円(2020年12月時点)。徴収期間は30年で2028年まで。まだ8年もあるのか!

しかし、このトンネルの開通工事にかかった年数と、雁坂峠を越える大変さを考えれば、あと8年の支払いは致し方ないたのかもしれないね。

ではでは


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